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2007年11月27日 (火)

リスク管理の成功体験は共有できるか?

著名ブロガーでいらっしゃる貞子さん(貞子ちゃんの連れ連れ日記)より、赤福関連のエントリーについてトラックバックをいただきました(どうもありがとうございます。)経済系のブログでは珍しく赤福問題を取り上げていらっしゃったようですが、決して赤福に同情していらっしゃるわけではなく、公正な論評のための素材を提供されているところは(いろいろとご意見はあるでしょうが)、たいへん素晴しいと思いますし、私も貞子さんのご意見に共感を覚えるものであります。こういったブログがたくさん出てくるのを待望しております。(さっそく貞子さんのブログに1票投じさせていただきました)なお、赤福とは事例が異なりますが、素人オヤジさんや酔狂さんのお勧めで石屋製菓の「コンプライアンス確立外部第三者委員会報告書」を読ませていただきましたが、私も内容は秀逸だと思いますし、(若干の希望事項はコメント欄に書かせていただきましたが)私もご一読をお勧めいたします。

さて、予想どおり(?)昨日のエントリーには諸々のコメントをいただきまして、ありがとうございました。いつものパターンではありますが、ちょっと立場上、コメントをお返しするのがむずかしいところであります。(^^;; (ある事情で、12月初めには、私、青学にも伺いますし・・・・)なお、しこたまさんがコメントされていらっしゃる、会社法務A2Zの12月号、私も読んでみました。コンプライアンス(ガバナンス)関連の特集として、監査役、会計監査人、内部監査人の監査における連携について考察されておりますね。昨日のエントリーとも関係しますが、こういった協調連携のためには、単に「用語」の統一だけでなく、判断基準の統一も必要だと思っております。もちろん、内部統制システムの整備については、それぞれ企業によって工夫が必要でしょうが、昨日申し上げたような「重要な欠陥と不備との区別をどこに求めるか」とか、業務プロセスの評価方法(日常的モニタリングのみで足りるか、独立的評価は必要か)など、実施基準の記述よりももう少し踏み込んだところで明確化されませんと、上記3者の間におきまして、金商法上の内部統制報告制度に期待されているような協調連携ははかれないのではないか、などと考えてしまいます。

そして内部統制報告制度が、単に外部監査人から適正意見をもらうためだけの制度ではなく、具体的に企業価値を向上したり、企業価値の毀損を防ぐための「有効性、効率性向上のための内部統制」を目指すのであれば、できるだけ内部統制の整備に関与する人たちの間で「成功体験」を共有することが必要だと思いますね。とかく内部統制に関するお話は、「こうしたほうがよい」とか「うちの会社ではこうしている」といったところがメインテーマとなっておりまして、どうもイメージが湧きにくいところが難点であります。(手段が目的化するきらいがあるのではないかと危惧しております。)営業行為とは異なり、管理行為というのは、なかなか数字で成績(良し悪し)が表せられないところがありますが、「こういったリスク管理を行ったことで、こういった事態を防ぐことができた」とか「監査役のこのような行動によって、会社の資産保全がこのように図ることができた」といった一種の「成功体験」を共有することも重要ではないかな・・・と思っております。

たとえば、ある会社では、食中毒事件の発生に備えて、会社法上の内部統制システム構築の一環として、リスク評価とその対応方法を検討していたところ、案の定、食中毒事件が発生し、県の衛生局より全面的な食品工場操業禁止処分を受ける可能性が高まったとします。しかしながら、その食中毒事件の発生する3ヶ月前に、食品のトレーサビリティに関する情報収集方法を「対応方法のひとつ」として事前に整理していたために、食中毒の発生した営業店舗が特定できたことによって、すみやかに対象の食材が判明し、これをもって衛生局と交渉したところ、工場操業禁止処分は受けずに済み、当該営業店舗のみの営業禁止処分で済んだ、といったあたりの話であります。もちろん、これはJ-SOX(財務報告に係る内部統制)とは異なるものではありますが、こういった事例を経験することによって、単に外部監査人から適正意見をもらうための制度ではないことを実感できるようになると思われます。

つい先日(11月11日)の朝日新聞ニュースにおきましても、大和ハウスグループの子会社(大和リゾート社)の監査役の方が、監査業務のなかで従業員の残業代の不払いの実態を知り、社長に直談判をされて、会社の残業代支払い方法が変更されるに至った、との報道がなされておりました。監査役の活躍が報道されためずらしいケースではありますが、こういった報道は、監査役の職務の理想に近いことが実際に行われていることを知ることができ、とても励みになります。管理行為がなんらかの企業価値向上に役立っているところを、今後は企業の枠を超えて、共感できるようになればいいですね。

11月 27, 2007 リスクマネジメント委員会 |

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【おまけ:繰り返される国内不動産バブルーーーリフレインが叫んでいるーーー】 実家が鳥●県鳥●市内ですので、多くの識者の『兼業農家の最大の関心事は土地を公共事業などで買ってもらうこと』とのご指摘は、極めて正しいと私個人は受け止めています。 私の実家は兼業農家ではなかったですが、ここ10年間、鳥取県では、帰省のたびに、道路がどんどん増えています。 自分が生まれ育った町なのに、りっぱな道路があまりに不必要にどんどん増えて、かえって道に迷うくらい。 観光は廃れて、今や地方の名産は『道路』だけかもしれない。... [続きを読む]

受信: 2007年11月27日 (火) 13時20分

コメント

おはようございます。
コンピュータ屋です。

私の周辺の話ですが、
内部統制報告制度は、財務報告の信頼性の部分についてのみ、外部監査人との調整(もめているところ、なあなあとなっているところ、いろいろ)のみが関心の的になりつつあります。具体的な企業価値を向上、「有効性、効率性向上」がテーマにはなっていません。

暴論ですが、
内部統制報告制度のみでは、ほどほどにという気持ちではないでしょうか。

知人に聞いていましたが、
「After J-SOX研究会が発足」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071126/287995/

また、私が勝手に言っている「ポスト内部統制」のこと

私の周辺の人たちも、ちょっと先のことを気にしたら、
今の内部統制報告制度のことも真剣に見直されていくのではないでしょうか。
そんな思いです。

投稿: コンピュータ屋 | 2007年11月27日 (火) 10時07分

おはようございます。
記事、拝見しました。

内部統制もいよいよ企業集団で捉えようという機運が高まっているんですね。たしか日本取締役協会がパブリックコメントに出している「公開会社法」も、法的な側面から企業集団に新しい意味を付されているようですし、「会社法の残された課題」に対していろいろな面から光があてられてきたように思います。さっそく勉強させていただきます。

投稿: toshi | 2007年11月27日 (火) 11時29分

山口さん はじめまして!
藤井まり子(貞子)と申します。
ご挨拶が遅くなって、申し訳ありませんでした。
今日は朝からアクセス件数が急増して、自分でも不思議だったので、アクセス解析しましたところ、こちらのサイトからのアクセスが軽く朝から100件を越しておりました。(私の悪い癖ですが、アクセスが急増すると、しばらく ぽか~~んと放心してしまって、お礼の気持ちを伝えるまで、時間が掛かる癖があります。)
赤福報道の件は、私個人も最初からとても違和感を持って眺めておりました(不二家事件では、厚生省と農林省のガイドラインそのものが不可解でしたし、報道するほうも、ほとんど法令順守などしていませんでした。マスコミの報道の仕方では、料理が大好きな私個人は、古くは、BSEや、0157問題のときのカイワレ業者への濡れ衣の着せ方にも強く 違和感を抱いていました)。
そうこうしているうちに、私のブログの愛読者の方が一番興味を抱いてくださっている『マーケットでのサブプライム問題の二番底』訪れまして、食品業界については、私の中の優先順位が、なかなか一番上に来ませんでした。それでも黙っていられなくなって、私の赤福事件のブログ記事は、ここ1か月では、私が一番力を入れて記した記事です。
こちらのブログで、ご紹介いただきまして、とても深く感謝しております。しみじみしみじみ有難うございます。
私も企業法務には興味があり、知り合いの弁護士さんのお話などは、いつも歓心して伺っておりますが、なにぶん法律分野は、私の得意分野ではないので、私個人は文字としての表現力を保有していません。
こちらのサイトの存在も、アルファーブロガースクエアが無かったら、その存在さえ知らなかったと思います。アルファーブロガースクエア運営者の方々にも、感謝です。
私も、遅まきながら、山口さんのブログに一表を投じさせていただきました。
名古屋からではありますが、山口様の今後のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

蛇足かもしれませんが、地方の農業と道路の現実について記した過去のブログ記事もTBさせていただきます。

投稿: 藤井 まり子(貞子ちゃん) | 2007年11月27日 (火) 11時58分

ミートホープやら赤福やら吉兆やら、頻発する不祥事が後を絶ちませんが、今回の法制度である内部統制報告制度は「財務報告に関わる内部統制」であるだけに製造・生産のプロセスについては含めなければ含めなくてもよく、棚卸資産やら原材料やら原価計算等の財務情報に関する部分でよいとされています。品質管理や衛生管理には関心がないようです。

ことほど左様に同名異義語、パラレルワールドの様を呈する「内部統制」でありますが、広義・狭義を弁別して考えないといけないのは誠に煩瑣な事かと感じます。
toshi先生はこのあたりをいかがお考えでしょう。

私はそろそろ頭内の前提切替に疲労を感じてきました。今度は企業ガバナンスと内部統制がどこかで反応し合うのでしょうか。「リスクマネジメント」と言う点が共通項ですが、今回の法制度をきっかけに大掃除をしていたら、内剛を養う事の大切さと言うしまい忘れたテーマを見つけ出したと言うところでしょうか。どのような連結マネジメントが出て来るか、楽しみではあります。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年11月27日 (火) 15時36分

大和リゾートの件、記事を見ましたが、こと監査役監査活動の実績事例として見る限り、これを「成功体験」と捉えることには少々違和感があります。

私が見た記事は、以下のサイトですが、
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2007111001021.html?C=S

この報道内容から判断する限り、いかにも中途半端に終わっているからです。
・社長に報告をし、是正を求めたはいいが、(恐らく)そのフォロー(時宜を失することなく、100%是正・改善をやり切ったかどうかの確認)をしていない。
・その結果、将来に亘っては改善されたものの、過去に遡っての是正は行われないまま1年が経過し、今日に至った。
ということと読めます(事実関係の詳細は、これ以上は判りません)。

要するに、「言いっ放し」に終わっているということです。

勿論、何もしない(指摘さえしない、あるいは気づきもしない)よりはマシなのは明らかかとは思いますが、これを大和銀行大阪地裁判決のロジックに照らすとどうなのかな(ちょっとアブナイんじゃないかな)・・・と思います(勿論、事案の性質は違いますが)。

あと、もう一つ実質論ですが、百歩譲ってそこ(監査役の責任)までいかないまでも、「言いっ放し」の場合は、監査役のみが「いい子」になるということは、看過してはいけません。その会社にとっては決して幸福なことではないと思います。

投稿: 監査役 | 2007年11月27日 (火) 23時55分

今しがたの書込み、「名前」が「監査役サポーター」になっておらず「監査役」となっているような気がします。もしそうならお詫びのうえ訂正させて頂きます。

投稿: 監査役サポーター | 2007年11月27日 (火) 23時58分

>貞子さん
こちらこそ、投票していただき、ありがとうございました。
私は某ブログを介して、以前から存じ上げておりました(笑)

私は畑違いのマニアックなブログでありましても、そこから「その分野への興味や関心」がわくことに意味があると思っております。
ブログを拝見して、自分もちょっと真剣に学んでみようかな・・といった気持ちにさせてくれるブログが大好きです。
また私もおじゃましますので、どうかよろしくお願いします。m(_ _)m

>監査役サポーターさん

ご指摘のとおり、私もこの監査役さんが100%の成功を収めたとは言いがたいと思いました。(多分私が読んだ記事と同じものだと思います)
過去の分に関する指摘やそのためのフォローアップを指しているものと思います。ただ、どこに情報が集約されていたのかは報道内容からはわかりませんが、自ら情報収集に努められたこと(事実確定作業も含めて)、上場企業である親会社の支配下にある子会社であることなどを考えますと、100%ではなくでも「成功体験」といえるのではないでしょうか。たとえ成功体験とはいえないとしても、監査役サポーターさんのような指摘がなされるテーマを提供していること自体にも大きな意義があると考えております。

投稿: toshi | 2007年11月28日 (水) 12時16分

最近は、自分でつけたハンドルネームすら長く感じますので、省略バージョンでコメントさせて下さい。

今回のエントリーとは直接は関係ありませんが、私も石屋製菓の「コンプライアンス確立外部委員会」報告書を読みました。私の地元、札幌の超有名企業であり、信頼回復に向けて、本気で「コンプライアンス」を確立してもらうことを切に願うところです。

メンバー構成からしても通常の外部委員会よりも力が入っており、地元の皆さんの再起を願う強い思いが内容からも伝わってきました。内容的にも非常に秀逸ではあり、参考になりました。
 ただ、私としては、読後感は非常に悪かったのが正直な印象です。これは私個人が感じている感覚かもしれませんが、短期間に多くのことをやりすぎ、また内容的にも焦点が絞れておらず(コンプライアンス・リスクの洗い出しが荒すぎて、非常に総論的になっている)非常に総花的な印象を受けました。

 日々、企業のコンプライアンス体制強化やリスク管理体制の強化のお手伝いをさせていただいている経験では、本当に微々たる経験でしかありませんが、特にコンプライアンス体制の確立は、牛歩の取組みであり、「急いては事を仕損ずる」「過ぎたるは及ばざるがごとし」を痛感しております。「石の上にも3年」のことわざもありますが、3年までは要しないものの、制度の定着、意識の改革には非常に時間がかかるのが、実際のところだと思います。小さな成功を徐々に積み重ね、徐々にコンプライアンスの土壌を耕していくことしか、コンプライアンスの確立の正道はないのではないかと感じています。

研修にしても、19年9月8日から10月24日までの間に、外部研修、内部研修あわせて、実に18回も開催している記録が、報告書に書かれています。勿論、全ての従業員が全ての研修に参加しているわけではありませんから、18回の研修を通じて、組織全体への研修を網羅できたということなのかも知れませんが、これだけ短期間の内に研修が多いと、消化不良を起こすのが関の山ではないかと感じてしまいます。

あまり急激な変化は逆に大きな反動を生みかねないと心配になってしまいます。懸念点は多いと思いますが、今後の取組みに、注目して行きたいと思います。

投稿: コンプロ | 2007年11月28日 (水) 21時13分

コンプロさん、いつもありがとうございます。(最近はどうも丸山先生が、このパターンをマネしているような気もしますが・・・笑)

コンプロさんは、普段から支援されていらっしゃる立場でしょうから、現実の組織の変容に時間がかかることについては現実的なご意見をお持ちのことと思います。ホント、これだけで組織が変わることはないものと思いますが、これをきっかけとして運用にこそ、期待したいですね。
コンプライアンス委員会自体が今後も活発に社内へいろいろな提言をしていただきたいなぁと。

投稿: toshi | 2007年11月30日 (金) 03時03分

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