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2007年12月14日 (金)

IHI社の調査報告書

12月12日付けで公表されましたIHI(旧 石川島播磨重工業)社の

業績予想の修正および過年度決算の訂正に関する調査結果ならびに当社の対応方針のご報告

社内調査委員会の調査報告書について

社外調査委員会の調査報告書について

の3本を読むのにとても時間を要したため、本日はまともなエントリーを書く時間がなくなってしまいました。(^^; なお、社外調査委員会が報告書を提出する目的は、IHI社もしくはその役員の法的責任を議論するためのものではなく、あくまでも社内調査委員会報告が適正に作成されたかどうかを主眼として精査するためであります。

すでに「証券取引等監視委員会は、10億円以上の課徴金を課す(ための処分勧告を行う)方向で検討に入っている」などといった中日新聞さんのニュースなどもございますが、市場関係者の方々の見方は「プラント業界全般に影響が出るものではなく、今回はIHI社の独自要因に基づくもの」とされているようであります。これだけ巨額の修正がなされるものであり、なおかつある特定企業の独自要因に基づくものであるということになりますと、まさに「財務報告に係る内部統制」がいったいどうなっていたのか、というJ-SOX関連の論点が浮かび上がってくるものでありまして、今後注目していきたいと考えております。

とりわけ、平成18年9月期決算の訂正は、その後の公募増資との関係では問題を含んでいる(ただし、上記社内報告書では、意図的ではないことの理由が詳細に記載されておりますが)わけですし、また今年9月末以降、2回に分けた決算修正可能性に関する開示のうち、最初の開示にあたっては、この平成18年9月期決算修正の可能性には触れておりませんでしたので、(コメントでHIHさんが指摘しておられる)金融商品取引法21条の2(有価証券報告書等に虚偽記載ある場合の損害賠償範囲)の問題点も、ひょっとすると今後議論の対象になるかもしれません。(こういった開示方法がとられますと、結局、21条の2の規定が機能しなくなるのではないかと。)

とりいそぎ、備忘録程度にて失礼します。

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コメント

おっしゃっていることは、もしかすると情報を小出しにして、というか「開示している情報は間違っているぞ、虚偽記載があるぞ」と段階を踏んで開示して、最後は「虚偽記載を知っていたときは、この限りでない。」ということですか?
ところで、以前のエントリーでご紹介のあった「公認会計士vs特捜検察」ですが、この本、ご本人にとってあまり上手くないんじゃないですかね、どうも“変”です。会計の手続のことばかりおっしゃっているけれど、会計というのは、その取引の真実を示すのが本筋じゃないだろうか、本当の金の流れはどうなっているのだろう?等々。なんか危ない、これはいかん、と思いながら読み進めています。稲盛和夫さんの「実学」と郷原信郎さんの「法令順守が日本を滅ぼす」、ついでに大和銀行ニューヨーク支店事件の告白本を、なぜか思い出してしまいました。

投稿: 総務部長見習 | 2007年12月14日 (金) 16時46分

プラントや造船というのは長期工事が必須なので、採算管理は厳重にしているはずなのに(為替レートなどで一発で収益がぶれる)、しまりがないですよね。

報告書の内容もさることながら、整理ポスト入りしていますが、ライブドア、日興コーディアルと同じかもしれないので、そちらの方はどうなんでしょうね。
日経新聞もあれだけ確信もって日興は上場廃止といったのにCitiのTOBに配慮したのか、最後はひっくり返ってしまいました。

この辺の最終判断も、射程距離を東証には示してほしいと感じます。独自要因なのだったら。

豊洲の大地主と以前自前のブログでご紹介しましたが、この売却益がfっ飛んでしまいましたね。

投稿: katsu | 2007年12月15日 (土) 01時22分

>総務部長見習さん
おひさしぶりです。コメント、ありがとうございます。

「特捜検察VS公認会計士」、最近の会計監査人と不正発見義務との関係から、いろいろとご議論はあるところかと思います。「ライブドア監査人の告白」あたりでも、議論できる点ではないかと思います。財務会計的知見のある総務部長見習さんのような方でしたら、当然に区別できるかとは思いますが、世間一般には「会計士業務への期待ギャップ」のようなものがあるでしょうし、私はそのあたりもこの本を読まれた方が認識していただければ、と思っております。また、ぜひ最後までお読みになってからの感想など、お聞かせください。(ストーリー自体はかなり重いですよね)

>katsuさん
コメントどうもです。
損失の先送りが「意図的ではない」とのコメントが出されているようですが、まぁ、工事基準経理の処理方法が、かなり裁量によるもののようですので、たしかにそうなのかなぁと思ったりしています。それにしても、長期の工事に関する会計処理というのは、言葉は悪いですが「どうにもなる」ようなところがありますね。今回は意図的ではないとしましても、工期の長い工事に携わる企業の売上、原価計算については、粉飾かどうかを見抜くのはムズカシイのではないかと思いました。

投稿: toshi | 2007年12月15日 (土) 01時59分

課題図書を読了いたしました。これは困ってしまいました。
著者に対しては「何が問題になっているかの事実認識が違う」「普通、これは粉飾と言うんだろ?」「その時は粉飾とは知らなかったんだろ?粉飾を見抜けませんでした、ごめんなさい、だろ」「事実をありのままに会計処理をすればいい、というのに、ずいぶん複雑な処理をしますね」等々。
これに対して検察が「これは粉飾である、それを小賢しい会計理論を振りまして粉飾じゃないと強弁するなんて太いやつだ、目に物見せてやる」と思ったのかどうか…。
本当に恐ろしい話ですが、検察のストーリーを合せて行く方法がこの本に書かれてあるとおりだとすれば、まさに権力そのもので、いくらでも、お望みのままに、ですね。
刑事訴訟法に違法操作の場合は云々、という遠い記憶がありますが、ストーリーを間違えて強引に辻褄合せをすると破綻するし、有罪も無罪になり、その逆もありで、どのように整理したらいいのか、やや途方にくれています。

投稿: 総務部長見習 | 2007年12月17日 (月) 17時40分

総務部長見習さん、コメントありがとうございます。アマゾンでノンフィクション部門で1位になったそうですね、この本は。
手控えから著されたようですので、作者の誇張や記憶違いというものが、ほとんどないように思えました。私自身は、検察の本格的な取調べの怖さのようなものは職業柄、当然にあるものと心得ておりますが、この本を読んだ感想としましては、刑事弁護人となった場合には、打ち合わせをする必要がなくても、「人間と人間として」面会に行くことの重要性を痛感しました。(あらためて、思いました)
摘発の「不公平」は当然にあります。なぜなら、私が証拠をそろえて業務上横領の告訴状を提出するとしても、「いまは身柄事件で手一杯なので、今度にしてもらえませんか。」と言われるわけですから。

投稿: toshi | 2007年12月23日 (日) 01時57分

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