社外監査役の任期は2年とすべきではないか
昨日は日曜日であるにもかかわらず、多数の方よりコメントをいただき、ありがとうございました。先日のtomさんにつづき、またtatuoさんからも非常に熱いコメントを頂戴いたしました。企業不祥事とマスコミ報道のあり方につきましては、私も「企業不祥事におけるクライシスマネジメント」の大きな問題点であると考えております。赤福問題と船場吉兆問題など、それぞれのエントリーに同種のご意見を頂戴しておりますので、船場吉兆事件に関する実例などをもうすこし掘り下げながら、続編のエントリーをアップする予定であります。また、内部統制報告制度につきましても、通りすがりさんより教えていただいた新刊書「Q&A監査のための統計的サンプリング入門」もかなり気になるのですが、けっこう「いいお値段」ですので(^^;、会計士の方々のブログでの書評などを拝読したうえで、購入を検討しようかなぁ・・と思っております。(まだ「定量分析」を読み終えておりませんし・・・・・)
さて、私は現在ふたつの会社の社外監査役に就任しておりますが、そのうちひとつの会社では、2008年の定時総会終結時に任期が満了いたします。社外監査役としての役割に関する感想や、実際に4年近く、社外監査役の実務経験からみて、会社法336条が定める(公開会社の)監査役の任期については、「4年は長過ぎるのではないか」「少なくとも選択制で2年というのも可能にすべきではないか」と考えております。(あらかじめ申し上げますが、これは立法論でありまして、現行では採りえません。なお、ここでいう社外監査役は、原則として非常勤社外監査役を念頭においております)
理由のひとつめは、4年ということになりますと、就任の依頼を受けるときに躊躇を感じます。最近の監査役制度に期待されている業務からしますと、財務報告内部統制への監査役監査の充実が要求され、会計監査人との連携や、内部監査人との協議、監査役会における監査役間の役割分担など、月1回の役員会に出席していればいい、といった風潮は次第になくなっていくものと思われます。(とくに中小の公開会社においては、そういった傾向が強まるものと予想いたします)そうしますと、どうしても本社に近いところで活動できる体制が望ましいわけでありまして、4年といった任期は、本社近くの安定した職場を持った人材が優先されることになります。また、就任するほうも、人材流動化の激しいなか、途中で職務を全うできない不安があれば、会社に迷惑をかけてはいけない、ということで、就任を固辞せざるをえないわけでして、そうなりますと、有用な人材が監査役という役割を敬遠する傾向があるのではないかと思われます。また、そもそも「諸事情により、途中でやめる」というのは(とりわけ公開企業の場合)、「監査役が解任された?監査役が辞任した?いったい何があったのだろうか」と風評が飛び交うような事態になるかもしれず、現実論としては回避されがちではないでしょうか。会社にとりましても、「やめてください」とは言いにくいですし、また監査役にとりましても、「どうもこの会社はマズイのではないか」と思ったときに辞任しづらいところであります。2年ということであれば、双方とも、別の社外監査役を迎え入れてスタートを切りやすいですし、たとえ「あの会社は2年でコロコロと監査役が替わる」といった事実が開示されましても、それを(プラス評価であれ、マイナス評価であれ)株主の評価に任せればいいのではないかと思います。
理由のふたつめは、社外監査役の任期につきましては、ガバナンスのあり方を法で強制することよりも、株主に評価してもらうことを重視すべきではないか、ということであります。ご承知のとおり、会社法上の内部統制体制の構築(体制整備事項の決定)につきましては、会社法によってはじめて、取締役の内部統制システムの整備義務が規定されたものではなく、体制整備に関する基本方針についての決議を義務化(大会社の場合)しているにすぎません。つまり会社法は、相当程度の規模の企業につきましては、内部統制システムの整備構築を期待しているわけでありますが、その内容については、一定のレベルを示すものではなくて、事業報告のなかで整備運用に関する基本方針を開示させることによって、株主の評価の対象とさせることで、個々の企業に合ったシステムを構築することを間接的に強制しようとしております。この手法は、社外監査役に「財務会計的知見」を要求しようとする会社法施行規則にも通ずるところがあり、社外監査役の任期につきましても、4年の任期を法定化するのではなく、2年以上の選択制として、4年とするのであればその理由を事業報告等で開示させる手法を採用したほうが得策であると思います。
そして理由の三つめは、監査委員会における社外取締役は1年の任期であり、そこには社外取締役が過半数を占めているわけでありますので、人材の互換性という意味でも、社外監査役のあり方は接近させるべきではないかということこであります。これもご承知のとおり、日本の企業には社外取締役の導入について、かなり抵抗感があるようでして、あまり委員会設置会社に移行する企業が増えていないのが現状であります。最近、りそな銀行の監査委員会委員でいらっしゃる箭内氏の著書を拝読いたしましたが、やはり監査委員会の委員というのは、かなりシビアな仕事であり、そもそも委員会設置会社に移行したい企業にとりましても、監査委員会を構成できるような社外取締役の適任の方をみつけることができないことも、やはり移行企業が増えない要因だと感じております。そこで、まずは日本独特の制度ではありますが、「社外監査役」という役職に、できるだけ多方面の方々に就任していただいて、委員会設置会社における監査委員会委員の候補者育成を図り、委員会設置会社制度を開始した頃の、本当の制度趣旨である「ガバナンス選択における競争促進」を実現する基礎を築く必要があろうかと思われます。
たしかに独任制で活動する監査役の職責については、社外、社内を問わず、その独立性は十分確保されなければならず、4年という任期は社外、社内で区別すべきではない、といった制度趣旨も理解できないものではありませんが、4年も社外監査役をやっておりますと、本当に会社から独立した立場で意見が言えるのかどうか、むしろ本当に独立性を重視するのであれば、原則的には2年で改選期を迎えるべきではないか、とも思えます。また、社外監査役のあり方が、経営者のお目付け役(ご意見番)なのか、株主への説明責任を果たすための要職なのか、株主の代理人たる地位にある者なのか、現状では一義的には決めかねるところではありますが、株主と監査役との間における委任契約の意思解釈として、少なくとも非常勤の社外監査役につきましては、不祥事防止、ガバナンスの充実(統制環境の充実)、事業効率化のための支援などのために、たとえ任期は短くしても、その企業にとって有効な社外役員を迎え入れることへの合意については、合理的なものと認めてもよろしいのではないでしょうか。
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