« 船場吉兆、強制捜査へ | トップページ | 公取委の不当表示警告への疑問 »

2007年11月17日 (土)

「適時開示」は誰のためにあるのか?

一昨日のエントリーの最後にチョロっとだけ触れておりましたが、11月14日の夜、オートバックスセブン社が無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、「当該CB」といいます)の発行を中止する旨、情報を開示しております。オートバックスセブン社による当該CB発行とその中止に至る経緯としましては、以下のとおりであります。(ほんの概略にすぎませんが・・・)

Auto001 このような流れのなかで、オートバックスセブン社が当該CBの発行を中止したことは、「不適切な開示」ではないか、として東証が調査を検討している、といったニュースがリリースされております。(毎日新聞ニュースはこちら)また、ロイター通信によれば、当該CB発行を中止した経緯について、会社側に説明を求めたところ、発言した部署によって理由がくいちがっていたそうであります。(ロイター通信はこちら)なお、オートバックスセブン社が資金調達に走る一連の経緯につきましては、katsuさんのブログで詳細に解説されておりますので、ご参照ください。

こういった一連の適時開示をみておりまして、「当該CB発行のお話は架空のものではなかったのか」といった推測までは至りませんが、下記のようなこの一週間の株価と出来高の推移をみると、当該CB発行を投資家がどのように見ているかは別として、株価形成には大きな影響が出ていることは明らかであります。

Autobackspng

当該CB発行中止に至った経緯については非常に関心のあるところですが、おそらくオートバックス社側において、エスクロー口座への入金の確認にトラブルがあったのではないかと思いますが、どうなんでしょうか(でも、オートバックス社の説明ではファンド2社とともに協議をして中止した、とありますので、単純な金銭処理上のトラブルでもなさそうですし、私自身も未だよくわからないところであります。)ただ、東証や大証に提出すべき改善報告書のなかには、(改善案策定の前提として)なぜ、このように当該CBを発行決議をして、払込確認をした旨開示しておきながら、払込が未了であると訂正し、そして最後には当該CB発行を(ファンド2社とオートバックスセブン社の3名で協議をして)中止するに至ったのかを十分説明しなければなりません。したがいまして、11月末までには明らかになるとは思いますが、こういった適時開示情報というものが、いったい誰のためにリリースされるのか、あたりまえのようでありますが、今後問題となるケースも出てくるように思います。

ひとつは短期売買のための情報提供ということでありますが、その場合には、たとえば当該CBの中身がどうであるのか、社債買受人はいったいどのような法人(個人)なのか、どの程度の株式の希薄化が生じるのか、など、情報内容を理解する能力が必要になろうかと思われます。しかし、たとえばMSCBとか、当該CB発行のように、普通の投資家には、新株の内容が既存株主にどのような影響を与えるのか、その情報内容から理解できる人はごく限られてくることになります。(私自身も、この観点からみるファイナンスは勉強中であります)しかし、長期保有を目的とした一般投資家にとりましても、こういった適時開示情報というものは結構役に立つものだと思うようになりました。「性格の良い企業」「投資家に優しい企業」というのが、どういった企業であるかを知るためのひとつの材料が、この適時開示をきちんと行う企業である、といっても過言ではないと思います。こういった観点からみれば、(たとえMSCBや当該CBのように、発行要領の細かいところまで理解できなくても)開示が遅延したり、すぐに修正、訂正が入ったり、その遅延や訂正になんらの説明もなかったり、といった対応そのものが判断材料になるからであります。(以下、つづく)

11月 17, 2007 ディスクロージャー |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/17095199

この記事へのトラックバック一覧です: 「適時開示」は誰のためにあるのか?:

コメント

差し止め請求はあっさり敗訴してしまいました(多分負けるだろうと思っていましたが・・・。)
確か昨年の同時期に新日本製鐵が「ハイブリッド債」として3000億円を発行しています。(06年10月20日リリース、11月9日発行)

http://www0.nsc.co.jp/data/20061020151944.pdf

06年10月20日ごろの新日鉄の株価は450円ぐらいでした。上記「ハイブリッド債」(CBの転換権利をSPCを通じてメガバンク3行に限定)の転換価格は740円で、当時は結構ハードルが高そうでした。しかし、調達後、一気に戦略的提携を積み重ね、株価は「あっという間」に850円ぐらいまで急騰しました。メガバンクは株式転換していなさそうですが、株価はまた740円を割り込んで690円あたりをうろついています。

このときもあっというまにジャンプアップしたので、「えー」と思いましたが、新日鉄のそれまでの株価の推移が200円から300円程度をうろついていましたから、まあ、資源バブル様様か、と思っておりました。

しかし、CBのような株主の既存利益に影響力のある資金調達をする場合の情報開示は整備してほしいですね。2週間程度で発行可能なのは。たしか会社法は、株主の「財産権」は経営支配権以上に保護することになっているのであれば、なおさらだと思います。

どこかの便利屋コンサルが評価しました、という「客観性の確保」のみならず、その影響も開示・説明してほしいですね。散々「ステークホルダーは皆、横並びで大事だ」、といいながら、リスクマネーの供給者を軽視している事例が多いのがアンフェアに感じます。

情報開示は金商法の領域で金融庁であり、財産権云々は法務省だとか言っていると、いい加減めんどくさくて投資する気運がなくなってしまいます。特に外国人は。

しかし、深夜の情報開示って、残業する方も大変だと思います。後ろ向きな仕事が多く、急ごしらえのコメントとなればなおさら。

投稿: katsu | 2007年11月17日 (土) 18時34分

こんばんは。
今回のエントリーは、ずいぶんとkatsuさんのブログを参考にさせていただきました。資金調達の本当の理由など、やはりだいぶ以前にまで遡って企業情報を分析してみないとわからないですね。
昨夜も深夜にタスコシステムさんが、かなりスゴイ情報を開示されておられるようで、だいじょうぶなんかな・・・と思っておりましたら、案の定ジャスダックより公表措置をとられたようです。長期保有を考えている株主の方が安心して売買できるようなシステム作りのためにも、適時開示の制度はもっと充実させるべきだと思います。単なるマネーゲームのためのものであってはならないと思っております。

投稿: toshi | 2007年11月18日 (日) 02時07分

コメントを書く