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2008年1月26日 (土)

耐火性能偽装問題も耐火困難で再燃

みなさま方からの再生紙配合率偽装事件への熱いコメント、どうもありがとうございます。あまりにもコメント数が多く、また内容も非常に濃いために、ひとつひとつお返事できずに申し訳ございません。(参考となる法令をお調べいただき、たいへん感謝いたします)とりわけ製紙業界の小僧さんの非常にわかりやすい内部事情、同じく末端社員さんの「品質優先」魂に関する内部事情等、「コンプライアンスを語ることのむずかしさ」を再認識させられるものでありまして、またそこに常連の皆様方のコメントを拝読しまして、(TETUさんと同じく)ありきたりな問題の整理では収まらないことを痛感しております。また、いままでコメントされていない方も、よろしければご遠慮なく、意見を述べていただければ、と思います。

さて、昨年11月8日のエントリー「断熱材性能偽装で怯える企業」のなかで、この断熱材偽装に至る社内の事情を推察することから、ニチアス社、東洋ゴム社以外にも、この耐火性能偽装で問題が発覚する企業は他にもたくさん出てくるのでは、と書きましたが、やはり26日未明の速報ニュース(読売)によりますと、(すべてが試験用商品の性能偽装ではありませんが)日軽金社、YKKAP社などの大手を含む計45社に耐火性能偽装による試験通過もしくは商品販売等の不正事実が判明したようであります。(私が他社でも偽装が行われているのではないか、と推察した事情は、前記エントリーをお読みいただくとおわかりになるかと存じます)この断熱材偽装の際にも、このたびの小僧さんと同様、社内事情や性能試験事情などの内部事情を(コソっとではありますが)お教えいただいた方がいらっしゃったのでありますが、私の感覚からしますと、この耐火性能偽装の事例は、このたびの再生紙配合率偽装と比較しても、もっと「根の深い」ものだと認識しておりまして、またそのあたりは、どなたにもご迷惑をおかけしない範囲で、追って私の意見として述べてみたいと思います。なお、念のため申し上げますが、このブログは企業不正事件をおもしろおかしく採り上げるものではなく、企業不祥事を「リスク管理」の一環として捉えたうえでの損失の危険の管理のあり方を検討することを主題としております。

しかし「内部告発」なるものは、他のいろいろな要素とタイミングよく結びつきますと、ある特定企業を震撼させるだけではなく、ある業界すべてに激震を及ぼすほどの力があると言わざるをえないようであります。

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コメント

近隣のマンションで全棟のうち、上層階にニチアス製の断熱材が使用されているようであり、実害にあっていらっしゃる方がおられます。
会社側の対応は「各戸撃破」のようでして、文句言ったもの勝ちの雰囲気があったので、隣近所相談の上、対策を立てていらっしゃるようです。

かなりショックの様子で、「食べても大丈夫」という程度のものでなく、自らの資産価値を大きく損ないかねないので、こっちの偽装は根がさらに深そうな印象を持ちます。現在あまり大きくなっていないようですが、今後被害住民の方の声の高まりが予想されます。

投稿: katsu | 2008年1月26日 (土) 12時17分

偽装というと、すでに価値判断としていわゆる「悪い事」が含意されてしまうので、言葉のもつ印象に議論が振り回されてしまったりすることもありますが、やはり個別に問題とされる事実関係をしっかり検討することは当然不可欠でしょう。KATSUさんご指摘のように、古紙配合率の問題と断熱材の問題は質的に違うと思われます。

消費者相手であるとセンセーショナルに報道されますが、社会の至るところに問題は隠れているようで、気が滅入ります。工事の手抜きや部材の強度不足など、地震などの際に甚大な被害を起こすことのありそうなものが複数あるのではないかと心配していますが、公共性があるものについては当局側自身の責任にもつながる場合に「知りたくない」という無責任な対応になっていないか、心配が残ります。
消費者者の生活に目に見える形で生活に直結している問題でないと、報道されてもその後のフォローにつながらないで終わってしまうような印象があります。メディアにも、重要性を考えた、地道な報道も期待したいところです。

前置きが長すぎ失礼しました。さて、本題です。
想定される被害の内容と可能性、さらにそのことを「隠して」いたことが「詐欺」に該当する可能性をも含めて考えるべきでしょう。過失で混入したような事例と、故意で検査だけ通して、別の性能の製品・商品を売却した場合では、法的評価が異なるのは当然であり、事例によっては「詐欺」の成立する場合もあるかもしれません。しかしここでもう少し考えると、企業が組織ぐるみでそのような「詐欺」を働いた場合、しかもそれが長期間にわたって行われた場合、本当は無銭飲食やキセル乗車、釣銭詐欺などよりも社会的には違法評価が高いというべきであるにも関わらず、そのような場合に法は有効な対応ができているのでしょうか、考えておくべきではないかと思います。現行の刑法で、法人そのものを「詐欺罪」であげることはできません。事案によって、特別法の議論もあるかもしれませんが、そもそも「刑法」でそういう処罰ができないことに、現代社会の実態にあった法制度となっているか、特に規制緩和をした後の我が国社会の法制のあり方としてこのままで問題はないか、考えてみる必要がありそうです。同時に、企業側のコンプライアンス上の努力が、刑事その他の責任を考える場合に、その軽減理由として斟酌できる制度を考えてみることも必要かもしれません。例として、金商法の課徴金は法人にもそのまま課せられますが、故意過失を問うことなく課せられ、金額が機械的に算定されるだけなので、コンプライアンスを推進する「インセンティブ」は現在制度上組み込まれていません。(なお、これは米国の連邦量刑ガイドラインのコンプライアンスプログラムの考え方を念頭においた視点での、問題提起です。)コマツのインサイダー取引違反なども、形式主義の弊害がまさに露呈した事例だと思います。
個別事案の実質的な議論とともに、法制度上の現在の限界についての議論も、これらの最近の事案の検討とあわせて期待したいところです。

投稿: 辰のお年ご | 2008年1月27日 (日) 11時04分

のらねこです。

内部通報、内部告発の威力について、改めて実感している毎日です。

内部通報、内部告発をされる方は、「そんなことは、よそでは通用しないよ」と、自分達とよそとのギャップを認識されているのだと思います。
たとえば、社内ルール、業界ルールと世間の常識とのギャップ、あるいは個人、部門の目標達成と会社の目標達成とのギャップがあげられます。

ギャップ感は、今後内部統制、ガバナンス、コンプライアンスのバージョンアップにつながるひとつのテーマではないでしょうか。
世間と業界(自社)との関係について議論する場合を想定して、「健全な企業を維持するための世間」というフレームワークを考えてみてはどうでしょうか。

投稿: のらねこ | 2008年1月27日 (日) 11時53分

みなさま、コメントありがとうございます。

読売新聞社が12~13日に実施した全国世論調査(面接方式)によりますと、食品の安全性に不安を感じている人は計83%に達したとのこと。消費期限などの表示偽装が相次いだことを受けて行った昨年9月調査の計84%からほとんど改善されず、国民の不信感が根強いことを浮き彫りにした、とあります。(2008年1月27日19時03分 読売新聞)
どうも調査結果を詳細にみてみますと、偽装が発覚した業界が増えれば増えるほど、業種を超えて企業の品質偽装全般への疑惑が大きくなっていることが懸念されるところかと思っております。

ただご指摘のとおり「偽装」といいましても、国民生活への影響度といったところはそれぞれ個別の事例において考察する必要があるでしょうし、そこへの行政の介入方法も変わってくるのではと思います。

投稿: toshi | 2008年1月27日 (日) 23時32分

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