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2008年1月23日 (水)

再生紙偽装問題へのいくつかの疑問

製紙業界の業界団体には38社が加盟されているそうでありますが、そのうち23日未明までに公表されているだけで、13社が、いわゆるグリーン購入法に反する「再生紙偽装」を認めておられるようであります。なお、この13社というのも、ほぼ「売上高の多い順番に」というものでありますので、ひょっとすると、まだまだ中堅クラスの製紙会社からリリースが続くのかもしれません。

DMORIさんのご意見に、小僧さんが回答されておられるコメントが実に興味深いので、少しご紹介させていただくと同時に、私なりの疑問(もちろん、関連当事者企業の法的責任を追及するようなつもりではなく、企業における不祥事隠蔽体質への関心に基づく一般的な疑問)を書かせていただきます。

1 なぜ10数年もの間、配合率偽装の事実が発覚せずに、TBSに寄せられた告発文書による質問に至るまで隠蔽できたのか?

小僧さん曰く、

これがかくも長く続いたのは、この不正が一度やってしまったら後戻りが非常に困難だったという特殊事情があります。パルプ配合を変えると、紙の品質は大きく変わります。(古紙パルプとバージンでは、特性が小麦粉と蕎麦粉ほど違います) 途中で正常な配合に戻したくても、今まで偽装していたものを正規配合にすればお客様から品質低下でお叱りを受ける。正当な理由なしに来月から供給を止めますというのも言えない。となれば不正を告白する以外に辻褄が合わない。だがそんなことは出来ないという袋小路でした。

10数年もの長い間、多くの関係者が不正を知っているのに何故か表沙汰にならず、同業他社の出方を探りながらのチキンレースを続けていたのです。

たしかに小僧さんの言われるとおり、一度不正をやってしまったら後戻りができない状況であったことはなんとなく理解できそうなのですが、それでも、これだけ業界あげて偽装が行われていた、となりますと、誰かが(たとえば製紙業界から退職するさいに)良心の呵責に耐えかねて、業界の外へ告発するのが普通ではないでしょうか。私の感覚では1998年ころからは、取引先の大手企業さんは、どこもHPなどで「うちの会社は環境保護に熱心です」といわんばかりに「古紙100%使用の再生紙を利用しています」と書いておられたものと記憶しております。そんなHPを読みながら、製紙業界の方々は、「あぁ、あれって本当はそんなに古紙が使われているわけはないんだよね」といったあたりの意識をお持ちの方が多かったのではないかと推測されるわけでして、そんな状況で約10年もの間、複数の製紙業者からはなんら内部告発のようなものがなかった、ということですと、なんとなく不自然な感じもいたします。それとも、こういった配合率の偽装といった問題は、昨年末の建材性能偽装事件のときと同様に、社内のごく一部のセクションだけが知っているものであって、社内でもそれほど多くの社員が知っているような問題ではない、ということなのでしょうか。(このあたり、あんまりツッコミをいれてしまいますと、「小僧さん」も答えられなくなってしまうかもしれませんが・・・・・・)いずれにしましても、このあたりは不祥事再発防止のためのキモとなる「不祥事構造」の核心だと思いますし、もう少しどなたでも結構ですので、ご意見をいただければと思います。

2 行政は本当に知らなかったのか?

ここまで不祥事が大きくなってしまいますと、私もDMORIさんの同じような意見を持っておりまして、十数年も偽装が慣行化していた、ということであれば、行政も薄々知っていたのではないか、と素直に推測しておりましたところ、小僧さんのお答えは私にも意外なものでありました。

小僧さん曰く、

この件に関して行政には非はありません。

まず第一に、グリーン購入法は制限速度のような義務的な法律ではありませんから、守れないなら官庁向けの商売から手を引けばいいだけなんです。本来は技術的なハードルを越えたものだけが得られる果実を、下をくぐって盗み食いしたというのが真相です。行政あるいは立法府を恨むのはお門違いですよね。

第二に、グリーン購入法を決めたときに、製紙業界側からも意見を言ってますし、それに則って品質の上限規定があったりもします。弁解の余地はありません。

第三に、環境省や経産省は、今までかなり製紙業界にフレンドリーでした。古紙偽装と時を同じくして輸入紙が急増したのですが、それらの紙は不法伐採の森林資源を使っているから、環境にやさしい国産品を使いましょうという方向に世論を導いてくれていたのです。グリーン購入法を始めとする環境政策は、非関税障壁として有効に働いていて、製紙業界はその恩恵に預かっていたのです。

といったような事情ですから、報道されるように行政サイドは今回の事件に怒り心頭なわけで、私は大変申し訳なく思っています。勝手なことを言わせて頂ければ、これ以上彼らの神経を逆撫でる批評は止めてあげて欲しい。いままで我々を応援してくれた人たちが、さらに窮地に陥るのは忍びないですから。

なるほど。(おそらく、このブログを環境省の方が読んでいらっしゃったら、拍手喝采かもしれません)小僧さんの解説はなかなか具体的であり、説得力のあるものといわざるをえないようであります。また、ご自身の業界を擁護するような内容でもありませんので、その信頼性は高いものと拝察いたします。ただ、私の素朴な疑問でありますが、小僧さんがkatsuさんのご質問へお答えされているなかにおきまして、以下のように述べれおられます。

小僧さん曰く、

「業界の常識」というのは、談合的なことではありません。TBSがやったように、古紙配合率は簡単な分析で大まかな推定ができます。お互いに、他社品を分析した上で、「あー、こりゃバージン使ってるな」という推定をして、自社の配合を決めていたのです。みんなで赤信号を渡るときに打ち合わせはしないのと同じですかね。
はがきは、郵政が印刷会社に対して発注するものでして、用紙は印刷会社がそれぞれ手配します。この取引は民間同士の随意契約だと思います。

TBSがどのような分析によって配合率の推定をされたのかは、私も存じ上げませんが、いずれにしましても、それほど高度な分析の技術や経験も不要なままで、とりあえず推定作業は可能なわけですね。そうしますと、たとえばグリーン購入法による古紙配合率が守られているかどうか、といった点につきましては、行政のほうでも、簡単にチェックはできていたのではないか・・・なる疑問が湧いてくるわけであります。「今回の事件に怒り心頭」という行政側の態度が真摯なものであるとするならば、どうしていままで、こういった「素人でもできそうな」分析を行政がやってこなかったんだろうか、という(私の素人考えでありますが)あたりに、少しひっかかるところがございます。新聞報道などによりますと、2006年には「古紙100%」が真実であることを前提として、環境省がCO2削減量実績を公表しているわけですから、「怒り心頭」というのも十分理解できるのではありますが。

3 CSR調達に熱心な取引先は今後どのような対応をとるのか?

最初、日本製紙さんの偽装問題が発覚したときには、大手の取引先の方々も、「環境保護」を重視するスタイルを貫こうとの意思で、日本製紙さんとは一定期間の取引を中止させていただく・・・みたいなことを考えておられたのではないかと思われます。しかしながら、上位から10社くらいまでの、ほとんどの製紙会社が、国民の信頼を裏切るような偽装を長年継続して行っていたということになりましたので、「取引中止」なる決定を下すとなりますと、自社の営業にも大きな影響が出てしまう事態となってしまっております。行政機関であれば、グリーン購入法の基準を変える、ということで対処できるかもしれませんが、一般民間企業の場合であれば、そもそも、コンプライアンス違反の企業から製品を購入する企業の姿勢自体が、国内や海外の消費者からどう映るのか、とても重大な決断を迫られるような気もいたします。このあたり、「背に腹はかえられない」としても、どういった理由をもって各製紙会社さんとの取引を継続されるのか、このあたりはCSR調達があたりまえの時代に、各企業の対応が今後の同種事例への貴重な先例になるのではないでしょうか。(小僧さんだけでなく、またお気づきの点がありましたら、どなたでも、ご意見をいただければ幸いです。まだまだ疑問が尽きませんが、本日はこのあたりで)

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コメント

まず(3.)の点について考えてみました。

たとえば東京電力が不祥事を起こしたからといって、
関東在住の企業/人間は
「それじゃあ、東電の作る電気は使わない」
とは、いえないわけです。
独占的企業、寡占的企業が支配(←経済的意味です)する産業相手に
取引拒否や不買運動は成立しません。

今回の件に於いて「取引中止」ではなく、
大岡裁き的にいえば
75%以上の大幅値引き/値下げセールを行い、或いは無償で在庫を配布し、
製紙会社がその損害を被ることでひとつのケジメになると思います。
むろん株主に対する謝罪はまた別ですが。

だいたい今回取引先や市場から回収された紙はどうなるのですか?
え?不良品でもないのに燃やしますか?それって環境破壊では?
在庫にしておいてほとぼりが醒めた頃、そーっと販売するのでしょうね。
白い紙なのに灰色の色が付いたような商品ですが、でも売らないと
在庫はなくなりません。
それならば、「廉価でセールします、申し訳ありませんでした!」
という(とりあえずの)解決しかないと思うんですけどね。

すみません。ちょっと話がずれました(笑)。


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(1.)の「何故これまで内部告発がなかったか?」ですが、
それは銀行業界をイメージしていただければお分かりかと存じます。
過去10数年間あれだけ不祥事を抱え込んできた世界ですが、
内部告発的なものはごくごくわずかしか出てきておりません
(幾人かの勇気あるひとが告発本を出されたりしてますが)。
銀行マンだけにクチが堅いということもありますが、
古い横並びの、消費者のことを考えた上での競争がない業界では
内向きの論理しか働きません。
それは引退しても同じです。OBになっても関連会社に下ったりします
し、告発しても何の利益もありませんから。それどころか社会的立場を
抹殺されかねませんし。

紙屋さんの業界も極めて保守的な世界で、皆さんプライドがとても
高くてらっしゃいます。特に、ハンカチかハニカミか狐か、の会社さんは
それはそれは末端の一社員までそういう風潮が行き渡ってます
(だからこそ、あの再編は成功しなかったんです)。
内部告発なんかアリエヘン、ですわ(笑)。

投稿: 機野 | 2008年1月23日 (水) 09時51分

あと、製紙業界のみならず、本当の意味で環境保護という問題を
皆真剣に考えてこなかったということがあると思います。
「おかしいな」と思う人は少なからずいても、
それを指摘して改善しようとは思ってこなかった…
(かく申す私もそのひとりです)。
それほど重要なことに思えなかったということがあるのでしょう。

(2.)ですが、
行政側(役人)はおそらく調査する仕組み自体がないか
あっても働かないようになっているのでしょうね。
よほど使命感に燃え真っ当でマジメで能力のある官僚でもいないと
業界が法律を趣旨を理解したうえで守っているかどうか
(形式的ではない)チェックをしたりはしないでしょう。

投稿: 機野 | 2008年1月23日 (水) 09時59分

この前、コピー用紙を大手家電量販店に買いに行ったら、1種類しか置いていませんでした。従来は何社も置いてあったんですが。
そして、「再生紙利用」と記載のあるものが安かったような。
今回は包装紙に「再生紙利用可能な環境にやさしい包装紙です」とのみ記載がありました(消費者に再生利用しろということか?)。

一般消費者は結局従来より、「割高な」コピー用紙を買ったのではないか?と感じました(従来より「品質に」選択余地なく、A4サイズ500枚あたり30円~50円高く感じた)。こうなると本当に500枚か?と思いたくなるが数えるほど暇でもないし(笑)。

あのTOBのときと同じ北越製紙の社長が「売上優先の営業体質が原因」
と言うコメントに、本当にコンプライアンス面で反省した記者会見だったのかな? という感想を持ちました。

次は再生紙ではなく、再生「社」ですが・・・

船場吉兆が再開されて、初日は満席だったようですね。石屋製菓も盛況のようですし。かつてこういったコンプライアンス問題を引き起こした企業が再生できる、となれば、他の多くの「潜在的隠蔽企業」も「実はわが社も・・・」といったことが起きて、長期的には良い方向(価格上げないでね)に行くならば、歓迎すべきことですね。

偽装が発覚して終始一番良い思いをするのはマスコミの社会部だけかな?

投稿: katsu | 2008年1月23日 (水) 11時26分

この問題については、追って冷静な報告書が出てきて欲しいと思います。例えば、私にとっても、次の様な点について真実、実態、背景等を知りたいと思います。
1)再生紙は環境によいのか?
紙パルプは木材であり、再生可能資源である。石油・ガス・石炭の様な化石ではないことから、植林を実施し、資源管理をしていれば、問題ないように思える。
逆に再生紙は、生産工程で薬品・エネルギーを消費する。従い、例えば、再生紙を発電燃料として利用すれば、化石燃料の消費を減少させることから、再生紙とせずに燃料とした方が合理的な可能性はないか。
2)適正再生紙使用率
再生紙利用100%が、なぜよいのか?再生紙という資源も限りがあり、100トンが生産量であれば、50トン100%再生紙利用より100トン50%再生紙利用の方が合理的なことはないのか。
3)グリーン購入法
引用いただいた小僧さんの説明で少し理解できましたが、何故そんな無理な法律が成立したのでしょうか。本来は、市場原理に任せることと、その上で促進策として税優遇や補助金を有効に働かせることと思います。
実際、グリーン購入法に適合するために、高い用紙を購入し、100%再生紙利用に疑問を持ちつつ仕事をすることがあります。
4)諸外国では
製紙技術は、日本でも諸外国でも同じと思うのですが、この問題は諸外国ではどのように取り組まれているのでしょうか?特に、米国及び欧州の環境先進国における取り組みを知りたいと思います。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年1月23日 (水) 12時37分

コピー用紙を買うのも大変ですね。虚偽の表示があるものは売れません、というのを、そこを何とか一つ分けてください、とまー必需品ですから仕方がないですわな。
グリーン購入ネットの21日付の「製紙会社の対応への要望」には、「在庫品や回収された紙製品が、新たな環境負荷増大に繋がらないような適正対処」として、「製品として利用できるものについては、表示を改めた上で利用するよう求めます。」とありますから、市中で品切れになる、というようなことは「最悪な事態」はなさそうですが。もし廃棄となったら「買占め」が出るかもしれませんね。
知りませんでしたが、グリーン購入法の特定調達品目の見直しに関するパブコメが環境省から去年の11月21日にあって、紙製品の古紙配合率等の見直し案が出されているんですね。またグリーン購入ネットのQ&Aでは、古紙配合率100%品の生産が中止され、グリーン購入法適合商品がなくなる、といった趣旨の問答がありますね。これが小僧さんの2、の行政対応の部分になるのでしょうか。
どうも闇の中で葬られるはずのものが、内部告発で表に出ちゃった」という感じなんですかね。
グリーン購入ネットは下記です。各基準が掲載されています。
http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/g-law/index.html
それから、環境保全やリサイクルは、エンドユーザーが一人ずつ着実にやらなければ進みません、企業や行政だけの“仕組み”ではできないように思いますが、紙製品で廃品回収に出しているのは新聞紙とチラシ、段ボール、雑誌くらいですね。包装紙はあまり意識していませんでした。綺麗にたたんで廃品回収に出して、・・・結局、中国へ輸出されちゃって、中国製再生紙で戻ってくるんですかね。

投稿: TO | 2008年1月23日 (水) 13時10分

毎日新聞社のHPで「100%の再生紙はもともと不可能」「グリーン購入法検証不在」の記事を読みました。日本郵政は技術限界を考慮して基準を下げる検討を始めたとあります。
四国の友人が事業経営の傍ら、省エネとCO2削減努力の理解と普及をボランティアで推進しています。今回の話を仕向けてみたら行政はチェックしておらずほとんど企業任せ──しかし、環境省がこれからようやく重い腰を上げて監視しようとしているようだと言っておりました。

十数年の虚偽存続と十数年の虚偽未発覚と言うのは──
やはり行政に監視する責があったのではないかと思います。制定しただけでその実効性を確かめないのは如何なものでしょう。今回の偽装実施者たちの責任は責任として厳格に追求されるとしても、このような制定しっぱなしで監視のないシステムがまかり通っている事に背筋を寒気が走ります。これも行政の隙間だったのでしょうか。

DMORIさんの制限速度違反のメタファーによる指摘は非常に良く分かります。法令順守といってもその程度の認識がまかり通っているのはほんとうにそうだと思います。こうなってくるとやっぱり「倫理」とか「道義」とか人の根性の問題に見えてきます。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年1月23日 (水) 13時54分

みなさま、ご意見ありがとうございます。まだ執務中ですので、簡単な感想のみで失礼します。

食品偽装、性能偽装など、内部告発を伴ってメーカーの製造物に関する品質へのクレームが世間を騒がせるようになったのは、ここ1,2年のことなので、やはり1998年ころから「認識していた」としても、そもそも「内部告発」へ結びつくような風潮が社内にも、また社外にもなかったのかもしれませんね。おしなべて企業の不都合な真実を隠蔽することの「コンプライアンス違反」の意識は今世紀になってから・・・ということなのかもしれません。と、いうことで機野さんの言われるように、「環境保護というものを真剣に考えてこなかったこと」が、長期にわたって発覚しなかった原因のように思えてきました。

船場吉兆の件ですが、ここはずいぶんと社会的に叩かれましたが、そもそも社会的な評価を落としても、常連さん方がいらっしゃいますので、営業を再開すれば本店にはお客さんが来てくれると思います。ただ、問題は、今後接待として利用されるかどうかだと思います。おもてなしする方が、民事再生法適用会社を利用するかどうか。かつて川久が倒産したときも、ずいぶんと値段を下げてホテルの運営をされていましたが、あまり芳しくなかったようでした。「ブランド力」は、一時的な不祥事よりも、民事再生手続によって毀損するような気がしますが、いかがでしょうか。

(3)に関するみなさまのご意見については、また別の機会に(もうすこし動向をみはからって)コメントさせていただこかと思っております。

投稿: toshi | 2008年1月23日 (水) 18時05分

こんばんは。
一昨日から好きなことを書かせて貰っていますが、当事者が評論家然にベラベラ言いやがって、と不快に感じる方もおられるかと思いますが、そこは平にご容赦ください。

また、TOBの時と同じく、皆さんからお寄せいただいたご質問、ご意見にたいして答えたいことが山のように沸いおりますけれど、今回も整理しきれずに書き漏らしが出ますが、こちらもお許しください。

さて、まずはtoshiさんの疑問から

1.ですが、今回のようなシリアスかつショッキングな内部告発は確かに初めてではあります。しかし、逆に少しでも紙に関連している人たちにとっては「周知の事実」でありまして、「激ヤバ」エントリの機野さんのコメントは大いに頷けるものです。行きつけ飲み屋で、あるいは気の置けない友人に、「いやー古紙100%なんて言ってるけど、あれインチキだから」と言っていた製紙業界の人間は、私も含めて万単位でいたと思います。

これはあくまで私の感覚ですが、こんな状況でしたから、これはあえて義憤にかられて内部告発するほどのネタでもないという域に達してたと思います。初期のころにはそれなりに告発などもあったのではと想像しますが、時代が大らかだったのか手法が甘かったのか、燃え広がることがなく収まったのでしょう。

もし去年までに更新されたWEBページのみを検索できる機能があれば、「古紙配合 ウソ」といったキーワード検索で結構な数がヒットするのじゃないでしょうか。車の馬力表示の嘘のように、知っている人は知っている話となれば、私なら会社に恨みがあってもこのネタでは攻めなかったでしょう。

2.です。これは全くの想像になりますが、行政の担当官は、100%が100%じゃないことくらいは知っていただろうとは思います。しかし、ここまで乖離が激しく悪質だったのは想定の範囲外だったでしょうね。せいぜい、それこそ馬力表示のように1~2割の、苦しいながらも言い訳がたつ程度のゴマカシだと見ていたのじゃないかと思います。

古紙の分析ですが、「簡単な分析で大まかな推定ができる」ものの、実は「どんなに精密な分析をしても本当のところは分からない」んです。分析手法は染色と顕微鏡観察で、古紙っぽいものとバージンっぽいものを数えるのですが、「ぽい」だけでは断定には至りません。やり方は書きませんが、コストさえかければ、合法的にバージン100%と同等な超高品質の古紙100%紙を作ることも可能なのです。なので本当に真実を調べようと思えば、抜き打ちのガサ入れで製造工程をチェックするしかないのです。

監督官庁は法がある以上はきちんとチェックせよという話にもなりましょうけれど、そもそもグリーン購入法は善意の輪を広げて環境を保護しようという、緩やかな精神の法律なんです。これに厳しいことを作り手に突きつけて負担を増やせば、立ち入り検査だなんだとやれば、本来の目的である古紙利用の増加がスポイルされる懸念さえあります。今回の不正の原因を環境省の不作為と攻め立てるのは、違うと思うんですよね。

一方、今回明らかになった不正に対しては、我々は独禁法、不正競争防止法、詐欺罪などなど、あらゆる法律によって法人なり個人なりが厳密に裁かれるべきだろうとも思います。

3.はどうでしょうか。目先の緊急対応としては、TOさんが書いてくださったようにグリーン購入ネットワークが言うような、落ち着いた対応をして頂けたらと、製紙メーカー側の私は思います。いずれにせよ、ユーザーの皆さんに大変なご迷惑をお掛けしたことに、深くお詫びを申し上げます。

投稿: 小僧 | 2008年1月23日 (水) 22時23分

>>ある経営コンサルタントさん

私が今回の事件後に一番驚いているのが、「本当は再生紙は環境にやさしくない」という主張がweb上にたくさん見受けられたことなんです。

これは今でも諸説ありますし、古紙の使い方によっては確かにバージンの方がマシというケースも一部あるのですが(騒動の発端になったハガキはこれ)、私は古紙の利用率を上げることが環境に良いと思っています。。

今の古紙利用率は、全世界で見て50%くらいだと思いますが、これをやめてバージンで賄えば、森林資源はすぐに枯渇するでしょう。最近は中国やインドの紙使用量が急増しています。現在でも一部の海外製紙メーカーは違法伐採の天然林を使って間に合わせている状況ですから、今後はもっと古紙利用率を上げていかないと、森林再生サイクルが間に合わないと思います。

また、紙を生産するためのエネルギーや薬品は、バージンパルプよりも古紙パルプのほうが少なくてすみます。バージンは、パルプを生成する時に出てくる木の副生成分を燃やしてエネルギーを作れるから、その分を差っぴくと再生紙よりも投入エネルギーが減るのです。これをことさら強調して、バージンの方がCO2排出が少なくて環境に優しいとの説が蔓延しているようですね。しかし極端な話、全ての紙を再生紙にして、それを作るエネルギーはバージンパルプになるはずだった木の一部を燃やせば、CO2排出はゼロで森林消費も最小となって、最も環境に優しく紙を生産できるはずです。これはパルプ繊維の傷みのため現実には不可能ですが。

古紙100%とバージン100%を50tずつ使うよりも、古紙50%を100t使えば良いじゃないかというご指摘は、全く正しいと思います。古紙100%の印刷用紙というのは、一昔前の古紙余りでゴミ問題が深刻だった時代に、古紙利用率を上げるためのシンボルとして生まれた商品で、正直なところ作りにくいですし、使う側、特に印刷会社はご苦労されてますので。

そこで最近は、集めた古紙を使い切ってなお足りないくらい利用率が上がってきたので、無理に100%品に拘らずに、70%くらいの作りやすい使いやすいものを増やして行きましょうという流れになっています。グリーン購入ガイドラインを改正して、良い方向に向かおうとしていた矢先に、この不正発覚で水の泡になりました。我々の自業自得ですが。ガイドライン改正の動機に、偽装隠し(というよりは、不正状態からなんとか脱却したいという足掻き)も含まれていたことは否定しません。しかし、決してそれだけではありません。

外国はどうか?法制度は分かりませんが、各国とも古紙利用率は高いですよ。特にドイツあたりは古紙100%の紙を大量に使っています。

投稿: 小僧 | 2008年1月23日 (水) 23時19分

>>小僧さん

私の疑問に対するコメントをありがとうございます。

お門違いの悪者たたきで終わってしまい、必要で合理的な対策が失われることは、悲しいことになると思い書いた次第です。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年1月24日 (木) 12時10分

小僧さんと異なる見解の立場から、以下の部分について僭越ながら指摘をさせて頂きます。

>監督官庁は法がある以上はきちんとチェックせよという話にもなりましょうけれど、そもそもグリーン購入法は善意の輪を広げて環境を保護しようという、緩やかな精神の法律なんです。これに厳しいことを作り手に突きつけて負担を増やせば、立ち入り検査だなんだとやれば、本来の目的である古紙利用の増加がスポイルされる懸念さえあります。今回の不正の原因を環境省の不作為と攻め立てるのは、違うと思うんですよね。

とりわけ以下の部分ですが──

>グリーン購入法は善意の輪を広げて環境を保護しようという、緩やかな精神の法律なんです。これに厳しいことを作り手に突きつけて負担を増やせば…

そうであれば今回の世間の反応は過敏過ぎると思われます。
(構造計算偽装から端を発して食品偽装等立て続けと言うのはありますが)
いや──今回のような表示と実際の乖離の甚だしさには目にあまるものがあり、それはいくら穏やかな精神の法であっても見逃すわけには行かず、これだけの社会問題になるのだと言う事であれば、告発により初めて表沙汰となった今回の多年にわたる偽装について、法や規制を制定・施行する側がこのような潜在的な問題の可能性、あるいはリスクをまったく想定していなかったと推定してよいかと思います。──とすれば法制側の立場にあっては難ありとの指摘を免れ得るでしょうか。

検査にしても、製造現場への抜打ち・立入検査などのようなドラマティックなものではなく、納品された再生紙のサンプルをそれなりの分析機関に委託して配合比を分析してもらうだけで十分監視出来たのではないかと考えます。
このようなモニタリングがもし可能であれば、作り手に負担や影響を与える事なく、製品の品質検査よりずっと荒い精度でのサンプリング検査、例えば隔月で循環的に小規模な母集団で試験するようなもので十分監視可能でしょうから、費用も適正レベルになるのではと考えます。

ところで──これらの記載は別に野党のような行政批判を専一としたものではなく、法や規制を個人や企業に与える立場たる者が、施行後の調査を行なわないのはその職責をまっとうする点からいかがなものかと考えるものであって、ここから大いに横道にそれますが、一方では金商法や会社法で内部統制をあれほど指導・遵守させようと言う者(当事者当局ではないですが)が、規則を作って監視はなしと言うコントロールの存在しない「設計上の欠陥」のような法令を与える──グリーン購入法の主旨にはもちろん賛成ですが…まだまだなんだなあ、何やってんだろうと思った次第です。

toshi先生がお書きのように環境配慮をあまり考えていない点はあると思います。環境を考えると言うのは、国(々)を考える、と通ずるものがあると思います。私も友人の影響で最近ようやくCO2排出削減等を考えるようになり、個人レベルで取り組んでいます。しかし──先に記載しましたが廃家電、廃プラの扱いを知り、いささか愕然とします。

さて──長くなっていますが、ついでに明言させて頂くと、行政側が今回の事件の原因を作った等とはまったく思っておりません。あくまでも企業が行なった法令無視・違反が事実としてあります。もし、再生紙製造の技術的な問題が軽微であったなら、企業は表示配合比に近似の再生紙を今も納品し続けていたわけですから。
ただ、先に記述したように法の効果をまっとうするための監視等を当局が行なっていれば、とっくに分かっていたではないかと言いたいだけです。たしか──記憶ですが省エネ製品は環境省が目を光らせていたはずです。

蛇足ですいませんが、先日の内部統制研究学会のシンポジウムで不正のスキーム、トライアングル構造と言うのが紹介されていましたが、今回にも適合するのでなるほどと思った次第です。
圧 力…技術的に困難な再生紙の納品要求、それをこなさないと売上を相当に失う
機 会…他社が偽装表示で出荷したと知る、それならうちも出来るからと売る
正当化…他社もやっているから、うちだけではないから、品質が良くなってるんだからと思う

投稿: 日下 雅貴 | 2008年1月24日 (木) 12時18分

DMORIです。
日本郵政は、はがきに「再生紙」と表記することをやめると、発表しました。古紙配合率でインチキしていない業者に代えようにも、すべての製紙メーカーが偽装していたため、法令順守を徹底するとはがきが発行できなくなってしまう、という説明です。
赤信号を全員が無視していたので、とうとう赤信号をはずすことになったようなものです。これはコンプライアンスや内部統制を考える上でも、非常に示唆に富むケースになったと思います。

内部統制やセキュリティも、社員があまりにも守れないような厳しいルールを作っても、人間は必ず抜け道を見つけ出して、それがやがて本流になり、常識になっていくものだという、摂理といってもいいようなものです。

ジュラシックパークの第1作で、人間が恐竜を遺伝子操作をして繁殖をコントロールしようとしても、「生物は自ら生きる道を見つけ出す」という主張が描かれていて、私はあの映画の優れた示唆としてずっと記憶にとどめていました。

J-SOX対応に走るあまり、だんだんルールのためのルールを作り出し、仕事のための仕事を作って生産性を下げていないか、4月スタートが秒読みですが、内部統制という錦の御旗に縛られることなく、企業人はよく心すべきです。

金融庁の実施基準そのものにも、内部統制にはもともと限界があるので、アリ1匹通さない内部統制でなく、コストと仕事の利便性のバランスをとることが大事だと述べているのですから、コンサルタントや監査人のコメントに踊らされることなく、企業の生産性や競争力を落とさないアサーションが、最も大事です。

投稿: DMORI | 2008年1月24日 (木) 12時49分

>>日下さん
示唆に富むご指摘、ありがとうございます。

私は法律も行政論も全くの素人ですし、ああは書いたもののお役所が大好きということはなく、普段は報道ステーションなんぞを見ながら社会保険庁の○×△めが、死んでしまえ!などと悪態を突いている人間です。

なので特に環境省にカタ入れするわけではないんですけれど、グリーン購入法というのは、条文を読むと役所の内規に毛が生えたようなものに思えます。成立の時代背景も考えますに、「メーカーさんが環境に優しい製品を売るのに苦労してるみたいだから、俺たちは贅沢言わずに良いものを率先して買ってあげましょうよ」という趣旨で、あくまでも「購入法」で買う側の行動を規制するための法律に見えます。

そこに、今回の我々の不祥事のような酷い事例が出てきたわけですけれど、これは環境問題以前の、商道徳にもとる詐欺行為でありますから、もっとベーシックな行動規範である不正競争防止法あたりで、徹底的に結果責任を問うのが筋じゃないのかな、と思っているんですね。

ただそうはいっても、今回のように業界全体がお互いの動向を察知しつつ不正を重ねたということですから、こんな事態になる前に業界団体主導でクロスチェックの仕組みを整備すれば、日下さんのコメントにある「機会」を潰せたのになぁと、結果論として思います。ならば、グリーン購入法も時代に則して改正して、きちんと業界内部でチェックする仕組みを作らないと対象商品にしないよ、くらいの規制は入れるべきかもしれませんね。

投稿: 小僧 | 2008年1月25日 (金) 00時04分

>小僧さん

真摯な回答を頂きありがとうございます。
別エントリで拝見しましたが「ルビコンの川」に喩えておられました──
そうなんですか…

さて拝見しまして──私自身が「グリーン購入法」を読んでいない事に気付かされまして読みました。
それに関する話に向かう前に、仮にこれが自治体等の内規等の位置づけだったなら、話は随分変わってくるかなあと考えました。もしそうなら、これは自治体等の自主的な取り組みであり、その善意な姿勢を踏みにじった企業の罪は卑劣な商法として断固糾弾されるべき、とストレートに感じるかもしれないと自分の中のロジックが変わるのが感じられました。

では、グリーン購入法ですが条文を以下に引用します。

(環境物品等に関する情報の提供)
第十二条 物品の製造、輸入若しくは販売又は役務の提供の事業を行う者は、当該物品の購入者等に対し、当該物品等に係る環境への負荷の把握のため必要な情報を適切な方法により提供するよう努めるものとする。

第十三条 他の事業者が製造し、輸入し若しくは販売する物品若しくは提供する役務について環境への負荷の低減に資するものである旨の認定を行い、又はこれらの物品若しくは役務に係る環境への負荷についての情報を表示すること等により環境物品等に関する情報の提供を行う者は、科学的知見を踏まえ、及び国際的取決めとの整合性に留意しつつ、環境物品等への需要の転換に資するための有効かつ適切な情報の提供に努めるものとす
る。

(国による情報の整理等)
第十四条 国は、環境物品等への需要の転換に資するため、前二条に規定する者が行う情報の提供に関する状況について整理及び分析を行い、その結果を提供するものとする。
------------引用終わり------------

第十四条は国が今回の企業の提供した再生紙の古紙配合率を整理・分析して結果を提供する必要ないしは義務がなかったのかな、と思いました。
それが必要だったとすれば、法令としてはチェック機能を盛り込んでいたわけですからある意味で少し安堵します、「設計上の欠陥」は基本的にはなかったようですから。

他方で、これも前述の必要ないしは義務があったとすれば、この条項が適切に履行されていなかった──正に内部統制で言う「運用上の不備」であり、その結果の重大さから「運用上の重大な欠陥」があった事を認めざるを得ないのかと思いました。内部統制の限界の余地はなく、いわゆる統制逸脱に該当するのでしょうか。
ただ、「国」と書いてあるところがどうも…どこの官庁か不明ですから、担い手がいなかったと言う事は行政の隙間に落ちた条文であって、やはり「設計上の不備」になるのでしょうか。別資料を見ても「国(政府)」としかありませんでした。それにしても「情報の整理、分析」の解釈が微妙ですね。

この義務と言うか機能が果たされて、国が企業に対して「おい、この古紙配合率ほんとか!」と言っていれば、まあ報道はされたかもしれませんが、十数年の放置と言う大事にはならなかったわけですね。先に記載した不正のスキームのトライアングルで言う「機会」は直後に消滅したのでしょうか。
でもこれだけの騒ぎになったからには、今後はより良い環境配慮が進むと思います。やはり大事なのは「内部統制」、なかんずくモニタリングだなあと実感します。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年1月25日 (金) 12時21分

「グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)」は、第三条で「国及び独立行政法人等は、物品及び役務(以下「物品等」という。)の調達に当たっては、環境物品等への需要の転換を促進するため、予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品等を選択するよう努めなければならない。」と定めており、法自身は比較的穏やかだと思います。

しかし、省令にまでなっているかは、確認していませんが、国及び独立行政法人等によるコピー用紙の購入の際の仕様は以下です。
「コピー用紙」
「【判断の基準】
①古紙パルプ配合率100%かつ白色度70%程度以下であること。
②塗工されているものについては、塗工量が両面で12g/㎡以下である
こと。」
こんなことを書いたのは環境省の役人ではないかと私は思うのです。

実行不可能なことを強制してはならないと思います。「実行」とは単に物理的に可能かではなく、古紙の資源量、コスト、市場での流通等の全てを考えて合理的かの基準も入ります。そもそも、製紙会社が利益を無視するぐらいはよいとしても、損失を負担してまで、振り回せれることが正しいのでしょうか。業界が再生紙の価格上昇を計り、適正利益を得ないから悪いのだと言ってしまえば、それまでですが。

別の言い方をすれば、契約通りの物品を納入しないことや、不当表示は製紙会社が悪い。しかし、グリーン購入法に違反していたと言って良いのでしょうか?(もし、環境配慮をしていたならば)

炭素税に産業界は反対しています。でも、もしかしたら、無理矢理に政府が基準を押しつけるより合理的ではないかと、今回の問題を考えると、思うのです。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年1月25日 (金) 12時24分

某製紙会社の末端社員です。

今回の偽装が、食品の偽装と少し違う所は、いい原料を使って、欠陥の無い品質の紙作った為に、怒られたという事に、
多くの業界人が、「えっ?」と思ったのではないでしょうか。

それが、偽装にあたる事に、「そうなの?」思った方々も多いのではないでしょうか。

たぶん、欠陥0というのが、日常の製造現場の最大目的になっていると思います。
たぶん、その紙会社の人間として、猛烈に染み込んだ認識が、再生紙の古紙混入目標値より優先していた事は確かだと思います。

たとえば、幅6m、毎分1000mとかで抄いているわけですけど、
たとえば、1時間360000平米程作られる紙に、2mmぐらいの油欠陥が1~2発、発生しただけでも、暑いドライヤの中まで大捜索が繰り広げられる程厳しいですから。

ローレベルな、会社内の一般常識からすると、(今は、厳密に、正しいのかわかりませんが。)
少し前は、古紙の配合を増やす方がコスト的にも、メリットがあったので増やせるものなら配合率は増やしたかったはずです。
長い間、高いバージンパルプ系の原料を使うと損になると教えられてきました。

現場的には、たぶん、紙欠陥トラブル対処を伝統的に優先させて来たはずです。ちり、かす、穴など多様な紙欠陥の発生の要因を古紙は結構抱えています。
(トラブルが発生すると、原料の配合バランスを調整して、いい方向に持っていきます。)
ヤードに集められた古紙の束を見ると、古紙の品質も落ちてきている気もします。

とりとめもなく書かせていただきましたが、
レベルの低い話で申し訳ありません。

投稿: 末端社員 | 2008年1月25日 (金) 22時35分

末端社員さん、はじめまして。
そちらのブログ(カイトフォトなるものは初めて知りました)を拝見しまして、静岡県あたりの製紙会社の方ではないかと想像しております。
小僧さんのコメントでもご指摘があったかとは思いますが、こういった不祥事事例においては、「社員はこう思っていた」と一律に決めてかかってはいけないことを少しだけですが、認識できたような思いです。「品質優先」という日本製紙社長の言葉は、こういったところにあったんですね。私は言葉尻をとったかのように、エントリーのなかでは「品質優先は環境製品を作って初めて言えるもの。環境レベルの製品を作ってもいないのに品質優先とはおかしいのではないか」と申し上げましたが、「欠陥0」に向けた社員の方々の熱意というものが、それほどのものであるならば、あの社長さんの「品質優先」なる言葉は社員の方々の熱意を代弁していたのかもしれません。
ただ、だからといって消費者への背信である、という事実は拭えないところでありまして、コンプライアンス経営のむずかしさをまた認識したような次第です。
参考意見をいただきまして、ありがとうございました。

投稿: toshi | 2008年1月26日 (土) 01時53分

末端社員さん はじめまして。DMORIと申します。
コンプライアンスを考える上で、とても参考になりました。

>いい原料を使って、欠陥の無い品質の紙作った為に、怒られた
>多くの業界人が、「えっ?」と思った
という現場の感覚が、よく分かりました。
今回の再生紙偽装が発覚した当初の、日本製紙さん(でしたか)の記者会見で、「品質を優先させてしまった」というセリフがあったのですが、私ども製紙業界外の者には、違和感があったのです。
「偽装品を作っていたのに、品質を優先させたという発想は、どこから来るのだろう」と思ったのです。

しかし製造現場で仕事をしている方には、あのセリフは自然だったわけですね。

コンプライアンスという観点からすると、「悪いと思ってやっている」よりも「悪くないと思ってやっている」ほうが問題が深いのです。
速度40キロ制限の道路があっても、ほとんどの人は60キロくらいで走っています。
「違反していて、まずいなあ」と思いながら運転している人はほとんどいません。「この道路で40キロ制限にしていることじたいが、おかしい」と考えて、自分の判断で60キロで走っています。
したがって、たまに取り締まりに遭遇して反則金を取られても、40キロ運転に変わることはなく、「取り締まりに引っかからないように、注意しよう」の意識を高める程度です。

クルマの流れは、多くの人がスピードと安全のバランスを考えた平均的な判断で、自然に決まってくるもので、常識に反する40キロ制限を守らせるためには、常時厳しく取り締まりをするか、40キロで走るのが良いことだと多くの人が思う、文化を創るしかないということです。

コンプライアンスを企業内に定着させる上でも、いかにそうした文化を醸成していくかが、キーになるのだと、考えさせられます。
※決して、末端社員さん個人を批判しての意見ではありませんので、ご了解ください。

投稿: DMORI | 2008年1月26日 (土) 08時32分

紙加工業者を中心に、我々のお客様に想像以上のご迷惑をお掛けしているようです。この週末も返上で、他人の不祥事の始末をされておられる皆様に、重ねてお詫び申し上げます。

>>ある経営コンサルタントさん
①古紙パルプ配合率100%かつ白色度70%程度「以下」であること。

紙の白色度という数字は、100%真っ白、0%真っ黒であります。この白色度規格は品質の上限を定めるものであって、これをもって買う側のエゴを抑えましょう、メーカーに協力して上げましょうという意図があるのです。

70%がどういうレベルかというと、身近なところでいうと普通の白い紙が80~90%程度、新聞紙が60%程度でありまして、70%はスポーツ新聞くらいのモノだとお考えください。これを古紙100%で作ることは、実は普通の技術で実行可能なのですね。たぶん、この規定を作る時に、製紙メーカーの意見も聞きながら妥当な水準として設定したのでしょう。

現実には、製紙メーカーと中間業者さんで取り決める、白色度以外の品質要求(チリと呼んでるソバカス様の微小欠陥数や、紙の剛性、インクの乗りなどなど)が厳しくて、技術的なハードルが高かったのは事実です。

>>末端社員さん
製造現場の皆さんは、今回の騒動で日本製紙の中村さん以外の各社社長が「知らなかった」あるいは「去年から薄々知っていた」などと言っていることを、どのように見ておられるか、教えて頂けませんでしょうか。

投稿: 小僧 | 2008年1月26日 (土) 17時23分

>> 小僧さん

またまた、ご説明をありがとうございます。基準を作るに際し、役所は業界の意見を十分に聞いて、作成したと私も思います。その際に、狭く作りすぎたのだろと思うのです。原料となる古紙やスクラップの価格は大きく変動とすると私は思います。原料古紙といっても、品質が様々だし、役所が自ら購入する製品の品質を規定すれば、その製品販売量は伸びてしまう。

マーケットを読むことは難しいのですが、その後の調査、モニターを行うことは可能であり、常に変更を加えておかねばならなかった。だからこそ、個別の物品の基準については、国会に諮らず関係省庁のみで決定できるようにしていた。

蛇足ですが、ダボス会議の首相のスピーチに関しても、内容を考える前に、実効性や実現性に疑問を感じてしまいました。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年1月27日 (日) 10時53分

toshiさん、DMORIさん、小僧さん、私の意見にも、色々お考えいただいたようで、どうも恐縮です。
今回の事で、ニュースサイトの記事を見ても、単純に「偽装」の文字ばかりが目立ったもので、
ちょっと衝動的に、私の違和感を書かせていただきました。

この数日の書き込みを読ませていただいて、各人の方が、色んな切り口で議論されていて、なぜか癒されました。

私は、機械工学系のコンプライアンスの方が身近なのですが、一連の記事から、こちらのコンプライアンスというものへの理解も大分理解が進みました。
(今後、グリーン購入法などにも、少し目を通していきたいと思います。)

こちらのコンプライアンスでは、企業側の柔軟性が求められているんですね。

ここ2年程で、仕事も、法規制とかと向き合う機会が増え煩雑になり、「ここまでするの?」と思う事もありましたが、今後、納得して仕事と向き合えそうです。
皆様どうも、ありがとうございました。

小僧さん、製造現場方々の思いの件ですが、すみませんが、あんまり聞かないです。(雑談の余裕もないので。)
今後もなにかと大変そうですが、遠方より応援してます。

PS 大阪といえば、風力的コンプライアンス性に優れたふとん凧という大きな凧があります。ぜひ一度どこかでご覧下さい。

投稿: 末端社員 | 2008年1月28日 (月) 23時57分

末端社員さん
こちらこそ、現場の方の率直な意見、ありがとうございます。机上で考えたものが現場で通用しないことは普段の業務のなかで重々承知しているつもりなのですが、現場の方の意見がなければ、「何が通用するのか」さえわかりません。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。

ふとん凧で検索しましたところ、最初に末端社員さんのブログが出てきますね(笑)ほかの方のブログで拝見しましたが、ずいぶんと大きなものまであるようで、驚きました。これが大阪名物なのですか・・・・

投稿: toshi | 2008年1月30日 (水) 12時12分

検索してみると、確かに私のページが出てきました。
なんか非日常的な写真が多いですね。(苦笑)
大阪名物とは、私が勝手に認定しているだけです。
大阪の小柄な女性の方が、パワフルに作られています。
是非、公にも、認定してあげてください?。

思えば、皮肉な事に、「顧客満足度↑。」という標語を、この事件以前に、よく見た気がします。
テコ入れする力点にずれがあったんですね。

今週は、お昼休みにコンプライアンス関係のネット記事を読み初めています。
今まで縁遠い分野と思って気ましたが、面白みが出てきました。ありがとうございました。

投稿: 末端社員 | 2008年1月31日 (木) 00時19分

>紙屋さんの業界も極めて保守的な世界で、皆さんプライドがとても
>高くてらっしゃいます。特に、ハンカチかハニカミか狐か、
>の会社さんはそれはそれは末端の一社員までそういう風潮が
>行き渡ってます。内部告発なんかアリエヘンですわ(笑)。

そうでもないようですよ。

http://diamond.jp/series/scoop/20080222_1/


社員にコンプライアンスを指導する企業のトップが国の役所にウソを報告した訳ですね。社外監査役もウソの報告に加担した訳ですね。
内部からリークした社員の方がトップよりもよほどコンプライアンス意識があったのかもしれませんね。

投稿: ウソはいかんわ | 2008年2月22日 (金) 21時01分

むしろこのことは救いかもしれません。そう捉えたいと存じます。

当該企業において、告発者の犯人捜しに血眼になるようなことがないこと、
そして告発者が社会的に抹殺されたりするようなことがないことを
祈るばかりです。

投稿: 機野 | 2008年2月25日 (月) 18時00分

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