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2008年2月13日 (水)

闘うコンプライアンス(景表法違反事件)

ダスキン事件の最高裁判決が出たようでありまして、概ね大阪高裁判決の内容が踏襲されたようであります。またWEB上で最高裁判決の内容が確認されましたら、エントリーでも検討しようかと思っております。

さて、私のブログでは、独占禁止法関連の話題は企業コンプライアンスとの関連が強いケースしかとりあげませんが、ちょっと気になりましたのが、新聞報道にもありますように、カー用品メーカー19社の製造した「燃費向上グッズ」がそろって公正取引委員会より排除命令(景表法6条1項)を受けた、というニュースであります。(公正取引委員会の公式リリースはこちら。 新聞報道はこちら)根拠条文は景表法4条1項1号の「有利  優良誤認」つまり一般消費者に対して、実際のものよりも著しく優良であると示すような表示行為があった、というものであります。対象企業の大手でありますソフト99コーポレーション社も、リリースによりますと事態を厳粛に受け止め、今後法令遵守体制の確立に向けて努力します、とのことでありますが、ホントに素直に受け止めてしまってよろしいのでしょうかね?これって、素直に受け止めてしまいますと、「何も根拠なく、消費者を騙して売っていました」ということになるんじゃないでしょうか。すでにカー用品販売大手のオートバックスセブン社やイエローハット社あたりは、この排除命令に基づきまして、購入者に対する自主回収の是非を検討したり、今後の排除命令を受けたメーカーさんとの取引関係の見直しなどについても検討されているものと思われますが(あくまでもこれは私の推測です)、真摯に排除命令を受け止めてしまったら、取引先にも、また消費者にも反論の余地がなくなるわけでして、本当にそれでいいのでしょうか。たしかに(かつて)カー用品メーカーが排除勧告を受けた20年ほど前の時代であれば、何の根拠もなく「燃費50%向上!」みたいな商品広告もあったかとは思いますが、これだけ日本の環境技術が向上し、またコンプライアンス意識が高揚しているような時代に、何の根拠もなく「燃費向上」と書いているとは到底思えません。

今から2年ほど前に、ヤマハ発動機さんが、「中国(産業用無人)ヘリコプター輸出」問題で関税法外為法違反(無許可輸出未遂被告事件)に問われましたが、あのとき、ヤマハ発動機の社長さんは、株主総会で「うちは絶対に間違ったことはしていない」と宣言し、世間の常識やマスコミを敵に回しても、コンプライアンスの精神は貫くとされ、その1年後、刑事被疑事件においては社員たちは不起訴処分となりました。(ただし法人としてのヤマハ発動機さんは略式起訴のうえ、罰金刑、その他一定期間の輸出禁止の行政処分を受けたように記憶しております)もちろん、時と場合にもよるとは思いますが、たとえ公正取引委員会が相手であろうと、自分たちが主張すべき点があれば、堂々と主張しなければ、そこで闘うことで失う社会的信用以上の損失を被る場合も出てくるのではないでしょうか。

本件ではおそらく公正取引委員会が出しておられる「不実証広告規制に関する指針(ガイドライン)」の運用解釈が問題になるのだろうと思われます。これは一応、法運用の透明性と事業者の予見可能性を確保するために設けられた指針ということでありますが、こういった指針が出てもなお、おそらく事業者にとりましては予見可能性はほとんどないと考えられます。たとえば一昨年の夏ころから、公正取引委員会は、カー用品メーカーへの調査を進めていたように聞き及んでおりますが、昨年12月ころに排除命令の事前通知がなされて、各社とも弁明の機会は与えられたものの、結局のところ「警告程度で済むのでは」といった楽観的な見通しも裏切られ、19社もの一斉排除命令に至ったわけでありまして、事業者にしてみれば、調査対象が何社だったのか、そのうちなぜ19社なのか、他の事業者と排除命令を受けたところとはどう違うのか、おそらく何もわからないままの状況だと推測されます。それぞれの事業者がいちおう合理的根拠になるような資料を提出しているにもかかわらず、公正取引委員会が「合理性を裏付ける根拠資料は具体的になにか」を事前に示してもらえないがゆえに、そのミスマッチによって排除命令に至っているとすれば、ほとんど透明性も予見可能性もないに等しいのではないでしょうか。ましてや事業者側が合理性ある資料だと認識したうえで、その検証結果などをHPで公開している場合には、その検証結果が虚偽とは認められないのであれば、表示内容と検証結果との対応関係についても「消費者の一般認識」を基準として考えるべきでありまして、「この対応関係が認められるためには、このデータがないとダメ」といった公正取引委員会の判断は、事業者側にとっては不意打ちにもなりかねず、景表法の解釈としても少し疑問があるように思われます。

平成15年に改正景表法が施行されまして、排除命令は事後審判手続きとなりましたので、義務履行を止めるためには裁判所に保証金を供託して執行を停止しておかなければならなくなりましたし、排除命令を争うためには東京へ出向く必要もあるわけですから、たしかにお金のかかることだとは思います。しかし、おそらく排除命令を受けた19社は、どこもそれなりに「合理的」と信じているデータに基づいて広告を打っているはずですし、そのことで胸を張って販売していたにもかかわらず、排除命令を素直に受け入れてしまっては、一般の消費者からみれば「詐欺まがい商法の極悪人が正義の味方公取委からお叱りを受けた」としか認識されないのは、なんとも口惜しいのではないでしょうか。本当にそのような事業者であれば文句はないかもしれませんが、日ごろ、コンプライアンスを標榜して販売を継続している事業者であれば、社員や製品を愛用してくれている消費者、顧客のためにも、ぜひ闘うコンプライアンスを貫いていただきたいと思った次第であります。(なお法律論等、不適切な文脈がございましたら、またご指摘いただけますと幸いです)

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コメント

いつも楽しく拝見させて頂いております。
ところで、『・・・根拠条文は景表法4条1項1号の「有利誤認」つまり一般消費者に対して、・・・』につきまして、「有利誤認」ではなく、「優良誤認」ではないでしょうか?

投稿: 七氏の権兵衛 | 2008年2月13日 (水) 09時20分

ご指摘ありがとうございます。さっそく訂正させていただきました。

投稿: toshi | 2008年2月13日 (水) 09時26分

この件は、19社全てが、根拠なく燃費が良くなると、詐称して販売していたと、私は思っています。

従い、燃費が良くなる証拠・根拠・実験結果を19社は提出することが、できないと予想します。

それと、もう一つ、もし本当に燃費が良くなるのであれば、自動車メーカーが必ず取り上げているはず。自動車メーカーは研究開発費として膨大な金額を支出しており、燃費競争はCO2削減が叫ばれている中、少しでも下げれば、それだけですごい利益を生みます。

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年2月13日 (水) 12時23分

経営コンサルタントさん、コメントありがとうございます。
私も最初はコンサルタントさんと同じ意見だったのですが、実際にこのなかの数社に関しましては、CO2削減効果が東京都や官公庁の実証検査で認められているわけです。(あまり詳しいことは控えますが)だからこそ、高価でありつつも売れ続けている商品が多いのでありまして、そうなりますと、19社全部を「ひとまとめ」にしていいのだろうか・・・という気がしてきたような次第です。

ただ、その実証検査が、「すべての車種で」というものかどうかは私もわかりませんので、そのあたりも問題になるのかもしれません。

投稿: toshi | 2008年2月13日 (水) 12時34分

>CO2削減効果が東京都や官公庁の実証検査で認められているわけです
CO2削減効果が、燃費向上に直接結びつくものなのでしょうか?燃費は変わらないが、CO2の削減効果があるというケースもあり得るような気がします
ちょっと気になったので、メールした次第です。

投稿: 通りすがりの者 | 2008年2月13日 (水) 20時41分

>通りすがりの者さん

私も実はそこが問題だと思っております。
いわゆるガイドラインの「実証データと表示項目との対応関係」ですよね。それでは、なにがあれば「対応関係」がある、と一般に認識されるのでしょうかね?それとも、「対応関係はこのようなデータがなければならない」と公正取引委員会が決めてしまったら、それに従わなければならないのでしょうか?この点、公正取引委員会は、自動車工学の専門家の意見を聞いて、「こういったデータがなければ対応関係は存在しない」と言われたらそのような不意打ちに対する防御方法はないのでしょうか。カー用品業者側も、自動車工学の専門家の意見書をもって、この対応関係を立証する必要はあるのでしょうか。
私はCO2の削減効果が上がれば、当然に燃焼効率が向上しているわけですから、燃費にも効果が及ぶと(当然のごとく)認識できると思いますが、いかがでしょうか。

投稿: toshi | 2008年2月13日 (水) 21時37分

法律や内部統制といった業務にはまったく関係無い仕事をしておりますが、
世の中の事象を法律の専門家から見られた文章は大変楽しく読ませていただいております。

さて、この件ですが、法律素人から、不実証広告規制に関する指針を読んでみますと(この指針がいつ公表されたのかは知りませんが)
例として所謂省燃費グッズが取り上げられております。

素直に読みますと、今回命令を受けた各社は、
客観的に実証されたデータとして
1.10・15モード法で調べていない。
2.消費者の体験談も統計的な客観性を確保していない。
3.専門家(どのような先生方かは知りませんが)が認めていない。
  又は認めているという文献その他を提示できなかった。
と、いうことではないかと思います。

toshiさまが書かれました“CO2削減”についても、何故CO2が削減できたら、燃費が向上するのかという説明が充分ではなかったのではと思ってしまいます。
(例えば、単純に不完全燃焼させれば、CO2は減るように思います。
そもそも、理論的に完全燃焼させれば、理論値どおりのCO2は発生するわけですから、CO2減少しているから、燃費が良いという結論にはならないのでは・・?)
(同じ仕事量をして、CO2が減ったなら理解できますが、そこまでするならば、素直に指針通り、10・15モード法を適用した方がはるかに宣伝効果もあったと思うのですが・・・)

私個人としては高価だから効果があるというのは、所謂悪徳商法の常套手段でもあるわけで、だからこそ、各社にはここらへんの線引きをしっかりして欲しかったとも思います。(各社が悪徳商法であると主張したいわけではありませんので、念のため)

#公取委としては、「ガイドラインにわざわざ例であげてるのに、何故どこのメーカーも実施(実証)してへんね~ん!!」ってところかもしれません。

#これが、例えば、お札若しくはお守り だったらセーフだったかもと下衆の勘繰りをしてしまいます。

以上、失礼いたしました。

投稿: 法律素人 | 2008年2月13日 (水) 21時51分

>私はCO2の削減効果が上がれば、当然に燃焼効率が向上しているわけ>ですから、燃費にも効果が及ぶと(当然のごとく)認識できると思いま>すが、いかがでしょうか。
私もそう思います。が、当局はそれは違うと判断したんですよね。事業者は、CO2削減効果は示せたが、燃費向上に関する実験は行っていなかっため、当局に燃費向上のデータを示せずアウトになったんですかね。この点、事業者がどのような実証データを当局に示したのか興味があるところです。

話は変わりますが・・・、上記の記事にソフト99が出てきましたが、この会社の「燃費10.3%改善」の表示は、まったくの個人的感想としては、「本当にこんなに改善するわけないだろう!」と思っちゃいます。でももし、本当にこんなに燃費が改善するのなら、私はすぐにこれを買いますね(笑)


投稿: 通りすがりの者 | 2008年2月13日 (水) 22時44分

法律素人さん、ご丁寧な解説ありがとうございます。参考にさせていただきます。
ご指摘の指針例のあることは承知しております。

ただ、http://www.e-comtec.co.jp/magtune/informationmag.html
などのリリースを読みますと、10.15モードの燃料効率テストの結果も合理的でないとされているようですが、いかがなものなのでしょうか?
このあたりが、私には理解できない「不意打ち」があるように感じるところであります。

投稿: toshi | 2008年2月13日 (水) 22時51分

化学屋です。

①燃焼とは酸化反応であり、
 C + O2 → CO2 + 熱エネルギーE
の反応です。

したがって、CO2の発生量と発生する燃焼エネルギーEは比例関係があります。

この反応をどれだけ効率的にするかを r1 とします。


②車の場合、燃焼によって発生した熱エネルギーEを運動エネルギーE'に変換する必要があります。

 E → E' の効率をr2とします。


燃焼効率:r1 と エネルギー変換効率:r2 の掛け算: R= r1 × r2 を「燃費」というのではないでしょうか?

r2の向上の場合、CO2減少と燃費の向上は両立しますが、r1の向上の場合はCO2減少と燃費向上は相反します。

よって、CO2抑制は燃費向上の証拠にはならないと思います。

投稿: げお | 2008年2月14日 (木) 00時31分

>げおさん

ご解説どうもありがとうございます。こういったご意見を頂戴できるとは思ってもみませんでした。
なんとなくは理解できるのですが、正確な理解については現状では私の理解を超えておりますので、すこしだけ勉強のお時間をください。(ただ、一般人にとって所与の前提とはならない・・・という意味なんでしょうね)また、こういった(素人にもわかりそうな)データについて、問題解決に必要なものがございましたら、お教えいただければと。

投稿: toshi | 2008年2月14日 (木) 01時27分

コメントいただきまして、ありがとうございます。

ここからは、詳細なデータ等はわかりませんので、
あくまで推測(妄想)の話となります。

リンク先、読ませていただきました。そのまま受け取れば、
確かに、10・15モード法で試験したが、それが「合理的な根拠」とならなかったようです。

さて、ガイドラインでは、「合理的な根拠」として、
1)客観的に実証されたもの
2)実証された内容が適切であるもの
の二つをもとめているようです。

このうち、1)は10・15モード法で実証済みだと仮定した場合、
2)で、求めている事項をガイドラインの例から推測するに、
試験すべき台数及び種類、又は、試験条件が公平でなかった等が
問題になったのでは?と思います。

公式リリースから、リンク先として教示されましたコムテックさんの表示内容を見るに、
「平均5~20%アップ」「燃焼効率をUP」となっていたようですから、
この、5~20%アップというのは、一体どんな条件で、かつどのように実証し、どのような根拠があるのか?という点が問題になっているのかもしれません。

即ち、どの程度の車種数、台数を試験したら実証としたと見るかという点が問題なのかもしれません。

といたしますと、toshiさまが仰るように、その判断基準は闘うべきかもしれませんが、そこから先はもう、法律素人ではわかりません。

偶然か否か、以前にアース製薬が命令を受け、最近、小林製薬でも表示に誤りがあった旨のニュースが流れておりますが、これも同じようなことかと思います。

>通りすがりの者さま
チーム-6%のエコドライブのサイトによれば、
http://www.team-6.jp/ecodrive/10recommendation/index.html
ゆっくり発進させるだけで、約11%改善されるそうです。
#お金もかけずに、11%改善できるのですから、その商品もあわせて使えば、22%程度改善できるということかも。

投稿: 法律素人 | 2008年2月14日 (木) 22時07分

行政権の肥大化の最たる事例でしょう。

内部統制と議論とどこか似ているところがあり、本来は、「合理的範囲」において検証、実現すべき事柄であるのに、100%の客観性、完全性を要求しているように思えてなりません。完璧なんて無理なのに、明らかに過剰な要求といわざるを得ないと思います。その意味では、私も、TOSHI先生と同様、闘うコンプライアンスの視点があってよいと思います。これが認められるなら、結局は行政の言いなりでしかありません。それなら行政が消費者保護に全責任を負うのかというと、そんなことは絶対にしないわけですし・・・。

皆さん、色々と実験の仕方や考え方の説明をされており、その内容は、非常に高度で勉強になるものばかりですが、私は、効果、効能は実験の仕方、実験の条件により、いくらでも変わるものだと思います(理系人間ではありませんので、そもそもこの考え方が間違っていれば、ぜひご教示願えればと思います)。
 もし、効能が云々というなら、ある程度合理的かつ普遍的で、誤差の少ない実験方法や条件を公正取引委員会が提案、立証すべきであり、ただ、取り締まるだけというのは、消費者保護に名を借りた行政の横暴でしかありません。憲法軽視、消費者保護偏重思想の結果なのでしょうか・・・。

「コンプライアンス」というのは、工学の世界では、物質の柔軟性、弾力性を意味するという、畑村教授の寄稿文を読んだことがありますが、完全性かつ画一的な実験方法(条件)しか認めないといわんばかりの公正取引委員会の考え方そのものが、弾力性や柔軟性のない硬直したものであり、「コンプライアンス」と相容れないのではないかと思います。


ガイドライン行政、行政の横暴によるコンプライアンス押し付けを大いに危惧します。メディア・コントロールやプロパガンダを多用して、「OO民営化にYESかNOか」「改革を進めるか否か」という単純化で、国民世論を操作しようという某総理から強まった政治(政府)の傾向を受けた、国の策略とまで思えてしまいます。

投稿: コンプライアンス・プロフェショナル | 2008年2月15日 (金) 00時19分

法律素人さん、コンプロさん、ご意見どうもありがとうございます。また、参考事例を掲示していただき、勉強になります。
たしかに、法律素人さんのご指摘のとおりかもしれません。私も同じように、10.15モードを利用するといいましても、ある程度の車種をそろえて検査してみなければ、一般の人は「どんなエンジンでも大丈夫」といった感覚をもって購入するわけですから、合理的根拠とはいえないのではないか、と思います。(ひょっとすると、その車種によって5ないし20%なる幅があるのかもしれませんが)
裁判で勝てるかどうかはわかりませんけど、こういった不実証広告規則の法規範性の問題や、合理的根拠とは何か、どこまでの不意打ちが許容されるのか、合理的根拠の資料についてはどこまで両立するのかなど、今後の景表法事例の参考になるような判決をもらえれば、貴重なインフラになると思います。
また、こういった事例の場合、他社との連絡や協調があったほうが有利な気がします。いわゆる行政平等原則、行政比例原則、濫用禁止原則(他事考慮)などを根拠に、排除命令という行政行為の瑕疵を、合理的根拠の問題点と同時に争点として提示するほうがおもしろそうです。

投稿: toshi | 2008年2月15日 (金) 02時15分

コンプライアンスプロフェッショナルさま

実験の方法、条件により、結果が変化することについては、異議はございません。
しかしながら、だからこそ、“基準”という同じ物差、同じ土俵を決めて
その基準に当てはめて比較するわけでございます。

これは、何も特異なことではなく、一般的に広く認知されていると思われます。
例えば、皆様の方がよく御存知であろう、会計基準や、上場基準といったものからスポーツの世界でも普通にございますし、時節柄の大学入試もそうですし、そもそも、子ども同士の背比べも基準がなければ、成立しえないものでございます。

ちなみに、燃費については、JIS規格 JIS D1012 自動車-燃料消費率試験方法 に基準がございます。
http://www.jisc.go.jp/index.html
もちろん、その基準自体の合理性、適切性、有効性、妥当性などにつきましては、異論は存在しえるとも思いますが、何かしらの“同じ物差”であれば、
最低限の比較検討が可能ということでございます。


以下、戯言です。
私個人としては、このガイドラインは、ある面において有効性がある と主張したい場合に、方法その他を公取委が決めるのではなく、自分自身で決めることが可能という点で、立証方法の自由が認められていると評価しています。
(実際に、認められるかについて、裁判という手段が使用できるだけまだ良いというスタンスです。そういう意味においては柔軟でもあります)

と、同時に、数年前の得体のしれない“マイナスイオン”ブームや、政治家のニュースにもなった“なんとか水”のような効能不明のものが、世の中にあふれるよりは、はるかに良いことだと思っております。

投稿: 法律素人 | 2008年2月15日 (金) 21時43分

こんばんわ。

初等化学の素養がある理系人間からすると、「CO2抑制≠燃費向上」は考えるのもアホらしいほど自明のこと。ところが「CO2抑制⇒燃費向上」という論理のすり替え的な説明であっても、化学の素養の無い文系の方は簡単に"科学"を装っただけの文章に騙されてしまう。

効率良く燃やせば、CO2は増えるに決まっている。
  (完全燃焼) 2C + 2O2 ⇒ 2CO2 + エネルギー4
 (不完全燃焼) 2C + O2 ⇒ 2CO + エネルギー2
同じ炭素量(≒ガソリン量)からより沢山のエネルギーを取り出そうとしたら、不完全燃焼を減らして完全燃焼を増やすしかない。
完全燃焼が増えればCO2は増えるに決まっている。

戦うコンプライアンス以前の話。
メーカー自身、詐欺的な商品説明であることを自覚しているから反論しないのですよ。

投稿: げお | 2008年2月18日 (月) 01時05分

そもそもは燃費の向上効果の問題ですが、これは何だかダイエット食品やサプリメント、育毛剤などの効能の話を連想させます。
ただこれらの場合は、△ヶ月で○kg体重が減った人の話とかを引き合いに出しながら、実際は個人差ありとか、場合によっては医師に相談してとか、異常を感じたら使用を止めてとか──第三者が同じ条件で検証出来そうにないようなデータを表示しながら例外を示唆し、それでもなお希望・願望をかなり刺激する内容(売れているようですから…)を表示しているようです。

ついこの間も中吊り広告で確か「コラーゲン」の効能を正面から否定する記事のタイトルを読みました。記事を確認していませんので、その後のどうなったかは分かりませんが、もしあの記事が真実なら同様に公取から排除命令が出され、問題になっているはずです。で、思い立ってネットで調べましたが「どちらとも言えず、効果を否定出来ない」ような話になっているようです。

メーカはいろいろな条件でデータを取って、その中で一番結果の良いケースで得たデータを出したいはずです。「一回でも何でも、一応はそうなったから…嘘ではないから…」という事は無きにしも非ずと言う気がします。今回の19社の中にもそのような解釈があったのではないでしょうか。
ポイントは個体差や完全な再現が難しそうな実験・実証データであってもなくても、それで商品等の性能を示し、購買意欲に訴える表示や広告は、第三者(専門家)が同じように実験・検証を行なって無視出来ない差異があったら、今後は同じような目に遭うかも知れないという事ですね。

第三者の研究機関に委託して専門家による正式な報告書をまとめてもらうとか、そのデータに近似のものを再実験で再現立証しなければならない──それが出来なければコンプラで戦えないと言う事になるわけですか。まあでも──それが出来ないのであれば、偽装・誇大広告と言われても反論出来ないですね、すべてとは思いませんが、その辺の意識がゆるんでいる企業があるという事でしょうか。
メーカであれば普通は研究開発部門があるので、データをとった結果で製品化していると思われるのですが、今回はいずれもきちんと反論しなかったと言うのであれば……さにあらずだったと言う事でしょうか。

投稿: 日下 雅貴 | 2008年2月18日 (月) 18時40分

みなさま、ご意見ありがとうございます。
げおさんや通りすがりの者さんのご指摘の点につきましては、素人にもわかりやすい内容のご教示をいただき、感謝いたします。
たしかに、私がコメント欄の記述については誤りがあったと思いますので、訂正をいたします。

ただ、燃焼効率と燃費の関係はごく一部の問題でありますので、「闘うコンプライアンス以前の問題」とは到底思えません。むしろ大いに問題があると思っております。
現に、10.15モードによる実証資料を提出している企業があったり、また合理的根拠に関する説明は各企業ごとに異なる説明がなされているようであります。
たしかに反論できない企業もあるかもしれませんが、反論にあたって、相当な費用(誤差9%以内に抑えるためのサンプルテストを繰り返すこと)をもって闘うべきかどうか、経営判断がもっとも大きなポイントではないかと思います。

投稿: toshi | 2008年2月19日 (火) 14時38分

法律素人さま
ろじゃあと申します。
このtoshiさんのエントリーについての最近のやり取りを非常に興味深く読ませていただいているのですが、あまり競争法の分野の話に詳しくないものですから少し教えていただきたいのですが
>と、同時に、数年前の得体のしれない“マイナスイオン”ブームや、政>治家のニュースにもなった“なんとか水”のような効能不明のものが、>世の中にあふれるよりは、はるかに良いことだと思っております。
とおっしゃっておられる部分についてなのですが、この部分の評価と、その直近の
>私個人としては、このガイドラインは、ある面において有効性がある >と主張したい場合に、方法その他を公取委が決めるのではなく、自分自>身で決めることが可能という点で、立証方法の自由が認められていると>評価しています。
の部分のご評価の内容というのはどういうつながりになっておられるのでしょうか?
「ある面において有効性がある と主張したい」と思う会社さんというのは、会社法や金融商品取引法とかとの関係でのコンプライアンスにある意味では前向きな会社さんが多いように思うのですが、このなんとか・・・水で問題となるような宣伝を世に溢れさせる主体というのは、そういう上場会社さんに限らず最初からコンプライアンスの意識に欠けるような主体がメインでやっている場合もあると思うのですが、そのような主体が残っている限り世の中にはフォロワーは溢れ続けるような気がするのですが・・・。
突然の質問で申し訳ございません。


投稿: ろじゃあ | 2008年2月19日 (火) 14時54分

化学的素養が全くない典型的な文系人間の私には、皆様のご丁寧な説明も難しく、燃費と環境の関係は理解できません。全く低レベルですみません。

ただ、私の理解としては、TOSHI先生が言わんとしているのは、メーカーはどこも各社が合理的と考えるある程度の調査や実験をして、効能等をうたっているはずであり、それでも公正取引委員会から排除命令を受ける、しかもそれが効能が認められないという理由で・・・。こういう状況で、企業としては、自社の実験の正当性を主張して、公取と対峙すべきか否かという点についてのエントリーではないかと考えています。

私のコメントは、化学的には全くの無知・無学に基づくものではございますが、上記論点に関して、言い換えれば、実験結果から客観的に効能が認められるのか(しかも、複数あるであろう実験方法で、どれを採用すべきか)というよりも、この場合盲目的に公取の排除命令に従うのではなく、自社の正当性を主張すべきではないかというニュアンスで書かせていただいたものであることをご理解頂ければと存じます。

化学的な裏づけの点に付きましては、皆様の前でコメントを差し上げるだけの知識を有しておりませんので、ご容赦を。これ以上は、皆様のコメントの末席を汚すだけですので、出直します。

投稿: コンプライアンス・プロフェショナル | 2008年2月19日 (火) 23時30分

ろじゃあさま
法律素人でございます。

ハンドル名通り、法令に関しては素人でございますし
、多々間違いもあるかと思いますので、ご教示賜れば幸いでございます。

さて、お尋ねの件ですが、
私がコメントに書きました前段は、要するに

有効性を主張する側(会社さま)が、その立証責任を負う。

ということでございます。
但し、このガイドラインでは画一的な方法での立証を求めていないという点で、経営判断の尊重が図られているということ、
及び画期的な商品の登場を妨げないという点を評価しております。

そこから、
 確かに、真面目に、真剣にコンプライアンスと向き合っている大多数の会社さまには、リスク及びコストの増大となる可能性は充分にあるものの、
得体の知れない“マイナスイオン”及び“なんとか水”のような効能不明のものは、その立証が出来ない可能性が高いであろうから、
そのような商品(製品)の歯止めになるのではないか?
その方が、結果的に真面目にやっている会社にも、社会的にも良いのではないか?
というかたちで後段へ繋いだつもりでございました。

私は、このガイドラインが、ある意味で真面目な製品と
そうでない製品の見分けに使えるのではないか?と思っております。

例えば、有効性に疑問があれば、「ガイドラインに基づいた説明又はデータ」の提供を求めることで、最初から騙す気がある製品
(このエントリーにあります会社さまの製品が、そうであると主張している訳ではございません)を排除できるのではないか?ということでございます。

このようなスタンスで書いておりますので、おかしいところがあるかと思いますし、分かりにくい文章で申し訳ございませんが、これで説明になっておりますでしょうか。

以上、失礼いたしました。

投稿: 法律素人 | 2008年2月20日 (水) 21時22分

度々、失礼します。

この燃費向上グッズの件について、自動車メーカーに勤める友人に、話をしたところ、「本当に燃費が向上に有効な機器・装置であれば、財団法人運輸低公害車普及機構の認定を受ければいいのではないか。」と言われたので、当該財団のHPを見てみました。

((財)運輸低公害車普及機構の自動車優良環境機器・装置評価公表事業のアドレス)
http://www.levo.or.jp/efd/outline.html

この財団は、「燃費向上に有効な機器・装置の普及を図ることを目的として、その性能等について客観的に評価・審査を行い、優良なものについて公表」しているとのことです。
申請・公表に要する手数料は40万円弱とちょい高いですが、これだったら客観的な性能審査が行われるので、今回排除命令を受けた事業者であって、仮に公取の処分に不服がある事業者がいるのなら、こういった機関で審査して、お墨付きをもらえばいいんじゃないですかね。5%の燃費削減効果が認められればいいようですので(他にも条件ありますが)、10%削減を謳っている事業者だったら余裕でクリアできるでしょう。

でも、今現在、優良として公表された機器・装置はないみたいです。

投稿: 通りすがりの者ですが | 2008年2月20日 (水) 22時55分

法律素人さま
コメントありがとうございます。
それでもなお、私の理解不足だと思うのですが、当初から私の頭に引っかかっていた点についてまだ若干のとまどいが残っております。
>得体の知れない“マイナスイオン”及び“なんとか水”のような
>効能不明のものは、その立証が出来ない可能性が高いであろうから、
>そのような商品(製品)の歯止めになるのではないか?
>その方が、結果的に真面目にやっている会社にも、社会的にも
>良いのではないか?
>というかたちで後段へ繋いだつもりでございました。
というご説明で法律素人さまの立場はよく理解できたのですが、この、
>効能不明のものは、その立証が出来ない可能性が高いであろうから、
>そのような商品(製品)の歯止めになるのではないか?
の部分について、最初からコンプライアンスを「無視」する主体については歯止めにはならないのではないかと思うのですがいかがでしょうか?
この手の最初からの確信犯による問題商品の供給と会社法と金融商品取引法の適用のある会社さんによる問題商品の供給が、どの程度の割合なのかにもよると思うのですが、今回のガイドラインの効用が後者にあるとしてもそれを通じて前者に対しての歯止めにはなりにくいような気がするのですがいかがでしょうか。
これの枠組みが定着した場合に、ヒットエンドランを志向させてしまい、より問題の多い商品提供へと導いてしまう可能性もあるかもしれませんし、注意を受けたら対応しようという「開き直り」を誘発するかもしれません。
そのような主体には別途の枠組みによる、より効果的な規制の可能性についても検討する必要があるのではないかと考えるのですが。
これは政策として前者を排除するための方策として何を最適な枠組みとして考えるかという問題であるとも思うのですが、もし前者のほうがこの手の商品類型に閉める割合が相対的に大きく、さらに被害の深刻度が大きいのであれば、そのためには別のより効果的な枠組みによる法規制の枠組みであって、少なくとも後者にとっては「より制限的でない他に取りうる手段」というものが検討される必要があるように思うのですが。
なんとか水とかの領域に限らず、大手さんが発信してそれにフォロワーがちょうちんをつける場合もあるでしょうが、①そもそも大手さんが行っている慣行については問題がないにもかかわらずフォロワーがひどすぎる場合と、②大手さんの慣行にも問題がありそうな場合があるでしょうし、③そもそも大手さんではなく問題がある当事者により専らその「市場」が形成されている場合もあるように思うのです。
競争法の枠組みというのは常にいわばこの「市場の相対性」を前提としていると思っていたものですから(この辺が私の知識の浅薄さがでてしまいますね。ごめんなさい)、ガイドラインというものさしの中で一律に挙証責任を転換することの根拠としてはもう少し強いものが必要なのではないかと感じていた次第です。
コメントへのご返答により私も整理ができましたので、もう少し自分なりに考えてみたいと思います。
ありがとうございました。

投稿: ろじゃあ | 2008年2月22日 (金) 11時10分

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