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2008年1月31日 (木)

ギョーザ食中毒事件と消費者行政新組織

このたびの中国産餃子の食中毒事件では、11人もの方が被害に逢われ、とりわけ兵庫県の方は未だに入院中とのことで、謹んでお見舞い申し上げます。今夜(30日)3時間半に及ぶJT社、生協さんの記者会見の要旨につきましては、産経新聞WEBにたいへん詳細な記録がアップされておりまして、(1)から(11)までとりあえず、全部読んでみました。記者の方々は、JT(もしくは子会社のジェイティフーズ社)が食中毒の事実を知りながら、なぜもっと早く公表しなかったのか、またJT側においては、中国製品の検査体制に問題はなかったのか、といった点を鋭く質問されておりまして、回答内容などからみますと、JT側も反省すべき点が多いように感じました。

ただ、記者会見におきまして、私のような素人がとても知りたい事実があるにもかかわらず、その点には(質問も回答も)触れられていないのは残念です。といいますのは、普段、生協さんなどを通じて、食中毒の疑いがJTさんに報告されてきた場合、もしくは保健所への被害者の申告があって、保健所からJTさんに問い合わせがあったような場合、JTさんはどのように対応しているのか、といった日常の(食中毒疑惑や商品クレームへの)対応であります。この産経WEBの記者会見要旨を読みますと、問題の天洋食品社(中国)の製品については、今回初めての食中毒事例であった、とのことでありますが、JTフーズ社は、業務として多くの加工食品を扱っているわけですから、大手スーパーや保健所等から、販売食品に関する食中毒事例の疑いは頻繁に報告されるものと思われます。そういった「日常の事件(クレーム?)への対応」と、今回の3件の被害事例への対応とでは、どこがどう違っていたのか、そのあたりがたいへん重要なところではないかと考えております。

冷静に考えてみますと、まず餃子を食べた人から、販売店もしくは保健所に報告があったとします。餃子を製造した会社としましては、まずその方の食中毒(らしき)症状が、餃子によるものなのか、それともほかにその方が食したものによるものか、わかりませんので、ともかく保健所もしくは自社で調査結果が出るまでは公表は差し控えるのが通常ではないかと思われます。その次に、同じ工場で製造された別商品ではありますが、これを食したとされる方の食中毒事件が保健所より伝えられたとします。さて、ここからが問題でありますが、一応、前者の結果が判明していない段階、つまり自社製品による食中毒かどうか判明していない段階で、後発の食中毒疑惑の事実発覚をもって、公表に踏み切るべきか、それとも、いずれの食中毒疑惑についても、詳細な原因は不明だが、消費者が餃子を食べたことによるものといった結果が二つそろってから公表すべきか、というところであります。無用な混乱を引き起こしてはいけない、との判断から、通常は後者を選択するのではないかと思われます。むしろ、この段階では、自社においても、その原因究明のための調査を積極的に行うことが重要でしょうから、今回の件が、普通の対応の場合以上に「公表しなければならなかった」要因はどこにあったのか、分析する必要があるのではないでしょうか。そもそも、千葉も兵庫もそれぞれ警察が動いていたわけですから、「事の重大性」の認識という意味では、JT社のリスク管理に問題があったようにも思えるのですが、そのあたりは実際のところ、どうだったんでしょうね。普通は保健所が動くところ、警察が動くというのはやはり今回の事件の特異性のような気もするのですが。

食の安全に関する信頼違背の事例は、内部告発によって発覚するのが最近の傾向でありますが、今回は本当に「偶然」だったようであります。千葉、兵庫それぞれの警察が、餃子の成分鑑定の結果について、たまたま同じ化学薬品工場に照会をかけたことによって、ふたつの事件がつながった、とのことであります。(朝日ニュース)もしこれが別々の工場に照会を出していたら、JT社や生協さんが自主的に公表に踏み切るまで被害が拡大していた可能性がありそうです。食品に限らず、消費者の生命、身体、財産に損害を及ぼしうる製品の安全確保のための企業の取り組みには残念ながら限界があると思いますし、今回のように、あるところに「情報が集約されること」で、はじめて迅速な対応が可能になる、ということを考えますと、最近福田首相が提唱されておられる「消費者行政新組織」の創設も、真剣に導入を検討したほうがよろしいのではないでしょうか。たしかに、経産省や農林省など、それぞれの省庁でも情報集約の組織体制は向上しているようでありますが、消費者にとって使いやすい制度を作るのであれば、やはり消費者行政は一本化して、そのノウハウを蓄積すべきではないでしょうか。

前記記者会見によれば、天洋食品社の製品は、餃子にかぎらず、たくさんの日本の企業が輸入しておられる、とのことですから、他の食品輸入業者や、販売業者自身のコンプライアンス経営の手腕が問われるところだと思います。

1月 31, 2008 食の安全 | | コメント (3) | トラックバック (3)

2008年1月30日 (水)

大森課長の「市場行政のいま」を読む

昨年12月20日のエントリー「課徴金制度のあり方と内部統制整備の要点」にてご紹介いたしました「金融システムを考える」の著者、大森泰人氏(金融庁企画課長)の講演録(証券レビュー第48巻第1号)が、財団法人日本証券経済研究所のHPでご覧になれます。前記「金融システムを考える」はいまでも時々参考にさせていただいている本でありますが、この講演録はまったく内容的にこの本とは重複しておらず、今後の金融行政のあり方をあらためて鳥瞰するには最適ではないかと思います。大森課長のサブプライム問題への意見につきましても最後の「金融テクノロジーと常識」のなかでしっかり楽しめますし、このブログをごひいきにしてくださる方にとりましても、「銀証ファイアーウォールの見直し」「課徴金制度の拡充」「金融専門人材の育成と交流」「ルールとプリンシプル(最近流行の議論だそうであります)」あたりはかなり興味を惹く内容であります。

関連エントリーのなかで、また折に触れて大森氏のご意見につきましては参考にさせていただくつもりでありますが、私が一番おもしろかったのが「課徴金制度の拡充と規制に関するプリンシプルベースとの関係」についてであります。たとえばインサイダー取引の規制(事後規制)について、私のなかでは「課徴金制度の拡充=うっかりインサイダーの摘発」といったことが当然のことと考えておりましたが、どうもそんな単純な図式ではなく、このあたりは金融庁の方々でも、考え方が「一枚岩」ではないようであります。ルールベースを基準とする、といいますか、ルールベースを重視するということになりますと、たとえ企業が不正目的であろうと、「うっかり」であろうと、利益を獲得しているのであれば、それを吐き出させるために課徴金命令を発出するのが当然と考えられます。したがいまして昨年も何件かうっかりインサイダー(たとえば「重要事実」の要件該当性ありとされるもの)が摘発されてしまったわけですが、プリンシプルベースを基準としますと、そこで斟酌されるのは「常識」でありますので、「形式的にはルール違反であっても、プリンシプルに照らせば摘発するほどのことはない」という見解に至るケースが生じます。そして、上記インサイダーの件につきましては、大森課長さんによれば、ついうっかりと公表前に(違法性の意識なく)売ってしまうこともあるので、そういった場合には今後気をつけなさいと注意して済ますのが常識というものである、とされております。なるほど、同じ金融商品取引法の運用としましても、金融庁のなかにはいろいろな考え方の相違があることが理解できます。

しかし、この講演のなかで、大森さんも少しだけ触れておられますが、プリンシプルベースによる規制、つまり「常識を基本として、センスある運用を行う」ためには、そのセンスといいますか、規制における「常識」というものが、官、民において共有されていなければならないわけでして、そういった常識が共有されていない時期もしくは領域においては、やはり厳格なルールベースによる運用もやむをえない(つまり、事前規制によって細かく行為規範を設けざるをえない)のかもしれません。また、その中間として、自主規制機関による自主ルールによって「常識」の隙間を埋める必要も出てくるようにも思われます。(もしお時間がございましたら、上記論稿をご一読されてはいかがでしょうか。)

1月 30, 2008 本のご紹介 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月28日 (月)

テラメント事件への初歩的な疑問ですが・・

(29日未明 追記あります)

品質偽装関連エントリーでブログが盛り上がっているにもかかわらず、管理人自ら水を差すようで申し訳ないのですが、この2日ほどの事件のなかで、少し気になっておりますのが、虚偽の大量保有報告書を1月25日付けで関東財務局に提出した(EDINET上に公開した、とされる)株式会社テラメントへの金融庁の対応であります。

金融商品取引法27条の29が引用する同法10条1項によりますと、金融庁は大量保有報告書を提出した者(法人、個人)に対して、訂正報告書の提出命令(27条の29の読み替えにより、効力停止命令はできません)を発令することができますが、その条件としては、行政手続法13条の手続区分にかかわらず、かならず対象者(ここではテラメント社ですよね)に対する「聴聞手続」をとらなければならないことになっております。この行政手続法13条によれば、聴聞を開始することは名宛人に文書で通知する必要があり、また実際に聴聞の期日をもうけるためには「相当な期間」をおく必要があります。もちろん、行政手続法の聴聞手続につきましては、名宛人(テラメント社)へ命令を発することにより、その課される義務の内容が著しく軽微な場合は(聴聞手続は)不要と規定されておりますが、今回のことがテラメント社にとっても「軽微」とはいえないように思います。(行政手続法施行令2条を読みましても、軽微な場合として「政令」が定めているのは、大量保有報告書の形式的要件が欠けている場合だけを指しているようでして、「虚偽かどうか」といった実質的な要件についてはかならず聴聞手続が必要ではないか、と思うのですが。--この点については追記参照)

発令された場合には、その処分と処分内容を名宛人に開示することになりますので、おそらくその内容は、すでに金融庁のHPやEDINETのインデックスページに出ているとおりかとは思いますが、そもそも「聴聞手続」は行政手続法15条以下の条文を参照しますと、ずいぶんと時間を要するものでありまして、EDINET公開後、わずか2日ほどの間に訂正報告書の提出命令を出した金融庁の対応は本当に「聴聞手続」を行ったのかどうか、もし聴聞が省略できるとすれば、それはどのような法的根拠によって省略できたのか、とても知りたいところであります。(おそらく、とても基本的なことだとは思うのですが、関連知識に乏しいため、恥ずかしながら・・・)

また赤恥をかいてしまったかもしれせんが、私のように疑問を抱いていらっしゃる方も多いかと思いましたので、勇気をだして(^^;;。どなたか行政法や金商法に詳しい方、このあたりの法的な説明をご教示いただければ幸いです。

(追記)blanknoteさんのご指摘ですが、テレビニュース番組で、テラメント社の社長さんに直撃インタビューをやっておりまして(って、これ自体スゴイ・・・汗)、顔にボカシのかかっている山口滋代表が「昨日金融庁が聴聞をやるというので、金融庁へいってきました。」としゃべっておられます。そんなに簡単に聴聞手続ができるのだろうか・・・という疑問もありますが、とりあえず聴聞手続は経ていたみたいですね。なお行政手続法13条2項1号の「公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき」なる要件につきましては、私も検討したのでありますが、デュープロセスは国民の基本的な権利を保障するものでありますので、その適用範囲はかなり限定的に解釈されるのではないかと思い、本件への適用について自信がありませんでした。

(追記2)金融庁が金融商品取引法に基づいてどのような対応をするか、といった点ばかりが報道されておりますが、こういった一般企業による開示情報は事前規制が困難なわけですから、発行企業側の対応もあっていいのではないでしょうか。たとえば偽計業務妨害罪で即時警察へ告訴するといった対応は、発行企業側にとりましても、有事のリスク管理の一環ではないかと。(すでに対応されているところもあるかもしれませんが)今回は、文面からみて虚偽内容であることが推測できるものでしたが、発行企業にとっては虚偽であることが明白でも、金融庁や一般投資家がわからないようなケースの場合、もちろん発行企業側も適時開示として「虚偽である」とリリースはするでしょうけど、それだけで市場の信用不安が解消されませんし、断固とした対応が必要な場面ではないかと思われます。

1月 28, 2008 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (3) | トラックバック (2)

品質偽装事件への詐欺罪適用の課題

長距離界の人気ランナーである福士加代子さんは、「大阪マラソン挑戦」を思い立ち、わずか1ヶ月の調整期間で42.195キロに臨んだそうであります。その絶大なる人気と瞬発力をもって、大阪の街中をかけめぐり、拍手喝采のなか「御堂筋のヒロイン」となったのでありますが、それも束の間30キロ付近から失速し、最後は脱水症状で何度も転倒しながら長居競技場のゴールにたどりつきました。

さて、大阪ではこの日、「現職で最年少の知事」という、もうひとりのヒーロー候補が誕生しました。彼も「200%ありえない」との前言をひるがえし、突然「大阪府知事挑戦」を思い立ち、わずか1ヶ月ほどの調整期間で「任期4年」という長丁場の府知事の仕事へ走り出しました。文字通り、その絶大なる人気と瞬発力をもって大阪をかけめぐることになるのでしょう。しかし、失速して何度も転倒した福士さんには、最後まで大きな声援が送られましたが、知事の失速、転倒には(これまでの経験からみて)大阪府民はきわめて冷酷であります。とりわけ府民の7割が居住する大阪市、堺市(いわゆる政令指定都市)と大阪府の関係は、失速、転倒のリスクが大きい問題が山積しておりますので、とりあえず私は冷静に今後の市と府の関係がどうなるのか、見守っていきたいと思っております。

>>>>>>>(以下、本題)

このたびの再生紙配合率偽装問題につきましては、このブログのコメント欄は、企業がコンプライアンス問題にどう立ち向かうか、といったご意見の「宝庫」となっております。(どうもありがとうございます)最初はこういった議論をどうまとめようか、と模索いたしましたが、閲覧されていらっしゃる方々の感想に任せるほうがよろしいのではないかと思い、あまり議論を集約する方向での私見は述べておりません。ただ、私と同業者の方々(たとえばkawailawさん、ともさん、辰のお年ごさんなど)は、みなさんマスコミが採り上げること以上に、「道義的に問題だとおっしゃるだけでなく、詐欺罪についても検討されるべきでは」といった法的責任論にも踏み込んだ見解を述べられております。また、小僧さんご自身も、このたびの問題に法的責任がどう課される可能性があるのだろうか、といったご関心をもっておられるようであります。そこで、品質偽装事件への詐欺罪適用といった論点につきまして、とりあえずその前にクリアにしておくべき問題に、すこしだけ触れておきたいと思います。

再生紙配合率偽装問題について、果たして刑事事件として問えるのかどうか、財産罪、不正競争防止法違反、独禁法関連等、いろいろ考えられるところでありますが、たとえば詐欺罪による立件(刑事事件として)といった可能性も(私も)検討の余地はあろうかと思います。契約によって決められた配合率に達していないにもかかわらず、さも達しているかのように「再生紙」なる表示をもって日本郵政公社や官公庁、民間会社に販売していた、といった場合、欺罔行為者(取引の相手方を直接欺いた人)が誰なのか、といった問題もあるかとは思いますが、最大の問題は、欺罔行為の相手方が本当に「騙されていたのか」というあたりではないでしょうか。薄々知りながら(つまり、配合率に問題があることに気づきながら)購入していた、ということになりますと、詐欺罪は成立しませんし、そのあたりを突っ込んだ場合、本当に相手方は今回の事情を知らなかったといえるのかどうか、そのあたりが新たな問題になってくるのではないか、と予想されます。(未遂ならともかく、既遂であれば「騙されながら金員を交付した」ことが必要になってきます)

もちろん、小僧さんのコメントによりますと、行政機関は知らなかった、ということでありまして、私もそのあたりを深くツッコミを入れるだけの情報もございません。しかしながら、この偽装は10年以上も続いているものであって、製紙業界の方々も、その間にいろんなところへ転職、転籍されているはずであります。派遣従業員や下請事業者も多数存在すると思われます。また「業界の定説」のようなものであった以上は、製紙業界だけで情報が管理されていたと考えるには少し疑義がありそうです。そうなりますと、この偽装問題に刑事手続を持ち込みますと、消費者と直接対面している取引先自身のコンプライアンス問題にも飛び火する可能性があるのではないでしょうか。以前、コンプライアンス経営はむずかしいシリーズにおきまして、取引先をかばうのも「隠蔽」の要因ではないかと書きました。マスコミで騒がれている範囲におきましては、kawailawさんがおっしゃるとおり、騒がれるだけで済めば御の字かもしれませんが、いざ詐欺罪の適否にまで発展するとなりますと、また違う側面での不祥事(隠蔽など)の問題が出てくるかもしれません。

たしかミートホープ社の刑事事件につきましても、当初は不正競争防止法違反と詐欺罪で立件する予定だったのですが、ミートホープ社の相手方が、異常に安い値段で購入していたことから、「表示に誤りがあることを知ってて購入したのではないか」といった疑念が出てきましたよね。そうしますと、今度は取引の相手方自身もまた消費者を裏切っていたことになってしまいますので、結局詐欺罪での立件をしないものと報道されておりました。(ただし、1月27日のニュースによりますと、ミートホープ社長は詐欺罪での立件もされた、とのことであります。)今回の再生紙問題も、これだけ製紙業界においては「常識」のように多くの社員の方々が配合率偽装を知っておられたわけですから、その取引先の(少なくとも)従業員レベルにおきましても、「それと知りつつ」購入していたような事情はなかったんでしょうか。もし刑事事件に発展するならば、製紙業界側の弁護士さん方も黙ってはいないはずでして、相手方直接担当者の認識を徹底的に立証することになるでしょう。そうなりますと、もし相手方が「古紙が少ないことを知りながら」購入していたとするならば、今度はその相手方が直接的に「消費者を騙していた」ことにつながるように思います。このあたりが詐欺罪立件のむずかしさであり、この再生紙問題だけでなく、品質偽装事件全般にわたって、詐欺罪を適用する際の前提として、「少しひっかかる」ところではないかと考えております。

今回の再生紙配合率偽装の事件が、今後どのような方向に向かうのか(収束するのか、新たな展開をみせるのか)は私にも不透明でありますが、こういった偽装事例に関しまして、実務として関与すべき「弁護士の姿勢」につきましては、ともさんはじめ、多くの方のご意見にたいへん感銘を受けた次第であります。(やはり「胆力」が必要ですね)

1月 28, 2008 環境偽装事件 | | コメント (19) | トラックバック (1)

2008年1月26日 (土)

耐火性能偽装問題も耐火困難で再燃

みなさま方からの再生紙配合率偽装事件への熱いコメント、どうもありがとうございます。あまりにもコメント数が多く、また内容も非常に濃いために、ひとつひとつお返事できずに申し訳ございません。(参考となる法令をお調べいただき、たいへん感謝いたします)とりわけ製紙業界の小僧さんの非常にわかりやすい内部事情、同じく末端社員さんの「品質優先」魂に関する内部事情等、「コンプライアンスを語ることのむずかしさ」を再認識させられるものでありまして、またそこに常連の皆様方のコメントを拝読しまして、(TETUさんと同じく)ありきたりな問題の整理では収まらないことを痛感しております。また、いままでコメントされていない方も、よろしければご遠慮なく、意見を述べていただければ、と思います。

さて、昨年11月8日のエントリー「断熱材性能偽装で怯える企業」のなかで、この断熱材偽装に至る社内の事情を推察することから、ニチアス社、東洋ゴム社以外にも、この耐火性能偽装で問題が発覚する企業は他にもたくさん出てくるのでは、と書きましたが、やはり26日未明の速報ニュース(読売)によりますと、(すべてが試験用商品の性能偽装ではありませんが)日軽金社、YKKAP社などの大手を含む計45社に耐火性能偽装による試験通過もしくは商品販売等の不正事実が判明したようであります。(私が他社でも偽装が行われているのではないか、と推察した事情は、前記エントリーをお読みいただくとおわかりになるかと存じます)この断熱材偽装の際にも、このたびの小僧さんと同様、社内事情や性能試験事情などの内部事情を(コソっとではありますが)お教えいただいた方がいらっしゃったのでありますが、私の感覚からしますと、この耐火性能偽装の事例は、このたびの再生紙配合率偽装と比較しても、もっと「根の深い」ものだと認識しておりまして、またそのあたりは、どなたにもご迷惑をおかけしない範囲で、追って私の意見として述べてみたいと思います。なお、念のため申し上げますが、このブログは企業不正事件をおもしろおかしく採り上げるものではなく、企業不祥事を「リスク管理」の一環として捉えたうえでの損失の危険の管理のあり方を検討することを主題としております。

しかし「内部告発」なるものは、他のいろいろな要素とタイミングよく結びつきますと、ある特定企業を震撼させるだけではなく、ある業界すべてに激震を及ぼすほどの力があると言わざるをえないようであります。

1月 26, 2008 断熱材性能偽装問題 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年1月24日 (木)

再生紙偽装・発覚遅延の原因を考える

私が司法修習生だったころ、つまり20年ほど前になりますが、大阪の実務修習(社会実習)の一環として、「近鉄電車の運転実習」というものがございました。いくつかの班に分かれまして、修習生が運転席で実際に近鉄電車を一区間ずつ運転します。もちろん、乗客を乗せたものではなく、いわゆる「臨時列車」ですが、お昼のダイヤに合わせて、運転いたします。隣に近鉄電車の運転手の方が付き添っているのですが、実際に修習生が運転をするというもので、いまなら「電車でGO」で予習もできるかもしれませんが、当時は「ぶっつけ本番」のとてもスリリングで楽しい修習でした。

弁護士になって数年後、新聞に「司法修習生、無資格で電車運転」なる大きな見出しとともに弁護士会の不祥事問題として公表され、当時の大阪弁護士会のM副会長が謝罪会見を開く、という事態となりました。今から考えますと、臨時電車とはいえ、無資格の人間が白昼堂々と電車を運転をしているわけですから、「往来の危険を生ぜしめている」ということでゾっといたしますが、当時は特別に危険だという認識もなく、「え!なくなっちゃうの?修習生かわいそう」くらいにしか考えておりませんでした。翌年から、近鉄電車運転実習が廃止されたことは当然のことであります。

このようなお話を書きましたのは、昨日の「再生紙偽装に関するいくつかの疑問」への小僧さんの回答を読ませていただき、「なぜ十数年にもわたって、内部告発等によって問題が発覚しなかったのか」ということへの原因が、おぼろげながら理解できたような気がしたからであります。たくさんの製紙会社の社員の方々は、再生紙の古紙配合率に虚偽がある、といった事実を知っておられたようでありますが(ここでツッコミが入るかもしれませんけど・・・)、そもそも(少しオーバーな言い方かもしれませんが)「酒の席でも、平気でしゃべってしまう」ほどのことであり、それが「内部告発をする」だけの価値があるのか、言い換えれば、その事実が社外で大騒動になる、といった認識が製紙業界のみなさんに欠けておられたのではないでしょうか。少なくとも数年前までは、そういった感覚だったのではないかと推測されます。ところが、ここ数年、エコ商品への社会的な関心が高まってきたことと、品質偽装といったことへのコンプライアンスの議論が高まってきたことが相まって、「このままだとヤバイのではないか」といった風潮が次第に製紙業界にも芽生え始め、業界団体等においても、「古紙100%は本当に環境によいのか」なるキャンペーンなどと銘打って、古紙の偽装の程度を低減させていこう・・・といった業界の流れになってきていた矢先の「問題発覚」だったのではないかと推測いたします。(もちろん、そのような姑息な目的だけのためにキャンペーンを打ったものでないことは小僧さんのコメントのとおりであると思いますが、まぁそのような流れのなかで、といいましょうか)きっと「こんなの昔からやってたし、なんでいまごろ騒ぐの?」と思っていらっしゃる社員の方もおられるのではないでしょうか。

こういった社内慣行への意識と、社外の意識とのギャップから生ずる「不祥事問題」は、たいへんおそろしいものだと感じます。たまたま今回は製紙業界の問題でありますが、同様の「ギャップから生じる問題」はどこの業界でも三つ、四つくらいは抱えているはずですよね。倫理的に問題がある業界慣行ではあっても、それが社会的に許容(許容が語弊があるとすれば、発覚してもニュースソースたる価値がないこと)されるものと、大騒ぎになってしまうものがあって、時代の流れの中で、社会的に許容されない悪事である、と評価され、過去にさかのぼって偽装していた、とか、隠蔽していた、と言われてしまうわけであります。世の中が騒ぐ不祥事と騒がない不祥事(つまり、内部告発する人もいないだろうし、また告発を受けたマスコミも本気でとりあわない不祥事)の境目というものは、そう簡単には識別することは困難ではないか、と思う次第であります。

「社外の常識を、社内に取り入れる」というフレーズは、宣言することは簡単でありますが、実行に移すことはむずかしそうであります。しかし、ひとつ「経営の透明性、公正性をはかる」ということで、社外取締役や、社外監査役の役割が期待されるところでありまして、たとえばこのたびの再生紙偽装の一件など、各製紙会社の社外役員の方々は、どう思っていらっしゃたんでしょうかね。こういったケース、たとえば社外役員であれば、「そのような慣行はまずいのではないか」と疑問を呈していただけたのではないか、と。王子製紙、日本製紙はじめ、この業界には名門企業が多いようですので、もちろん社外役員さん方も、立派な方々が多いものと思われます。そういった方々は、情報伝達の限界として、そもそも再生紙偽装なる事実は耳に入っておられなかったのか、それとも当然のごとく、知悉されていたのだけれども、社内の役員さん方と同様、「そんなに憤って文句を言う必要があるの?この競争激化のなかで、そんなことに文句を言ってたらKY(空気が読めない)って言われてしまいますよ」くらいの感覚だったのでしょうか。

なお、私はどなたかの法的責任を追及する目的で申し上げているわけではなく、あくまでも「企業の不祥事体質」というものがあるのであれば、その原因はどこにあるのか、を究明したい、との気持ちからのエントリーであります。このたびの再生紙偽装が、業界あげての不祥事である、とお認めになるのであれば、それでは今後どうやって不祥事再発のない企業体質にできるのか、その処方箋を検討することが、私は責任追及よりも優先すべきであると考えております。(弁護士会の選挙のこととか、本業の書面作成に追われて、きちんと文章を整理する時間がありませんので、ダラダラとした文章、お許しください)

1月 24, 2008 環境偽装事件 | | コメント (15) | トラックバック (0)

2008年1月23日 (水)

再生紙偽装問題へのいくつかの疑問

製紙業界の業界団体には38社が加盟されているそうでありますが、そのうち23日未明までに公表されているだけで、13社が、いわゆるグリーン購入法に反する「再生紙偽装」を認めておられるようであります。なお、この13社というのも、ほぼ「売上高の多い順番に」というものでありますので、ひょっとすると、まだまだ中堅クラスの製紙会社からリリースが続くのかもしれません。

DMORIさんのご意見に、小僧さんが回答されておられるコメントが実に興味深いので、少しご紹介させていただくと同時に、私なりの疑問(もちろん、関連当事者企業の法的責任を追及するようなつもりではなく、企業における不祥事隠蔽体質への関心に基づく一般的な疑問)を書かせていただきます。

1 なぜ10数年もの間、配合率偽装の事実が発覚せずに、TBSに寄せられた告発文書による質問に至るまで隠蔽できたのか?

小僧さん曰く、

これがかくも長く続いたのは、この不正が一度やってしまったら後戻りが非常に困難だったという特殊事情があります。パルプ配合を変えると、紙の品質は大きく変わります。(古紙パルプとバージンでは、特性が小麦粉と蕎麦粉ほど違います) 途中で正常な配合に戻したくても、今まで偽装していたものを正規配合にすればお客様から品質低下でお叱りを受ける。正当な理由なしに来月から供給を止めますというのも言えない。となれば不正を告白する以外に辻褄が合わない。だがそんなことは出来ないという袋小路でした。

10数年もの長い間、多くの関係者が不正を知っているのに何故か表沙汰にならず、同業他社の出方を探りながらのチキンレースを続けていたのです。

たしかに小僧さんの言われるとおり、一度不正をやってしまったら後戻りができない状況であったことはなんとなく理解できそうなのですが、それでも、これだけ業界あげて偽装が行われていた、となりますと、誰かが(たとえば製紙業界から退職するさいに)良心の呵責に耐えかねて、業界の外へ告発するのが普通ではないでしょうか。私の感覚では1998年ころからは、取引先の大手企業さんは、どこもHPなどで「うちの会社は環境保護に熱心です」といわんばかりに「古紙100%使用の再生紙を利用しています」と書いておられたものと記憶しております。そんなHPを読みながら、製紙業界の方々は、「あぁ、あれって本当はそんなに古紙が使われているわけはないんだよね」といったあたりの意識をお持ちの方が多かったのではないかと推測されるわけでして、そんな状況で約10年もの間、複数の製紙業者からはなんら内部告発のようなものがなかった、ということですと、なんとなく不自然な感じもいたします。それとも、こういった配合率の偽装といった問題は、昨年末の建材性能偽装事件のときと同様に、社内のごく一部のセクションだけが知っているものであって、社内でもそれほど多くの社員が知っているような問題ではない、ということなのでしょうか。(このあたり、あんまりツッコミをいれてしまいますと、「小僧さん」も答えられなくなってしまうかもしれませんが・・・・・・)いずれにしましても、このあたりは不祥事再発防止のためのキモとなる「不祥事構造」の核心だと思いますし、もう少しどなたでも結構ですので、ご意見をいただければと思います。

2 行政は本当に知らなかったのか?

ここまで不祥事が大きくなってしまいますと、私もDMORIさんの同じような意見を持っておりまして、十数年も偽装が慣行化していた、ということであれば、行政も薄々知っていたのではないか、と素直に推測しておりましたところ、小僧さんのお答えは私にも意外なものでありました。

小僧さん曰く、

この件に関して行政には非はありません。

まず第一に、グリーン購入法は制限速度のような義務的な法律ではありませんから、守れないなら官庁向けの商売から手を引けばいいだけなんです。本来は技術的なハードルを越えたものだけが得られる果実を、下をくぐって盗み食いしたというのが真相です。行政あるいは立法府を恨むのはお門違いですよね。

第二に、グリーン購入法を決めたときに、製紙業界側からも意見を言ってますし、それに則って品質の上限規定があったりもします。弁解の余地はありません。

第三に、環境省や経産省は、今までかなり製紙業界にフレンドリーでした。古紙偽装と時を同じくして輸入紙が急増したのですが、それらの紙は不法伐採の森林資源を使っているから、環境にやさしい国産品を使いましょうという方向に世論を導いてくれていたのです。グリーン購入法を始めとする環境政策は、非関税障壁として有効に働いていて、製紙業界はその恩恵に預かっていたのです。

といったような事情ですから、報道されるよう