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2008年1月16日 (水)

「環境偽装」は激ヤバ(ご法度)ではないの?

(16日夜 追記あり)

昨年来、品質表示偽装問題に関するニュースが溢れておりましたので、私自身もかなり感覚がマヒしているところもあるかとは思いますが、さすがに今回の環境偽装は大きな問題に発展するのではないでしょうか。本日の新聞、ニュースを読んで、思わずゾッとしました。とりわけ日本製紙社の開示情報を読んで、古紙率乖離に及ぶ事実経過に「社内の常識と社外の常識」の大きなズレを感じたのは私だけでしょうか。。。もし「ズレ」がなかったとすれば悪意があったとしか言えないように思います。(注-ここにいう「悪意」とは、害意という意味ではなく、「後ろめたいことと知りつつ」という意味です)

重要な子会社(日本製紙株式会社)の製品に関する社内調査結果について

再生紙年賀状の古紙配合率、納入全社が偽る(日経ニュース)

日本製紙社の調査は今後も委員会を設けて徹底的に行うようでありますが、どこの大手製紙会社も、おそらく「構造型不祥事(経営トップが長年にわたって不正に関与していた不祥事)」に発展する可能性を孕んでいるのでは。私の感覚が間違っていなければ、日本製紙社も認めるとおり「環境偽装」として徹底的な原因究明と再発防止策の策定が不可欠だと思います。

今後、政府から「環境保護に協力して」と言われても、趣旨に賛同する国民に対しては、その気持ちを萎えさせてしまい、またあまり趣旨に賛同したくない国民に対しても、これを拒否する合理的な口実を与えてしまったわけでして、その罪は大きいと思います。(執務中のため、速報版ということで失礼いたします)

PS

当ブログは「ビジネス法務」ということでして、それ以外の話題のエントリーは(ブログが荒れるリスクもありますので(^^; )、極力控えるようにしているのですが、ひとつだけ。

裁判員制度導入で取材・報道指針公表(毎日新聞ニュース)

前から気になってはいたのですが、裁判員制度というのは、一般の方々が無作為抽出で選ばれるわけでして、このブログをご覧の皆様方も、おそらく選出される可能性があると思います。もし、先日の福岡の3人のお子さんが亡くなった交通事故刑事裁判で、裁判員に選ばれたらどうされますか?

ご承知のように、危険運転致死傷被告事件は裁判員制度の対象事件です。我々法律家は、世間からどのような非難を浴びようとも、刑事裁判に職業として関与しているわけですので、やむをえないものと心得ております。しかしこういった裁判の場合、国民の義務として関与されておられる一般の裁判員の方にはかなり厳しい現実が待ち構えているように思います。世間一般では「最低でも禁固20年」と言われているところに、「7年4月」(つまり実質的には5年で釈放)といった判決が出たとしますと、かなりヤバイんじゃないでしょうか。もし、裁判員が、個人的に「自分は危険運転致死罪が適用されると思う」とがんばってみても、職業裁判官が適用に反対して、結局合議で「7年4月」という結果に至った、とした場合、世間一般の見方は「なんで裁判員がたくさんついていながら7年4月なんだよ!」「いったい、誰が裁判員やったんや?!」みたいな非難が大量に浴びせられることは目に見えております。もちろん裁判員が誰であったかは秘密ですが、これだけの情報社会で、本当に秘密が守られるのかどうか、守秘義務を経験したことのない方々にとっては厳しい現実が待っているようにも思われます。

裁判員に対する予断排除のための取材ルールの確立も重要ではありますが、こういった重大事件(ましてや、世間の感覚と判決にズレが発生する場合)において裁判員をどう守るか、という視点も、できれば取材報道ルールのなかで検討していただきたいと思います。

(追記)

各社より適時開示情報が出され始めております。また、日本製紙社は早々と構造的不祥事であることをお認めになり、代表者退任にまで発展してしまったようです。しかし、読売ニュースにありますように、

「ものづくりメーカーとして品質を優先した結果、環境偽装と言われても仕方ない事態を招いた。」

なる答弁はおかしいのではないでしょうか。品質優先というのは「再生紙を利用したうえでの話」であって、再生紙を利用していないにもかかわらず、さも再生紙を利用して製造したかのようなものを作っても、なんら「品質優先」ではなく、むしろ「品質偽装」です。つまり品質偽装=環境偽装なる図式です。他の4社は今後どのような対応をされるのでしょうか。

公正取引委員会が景表法違反の疑いで調査を開始する方針だそうですが、どの部分でひっかかる可能性があるのか、また別の機会に検討してみたいと思います。

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コメント

裁判員制度については荒れないように一言二言だけ(笑)。

現状では裁判員制度の施行には反対です。

(趣旨は麗しく立派であっても、内容や導入方法にあまりにも問題が
 多すぎるという点においては、
「内部統制報告制度」「地デジ移行に伴うアナログ停波」と合わせて
 他のかたの表現を借りるなら「平成の三大愚行」だと思っています)

もしも私が選ばれることがあっても忌避します。罰金(課徴金?)を払う
ことになったとしてもやむを得ません。

制度についての詳細が国民にもっと知られるようになればなるほど反対の
声は高まるばかりでしょう。

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閑話休題

今回の製紙業界の問題に関しては、実業の世界に身を置く一人として、
あまりにも由々しき事態すぎて腹立たしくて怒る気にもなりません。
「コンプライアンスより品質を重視」発言には めまいがしました。
このかたがたが、コンプライアンス体制だの環境重視だの内部統制だの、
と発言してきたわけで、全くもってチャンチャラおかしいですな。
クチをつむっていたのは製紙業界だけではないですよ。この事実は例えば
印刷業界でも(技術的問題ゆえ)周知の事実だったに違いありませんし、
経団連の会長さんもたぶん知っていたに違いないと私は確信します。

でも、製造業というのはこんなもんだと思われたくない一方、
こんなもんだ(こんなもんで実は充分世の中回っているのだ)
という気もしないでもないのですがね。

ただ、私は今回のことが(例外はあるとしても)
「環境保護と品質は両立しない」という事実を周知させることになるの
なら、少しは意味があったかもと思っています。

投稿: 機野 | 2008年1月17日 (木) 09時55分

「環境偽装」というのは、三井物産の大気汚染データ改ざんや三菱地所(マテリアル)の土壌汚染事故のように刑事問題に発展するケースを指すので、本件は普通の「品質偽装」では?

「コンプライアンスよりも品質を優先した」はマズイですよ。これはマジで国家権力への挑戦ですよね。コンプライアンスを軽視しても企業は大丈夫だという意識のあらわれです。以前、堀江、宮内共著の本で「国家権力なんでコワくないよね」と発表した直後に強制捜査を受けたのと同じです。まちがいなく国家権力は動きますよ。

投稿: unknown | 2008年1月17日 (木) 13時58分

複写機メーカーが、配合偽装の再生紙を続々と販売・受注を中止にしているようですが、既に製品化・出荷された再生紙はどうなってしまうんでしょうね。製紙会社のやったことは信頼関係の裏切りという意味で断罪に値するので、取引停止というのは取引先からすれば当然ということなのでしょうが、もともと環境保護という点から再生紙を利用するという人々(会社)が末端顧客なわけであり、また今回の場合は紙の品質としては十分に利用可能なはずなので、正しい配合率を開示するなどの方策を取った上で、すでに製品となっている紙はそのまま廃棄処分にするのではなく、きちんと利用する方法を考えてほしいものです。(ちなみに、古紙利用率の高い再生紙と古紙利用率の低い(あるいはフレッシュパルプを用いた)紙の価格ってどうなんでしょうか。古紙利用率の高い再生紙の方が値段が高いけど、環境のために敢えて買っている人々が多いということであれば、仮に配合偽装された紙の品質が高くとも、経済的損失あり=詐欺という方向性も出てくるのでしょうか。)

投稿: taka-mojito | 2008年1月17日 (木) 20時35分

建前として見れば、まことにけしからん話です。まるっきり割合が違うのですから、性善説に立てばこんな大嘘はまかり通らず、社内のどこかでストップがかかるはずです。ですが、まかり通っていたわけです。多くの人間が知っていたはずです。これだけコンプライアンスがブームになっていてもです。
でもこれは製紙業界だけでしょうか。食品業界だけでしょうか。いや、誰もそうは思ってはいないでしょう。
最近年金生活者に巨額の与信がされていたケースを調べたことがありますが、誰が見てもおかしい与信を堂々と大手信販が続けていました。こういう企業がコンプライアンスというのを聞くと、コンプライアンス制度って、一体何なのだろうと思ってしまいます。
ミートホープ事件の後、納入を受けていた生協連の会長さんが「ずっと納入業者をある程度信用してきたが、これからは企業性悪説に変えないと」といった趣旨の発言をされていました。
だからコンプライアンスが必要と言われるかもしれませんが、儒教的価値観に下支えされた日本の社会共通価値観を取り戻すのは不可能だと思っています。見事にこの10年で壊してくれました。だから同じようなアンフェアな仕事が相次いで噴出してくるのだと思います。社会の鏡です。ペナルティを科してももぐらたたきと同じでしょう。もはや法律でどうこう出来る状況は超えてしまったように感じています。希望は捨てていませんが、社会崩壊はとても深刻です。
炎上しないようにオブラードに包んで言いますが、裁判員制度は×です。不条理との葛藤が人間の叡智だと思っていますが、応報思想は逆行します。日本の文化、精神を明治初期に戻してしまうことに危惧します。新自由主義の人には申し訳ありませんが。

投稿: TETU | 2008年1月18日 (金) 01時08分

TBSラジオで夜十時から「アクセス」と言う聴取者電話参加型のトーク番組を放送しておりますがよく聞いております。
赤福騒動のときも地元から意見があり──

「そんなん(製造日改ざん)地元では皆知ってるんちゃいます?」
「製造年月日の点あり点なしはけっこう有名な話ですよ」

などと一般報道ではなかなか聞き及ばない事を早期に聴取者に届けていました。

さて、その番組を昨日聴いていたところ本件に関する内容がトークテーマでした。その前振りとして出演者がつぎのような経緯を明らかにしていました。いわゆる「グリーン購入法」に関する経過のようです。
期せずして聞いた関係で、記憶で書いたものです。ずれやぶれがあったら御容赦下さい。

1.製紙会社は当初、再生紙製造として①古紙、②損紙を利用していた
2.「損紙」とは、主に印刷物等製造工程の仕損品である
3.政府等の機関は①②を36%用いて再生紙を提供するよう求めた
4.また、今後の再生紙製造技術の革新を見込んで40%使用を法令に定めた
5.ところが途中から「損紙」は古紙に該当しないと定められた
6.ここで再生紙利用技術に相当の制約と無理がかかった

この経緯を知るにつけ、それならそれでその時に何とかならなかったのか、技術的な努力を重ねてもこれくらいが限界だと言う実際的な議論がなされなかったのか、とはなはだ疑問が残ります。
仮に上記が事実だとすれば古紙を40%再生利用するのは、現状で適正なものと言えるのか──と言う問題も関連事項として俎上に上がるべきかと思われます。再生紙製造技術で古紙利用率を無闇に上げる事は、古紙漂白工程などでエネルギーを余分に消費するなど、二酸化炭素排出増やエネルギー使用過多などから環境配慮に逆行する点も番組で指摘されていました。

このような背景があるから企業側の今回の対応が無理からぬと言うつもりはもちろんありません、両者は峻別可能は事項です。ただ、これらの経緯が背景に潜んでいるのではないか、それならそれできちんと御上に話せなかったのか──そもそもそんな事は話せないような間柄なのか。なぜ御上は上記5.のような方針変更をした際、見直しをかけなかったのか、そのあたりが気になるところです。
とばっちり的な物言いは慎むべきですが、某開示報告制度もこのような実情を知らず、本質を見極めずの法制施行になっていない事を願うばかりです。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年1月18日 (金) 12時05分

すいません、上記で重要な部分の記載もれがありましたので補足させて頂きます。これがないと上記はあまりぱっとした意味が見出せません。
箇条書き3.ですがこの36%の再利用配合比の内訳は古紙が6%、損紙が30%だったそうです。そこで突然、損紙は古紙に含まれずとなり、損紙の配合が古紙再利用の基準から除外されたそうです。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年1月18日 (金) 14時45分

DMORIです。日下さんの書き込みで、再生紙の基準変化についてよく分かりました。ありがとうございます。

昨年の食品偽装に比べ、今回の再生紙偽装は大手企業ばかりではありませんか。
08年も引き続きビジネス界の大きなテーマである、コンプライアンスというものを考えていく上で、年初早々、格好の問題が発覚したものです。

製紙技術を知らないユーザーは、官庁を含めて、「資源を大切に」「木材の新規伐採を減らすために」という率直な目的で、値段が少し高くても再生紙をできるだけ使おう、という方針を掲げることは、無理もないことです。

これに対して、製紙技術を分かっている専門の企業が、
「そんなに古紙を混ぜては、インクののりが悪くて使い物になりませんよ」とか
「それを補うために作業工程を増やすと、どれだけのエネルギーを追加することになるので、これはCO2のどれだけに該当し、温暖化対策上は逆効果になりますよ」といった専門的な立場から研究し発言する責任があります。

それをせず、
「ウチの会社からはいいにくい」
「他社が先に言ってくれるなら、乗れるのだが」
といった日本人の横並び意識が、この問題につながったと思います。

投稿: DMORI | 2008年1月18日 (金) 15時07分

製紙に於いてその品質に絶対的な影響を与えるのは、
原料のパルプ、古紙の品質です。
原料品質にばらつきがあれば、特殊な製造技術により品質を安定させよう
としてもそれは到底不可能です。
これは製紙業界では昔からの常識だそうです。

私は赤福同様怪しいなあとは思っていたのですが(今さらこんなことを
書いても所詮は後出しジャンケンですな(笑))日進月歩の技術改善で
現在は何とかしているのだと思っておりました。
騙されました。

つまり最初から無理なことを押し付け押し付けられてきたわけです。
押し付けていた側(役人)もこのことを薄々は知っている、ということ
だと、押し付けられた側も暗黙の了解は取れていると思っても不思議では
ありません。

偽装問題というより、制度不備ですな。

投稿: 機野 | 2008年1月18日 (金) 16時02分

みなさま、熱いコメントありがとうございます。いろいろなご意見があって、拝読させていただきながら「なるほど」と感嘆しております。
「損紙」が「古紙」に該当しない・・・といった解釈の問題もあったようですが、しかしながら「環境保護」に向けた国民の善意を反故にした、という点では私は罪が重いと思っております。他の大手製紙会社も、コピー用紙などについて、配合率が虚偽であり、それを組織ぐるみで知っていたということですから、「みんなでわたれば」の発想で社長さん方は辞任されない、ということだそうですね。辞任しないことは私も賛成ですが、そうであれば今後どうやって業績とともに信用を回復していかれるのか、今後の各社の対応に興味があります。それとキャノンやコニカミノルタ、富士ゼロックスなどの取引先の動向が気になるところです。

海外で植林など、環境保護のためにCSR活動を推進されているようですが、これもどこまで本当なのか、信用できなくなってきましたね。

投稿: toshi | 2008年1月20日 (日) 01時46分

機野さんの「精度不備」と言う指摘に同感です。これらの問題解決には国や自治体の先導がなくてはならないと思います。
しかし、制度がどれだけ現状の問題に適正な解決を提供しており、その制度があまねく遵守されているかには甚だ疑問を感じるしだいです。

廃プラスチックの再利用技術では食べかす等が付着していると、洗浄工程が入るため、そこでエネルギー消費と二酸化炭素排出が起きてしまう──では、家庭でプラ容器を洗浄するとこれも同様の指摘が出来る(温水器などを利用した場合でしょうが)らしく、再利用を考えるより埋め立てた方がかえって環境配慮に適合するのか、しかし再利用可能な資源を棄ててしまって良いものか──。
これについてはまだ正確なデータがなく、今のところ汚れたプラ容器は埋立地へ運ばれるているそうです。

また、①地方自治体が回収した古紙を国外に売却して収入源とする、②リサイクル廃家電は今は高く売りさばけるので回収業者が無料回収、あるいは廃家電を買い取っても良いが後述の④があるため出来そうもない、③その廃家電が大量に行方不明(闇輸出業者)になっている、④おかげで廃家電リサイクル工場の操業度が予定を下回り、投資回収が低迷している、等など昨今の報道で周知のとおりです。
これも周知ですが②については、法施行後に非鉄金属相場が様変わりしてこのような事態になったわけですが…。

家電リサイクル法やグリーン購入法など、国民や企業に環境配慮の意識を浸透させる点では意義があると思いますが、根本の目的である二酸化炭素排出削減や省エネ、それらとある意味対立関係にある省資源・資源再利用には思った以上に複雑な背景や技術があるようです。
このような環境に配慮する制度を悪用して企業価値を演出する、あまつさえ横流しや闇商売をするなどは誠に恥ずべき行為ですが、制度側もこれらの問題を的確に取り入れて制度をつねに改善してほしいものです。そうでなければ環境保全効果の薄いものを効果大として喧伝していた点では、これも国民の善意と期待を裏切るに等しいのではないかと懸念します。

制度である以上、遵守統制とその実証、構築と運用へのPDCA組込みはいずれも必須です。必須なんですが──上述の③なんかは取締ようがないのでしょうか。出来もしない事を要求しても意味はないのですが、せめて古紙配合による再生紙製造については、二酸化炭素排出・省エネ・資源再利用の均衡点をこれを機会に再検討し、二酸化炭素排出・省エネを犠牲にして資源再利用するか、配合比を調整して経済性・環境保全性を同時に満たすような継続生産可能な再生紙製造基準を作るなどを実施して欲しいものです。
もちろんこれは、今の再生紙の古紙配合比が現在普及している再生紙製造技術からかなりの程度で乖離していると言う前提での意見ですが──。

投稿: 日下雅貴 | 2008年1月20日 (日) 15時32分

toshiさん、皆さん、お久しぶりです。
1年半ぶりに登場します。

まずは当事者の一員として深くお詫びします。

私はこの悪事を偽装が始まったころから知ってました。
業界では半ば常識となっていましたので、
日本製紙以外の社長が知らなかったという主張には
疑問以上の不快感を覚えますが、そこは法廷なり
国会なりの場で追求されるでしょうから割愛します。

さてなぜこんな偽装が起こったのか?はい、toshi
さんのご指摘どおり、製紙会社の「悪意」以外に
ありません。1トンでも多く1円でも高く紙を売って
利益を追求した結果です。言い訳にもなりませんが、
偽装を始めた当時はバブル崩壊の大不況期でありまして、
倫理を踏み潰してでも稼ぎたかったという、お粗末な話です。

これがかくも長く続いたのは、この不正が一度やって
しまったら後戻りが非常に困難だったという特殊事情が
あります。

パルプ配合を変えると、紙の品質は大きく変わります。
(古紙パルプとバージンでは、特性が小麦粉と蕎麦粉ほど
違います) 途中で正常な配合に戻したくても、今まで
偽装していたものを正規配合にすればお客様から品質低下で
お叱りを受ける。正当な理由なしに来月から供給を止めます
というのも言えない。となれば不正を告白する以外に辻褄が
合わない。だがそんなことは出来ないという袋小路でした。

10数年もの長い間、多くの関係者が不正を知っているのに
何故か表沙汰にならず、同業他社の出方を探りながらの
チキンレースを続けていたのです。

偽装に関わっていた者にとっては、ようやく懺悔ができて
ほっとしたという感覚も正直なところあります。

偽札を作った社員は即刻懲戒免職でした。
偽紙を全国民に売りさばいた法人と役員、従業員には、どんな
処分が妥当でしょうか。

製紙業界は、個々の会社は、あるいは私のような当事者は
今何をするべきなのか、皆さんからご教示をいただけると
幸いです。

投稿: 小僧 | 2008年1月22日 (火) 00時36分

小僧さん、おひさしぶりです。王子・北越の事件からもう1年半が経過したんですね。実はこのエントリーをアップしたときから、(たぶん王子製紙さんも関与されているようですので)ひょっとしたら小僧さんも登場されるのではないだろうか?と、甘い期待を抱いておりました。
また、こうやってお越しいただけた、ということは、小僧さんが誰であるかは、結局社内でもまったくわからなかった、ということなんでしょうね。(ほっとしました)
中越パルプの社長さんの発言なども、また大きく採り上げられているところですし、続編としてエントリーをアップいたしますので、こちらこそどうかよろしくお願いいたします。ただ、前回の買収防衛事例とは異なり、企業不祥事の分野に入る事例ですので、私のほうからとくに小僧さんへ登場を強く希望することはございませんので、ご発言いただくかどうかは、そちらの判断にお任せいたします。どうかそのあたりはご留意ください。
また、あの頃と違いまして、コメントは事前スクリーニングとなっておりますので、そのあたりお含みいただきますよう、お願いいたします。

投稿: toshi | 2008年1月22日 (火) 01時38分

何度も送信ボタンを押してしまって失礼しました。

TOB関連の書き込みについては、何も不利益を受けることなく時が過ぎております。今回の件については、自分自身への反省を込めて、皆様のお叱りや疑問には可能な限りお答えしたいと思いますので、次のエントリなりコメントなりでご指摘ください。

ちなみに中越パルプの長岡社長は、王子製紙の元副社長でありまして、彼の踏み込んだ発言には驚きました。

投稿: 小僧 | 2008年1月22日 (火) 02時07分

この年賀はがきの古紙再生紙配合率を横並びで偽装して、「業界の人は常識」という発言は独禁法上どう解釈されるのでしょうか?
はがきですから小売売価は決まっていて納入価格も決まっていそうなので、難しいのかもしれないですが、横並びの品質偽装(偽装度合いに差がありますが)であれば、一種価格カルテルじゃないかという気がしないでもないのですが、法的に疎く、お時間あるときにご教示ください。

投稿: katsu | 2008年1月22日 (火) 02時17分

DMORIです。
一般的には、大手製紙業者たちがすべてコンプライアンス違反、という評価になるのですが、私は逆の観点も述べたいと思います。

クルマの制限速度標識が40キロになっていても、実際にはほとんどのクルマが60キロで走ります。
事故がいったん発生すると、被害者がわも「60キロで走っていたのは、違反なのですよ」として過失相殺を受ける理由になります。
ある意味で、事故が発生しない限りは警察はいつも取り締まっているわけではないし、それで交通が円滑に流れているならよしとする、それが常識的に定着していないでしょうか。

違反した業者だけを責めるのでなく、このルールは本当にみんなが守ることを納得するのだろうか、という検討も大事です。
人間は、納得しがたいルールを押し付けられても、必ず抜け道をさがすものです。
今回の古紙配合率の基準を、官僚が草案を作ったとき、製紙企業がわにも委員に入ってもらって、「この古紙割合でも、インクののり具合はどうですか? 技術的に問題はないでしょうか? 品質維持のために、かえって余計な電気や熱エネルギーを使ってしまい、温暖化に逆行するようなリスクはありませんか?」と確認したのでしょうか。

そういうプロセスなしに古紙配合率を一方的に決めたのであれば、単に行政側が勝手にクリーンイメージを出すための、スタンドプレーと言われてしまうのではないかと思います。

投稿: DMORI | 2008年1月22日 (火) 18時02分

>>DMORIさん
このような論調で製紙業界を擁護してくださる方がいらして、ご厚意には感謝いたすのですが真相は違います。この件に関して行政には非はありません。

まず第一に、グリーン購入法は制限速度のような義務的な法律ではありませんから、守れないなら官庁向けの商売から手を引けばいいだけなんです。本来は技術的なハードルを越えたものだけが得られる果実を、下をくぐって盗み食いしたというのが真相です。行政あるいは立法府を恨むのはお門違いですよね。

第二に、グリーン購入法を決めたときに、製紙業界側からも意見を言ってますし、それに則って品質の上限規定があったりもします。弁解の余地はありません。

第三に、環境省や経産省は、今までかなり製紙業界にフレンドリーでした。古紙偽装と時を同じくして輸入紙が急増したのですが、それらの紙は不法伐採の森林資源を使っているから、環境にやさしい国産品を使いましょうという方向に世論を導いてくれていたのです。グリーン購入法を始めとする環境政策は、非関税障壁として有効に働いていて、製紙業界はその恩恵に預かっていたのです。

といったような事情ですから、報道されるように行政サイドは今回の事件に怒り心頭なわけで、私は大変申し訳なく思っています。勝手なことを言わせて頂ければ、これ以上彼らの神経を逆撫でる批評は止めてあげて欲しい。いままで我々を応援してくれた人たちが、さらに窮地に陥るのは忍びないですから。

本当に、今回の件で悪いのは製紙業界なんですよ。

>>katsuさん
法的な解説はプロの皆様にお任せするとして、私が知りうる状況のみを書きます。
「業界の常識」というのは、談合的なことではありません。TBSがやったように、古紙配合率は簡単な分析で大まかな推定ができます。お互いに、他社品を分析した上で、「あー、こりゃバージン使ってるな」という推定をして、自社の配合を決めていたのです。みんなで赤信号を渡るときに打ち合わせはしないのと同じですかね。
はがきは、郵政が印刷会社に対して発注するものでして、用紙は印刷会社がそれぞれ手配します。この取引は民間同士の随意契約だと思います。

投稿: 小僧 | 2008年1月22日 (火) 22時21分

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