「金融サービス士」と「リスク対応参事官」
皆様、楽しいクリスマスをおすごしでしょうか?この連休が終わりますと、一気に「年の瀬モード」突入の雰囲気でありますが、私はやっと父の一周忌も無事済ませまして、ホッと一息ついているところです。
昨日、金融庁から公表されました「市場競争力強化プラン」は、金融ビッグバン以来の10年ぶりの大改革プランだそうでありまして、今後の法改正の動きなどを探るためにもまた、ゆっくりと検討したいと思います。しかし、一昨日ご紹介いたしました、大森氏の著書を読みますと、1997年の時点では、先の金融ビッグバンによって、2003年ころには「貯蓄から投資へ」国民の意識が変わり、国民の資産がリスクマネーに移行していることを信じていた・・・ということだそうですから、今後の強化プランにしましても、本当に「貯蓄から投資へ」と資産が移行することにどれだけ寄与するのか、本当のところは未知数だと思います。
ところで、今年3月に出版されました渡辺金融担当大臣の著書「金融商品取引法」のなかで「これからは『金融サービス士』を創設すべきだ」とのご主張、「そんなもん、できるかいな」と思っておりましたところ、昨日の「強化プラン」によりますと、「金融専門人材」の育成として現実味を帯びておりますね。(来年春頃にもパブコメ案が出されるような書きぶりであります)当局側、金融商品取引業者側、どちらにもこういった専門人材がコンプライアンス経営の維持のために必要とされているようですので、ずいぶんとたくさんの専門家が養成されるのかもしれません。今後、楽しみな資格ですね。
それともうひとつは、金融庁の職員の大幅増員が決定されたなかで、「リスク対応参事官」なるポストができるそうであります(日経朝刊3面の記事に掲載されております)市場や金融機関経営者のリスクが顕在化する前に不安の芽を摘む業務を行う、とのことでありますが、「リスクが顕在化する前の不安の芽を摘む」とうのは、いったいどのような業務なんでしょうか。これまでの金融検査の結果、もうすこしプロセスをきちんと調査する、という意味なんでしょうかね?(非常に興味があります。)
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コメント
金融サービス士案、どういう資格なのかわかりませんが(Web新聞によると国際金融力をつけるための官民交流を即するための高度な専門知識を持つ人材とありますが)期待していいのでしょうか?
そんなことより国家全体が金融市場をどうすべきかグランドデザインをきっちり描いてほしいものです。これは内閣府か首相に近い人の仕事かな。
最近はFSAとMETIでは180度違うことを言っていますから。
世界の国からお金が集まるというのが「国際金融力の強化」の主力と考えているのがFSAなら、「企業価値研究会」で最近?な提案をバックアップするMETIという構図になっています。
一時の逆流か、保守回帰かわかりませんが、利害関係を調整し、強力なリーダーシップをとる存在がほしいものです。
個人的には金融専門人材=マネーゲームの代弁者、日本はものづくり国家だ、と発行部数優先のマスコミの良いネタになりそうで、やるならうまくやってほしいものです。そんなものに資格が必要なのか…。
投稿: katsu | 2007年12月23日 (日) 11時01分
いつも楽しくブログ拝見させて頂いております。
さて、ひとつご教授賜れれば、または先生のご意見をお聞かせいただければと思い投稿させて頂きました。
一昨日、グッドウィルグループ社の子会社であるグッドウィルにて行政処分が下される予定の新聞記事がありました。
それを見ていての疑問です。
(質問趣旨)
グッドウィルグループ者に対して、行政処分(不利益処分)の対象である法令違反を原因またはそれに関連する要因を基礎に、グッドウィルグループ社への株主代表訴訟(847条)は可能でしょうか?
または、別の構成で役員の責任追及は可能でしょうか?
本件、グッドウィルグループ社子会社の違法派遣に対し、親会社折口会長への責任追及が問題としてます。
すでに、報道されているとおり、グッドウィルグループ子会社のグッドウィルで、二重派遣等の違法派遣による行政処分(不利益処分)が下される予定です。
今回の処分は、社会的影響も大きくマスコミの注目も浴びるので、コムスン同様に解体の危機にあります。
個人的見解としては、ついにその日が来たとの実感です。
それはさておき、問題点は2点です。
1.グッドウィルグループの子会社であるグッドウィルに行政処分が下りる予定です。
グッドウィルグループ自体は、たしか純粋持ち株会社です。
そうすると、親会社役員への株主代表訴訟は、子会社の内部統制システム不備程度で、法令違反までの責任を追及できるのか?
2.仮に、法令違反で責任追及しても、行政上の不利益処分による業績悪化を、損害との因果関係においてどの程度まで損害額と認定できるのでしょう。かなり関係性が緩く、みなし規定などがない以上、立証がかなり難しい気もしてます。
新聞を見て、どうするんだろう??って疑問になってメールしました。大変お忙しい中で恐縮ですが、ぜひご回答を頂ければ幸いです。
コムスンに続き、今回の件です。さらに悪質なのは、コムスン問題があった時期(5月)以降にも、このような違法がグループ子会社にあった点です。事実認定もありますが、まずは可能なのかどうかがスタートラインと思い投稿した次第です。
投稿: 通りすがり | 2007年12月23日 (日) 13時46分
お久しぶりです。
どうも私はこの「貯蓄から投資へ」という考えがあまり好きではありません。別に悪いことではないんですが、投資というのは結局はギャンブルですから、それを国家主導で勧めるというのはなんだかなあという気がします。またバブルみたいなことがなければいいのですが・・・。
でも「リスク対応参事官」がしっかり機能すればバブル発生率はかなり下がるものなのかなあ?
投稿: m.n | 2007年12月23日 (日) 15時22分
>katsuさん
いつもコメントありがとうございます。
そういえば企業価値研究会が、先週「種類株式と上場制度」に関する報告書を発表しましたが、(リリース前にすこし紹介されただけで)ほとんどマスコミにとりあげられていなかったですよね。(MBO指針のときには、たしか翌日の新聞等で解説記事が掲載されていたかと思うのですが)おそらく経済界からは買収防衛目的による種類株式発行についての要望があるのではないかと思いますが、あまり注目されていないとなると、少し寂しい気がいたします。私の立場からしますと、ファイナンスとガバナンスの適度なバランスを考えた金融政策のあり方を模索していただきたいと思いますし、取引所や証券会社の自主ルールが十分活用されるような施策を検討していただきたいと思います。
>通りすがりさん
コメントどうもありがとうございました。
たしかに親子関係にある企業の場合、企業グループとしての内部統制システムの構築に関する責務というものは親会社取締役にも認められると考えます。しかしながら、ダスキン代表訴訟高裁判決などでもおわかりのとおり、内部統制システム構築義務について、裁判所で「義務違反」が認められるためには、相当具体的な義務の内容が特定される必要がありますし、裁量の幅が広いために、その裁量の幅が狭くなる要因についても論証する必要があると考えます。親子関係にある別会社の問題であればなおさらではないでしょうか。そのあたり、以前から二重派遣や港湾危険作業問題などが議論されていたような実情がないかぎりは、なかなか法的責任が認められる余地は少ないのかな・・・と個人的には思ったりしております。
>MNさん、こんにちは。
そうですね。専門人材登用とか、リスク管理士といいましても、本当に未知数だと思います。問題解決能力は専門知識だけではいかんともしがたいところがありそうですし。ただ、こういった資格ができて、有能な人が、金融の世界にたくさん入られるきっかけになればいいのではないか、と素直に考えております。
ちなみに、先の大森氏の著書では、こんなに競馬やパチンコが好きな民族なんだから、うまくやれば「貯蓄から投資へ」振り向けることはできる、とのこと(そんな単純なことでもないような・・・(^^; )
投稿: toshi | 2007年12月25日 (火) 14時17分