食品会社の「二次不祥事」を考える
ひさしぶりの企業コンプライアンスネタであります。11月29日に「GODIVAのアマい危機管理」と題するエントリーをアップしておりまして、そこでGODIVA社の被害拡大防止に向けての広報の甘さについて「少々不誠実ではないか」と意見を述べておりました。ところで、同社は12月3日付けにて追加告知をされ、混入金属片の種類が特定されたこと、同金属片を専門家によって分析し、健康被害が出にくいものであること、発見された場合には食することなく、ただちに返送願いたいことを広報することにより、ほぼ当ブログにて問題としていた箇所に関する対処をされたようであります。(まさか、このブログをご覧になられたのか、それとも同様の苦情が寄せられたのかは不明でありますが)わずか5日後のことではありますが、この告知が当初より同社のHPにて開示されていれば、有事における対応としてはある程度誠意あるものと受け止めていただけたのではないかと思います。しかしながら、昨日pussさんよりいただいたコメントを拝見いたしますと、現実に被害に遭われた方への同社の対応には、やはり混乱がみられるようですし(pussさん、ご報告ありがとうございました)、当初の「フランス工場の責任による不祥事」を原因としまして、GODIVAジャパン独自の「二次不祥事」を発生させかねないリスクに直面することとなったわけであります。
最近の食品不祥事をみておりまして、この「一次不祥事(消費期限偽装、消費期限切れ原材料の使用等)」への対応がまずかったために、「説明虚偽、書類隠蔽」などが発覚する「二次不祥事」や、マスコミの追い討ちや行政の周辺調査のために、「一次不祥事さえなければ、なんら問題にもならず放置されていた不祥事(やぶへびコンプライアンス)」が大きくとりあげられ、むしろそちらの副次的な不祥事のほうが企業の社会的信用を毀損するケースが目立ちます。船場吉兆社のように、岩田屋さんと一緒に謝罪したときに、「偽装マニュアルの存在」まで含めて、全容を開示していれば、取引先や従業員、家主の方々を敵に回すことなく、まだ再生への道を模索することができたかもしれません。マスコミによって長期間にわたり報道されるに至った原因は、そのほとんどが「二次不祥事」に起因するものであります。本日の改善報告書提出の際における記者会見をみましても、おそらく社会的信用は回復どころかますます毀損される原因になってしまったような印象を受けます。(ここまで来ますと、今後は別の吉兆グループの対応に注目が集まってきそうですよね)
また、一昨日「無期休園」となってしまいましたエキスポランドにつきましても、あの凄惨な事故の後、①営業再開の翌日にも事故があった、②再開1ヵ月後には、別のコースターが停止してしまった、という事故が重なっていたにもかかわらず、大阪市当局へなんらの報告もしていなかったことが判明し、そこに至り、周辺住民からの「再開への期待」は完全に途絶えてしまいました。もしあの凄惨な事故さえ起こっていなかったら、それほど問題にもならなかった故障だったかもしれませんが、これが「やぶへびコンプライアンス」の重要性であり、社内の常識と社外の常識がくいちがってしまったケースであります。
こういった事例を見るにつけ、食品会社にかぎらず、経営トップの方々としては、この「二次不祥事」への対処方法を平時よりリスクマネジメントの一環として検討しておくことが近時の不祥事対策としては不可欠だと考えております。先のGODIVA社の件につきましても、海外親会社の不祥事までは防ぐことはできないとしても、日本における販売会社独自の不祥事は防止することができるわけでして、平時からの対応ができていれば、こういった告知自体が信用を毀損することは防げるはずであります。
一次不祥事は回避不可と書きましたが、これは企業につきまとうリスクであり、完全になくすことはできません。何度も申し上げておりますように、①発生頻度を下げる、②早期発見システムを構築する、③発見した後に被害が最小限度に抑えられるシステムを構築する、といったリスク管理手法でリスクを低減化する以外にはないと思います。(これは経営トップの関与する場合にも適合します。たとえば社外取締役や、監査役システムにおける統制環境の問題であります。昨日ご紹介した「公認会計士VS特捜検察」におきましても、キャッツ社内におけるインサイダー取引蔓延の危機をいったん沈静化したシステムは、「顧問会」なる公認会計士、弁護士による組織の存在にありました)
一次不祥事の発生で頭が混乱している経営トップにとりまして、こういった二次不祥事への対応や、やぶへびコンプライアンスへの対応を冷静に検討することを要求することはかなり酷であります。だからこそ、平時からの対応が必要となるわけでありまして、その具体的な対応方法は、もはや当ブログで再三、申し上げているところでありますし、今後も具体的な不祥事が発生しましたら、折々に検討していきたいと思います。
さて、いよいよ14日は赤福社が三重県に「改善報告書」を提出する期限であります。すでに農水省には報告書は提出されておりますが、三重県のほうは明確に「赤福社は組織ぐるみだった」と断言しておりまして、赤福社は今度こそ、これに回答する必要が出てまいります。(三重県側は、過去に「検査で見逃してしまった」ことがあり、そのことに対する批判もありますので、「赤福社が組織ぐるみで隠蔽した」と認定できればなんとか県の面目も立つのでありましょうが、「現場での慣行だった」とされてしまえば、今度は三重県側の検査自体の問題が浮上するおそれもあるかもしれません)どういった改善報告書の中身となるのか、組織ぐるみ、トップの関与はないとされるのであれば、どのような具体的な説明によって証明されるのか、大きな関心をもって見守りたいと思っております。
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コメント
はじめてコメントいたします。oguriと申します。
昨日の船場吉兆の記者会見をテレビで見ましたが、あの会見でおふたりの弁護士さんが両脇を固めておられました。あの弁護士さん方が改善報告書を作られたのでしょうか?あの弁護士さん方は、船場吉兆からお金をもらって改善報告書を作るのでしょうか?
あのように、不細工な記者会見は、当初から非難を浴びることは予想できたはずで、なぜ弁護士さん方は、あの女将の行動を前もってとめることはできなかったのでしょうか?
以前、山口先生も、マスコミ対策の経験がおありとお書きになっておられましたので、回答できる範囲で結構ですので教えていただいです。
これからも応援しております。
投稿: oguri | 2007年12月11日 (火) 11時10分
oguriさん、はじめまして。
記者会見で座っておられたおふたりの弁護士は、いずれも外部調査委員会の先生方7名のうちのおふたりですね。
金銭的なことはわかりませんが、この7名の先生方のおひとりから、今回の件につきまして、ご報告を受けておりますので、また事情の許す範囲で私なりの考えをエントリーさせていただきます。
投稿: toshi | 2007年12月12日 (水) 14時00分