内部統制報告制度・新春座談会記事
☆日曜日にもかかわらず、たくさんコメントを頂戴しておりまして、お返事をなかなかできずに申し訳ございません。かなり長文の熱いものが多いので、ひとつひとつ拝読させていただいております。また適宜お返事を書いたり、次のエントリー続編でご紹介させていただきますので、なにとぞご容赦ください。☆(以下、本論)
「会計・監査ジャーナル」2月号と「旬刊商事法務」新春合併号では、それぞれ内部統制報告制度に関する実務上の諸問題を中心とした座談会記事が特集とされております。会計・監査ジャーナルでは内部統制監査実務指針(確定版、監査・保証実務委員会報告第82号)の要点解説を中心として、また商事法務では「会社法と金融商品取引法の交錯と今後の課題(上)」として、財務報告に係る内部統制制度への対応なる副題が付いております。なお、「ジャーナル」2月号は「内部統制特集号」なる別冊仕立てとなっておりまして、これまでの内部統制監査実務指針(第82号)確定までの過去の座談会記事も再録されていたり、関連基準なども資料として掲示されておりますのでたいへん便利です。内容的には、どちらも内部統制報告制度に携わる方々にはたいへん参考になるところが多いと思いますが、私が弁護士という立場だからでしょうか、やはり商事法務の座談会の論点整理が、これまでこのブログでも何度か議論されてきたところを含んでおりますので、理解しやすかったように思います。とりわけ内部統制審議会の作業部会員でいらっしゃった方の発言内容は、これまであまり採り上げられなかった論点にもかなり踏み込んだものであり、企業担当者の方々にはとても参考になるのではないかと思います。また東証の執行役員の方の発言部分(少ないですが)には、内部統制報告制度における有効性評価と適時開示の関係にも言及されており、内部統制の不備(有効性判断?)と開示に関する新たな話題になりそうであります。
両座談会記事とも、あまりに関心の高い論点が「てんこもり」でありますので、また追って関連エントリーのなかで触れさせていただきます。なお、社外監査役という立場から一言感想を述べますと、いずれの座談会におきましても、監査役制度と内部統制報告制度との関係について、踏み込んだ議論がされればよかったかなと思いました。(商事法務さんの座談会では、「内部統制報告制度と監査役監査」に関する議論に及んでおられますが、読まれた方はおわかりのとおり、某教授の爆笑ツッコミで終わっているような気もいたしますが。こういったツッコミは個人的には大好きです。(^^; 紙面の都合上やむをえなかったのでしょうかね・・・)現時点で細かい理屈を議論するよりも、制度が動き出せば当然にまたいろんな問題が発生するのですから、そういった問題への対処を積み重ねるなかでまた全体の整理をしていくべきなのかもしれません。ともかく金融商品取引法の企業情報開示制度の一貫として規定されている趣旨だけは常に見失わないようにしたいものです。
また、中小の上場企業と経営者評価、監査人内部統制監査の関係について、なんらかの言及があるかな・・・と予想しておりましたが、いずれの座談会でも言及されておりませんでした。ここは平成19年2月15日意見書前文でも触れられており、また金融庁Q&Aの第20問でも金融庁回答が付せられているところでありまして、たとえ抽象的な指針でもいいので、なんらかの監査実務指針のようなものがあるといいのですが。(もし、私の見落とし等ありましたら、またお教えいただければ幸いです)米国SOXの実務(上場企業の70%の企業が免除措置を受けていること)からしましても、中小規模の上場企業には、それなりの代替基準の目安のようなものがあってもいいように思います。さらに、「重要な欠陥」の評価方法等は、いずれの座談会でも議論になっておりますが、トップダウンのリスクアプローチを基本とする経営者評価の基準など、それこそ世界ではじめてであり、経営者サイドも、監査人サイドも「いままで経験のない業務」(上記商事法務で「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の論稿を著されている持永先生のお言葉)でありますので、今後さらに突っ込んだ議論を期待したいと思うところであります。たとえば、「不備かどうか」とか「重要な欠陥かどうか」とか、「不備がいくつ併合されると重要な欠陥となるのか」など、もし監査人と経営者で意見が分かれた場合には、どうしたらいいのでしょうか。3800社の上場企業のほとんどが「有効と評価される」ような運用であればいいでしょうけど、この座談会でも話題になっておりましたように、ある程度の企業が「重要な欠陥がある」とされるのが健全な運用だとするならば、やはりこのあたりの論点を議論しておく実益はあるのではないでしょうか。(監査人が四半期報告内容の修正などの「結果」からみて「不備」を判断するのであれば、期末に近いところで「不備」や「重要な欠陥」などが問題になってくる場面も想定されるでしょうし、単に日ごろから監査人と経営者で内部統制に関する協議を重ねていればいい、という単純な問題ではないように思われます)
以前、ルールベースとプリンシプルベースによる規制の使い分けについて、別エントリーで触れましたが、金商法上の制度である以上、内部統制報告制度においても、これを検討する必要があるのでしょうね。法律家と会計専門家、経営者の間におきまして、金商法上の内部統制報告制度のあり方をどうみるべきか、金商法で内部統制評価監査制度が採用された趣旨をどう考え、それを具体的な仕組みにどう生かすべきか、それを企業の経営者やモニタリング担当者がどのようにわかりやすく運用していくのか、といったところを今後も検討していかなければいけないのかもしれません。
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