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2008年3月31日 (月)

会計不正(会社の「常識」・監査人の「論理」)

Kaikeihusei_2 日曜日の日経新聞社説では「企業は内部統制の充実で信頼を高めよ」とあり、先週は内部統制に関する特集記事なども連載されまして、いよいよ施行時期突入の気運も高まってきました。先週のエントリーでも申し上げましたが、現場では「決算・財務報告プロセス」をどのように(監査人ウケするように)構築すべきか、またどのように有効性評価すべきか、という点が大きな問題になろうかと思いますが、監査役を含む役員の皆様方には、「不正会計リスクを低減させるべき統制環境とは何か」いま一度お考えいただきたく、とりわけ内部統制報告制度の責任者(担当取締役や担当部長さんなど)の方にぜひともお読みいただきたいのが「会計不正~会社の「常識」 監査人の「論理」~)」であります。(浜田 康著 日本経済新聞出版社2400円税別) 2002年に出版されました浜田先生の前著「不正を許さない監査」は、2005年9月に、このブログでご紹介いたしましたが、内部統制報告制度施行に向けての、浜田先生の本著の提言はまことに貴重であります。とりわけ後半の第6章「統制環境をどのように考えるべきか」、第7章「不正を許さないシステム」、第8章「監査人は会計不正にどう対応すべきか」あたりは、著者ご自身の長年にわたる監査経験から、経営者評価とはどうあるべきか、また内部統制監査はいかにあるべきか、その具体的なヒントを事例や指針にそって卓越した試論をもって展開されており、きわめて参考価値は高いものであります。またJ-SOX関連以外にも、先日、当ブログにて第一審判決をご紹介しましたアソシエント・テクノロジー社の会計不正につきましても、第1章のメディアリンクス事件の解説内容を読む中で、どこに問題があるのか、ということも理解が進んだような次第であります。(カネボウ事件やIXI社の事例などで、なんとなくわかったつもりでいた「架空循環取引」や「スルー取引」でありますが、この本を拝読しまして、やっと本筋が理解できました。)かように第1章から8章まで、どこから読んでも興味深い内容ばかりでありまして、前著「不正を許さない監査」同様、手元の本はすでに青線や赤線、囲い込みや付箋などでいっぱいになっております。

ただ浜田先生が本書で述べられているなかに、「会計に対する無知、無理解」というテーマとして、以下の記述に若干ひっかかるものがございます。(以下、若干の引用をお許しください)

会計というものは、極端にいえば、単なる約束事にすぎません。・・・(中略)会計というものは、企業等が行う経済活動を、業績把握とか、財政状態の把握とかの目的に沿って測るモノサシですが、経済活動自体が様々な見方を許容している以上、モノサシも「本来正しい」ものはないのです。・・・(中略)コンセンサスですから、有力反対説もあれば少数説もあります。しかし一度決まったら、全員がそれにしたがうのが約束事のたいへん大事なところです。このように会計基準というものは理論的にみえて結構妥協の産物のようなところもあり、また強引なところもあります。・・・(P81~P82)

会計学も社会科学であり、すみよい社会生活の実現を目的として生まれたものである以上は、「絶対正しいもの」を探求する必要はなく、妥協の産物であることについては異論はありませんし、またいったん基準が決まった以上は関係者がこれに従う必要があることも認められるところと思います。しかしながら、会計基準は単なる自主ルールではなく、立派な法規範(もしくは法規範に準ずるもの)であります。金商法と会社法では、若干制度趣旨は異なりますが、会計基準は一般に公正妥当と認められる企業会計慣行のひとつであるとされております。(会社法431条)つまり、会計基準の内容は「一般に公正妥当と認められる」ものであることが求められているわけですから、企業会計基準委員会の皆様方の多数説によって決められた内容が、つねに公正であるかどうかは吟味されるべきであります。法規範の一種である以上、当然に「法の支配」のルールに従うわけでありまして、多数説が常に正しいわけでなく、なにが「公正」であるかは、最終的には裁判所が決定する(もしくは決定しうる)ことになるはずであります。会計コンバージェンスの問題も、いくら会計基準の国際化を余儀なくされるとしましても、最終的には「公正かどうか」が吟味されることとなります。したがいまして、内容がどうであるにせよ、いったん決まったことは従わなければならない、というのはあくまでも「会計基準の内容が公正であること」といった留保付きであります。たとえば、どのような事例にどのような会計基準が適用されるか、といった問題も「公正」の中身を検討すべきでしょうし、また予定されている会計基準が「唯一のもの」かどうかを決するのも「公正」の内容次第ということになろうかと思われます。(おそらく、今後は会計士さんの法的責任論の発展とともに、この会計基準の法規範性に関する議論も進展していくものと予想しております。)本書後半部分におきまして、日本コッパーズ事件の原審判決、控訴審判決に言及されており、「これまで会計士の方が抱いているコッパーズ事件判決への認識は甘すぎるのではないか」として、浜田先生も公認会計士の方々へ警鐘を鳴らしている場面もございますが、会計士(監査法人)さん方の自己防衛の見地からも、もっとこのあたりは深く考察する必要があるものと考えております。

いずれにしましても、内部統制報告制度にご関心のある方は、第6章だけでもお読みになることをお勧めいたします。私自身も含めて、すべてをすぐに消化しきれないとは思いますが、4月1日以降じっくりと統制環境を整備し、整備状況を確認するための参考書として活用できればいいのではないでしょうか。なお、本書でも「不正のトライアングルの限界」として、「あとだしジャンケン的評価」に関する苦言のようなことが記載されております。「リスク評価にまつわるあとだしジャンケン的評価」はコンプライアンスの永遠の課題なのかもしれません。

3月 31, 2008 本のご紹介 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年3月29日 (土)

株主総会対策のトレンド-敵対的買収防衛策と委任状争奪-

昨日(3月28日)、サッポロホールティングスの定時株主総会におきまして、買収防衛策を継続する旨の会社側提案が可決(ただし3分の2の賛成票を得るには至らず)されたとのことであります。今年も新たにライツプランを導入する予定の上場企業も多いようでして、勧告型、定款変更型を問わず、株主総会に諮ることを予定しているところが大半のようですので、今年の株主総会対応のトレンドとしてはタイトルのとおり「買収防衛策の導入(継続)」と「委任状争奪戦」のようであります。ブルドック最高裁決定、モリテックス東京地裁判決など、参考となる司法判断も出ておりますので、これらの話題に関心が集まるのも当然かもしれませんね。

さて、すでに書店ではこの時期の恒例であります「総会対策本」がずらりと並んでおりますが、毎年購入しております「株主総会徹底対策」(鳥飼、菊池著)は別として、このトレンドを学ぶにあたって最も刺激的な2冊を拝読いたしました。

32042926 1冊目は「株主が勝つ 株主に勝つ」。(江頭憲治郎教授、日比谷パーク法律事務所 商事法務 2000円税別)なお副題として「プロキシファイトと総会運営」と記載されております。この本は「はしがき」にありますように、日比谷パーク法律事務所開設10周年を記念して行われた江頭憲治郎東大名誉教授の基調講演とシンポジウムをベースとして出版されたものであります。日比谷パークの著名な先生方の渾身の論文も掲載されており、読み応えのある一冊であります。しかしなんといいましても、会社法実務に多大な影響を与えていらっしゃる先生の「ブルドック最高裁判決が日本の買収防衛策に与えるインパクト」なる基調講演録と参考資料「法の支配」145号に寄稿された「事前の防衛策-発動時の問題-」におけるご意見は、いま最も注目されているところではないでしょうか。江頭教授の事前警告型買収防衛策に関するご意見は、「株式会社法」の第二版のほうでも少しだけ述べられておりますが、この基調講演のお話によって、かなり理解できたような気がいたします。江頭教授のご意見へのコメントではございませんが、一つとても感銘を受けましたのは(あたりまえのことと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが)、

ブルドック事件の最高裁決定については、批判を含めていろいろ意見があるわけですが、判例を読む場合にまず最初にやるべきことは、裁判所は何を判示したか、具体的に申しますと、どういう事実について何を判断し、何を判断しなかったのか、ということを客観的に認識することであり、判決を批判・評価するとすれば、それを終えてからということになろうかと思います。

なる「前置き」のお話であります。(ここだけ引用、ご容赦ください)あたりまえのように思えますが、実はとても重要なことであります。民事裁判でも、一方当事者が自分に有利な過去の判例を引用する場合がございますが、ここのところがしっかりできていないと裁判官を説得することは困難であります。江頭教授は、先の基調講演におきまして、まずこの作業をされ、そのうえでご意見を述べておられますので、内容につきましては賛否両論あるとは思いますが非常に説得的であり、勉強になるところです。(なお、このあたりはモリテックス東京地裁判決の解説を商事法務に出されたN弁護士の論稿を拝読したときにも痛感したところであります)

Saizensennisimura 2冊目は「敵対的買収の最前線」(西村高等法務研究所叢書 商事法務 1400円税別)。副題として「アクティビスト・ファンド対応を中心として」とあります。こちらも落合誠一教授を中心に、ご存知西村あさひ法律事務所の著名弁護士の方々の基調講演とシンポジウムの記録を中心としたものでありまして、なんと(!)敵対的買収と委任状争奪戦の「最前線」を語るにおいて、ブルドック最高裁決定やモリテックス東京地裁判決が世に出る前の講演録をそのまま公開するという「堂々たる」自信作であります。(なお、ブルドック最高裁決定につきましては、注記として参考文献等にすこしだけ触れておられます。)落合教授が買収防衛策と「公正」に関するお話をされており、そのなかで多数派株主と少数株主の関係について言及されておられますが、そもそも上場企業といっても50%近くを同族で保有しているような場合と、ブルドックソースのように、スティール以外は3%以下の保有株主であるような場合とでは「多数の賛同を得た」という意味も変わってくるのではないか・・・といった問題なども非常に新鮮であります。また、委任状勧誘ルールや会社側の勧誘に絡む法的問題点を紹介しているN弁護士(元ふぉーりん・あとにーの47thさん)の講演録は、それ自体が今後のブログの検討課題として使わせていただけそうなものばかりであります。

どちらも一気に読める程度のソフトカバーですので、年度末のお忙しい時期とは存じますが、平成20年度のトレンドを探るという意味ではオススメですので、また読了された方のご意見、ご感想などお待ちしております。

3月 29, 2008 M&A新時代への経営者の対応 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年3月28日 (金)

スルガコーポ調査報告書にみる反社対応の困難性

Photo 堺の裁判所の桜が5分咲きでしたので、弁論終了後、思わず撮影しました。この週末あたりは、大阪近辺の桜の名所はどこも花見客で大賑わいになりそうですね。

さて、「弁護士法嫌い」さんや、行方先生がご自身のブログでも紹介されていらっしゃるとおり、金融庁のHPにて「反社会的勢力による被害の防止」に係る監督指針のパブリックコメントの結果が出ております。本日は、この金融機関における反社会的勢力排除の仕組みとも深く関連するスルガコーポレーションの件(示談受託企業の弁護士法違反事件)についてのエントリーであります。立退交渉で弁護士法違反に問われた関係者らが、24日公判請求された件におきまして、スルガコーポレーション株式会社(東証二部)より一昨日(25日)、同社外部調査委員会作成に係る「調査報告書(中間報告)」が公表されております。企業不祥事にからむ外部調査委員会報告書をいろいろと読んできましたが、この報告書、まだ中間報告ではありますが、非常に価値の高いものであります。ひさしぶりにドキドキしながら最後まで拝読させていただきました。報告書の構成も巧みで、かつ文章がわかりやすい。これまで研究させていただいた報告書のなかでも、日興コーデ不正会計事件、関西テレビ取材捏造事件、三洋電機不正会計事件とならび、各企業において十分検討されるべき報告書であります。とりわけ、企業と反社会的勢力とがどのように癒着し、これを排除することがどれほど困難であるかを認識することができますし、また反社会的勢力との関係というものが、ある日突然、どこの企業にでも同様の事態が発生しうるリスクであることが、ご理解できるのではないでしょうか。とりわけ、この外部調査委員の方々が認定した事実が真実であるとしますと、これまで新聞等で報道されているところの事実はかなり歪曲(誇張)されており、何気ない日常の業務において、反社会的勢力と関係を有するリスクが潜んでいることに気づかされます。

1 弁護士による立退交渉の4分の1の時間で明渡完了!

スルガコーポも、以前は立退交渉に弁護士を活用していたのでありますが、あまりにも示談交渉に時間を要するため、融資を受けた資金の返済が滞り、資金繰りが悪化したとのこと。(なお、これはスルガコーポの「不動産専有卸業」なるビジネスモデルとも関係するわけですが)スルガコーポ社は、弁護士が示談交渉するのではとてもビジネスとしてはやっていけない、ということでT社、K社に依頼をすることになりますが、これが弁護士による交渉時間と比較して、約4分の1程度の時間で明渡を完了させることとなり、利用価値がとても高いわけであります。(まず、これには驚きました。)

しかしこの事件、今後の不動産事業にかなり大きな影響が出るのではないでしょうか?とくに以前村上ファンド関連のエントリーのなかでとりあげましたが、大阪は梅田ヤードをJRと阪神阪急グループが競って開発していくところですが、こういった事業はすべて弁護士が(すくなくとも)管理監督しながら進めていくことになるのでしょうね。もちろん弁護士が出てくれば、テナント側も弁護士を依頼するケースが増えるわけでして、訴訟案件に持ち込まれることも増えるのは間違いなさそうですし、テナントビルが一気に明け渡し完了物件になることも期待できないでしょうから、開発資金をどう調達すべきか、いろいろと難問が出てくるんじゃないでしょうか。このあたりがいわゆる「弁護士法リスク」と言われるところかもしれません。

2 スルガコーポが後戻りできる場面があったのでは?

平成15年頃といえば、すでに経団連行動規範も公表されていた時期ですし、建設業界とはいえ、スルガコーポは上場企業だったわけですから、コンプライアンス違反(反社会的勢力との関係継続)は企業にとっての命取りになることは十分承知していたはずであります。そこで、この報告書をお読みになって検討すべき点は、いくつかの時点において「後戻りするための黄金の橋」がかかっていたことにお気づきになるはずであります。もしあなたが、会社の命運を賭けた不動産ソリューション事業をひとりで抱え込んでいたこのT元取締役の立場であれば、この黄金の橋のたもとで後戻りすることができたかどうか?とりわけ比較的初期の段階で、K社の代表者が地上げで逮捕されたことがある、という事実を(テナントからの情報提供で)知ることになるわけですが、それでもK社に任せるに至った心境はどのようなものだったのか?また、この元取締役に毅然とした態度をとった法務部の社員が登場しますが、なぜこの法務担当社員は元取締役に対して毅然とした態度がとれたのか?もしお時間がありましたら、貴社におかれましても、総務部、法務部等でご議論されてはいかがでしょうか。

なお、反社会的勢力の関係ではございませんが、内部管理体制に問題ありとして、東証および大証において特別注意市場銘柄に指定されてしまいました真柄建設社の社外調査委員会報告、社内調査委員会報告(中間報告)などと比較しながら検討いたしますと、「統制環境」の重要性がかなり理解できるのではないかと思います。

3 弁護士が気づかない「弁護士法違反」

最近、弁護士の間でも「弁護士法違反」リスクが話題になっております。たとえば私が所属しております「IPO企業統治システム研究会」には他業種の方も在籍されており、支援企業への報酬請求の方法を間違えますと、弁護士以外の者が法律事務を「業として」行ったとされるリスクを抱えることになりますので細心の注意が必要であります。また、最近話題になっております「事業承継支援」につきましても、株式の集約作業、会社の代理、オーナーの代理、番頭さんの代理、後継候補者の代理など、だれの支援をするか特定しておかなければ「利益相反」として懲戒されるリスクを負うことになります。しかし弁護士は(目先のお金に目がくらむのかもしれませんが・・・)こういったリスクに意外と「無頓着」であります。スルガコーポの調査報告書に登場する「J弁護士」も、果たしてT社、K社の「地上げに伴う犯罪行為」リスクだけでなく、そもそも弁護士が関与しないところでT社らが示談行為を行うリスクに気づかなかったのでしょうか?非常に残念ですし、またここにT元取締役が後戻りできなかった大きな要因があるような気がしてなりません。

4 調査報告書(中間報告)へのわずかな疑問(単なる私見ですが)

Cimg0421_320 スルガコーポ社は、地上げを委託していたT社の提案どおりに、テナントビルの所有権がT社に変わったことを仮装するための虚偽の不動産売買契約書を作成するわけでありますが、この点について外部調査委員会は「スルガコーポ社として、コンプライアンス上の問題行為だが、これ自体が犯罪行為に該当するわけではない」と結論付けております。はたして本当に「犯罪行為」にはならないのでしょうか?たしかに今回は、弁護士法違反が問題となっている事案であり、地上げ行為にからむ脅迫行為などは立件の対象とはされていない模様であります。しかし、詐欺罪(共謀共同正犯)の構成要件には該当しないのでしょうか。テナント側からすれば、上場企業であるスルガコーポが立退き交渉しているのか、それとも怖そうな企業が所有者として立退き交渉しているのか、という点は立退料の金額だけでなく、そもそも「立ち退くかどうか」という意思を決定するにあたって重要な影響を与える事情であると考えられます。その重要な事情をごまかすこと(つまり虚偽の不動産売買契約書を作成すること)にスルガコーポ社の役員が関与している以上は、かなり問題ではないかと思われます。また、詐欺罪の要件である「被害」は、被害者の全体財産の損失が認められる必要はなく、たとえ相当な立退料をもらっていても「借家権」そのものの処分行為(財産上の利益の損失)が「損害」とされるのが通説判例でありますので、事実上の告訴(もしくは被害届)が提出された場合には、一応の問題になるのではないでしょうか。(ただし、これはあくまでも私個人の意見にすぎません)

もう一点、この調査報告書を読んでおりまして、すっきりしないのがT元取締役以外の役員の方々が、いつからT社、K社が「反社会的勢力」であると認識したのか、という点であります。平成19年6月以降という点が強調されているのでありますが、それまでも実質的には取引銀行から「融資をとめる」という強制手段によって他力で反社会的勢力との断絶を要求されているわけですから、その時点において監査役を含む役員の方々が、「知らなかった」というためには、もうすこし説得的な理由付けがなければ、どうもすっきりしないのではないだろうか、と思った次第であります。(なおスルガコーポ社のHPに、25日付けにて、 「反社会的勢力への毅然とした対応に関する基本原則について」なる文書が公開されております。ご参考まで)

3月 28, 2008 反社会勢力対策と内部統制システム | | コメント (5) | トラックバック (0)

2008年3月25日 (火)

決算・財務報告プロセスは「統制重視」か「検証重視」か?

(一部訂正がございます 3月27日未明)

週刊経営財務3月17日号におきまして、「内部統制報告制度の焦点(内部統制構築における監査人の対応について)」なるM教授の研究報告が掲載されております。このなかで内部統制構築担当者に対するインタビュー調査報告結果(監査法人の対応に関する調査)が集計されておりますが、依然として、内部統制担当者の方々の監査法人への不信感が根強いことがうかがわれる結果となっております。私の感想としましては、内部統制報告制度に関する通訳不在のまま(最近は金融庁が一生懸命、通訳に徹しようとされているようにも思われますが)、施行期に突入せざるをえないわけでして、この現実を直視した場合、企業側担当者としましても、整備運用状況に「重要な欠陥」を出すことなく、また有効とする経営者評価に適正意見を求めうるようなシステムをいかに構築すべきか、その基本的な対策を検討する時期にきているものと思います。(なお、以下に述べるところはまったくの私見であります。)

財務諸表監査に伴う内部統制監査審査については「プロ中のプロ」である監査人も、インダイレクト・レポーティングを前提とした「内部統制報告制度における内部統制監査」にあたっては「初心者」であります。(かくいう私も「初心者」どころか、「素人」であります)これは経営者評価の基準にしたがって整備運用の有効性を評価する経営者と同じレベルであります。職業会計士さんには「監査の経験」という武器がありますが、かたや経営者には「社内の仕組みに精通している」という武器がありますので、まさに対等であります。また、アサーションに対するリスク評価やキー・コントロールの絞り方、サンプルテストによる統制評価手法などの知識は監査人に分があるとしましても、代替統制や補充統制など、リスクを合理的な範囲に抑え込む手法についての知識は経営者のほうに分があるはずです。理想的なのは、内部統制報告制度が金融商品取引法における企業開示制度のひとつとして制定された趣旨に立ち返り、監査人監査、経営者評価の利点、欠点を認識しながら、シナジー効果(なるべく効率的に、財務報告の信頼性を確保できるシステムを構築すること)を生むことであり、それが最も費用対効果のうえでも望ましい姿であると考えます。

※財務諸表監査にともなう「内部統制監査」なる用語はおかしい、とのご指摘を受けましたので、内部統制審査という用語に変更いたしました

しかしながら、「プロセスの開示」として、財務報告の信頼性に疑問を持たざるをえない上場企業もまた、存在することは否定できない事実でありまして(これは私の経験からの感想です)、監査人がどういったところでレッドカードを出しやすいのか・・・というところを探ることも意味があるのかもしれません。ということで、結局のところ、全社的内部統制、とりわけ「統制環境」こそ重要なポイントであることは理解しつつも、現実の「有効性」判断にもっとも影響を及ぼすプロセスは、やはり決算・財務報告プロセスではないでしょうかね? (私はどうもそんな気がします)個別財務諸表にしても、連結財務諸表にしても、それらが作成される過程がスムーズであれば、そもそも全社的な統制環境が良好であると推認することができる場合も多いように思われますし、またなんといいましても、監査人にとっての「あとだしジャンケン」的評価が可能なのは、この決算・財務報告プロセスをおいて他にはないと思うのであります。(誤謬やミスを発見したうえで、内部統制システムの不備を指摘するのが、おそらくもっとも監査人方にとっては説得的でありましょうし、企業側としても反論できる余地が少ないように思われます。財務報告における虚偽記載のリスクを評価する、といいつつ、実際には「危険探知主義」ではなくて「結果主義」でリスク評価されてしまうわけであります)

会計処理におけるミスや誤謬が判明した段階で、さかのぼって「決算・財務報告プロセスには不備がある」とされることはとてもおそろしい気がします。しかしこれがおそらく現実なんですよね。このような「あとだしジャンケン」リスクが存在するために、金融庁Q&Aの第11問におきましても、その回答例としては「特に決算・財務報告プロセスに係る内部統制については、かりに不備があったとした場合、当該期において適切な決算、財務報告プロセスが確保されるためには、早期に是正されることがのぞましい。・・・・前年度の運用状況や四半期決算の作業等を通じ、むしろ、年度の早い時期に評価を実施することが効率的、効果的である」とされているのでありまして、企業側にとっては最大の防御のポイントになってくるのではないでしょうか。

さてそうなりますと、決算・財務報告プロセスにおいては、その統制活動(たとえば会計処理方針に関するマニュアルの整備、連結グループにおけるパッケージ作成のための研修など)を重視すべきか、検証活動(子会社の財務報告内容の再検証、再鑑など)を重視すべきか、という問題への回答としては、後者、つまり「検証活動」に重点を置くことにならざるをえないのではないかと思われます。もちろん理想論としましては、リスクを低減することが目的である以上は、統制活動を重視して、経理マニュアルを充実させ、自社内において能力の高い経理担当者、内部監査人を養成することでありますが、この決算・財務報告プロセスにおける内部統制の評価について「結果主義」が求められる以上は、特定の担当者に大きな負担が生じるかもしれませんが、こうならざるをえないような気がします。

※ココログは3月25日午後3時より翌26日午前11時まで、メンテナンスを行います。コメントの入力もできなくなりますので、ご留意ください。

3月 25, 2008 内部統制報告制度Q&A | | コメント (7) | トラックバック (1)

2008年3月24日 (月)

情報開示ルールの強化と株主によるガバナンス

3月23日(日曜日)の日経新聞3面に「東証『第三者割当』透明化へ 既存株主保護へ情報開示強化」なる見出しの記事が掲載されております。(ちなみにWEB版のニュース)証券取引所(金融商品取引所)が、上場企業による株式や新株予約権の不適切な第三者割当増資を防止するための新たなルールを策定することで、既存株主保護を図り、市場活性化を促すことが目的のようであります。昨年も当ブログで採り上げましたが、オートバックスセブン社が「払込完了」と開示した直後に中止を発表したり、NOVA社が内容の不明確な第三者割当てを公表するなどの事例がありましたので、とりわけ発行済株式総数と比較して大規模な第三者割当による増資が行われる場合の情報開示ルールを策定することに、取引所が積極的な姿勢をとることについては私個人の意見としましては、大いに歓迎すべきことであると考えます。

WEBニュースには詳しくは掲載されておりませんが、第三者割当増資によって過半数の株式を握る投資家に詳細な取得理由の説明を求めたり、一定割合以上の新株の発行には株主総会決議を求めたりすることを、東証の企業行動規範に盛り込み、違反企業には(先日、ご紹介しました)「違約金制度」による違約金を課す・・・というものですから、(新聞で報じられているところが事実であるとすれば)会社法上の公開企業に認められている資金調達手段を一部制限する形になるようであります。

ところで、昨年6月25日には、東証の要請事項として「MSCBの発行及び開示ならびに第三者割当増資等の開示に関する要請」文書が公表され、第三者割当による増資を行う場合の開示事項の特定や、開示にむけてわかりやすい説明を行うことが要請されておりましたが、これはあくまでも要請にすぎないわけであります。また、投資家への注意喚起を促すための「公表」にしても、上記のとおり構想されております「上場企業への違約金賦課」にしましても、それらは(買収防衛策のあり方について、企業行動規範で定められているのと同様に)上場企業と証券取引所との上場管理契約上の義務履行の問題を通じて、証券取引所主導による企業統治を実現する一事例と理解されます。

しかしながら、第三者割当による増資について、株主総会の決議を必要としたり、詳細な開示ルールを企業行動規範に盛り込むこととなりますと、上場企業による当該ルール違反については、単なる取引所によるペナルティを通り越して、株主から会社法828条等による新株発行の無効の訴えの原因要件にも該当する可能性が出てくることとなり、「証券取引所によるガバナンス」にとどまらず、「株主によるガバナンス」の実現可能性を高めることになるのではないでしょうか。「新株発行の無効の訴え」は、募集株式の発行等に法的瑕疵がある場合に提起されるものでありますが、ご承知のとおり、募集株式の発行等の無効事由は法定されておらず、解釈に委ねられておりますので、証券取引所ルールが「法的瑕疵」と評価され、かつ株主による差止請求権(会社法201条)行使の機会を確保できないほどの重要な開示違反と認められるようなケースにおきましては、第三者割当の手続が完了した後(公開会社においては募集株式発行の効力発生後6ヶ月以内ですが)でも、その効力が覆る可能性は否定できないように思われます。これまでは、取引所から注意を受けたり、公表されることによって「ちょっといかがわしい会社ではないの?」といったレピュテーショナルリスクを受容するだけで済んでいた会社にとりましても、「あいまいな情報開示」によって募集株式の発行が無効とされるリスクが生じることになりますと、そもそも資金調達する側も慎重になりますし、エクイティファイナンスの実務にも相当程度の影響が出てくるのではないかと推測しております。

このあたりの問題は①「開示がわかりにくい場合には、開示があったといえるか」(開示することの実質的な意味)という問題や、②そもそも証券取引所の行動規範が「法的規範」といえるかどうか、③「開示に関する瑕疵については、もし法の要求する手続違反の事実があったとしても、会社側において実質的な瑕疵が存在しないことを反論すれば瑕疵が治癒されるか」といった問題、そして④株主保護といっても、希釈化にともなう経済的価値だけを保護するのか、支配権の価値についても保護するのかといった問題等にもつながりそうですので、また別の機会に閲覧されていらっしゃる皆様方のご意見などを頂戴しながら検討してみたいと思っております。

3月 24, 2008 証券取引所を通じた企業統治 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2008年3月21日 (金)

管理人オススメのブログ五選(会計、法務系)

ある常連の方から教えていただきましたが、3月14日に開示情報を出した上場企業のなかに、株主総会開催期日までの間に2週間空けずに一般株主への招集通知を発信したところがありますね。(会社法299条1項ご参照 江頭教授の「株式会社法」でも、通知の発信日と株主総会当日までの間に2週間という意味である、とあります)株主の権利侵害でありまして、これは簡単に治癒できない瑕疵ではないでしょうか。。。それとも、そんな細かい違法手続など「どうでもいいこと」なんでしょうか。(あいさつ、ここまで)

(22日追記)↑でご紹介した上場企業でありますが、21日の深夜に「訂正報告書」が出ております。やはり修正されましたね(^^; これならなんとか理由がつきそうです。。

こういったマニアックな話題から始まり、「地方弁護士の場末のブログ」をキャッチフレーズに、ドリコム時代を含め、ここまで3年ほどブログを書き続けておりますが、昨年末にはおかげさまで「アルファブロガー2007」なる称号を頂戴し、そしてこの春からは著名な某ニュースサイトにてダイレクトに当ブログのエントリーがお読みいただける、とのことで(ホンマかいな?)、もはや冗談でも「場末のブログ」とも言えない状況になってきたみたいです。まぁ、毎度のことながら、これも他人様に読んでいただけるうちが華(はな)だと思い