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2007年11月20日 (火)

株主優待券の会計処理

公認会計士試験に合格された皆様方、まことにおめでとうございます。合格者倍増(4041名)とはいえ、合格率19%の難関を突破された喜びはひとしおではないでしょうか。いまはどこの監査法人さんも、内部統制、四半期開示などで猫の手も借りたいほどの忙しさのようですので、新人弁護士とは異なり(失礼・・)、就職に困ることはないのでしょうね。

さて、本日は私が社外監査役を務めております企業の「中間決算報告会」でして、監査役3名と監査法人さんとの1時間ばかりのミーティングが行われました。こういった監査役と会計士さんとの連携協調の場というのは、私のような財務会計的知見に乏しい監査役には非常に貴重な機会であります。ともかく会計監査人と経営者トップとの間で、今後に予想される「摩擦の種」みたいなものが、いったいどこにあるのか、監査役が知りうるためのいいチャンスであります。したがいまして、ミーティングの雰囲気がどうなろうと、自分がわからないところはどんどん質問するほうがいいですね。とくに、会計基準に変更があった場合に、なぜ今回当社の基準を変更したのか、いくつかの会計方針に選択の余地がある場合に、なぜ担当責任者である会計士さんが、その選択肢を採用したのか、といったあたりをしつこくお聞きしますと、会計士さん方の発想、モノの考え方のようなものが認識できまして、別の論点においても参考になります。 ※1ただ、あんまり突っ込んだ質問を現場責任者の会計士さんにぶつけますと、「ご指摘の考え方もあろうかとは思うのですが・・・・、ただ、うちのヒンカン(品質管理)の見解では、こちらが正しいと・・・、つまり○○監査法人の公式見解と考えていただければけっこうかと・・・」といった返答でした。。。うーーん、この「ヒンカン」は最後の切り札ですね。品質管理部の見解というものも、きちんと理由から説明をしていただけるとありがたいと思います。

※1 なお、正式な「会計方針の変更」の場合、会社計算規則129条1項2号等により、会計監査人による注記表への記載が要求されますが、監査役も監査報告において、その変更の相当性判断とその理由を開示する必要があります。

いくつか会計士さんのほうから問題点の指摘がありましたが、(ブログで紹介できる範囲で申し訳ありませんが)そのひとつとして株主優待券の会計処理に関する提言がありました。よくありますのは、優待券が使用された場合に(会計上は)売上値引きとして処理する方法ではないかと思います。会計士さんのお話では会社計算規則6条2項1号の関係からみて、そろそろ株主優待引当金として債務として扱うべきではないか・・・といった指摘でありました。たしかに他社のBSの流動負債に「株主優待引当金」なる項目が散見されるようでして、おそらくこれは株主優待券が一定程度使用されることを見込んで、引当金として積んでおく処理がなされているところもあるようです。

しかし引当計上するにあたって、株主優待券の「使われ方」を見積もるのはなかなかムズカシイ作業ではないでしょうかね?企業側が「長期保有を目標とする一般株主獲得の目的」があったとしましても、昨今の株主優待券ブームの中では、個人株主の変動は大きいでしょうし、また株主優待券の内容につきましても企業の業績によって優待券の中身が変動する可能性があるからであります。いろいろな企業の開示情報をみましても、急激に個人株主が増えた場合などにはメリットもあるようですが、今後もそういった個人株主が急増することが予想されないような企業の場合、はたして会計基準の選択方法を変更してまで、株式優待引当金を積まなければならないのでしょうか?なんだか見積もりを行うにあたって、合理的な優待券行使状況に関する数値を抽出することは、社内的にも非常にしんどい作業になるような気もいたします。

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 (参考 会社計算規則6条)

(負債の評価)第六条  

負債については、この省令又は法以外の法令に別段の定めがある場合を除き、会計帳簿に債務額を付さなければならない。

2  次に掲げる負債については、事業年度の末日においてその時の時価又は適正な価格を付すことができる。

一  次に掲げるもののほか将来の費用又は損失(収益の控除を含む。以下この号において同じ。)の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該事業年度の負担に属する金額を費用又は損失として繰り入れることにより計上すべき引当金(株主に対して役務を提供する場合において計上すべき引当金を含む。)

イ 退職給付引当金(使用人が退職した後に当該使用人に退職一時金、退職年金その他これらに類する財産の支給をする場合における事業年度の末日において繰り入れるべき引当金をいう。)

ロ 返品調整引当金(常時、販売する棚卸資産につき、当該販売の際の価額による買戻しに係る特約を結んでいる場合における事業年度の末日において繰り入れるべき引当金をいう。)二  払込みを受けた金額が債務額と異なる社債 三  前二号に掲げる負債のほか、事業年度の末日においてその時の時価又は適正な価格を付すことが適当な負債

11月 20, 2007 商事系 |

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少し前に株主優待券の会計処理:引当金計上は必要か?というエントリを書いたのだが、... [続きを読む]

受信: 2008年3月21日 (金) 02時02分

コメント

 株主優待券の処理については、あちこちで研究しておりますが、
法務と税務が中心でした。会計面にもそろそろ影響が出てくるの
ですね。
 今回は、流通業者が発行する割引券の処理の問題なのですね。
この他に、自社製品、他社製品、金券、預金の上乗せなど、色
々と優待制度についてはあるし、株主総会のおみやげ、議決権
行使のお礼など、最近は色々なものが考案されていますね。
 全てが本当に適法かどうか、とても気になります。
一度テーマで取り上げて頂けませんか。

投稿: Kazu | 2007年11月20日 (火) 11時21分

toshiさん、こんにちは。

株主優待費用を、損益計算書上、どの勘定科目へ計上するかについては明確な規定がなく、以前から議論されていました。
株主へ優待品を贈るという性格から「交際費」に計上している会社も多いようです。。株主優待を株主向けの販促として捉えている企業は「宣伝広告費」へ計上しているようですし、食事券や割引券を配る企業は「売上値引」としているようです。「上場関連費用」などの科目に含めている企業もあるようです。今後は引当金計上する会社も増えると思うのですが、確かに「使われ方」の合理的な見積りはどうするんでしょうね。過去の使用実績率の平均値などを取るんだと思いますが、その辺ちゃんと管理できてるんでしょうかね。
これについては百貨店等の商品券の会計処理でも同じ議論があります。
以下参考までに。
http://blog.livedoor.jp/ligaya_cfo/archives/51078258.html

投稿: ligaya | 2007年11月20日 (火) 11時44分

kazuさん、ligayaさん、ご教示どうもありがとうございます。
そうですね、株主優待券につきましては、以前「利益供与」の問題とか、「配当に該当するのでは」といった法的観点からは検討したことがありましたが、もう少し会計、税務面も含めて検討してみたいと思います。
なお、メールでも、すこしご指摘いただいていることなどもありますので、また追記するかもしれません。

投稿: toshi | 2007年11月21日 (水) 02時01分

私は、米SECがIFRS(国際会計基準)を米国の取引所における上場等の企業が、財務諸表をIFRSに従って作成・公表することを承認したことを、先日自分のブログで書きました。
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2007/11/no_84d6.html
米国基準にしろ、IFRSにしろ、企業の株主優待券債務、航空会社のマイレージ債務、家電量販店等のポイント制度の債務・・・・全て、債務計上(引当金とするかどうかは別にしても)が、求められており、損失・債務計上していないと、監査証明書を取得できないと理解しています。

日本企業も国際競争の中にあるわけで、米国基準やIFRSを積極的に取り入れていかないと負けてしまうのではと危惧します。
例えば、日本航空・全日空の財務諸表を私も細かく見ておりませんが、マイレージ・ポイントの債務が米国基準やIFRS基準に従った金額を全額計上しているかどうか、米国基準やIFRS基準による財務諸表の公開とその監査証明がないと判断できません。航空機産業は、航空機を保有するにせよリースで手当するにせよ、巨額の設備が必要であり、借入資金を日本国内のみから調達するなら問題はないでしょうが、少しでも安い資金源を求めることが必要であり、海外からの借入や、リースも検討すべきです。米国基準やIFRS基準による税務諸表作成は、このような際に、大きな武器になるものと思います。

私は、「そろそろ・・・債務として扱うべきではないか・・」は、のんびりしすぎで、勝ち残るためには、議論の余地がないようなあたりにいるのではと感じます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2007年11月21日 (水) 12時14分

経営コンサルタントさん、ご教示ありがとうございます。

じつはこのエントリー、メールでもいろいろとご指摘をいただきまして、続編を検討中です。私としても、経営コンサルタントさんのご指摘なども含めまして、もうすこし掘り下げてみたいと思っております。国際会計基準の考え方については、きちんと基礎を理解していない私にはちょっとムズカシイところでありますが・・・(^^;

投稿: toshi | 2007年11月23日 (金) 01時53分

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