日本内部統制研究学会創立総会
今朝(12月8日)の日経朝刊金融面でも報道されておりました「日本内部統制研究学会」の創立総会に参加してまいりました。組織自体は永田町所在の社団法人に帰属するものでありますが、総会は(やっぱり?)「日本の内部統制の聖地」とも言われる(言われてない?)表参道にあります某大学で開催されました。(ということで、2週続けて最終の新幹線で帰阪しております。しかしメインストリートに大きなクリスマスツリーが飾られ、イリュミネーションのなか、クリスマスコンサートも開催されていて、この時期のこの大学はなんとも美しいですね。)
「産・学・士」連携により、これからの内部統制のあり方を研究していこうというものでして、プレス関係の方もたくさんお越しになっていらっしゃいました。(詳しくはプレスリリースが出ると思いますので、そちらをご参照ください)私は設立発起人ということだったのですが、まぁ遠方からの参加ということなんで、気楽に川北博議長によります議事進行を見守っておりましたが、どういうわけか理事に就任することとなりまして、昨夜に続くサプライズとなりました。
H先生とは久しぶりにお目にかかりましたが、開口一番
「いやいや、アルファブロガーおめでとう♪」
T先生(弁護士)には、
「東の横綱って書いてくれたみたいで(「豊潤なる企業」の件です)ありがとう」
ということで、みなさまブログをお読みいただいているようでしたので感激もひとしおでございました。M先生(弁護士)とも初めてお会いしましたが、あの「包み込む」ようなお人柄に接しまして、いきなりファンになってしまいました(笑)
法曹界からは6人の設立発起人の方が参加していらっしゃいますが、私以外の弁護士の方はみなさま「○○弁護士ランキング」の常連の方々ですし「存在することだけでも意味がある」わけですが、とくに何も肩書きのない私の場合は「そこにいる」だけでは、この学会にとって何の意味もありませんので、さっそくH先生へ直々に意見を述べさせていただきました。ひとつは、H先生が繰り返し説明しておられる「海外不正支払防止法」(1977年)から「COSO」(1992年)までの15年の米国の歴史をもう少し日本版SOX法実務に携わる者に、明らかにすべきことであります。海外不正支払防止法制定の際、アメリカで直接的に経営者の財務報告に係る内部統制構築義務を規定したにもかかわらず、どうもうまくいかなかった、そこでCOSOの時代に「報告制度」を採用するようになって、内部統制の議論が発展していった。なぜ「経営者の義務」を法定しただけではうまくいかず、「報告制度」としたために議論が発展していったのか、そこがまだ一般的にはブラックボックス化していると思われます。COSOの時代からSOX法の時代までの変遷につきましては、そこそこ理解しているつもりでありますが、COSOまでの時代について、もう少し検証しておく必要があるのではないか、このあたりを正確に把握できそうな文献にあたってみるべきだと思います。ここには会社法上の内部統制と金商法上の内部統制報告制度との関係をどう捉えるべきか、といった論点を探るヒントが隠されているような気もいたしますし、またこういった内部統制実務における法曹と会計職業人との効率的な連携体制構築のためのカギがあるようにも思っております。なぜ私がそのように考えるかといいますと、以前当ブログでも少し触れましたが、来年から施行されます日本版SOX法は、どんなに理想が高いものであったとしましても、どこかでうまく機能しないところが出てきて、数年後にはかなりの修正が余儀なくされると(少なくとも私は)予想しております。日本版SOX法自体を修正する際に、どのように修正すればいいのか、おそらく現場からの要望はさまざまだと思いますが、その際に明確な修正基準のようなものが必要だと思います。その修正のための基準を作るためには、私はアメリカの失敗例や成功例などを情緒的にではなく客観的かつ冷静に分析して、これを日本版修正の際にも生かすべきだと思います。
もうひとつの意見は、数日前に金融庁から公表されました公認会計士法と金融商品取引法の改正案に関するものでありますが、この改正案につきましては、(どなたか、コメントでも述べておられましたように)今後の会計士さん方の監査実務にきわめて大きな影響を与えるのではないかと思いますし、内部統制監査の立場からも、十分検討されるべきであります。内容につきましては、直接この「日本内部統制研究学会」とは関係ないかもしれませんので、また考えを整理しまして、別エントリーにて書かせていただこうかと思っております。
懇親会では、どこを見回しても、会計系雑誌の座談会記事の写真でお見受けしたことのある方ばかりでありまして、ほとんどアウェーの気分でしたが、だいぶこういった雰囲気にも慣れてきましたです。(笑)気を遣って、お声をかけていただいた方々に感謝しております(笑)
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コメント
コンピュータ屋です。
おはようございます。
「日本内部統制研究学会」の理事就任おめでとうございます。
今後のご活躍を期待しております。
JSOX対応の現場では、みなさん苦労されていますが、
その先のこと、大いに大切と思います。
・今までのブログでのご意見の反映
・2年目以降、うまくいくための修正
・内部統制の一本化(JSOXと会社法対応との)
など
「ポストJSOX」の議論、大いに高めてください。
投稿: コンピュータ屋 | 2007年12月 9日 (日) 09時13分
昨日は山口先生がお帰りの際、ご挨拶させていただいた者の一人です。初めて書き込ませていただきます。私も川北博会長の議事のもと、研究学会発足という歴史的瞬間に立ち合わせていただき、充実した1日でした。
米国の反省を踏まえ後発で生まれた、わが国内部統制報告・監査制度も時代や外部環境の変化などによって制度の見直しが必要になる場面が出てくると考えています。産・学・士の関係者が議論する場を設けたことは大きな前進として評価できます。
企業会計審議会の内部統制部会では、士の中でも会計士中心で、法曹関係では東大のI先生や幹事で法務省のI参事官がご参加されていましたが、実務家弁護士が含まれていませんでした。実に企業会計審議会らしいメンバー構成でした。金融庁主導の意見調整審議会です。
しかし、当研究学会の発足で実務家弁護士の参加し、真の意味で産・学・士による積極的な議論が始まろうとしております。20人の理事の中に山口先生を含んだ多数の弁護士が参加されたのは、その期待の現われともいえるのでしょうか。
ただ、研究学会で関係者が議論する場を設けただけでは、日本企業の会計不祥事を未然に防止ないし抑止し効果は少ないと私は考えております。この研究学会の研究・活動成果を広く世の中へ分かりやすく情報発信していけるかがカギを握っているのではないかと思います。このブログでも今後、議論の動向や方向性などを分かりやすく取り上げていただければ幸いです。
投稿: ペンは剣より強し | 2007年12月 9日 (日) 21時04分
コンピューター屋さん
こんにちは。どうもありがとうございます。自分に与えられた使命の意味をよく考えまして(笑)、それに応える形でがんばってみようかと思っています。ぜひ、また力を貸してください。ちなみに公開シンポが1月21日に開催されるそうですよ。某大臣も創立記念講演をされるそうです。
ペンは剣より強しさん
コメントありがとうございます。
帰り際には、いろんな方と名刺交換をさせていただきましたので、どの方だったかわからず、すいません・・・(笑)ただ、ご指摘の点、肝に銘じておきます。いろいろな制約はあろうかと思いますが、できる範囲で情報を発信していきたいですし、またそこに自身の意見も織り交ぜていきたいので、今後とも辛口のご意見でも結構ですので、どうかコメントをよろしくお願いいたします。
投稿: toshi | 2007年12月10日 (月) 12時49分
toshi先生
理事御就任誠におめでとうございます。
またアルファブロガー2007受賞重ねておめでとうございます。
コメントにて誠に略儀ながら謹んで御祝いを申し上げます。
今後の益々の御発展ならびに御活躍を衷心から祈念致します。
※貧者の一灯ながら私も内部統制報告制度定着のため微力を尽くす覚悟です。
投稿: 日下 雅貴 | 2007年12月10日 (月) 15時02分
日下さん、ありがとうございます。
「コメントをいただく常連さんとともに」とあいさつをした瞬間から、どうも常連さんのコメントが少なくなってしまいました(笑)
また、そろそろお祭りムードも去って、このブログも平常運転となりますので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: toshi | 2007年12月12日 (水) 17時23分
山口先生、理事就任おめでとうございます。
このブログは、J-SOXの話題でたまたま立ち寄ったのがご縁ですが、一瞬拝見しただけで興味ある話題が交換されていましたので、私もいくつかコメントさせていただくようになりました。
やはり、しっかりした背景があったわけですね。ますますご活躍ください。
●ところで本日12/17、会計士協会さんからIT委員会報告書第2弾の草案が出ましたね。
いわゆる文書化3点セットの見本が掲載されており、会計士が考える業務プロセスのフローチャートや、RCMの深度が明示されています。
●経産省10/16発表のIT統制ガイダンス・追加付録と合せれば、内部統制の監査レベルはこれでOKという基準が、ほぼ示されたといえます。
米SOX対応を事例に、従来のコンサル企業が提示してきたものより、かなりシンプルです。
●金融庁の実施基準にあったサンプルは、あまりにも簡潔であったために、企業にしてみると逆に「これでホントにだいじょうぶか?」との懸念がありましたが、今回の見本は適度に項目が並んでいますし、監査実務を担当する側の会計士協会が作ったものですから、J-SOX対応としてはこれでいける、との印象を多くの企業が持てるのではないでしょうか。
投稿: DMORI | 2007年12月17日 (月) 16時41分