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2008年2月 1日 (金)

サンプリングテストはコンプライアンスに通用するのか?

(1日午後 追記あります)

中国製ギョーザ事件は、昨日エントリーした時点では想像もつかなかったような騒ぎになってしまったようで、その全体像を概括するにはまだ時期尚早なようであります。日本では400件ほどのギョーザ食中毒事例が確認されている・・・ということでありますが、当の中国では有機リン系殺虫剤「メタミドホス」はサンプルテストでは検出されなかった(日経ニュース)、との結果が報告されております。しかし、この記事を読みまして、違和感を抱いた方はおられませんでしょうか?「サンプル検査」で検出されないことで満足できるのでしょうかね?たまたまサンプルでは検出されなかっただけであり、サンプル以外のところで検出される可能性だってあるわけですから、なんの結果報告にもなっていないんじゃないでしょうか。食中毒の症状が出た方々が食べたとされる昨年10月20日ころ製造されたもので、工場に残っているもの全てを検査して初めて報告に値するのではないか、と憤る方もいらっしゃるのではないかと想像いたします。

以前このブログでは、内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)における(経営者評価、監査人監査のための)業務プロセスの運用評価手順としての「サンプリング」を採り上げたことがありました。(あのシリーズも、今回の再生紙配合率偽装事件と同様、たいへん盛り上がったシリーズでした。)会計士さん方にご教示いただき、すくなくとも伝統的な監査論の体系のうえで、統計解析に関する知識をもってはじめて理解しうるものである、といった認識をもった記憶がございます。内部統制の有効性評価の場面におきましては、財務報告に重大な影響を与える虚偽記載が存在するリスクを、合理的な範囲にまで低減することを目的とするサンプリング手法でありますので、あれはあれで納得した次第であります。しかしながら、食品コンプライアンスが問題となる場面で、サンプリングの話が出てくると少し違和感がありそうです。

最新号のITコンプライアンス・レビュー(第六号 季刊誌)を拝読させていただきましたが、このなかで「完璧主義の弊害」なる日立システムアンドサービス社の方がお書きになった論稿がございまして、これがなかなかおもしろいのでありますが、完璧主義の日本人にとっては、「合理的な範囲」で保証する、といった感覚が異質に感じられるのではないか、といった疑問を呈しておられます。この論稿のなかでは、狂牛病騒動の際の日米の考え方の違いに言及されておりまして、アメリカは当然のごとく、サンプリング手法による検査方法を合理的な手法として主張していたわけですが、日本は最後まで「全頭検査」の手法にこだわったわけであります。ここで論者は、日本人の気質を「完璧主義」なる用語で表しておられますが、そもそも私などは、サンプリング手法というものが食品衛生の場面で用いられること自体に違和感を覚えるわけでして、完璧主義の民族でも「いい加減(アバウト)」好きな民族でも、いざ食中毒に関する問題となりますと、やっぱりサンプリングはマズイのでは?といった感覚になるのではないかと思われます。

ただ、よくよく考えてみますと、狂牛病騒動のときは、対象は牛であり、アメリカは「非現実的」と論難しておりましたが、日本が主張していた「全頭検査」も、コストと時間はかかっても、まだ実現可能ではないかと想像できます。しかしながら、対象が「ひとくち餃子」となりますと、「全品検査」というものは、輸出時点で中国企業が行うことも、また輸入時点で日本の企業が行うことも、おそらく不可能ではないでしょうか。ましてや、原材料に殺虫剤が含まれていたのか、それとも加工工場内で混じってしまったのかは、わからないわけですから、「ひとくち餃子」のひとつひとつに農薬調査を行うことはほとんど不可能ではないかと想像いたします。(まぁ、全品検査をしたからといって100%の安全が保証される、というわけでもないとは思いますが)現時点では、まだ被害拡大の防止と被害者の早期回復が優先事項でありますので、それほど話題になることもあるまいとは思いますが、今後中国から食品を輸入する場合の検査方法といったものが、「絶対に食中毒は起こさない」といった前提で話を進めるのではなく、「ある程度の食中毒は発生することもやむをえないが、その発生率を合理的な範囲にまで低減できるだけのシステムは整えましょう」といった前提で議論をする必要があるのではないでしょうか。(注・これは「言いすぎ」とのご批判がありましたので、「そういった前提で議論をするべきだ」といった考え方もありうる、という意味でご理解ください)」そうでないと再発防止策に関する議論が困難になるように思いますし、また「できもしないことを、さもできるかのように」議論することは、かえって思考放棄といいますか、「運用重視」の対策にはならないような気がいたします。

価格競争の面で、どうしても中国から食品を輸入することは避けられないのでありますから、食品コンプライアンスに関する議論についても、危険(リスク)への国民の認識も、現実論にたって考えていく時代が到来しつつあるように思います。ひょっとすると、昨日のJT社や生協さんの記者会見での質問が「なぜ2件目、3件目が防げなかったのか」といったあたりに集中していたのも、記者の方々は「今回のケースでは、1件目はしかたないけれども、2件目、3件目は企業不祥事ではないか?」といったスタンスにたってのものだったのかもしれません。私もこの2件目、3件目を抑止するために官民が知恵を絞ることはできたとしましても、1件目を水際で発生を阻止することを期待するのは・・・、かなりしんどい話のように思います。

(1日午後追記)ロンさんのコメント(削除済み)などでも予想されていた方向に、どうやら問題が整理されつつあるようですね。毎日新聞ニュースの最新版によりますと、兵庫県警が問題の餃子の袋に「小さな穴」を発見したようで、殺人未遂事件として本格的に捜査を進めるようであります。つまり、事件の原因については故意犯の方向で、事件公表が遅れた原因については関連の行政、民間の責任問題の方向で、今後議論が整理されていくのかもしれません。しかしまだ全容が解明されるまでは、未確認事実ということで。

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コメント

留意頂きたいのは「サンプリングテスト」と言うものの中身だと思います。
統計的に母集団を数理的に代表出来る(←大雑把な言い方ですが理論の裏づけとその精度保証がある)サンプルを抽出しているかどうかです。
中国は単に無作為(これも語の中身ですが無作為自体もそれなりの方法でなければ意味ありません)にいくつか試験したからサンプルテストだと言っているかもしれません。もしそうなら、そういうものを「サンプルテスト」と言うこと自体誤りになります。これは専門家にそのやり方を検証してもらうしかありません。

また──会計監査の試査におけるサンプリングも本当に統計上、信頼率がどれくらいあって要求精度がどうなっていているかまで言及して実施していなければ、信頼度や要求精度の数値いかんによっては何も語れない、語っても意味がほとんどないになってしまいます。また、無作為抽出方法を誤れば、あるいは母集団設定を誤れば、それは誤調査です。このような調査数値を利用する場合、利用する側がまずその標本調査が本当に母集団を十分に代表するようなものになっているかどうか、前述の諸要素を検証してからでなければ誤った結論を採用するリスクがあります。

とまあ──専門家でもないのに大口叩いていますが、本当に無作為抽出した標本で母集団の特性を語るのであれば、母集団をどのように設定したか、信頼度、要求精度、無作為抽出の具体的な方法を提示してもらわなければ適否は語れないはずです。
以前コメントに書いておりますが、25件のサンプルにしろ、母集団に試験したい特性がゼロである前提でなければ有効な指標にはならないとの解説がありました。この予想誤謬率──だったか、をゼロにすること自体の適否が重要です。この前提でサンプルに不備が発見されれば、少なくとも予想誤謬率はゼロではないは言えると思いますが、それ以上のことを母集団について語れるのでしょうか。
数理は精度や前提がありますが、さじ加減はあり得ないはずです。
また、上記以外に統計学の専門家の方の25件に関する直接の(引用でない)意見を見た事がありません。古い著作ですが私の持っている会計監査における統計的試査の解説書では25件と言う数に十分な有用性は求められません。友人の数学博士も疑問を呈しています。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年2月 1日 (金) 08時47分

山口先生
国によって劇薬の指定が同一でない場合に実務的に困難な問題があるかもしれません。しかし、「ある程度の食中毒は発生することもやむをえないが、その発生率を合理的な範囲にまで低減できるだけのシステムは整えましょう」という問題提起については、議論した方がいい点があるように思われます。

そもそも「劇薬」の混入があってはいけない、という基本がどうなっているのか。検査の問題とは別に、基本原則を徹底することをしないと、「生命健康を軽視する」という問題になってしまわないでしょうか。仮に致死量の薬物が検出された食品があった場合に、ある程度発生してもやむをえない、とは言い難いのではないでしょうか。問題が発生してしまった場合の対応方法として、工程を徹底検証することなく、営業再開となるのはおかしいと思います。そのうえで、「完璧」が無理であるという現実への対応として、ある意味やむをえずに抜き取り検査で対応せざるをえないのであって、そもそも一定割合で発生してもいい、と正面からは言えないと思います。

製造業者の責任については、過失責任でいいのか、こういう場合に製造物責任のように無過失責任を問うことも立法上(仮に国内で発生したら)検討するのか、また輸入業者の責任としてどの程度の厳格さを求めるのか、という各種問題があると思います。

生命や健康に関する部分で、「統計的に」その程度でいい、というような議論は、なかなか賛同を得にくいと思われます。厳格な責任があって初めて、それでも完全には防止しきれない、という点への対応として、次善の策として議論されるべきではないか、と思う次第です。

投稿: 辰のお年ご | 2008年2月 1日 (金) 09時36分

こういう問題が起きますと、(中国に対する感情はさておき)
この国に残る農本主義(?)的な部分が表に出てきちゃうんですよね。

その一方で、日本の消費者は必ずしも強い立場にないしメーカーに何でも
噛み付いたりするわけでもないですが「安全安心で安くおいしいもの」に
関するこだわりだけは世界一ではないでしょうか。
餃子の全頭検査(!)だって「やれ」と言いかねない雰囲気ですからね。

もしも私がJTフーズさんの担当者だったらどうするでしょう?
或いはどうするべきだったでしょう?
少なくとも事前に防げたことだとは思えないんですよね。
事前に防げないものに関して責任がとれるでしょうか?
(もちろん被害者への補償は第一義的に販売会社にあるわけですが)

なんとか原因の特定が出来ればいいのですがねえ。
せめて故意(犯罪)か事故か、の区別だけでも。

現段階ではサンプリングの手法の問題ではないようには思います。


投稿: 機野 | 2008年2月 1日 (金) 09時40分

最近このブログを知り、毎日拝見しています。
本件はJTフーズというよりも、輸入代行委託された「双日」子会社がどのようなチェックをしていくか、もしくは中国でどのような監督をしていくか、というあたりが議論の対象になるのではないでしょうか。
ところで、その輸入代行業者ですが、今回のことで「今後安全性確認が困難であれば、中国食品輸入代行から撤退する」と発言しています。toshiさんご指摘のとおり、日本の消費者行政や、消費者の意識では採算がとれないと考えているわけです。
これまでの食品偽装の問題以上に、今回は大きな問題に発展することはまちがいないです。

投稿: うらしま | 2008年2月 1日 (金) 09時54分

ちょっと多方面に忙しいため、コメントはできませんが・・・

>ロンさん
とりあえず、メールアドレスはこちらで削除させていただきましたので、ご了承ください。

投稿: toshi | 2008年2月 1日 (金) 10時32分

身体・生命に係るものなら6∑は…と言いたいところです。
実際の話、今回のような毒劇物混入は、その原因がたぶんまだ明らかにされてないと思いますが、例えば故意による混入だったような場合を仮定すると統計のバリバリの手法を使っても発見出来るものかどうか…

狂牛病の場合、感染発生の確率を正確に調べておりませんが、きわめて小さいと思われますので、相当な信頼度や要求精度で想定しても可能性を否定ないはずです。米国で感染例がある以上、99.99%で安全と言い切れますと言われても、一万頭に一頭?……
全数検査に踏み切るのはこのような考えを進めると適正な結論だと思います。相手は治療法のない致死病である以上、それしかないのではないでしょうか。それとも費用効果で、あるいはリソースの限界で…とか?

──でもまあ、冷凍餃子は全数検査に向かない事は分かります。だからこそ考えないといけない、工夫しないといけないなんですが、冒頭に書いたように憎むべき愉快犯が毒物をこっそり混入した場合、合理的範囲ではそもそも無理だと思います。加害行為の例はちょっと特殊ですが、このような藁山の針を見つけるには、統計サンプル調査はどうなのだろうと思います。サンプルによる母集団の特性調査と言う手法以外の手法が必要だと思います。例えば──全パッケージのピンホール検査を機械でやるとか何とか…別の視点が必要だと思います。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年2月 1日 (金) 11時22分

ロンさんのコメントは勉強になりました。(ありがとうございます)
以下は私の妄想であります。

しかしそうなりますと、一番手っ取り早く本件を沈静化するためには、中国当局として、誰か犯人を捜してくることが効果的ですね。本当に、その人が犯人かどうかは別として、そういった対策を講じることが日中の経済発展にとっては最良の選択かと。

まずは日中いずれも、とことんまで原因を究明する→結局、原因が不明となる→中国が故意犯摘発の報道となる→安全性が確保される

こういったストーリーが考えられないかと。

投稿: unknown | 2008年2月 1日 (金) 12時35分

管理人です。
ただいま、ロンさんご本人よりコメントの削除依頼がありましたので、当該対象企業の方からの貴重なご意見でしたが、削除させていただきました。ロンさんのご意見に対してさっそくコメントやトラバがされておりましたが、ご了承ください。

>ロンさん
また、お書きになれる範囲でけっこうですので、再発防止へ向けての対策など、一般論としてご意見いただければ幸いです。

投稿: toshi | 2008年2月 1日 (金) 12時47分

小生は餃子事件の輸入元企業で内部統制プロジェクトの実務責任者をしています。
お陰様で運用状況の評価の段階に進み、今は膨大なサンプリング作業の結果の集計表を睨みつつ過ごしています。
このブログも毎回拝見していますが、今回の件の投稿コメントには、実態に照らして俄かに賛同し難いものがあり、思わずPENを取りました。

日本の流通・市場や多くの企業の実態からすると、多くの仕入先を抱える日本の企業、とくに商社の実態からして、一仕入先企業のコンプライアンスまで考察するのは不可能です。
~ 多くの仕入先を抱える企業があるから、日本では豊かな資材・製品が手に入ると言う事実があります ~
無論、どの企業でも商品に係る品質や安全面には仕入先(製造元)の協力を得る形で力を入れています。
しかし、まるで「全頭検査」の様に、全仕入先に担当者を貼り付けたり、細かく指導するなどは、
企業の実態として不可能であり、これは机上の空論です。
多くの企業は、日本の消費者からそこまでの対価を得ておりませんし、流通段階でもそこまでの利益を得ておりません。(得ることは不可能です)
無論、欧米系の巨大企業では工場監査(ファクトリーオーディッド)により、厳しく工場を管理監督して、仕入先の選別をしている例がありますが、日本企業の経済的な規模&対価&利益率では全く以って不可能です。
従い、コンプライアンス~仕入先管理~内部監査~内部統制と(無理やりですが)繋げて考えると、経済の規模・現実と無縁では無く、「効率性の範囲内での実施するもの」と言う強い認識が必要だと考えます。
そして、消費者を含むステークホルダーも、その点(≒日本市場のリスク)を深く認識する必要があるかと考えます。
いずれにしてもこの事件では、原則に立ち返り、第一義に製造元企業(あるいは毒物を投入した者)の責任が問われるべきだと考えます。
その後はコンプライアンスでは無く、「市場」が判断する事と考えます。

投稿: ゆう | 2008年2月 1日 (金) 21時44分

のらねこです。

サンプリング方法は、「合理的な納得感を得る」手法と思っています。
したがって、絶対的安全論と相性が悪いです。
リスクマネジメントに「残余リスク」の考えがある限り、絶対安全は言い切れないと思います。
全数検査などの水際作戦でも、検査レベルの低下による見逃しが発生するリスクはあります。
また、検査後に汚染する可能性も否定できません。
一点に集中して完璧を目指すより、在庫の管理の徹底、緊急時の連絡体制、食品会社の品質指導などの複数の対策を実施するほうが、効果的だと思います。
万病に効く対策は、社長以下全従業員のコンプライアンスの意識向上です。

今回の事件も、新聞などで人為的な行為が指摘されており、工場での検査だけでは防げないと思います。

投稿: のらねこ | 2008年2月 1日 (金) 22時06分

こんにちは、丸山満彦です。。。

サンプリングは一般に全数検査が費用対効果によりできない場合に母集団の特性等を推定するために行うものだと思います。

また、サンプリングをする場合も、どの程度の信頼度を求めるかという問題がありますが、これもまた費用対効果により決まると思います。

費用の測定は比較的簡単でしょうが、効果の測定は質的な要因も含まれてくることになるので、各個人により幅がでてくるでしょうね。

100%殺虫剤が混じっていないということを調べるのが費用対効果の面で最適であれば、全数検査が必要となります。

また、「母集団の特定の領域に不良品が偏っていることを調べたい」という目的であれば、サンプリングの方法(検証の方法)も変わってくると思います。

いずれにしろ、目的と手段の関係で「目的を達成するために最適な手段は何か」ということを考えるという当たり前のことだと思います。


投稿: 丸山満彦 | 2008年2月 1日 (金) 22時22分

DMORIです。
当事者企業からゆうさんに登壇いただき、貴重なご意見を拝読しました。
内部統制の観点から、今回の中国の食品製造企業に対してサンプリングを徹底せよというのは、確かに無理があると思います。

輸入元という企業でなく、中国の食品製造会社に対して餃子の製造を「委託」しているのであれば、製造会社の内部統制に対しても監督責任がありますが、輸入元と仕入先という取引関係であれば、仕入先の内部統制まで責任を持たなければならないわけではありません。

もちろん、輸入元として安全な商品を販売するために、製造会社の衛生管理がが充分であるかをしっかり確認する必要はありますが、立ち入り監査権限まであるわけではないので、委託先の内部統制というよりも、リスク管理という観点で審査するのが限度でしょう。

日本でも、スーパーの商品の中に針を入れるといった犯行はありましたし、毒入りカレー事件もありました。
こうしたテロのような犯行に対しては、サンプリングや日常の衛生管理で防ぐのは不可能と思います。

作業員1人ひとりの行動を、厳重に監視することはもちろん可能ですが、餃子の製造工場にそれだけのモニターシステムや多数の監視員を投入したら、価格面でとうてい成り立たないでしょう。
「100パーセントの安全のためには、餃子1個が宝石並みの値段になってもかまわない」と言える人は少ないでしょう。

この事件は、衛生管理の問題でなく、ほぼ「犯行」の可能性が高くなっていますので、日中の協力で早く決着をつけてやってほしいと思っています。
工場は操業をストップしているのか、よく分かりませんが、中国の会社では操業停止中の賃金が支払われない可能性もあるでしょう。
超格差社会の中で、あの工場で働く方々の月給は1万5千円ほどと報道されていますので、早く働けるようにしてあげないと、気の毒です。

長引くと、中国の国民感情としても、「日本はいつまでしつこく騒いでいるのだ」「中国への嫌がらせか」といった声が高まってくる気もします。

投稿: DMORI | 2008年2月 1日 (金) 23時10分

そもそも「破壊検査」でしか検査できないものはサンプリング検査するしか方法がありません。

「非破壊検査」が可能な「金属異物」の混入ならば、金属探知機で全数検査をするのもコストさえかければ可能でしょう。しかし今回のような「毒物」のケースでは化学分析をするしかなく、化学分析は通常「破壊検査」ですから、検査した検体は商品になりません。

全製造ロット毎あるいは時間毎に「抜取りサンプリング検査」する事は可能でしょうが、どこまでいっても「サンプリング検査」であって「全数検査」はできません。
「破壊検査」では「全数検査」したら出荷する商品がなくなります。
「費用対効果」の問題ではありません。原理的に無理。


投稿: げお | 2008年2月 1日 (金) 23時53分

この問題の議論で、実態を出発点とすると、危険が存在するにも関わらず、中間業者の利益のためになすべきことが歪むことになってしまうと危惧します。

むしろ、採算がとれなければ撤退するぐらいの真剣さをもって安全性のチェック体制を確保しなければならないのではないか、と考えます。お金のために、安全を犠牲にしていい、という法はありません。そういう覚悟もなく、そろばんを片手に食の安全を語る方がいればその論旨をしっかりと説明いただきたいです。そういうあり方が妥当かどうか、を広く議論すべきでしょう。もちろん意見がいろいろあることは大切ですが、個人的な意見としては、そういう考え方には現時点では反対です。

もしそういう意見が本当に国民に受け入れられるのだ、それが正当だというのであれば、商社のトップがしっかり消費者の前で納得させるだけの論陣を張って対応するくらいの気概と説得力がなければおかしいと思います。これまで見られたように、役人や政治家への舞台裏での根回しをし始めたら、その会社はやはり信頼を得られる商売をしている、とはいえません。

投稿: 辰のお年ご | 2008年2月 2日 (土) 00時46分

1.身体・生命に直接係る⇒全数検査も辞さず、あるいは辰のお年ごさんの言う「撤退」
2.時に身体・生命に係る⇒高度に合理的基準による標本検査等(非全数検査)
3.時に身体に係る⇒適切な合理的基準による標本検査等(非全数検査)

こう言う関係はあると思います。例外はつねにあるとしても、一般的な了解として私はこれを受入れます。もちろん、2と3は程度の問題があり、それが個別論として大いに重要である事を了解しながらです。

さて、国際空港での所持品検査では、X線による全数検査があります。当然ではありますが、都内の電車・地下鉄・バスではまったくありません。普通に考えて出来るはずがありませんから。
十年ほど前に地下鉄サリン事件がありました。テロ行為だったと言う認識のせいか、なぜ電車内にかなりの量の薬物が持ち込まれるのを取り締まれないか──等と言う議論はほとんどなかったと思います。そんな事をすれば都内の交通は使い物にならないと了解されていたのだと思います。

今回の冷凍餃子についても全数検査を求めるような流れにはならないと思います。これは上記の例と同様の考えがコストやリソースの点で当然に働くと思います。でもそれで良いのかという論点は残りますが、仮に今回の事件が故意による巧妙な加害行為だとしたら、適切に発見すると言うのはほとんど期待出来ない藁山の針だと思います。
とてつもないハイテク技術で包装の上から毒劇物を検知する機械があったなら、何故それを使わない!になりますが、そのようなものがない以上、限界に直面したと言う事はあると思いますし、もしこれが加害行為ならそのような限界を突いてくるのが定法になるでしょう。

非破壊全数検査が難なく出来るのが理想ですが、これは神業ですから望むのは無理。ただ──BSEのような、持ち込まれたら最悪の事態になり、取返しがつかないと言うものについては、私は全数検査か撤退による排除を断固として望みます。
冷凍餃子については、生産工程や包装工程の問題なら徹底改善の上、その改善策の普段の履行を監視・証明(この場合はサンプリングですが)する体制を敷き、その上で輸入してもらいたいと思います。

今回の事件が何らかの形で収拾したとしても、仮にまた同様の事件があったら、その原因が加害行為であれ、生産過程の不具合であれ、残留農薬であれ、それこそ消費者の撤退決断として中国で生産された食品の売れ行きは(一時的に)激減すると思います。
しかし──こう言う性質を持つ問題、危険と利便のトレードオフのような面を持つ問題が主に対症療法的にしか対応出来ない点、大いに歯がゆい思いです。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年2月 2日 (土) 10時56分

みなさま、コメントありがとうございます。

中国側の記者会見も終わり、工場の衛生面には問題なかった、との回答でますます混迷を極める事態になってしまったようです。
ただ、今後どのような事態になろうとも、この「全件検査」のむずかしさと中国食品使用の必要性との整合性をどうはかっていくか、ということはついてまわる問題かと思われます。
トラックバックしていただいておりますkatsuさんのブログによれば、中国も地方政策の一環として、輸出食品の衛生問題にはかなり力を入れているようですし、また中国以外の食品衛生の問題との冷静な比較も必要かと思いますので、今後も適宜、この問題への考え方について検討していく予定にしております。

投稿: toshi | 2008年2月 2日 (土) 22時56分

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