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2008年3月12日 (水)

株主層の変動と株主総会

法律時報2008年3月号に仮屋教授(一橋大学)の「株主層の変動と株主総会(アクティビズム対応への視座)」なる論稿が掲載されておりまして、興味深く拝読させていただきました。教授は機関投資家のアクティビズムと投資ファンドのアクティビズムをきちんと分けて、その行動パターンと企業の対応方針を検討されておられるのでありますが、スティールパートナーズに代表されるような投資ファンドのアクティビズムへの検証と企業の対応に関する記述が最もおもしろい内容であります。

そもそも投資ファンドは、エクイティスワップ取引(日本では賭博罪にあたる、と理解されていましたが、1999年より店頭デリバティブ取引の一種として認められております)などにより、リスクヘッジをしながら相当大きな株数を保有する場合があるわけで、そうなりますと議決権は保持しているけれども、それに見合うだけの経済的利益を有していない場合とか、むしろ株価が下がることによって大きな経済的利益を獲得する場合もある、とのこと。(教授は2004年の米国における事例を紹介されています)このような経済的利益に見合わない議決権株式を、投資ファンドが行使する(空議決権行使)ことになりますと、投資ファンドと、その他の株主との間において明らかな利益相反関係が生じる可能性がありますし、そもそも従来の会社法は、どの株主も企業価値の向上を望んでいるという単純な仮定を基礎として議決権の配分を考えてきたわけでありますが、そのシンプルな仮定を基礎とすることができなくなってくる、というものであります。

私は(毎度の言い訳でありますが)M&Aに詳しい弁護士でもありませんので、単なる感想でありますが、株主間の利益相反が現実化するような場面であれば、たとえばこのたびのサッポロHDに対するスティールの提案変更(66%取得→33%取得へ)につきまして、スティールの側が首尾よく33%を取得した場合、たとえそこで買い進めることなく、踏みとどまっていたとしても、そこでは「株主共同利益」という概念を想定できない事態というものも、あり得るように思うのですが、どうなんでしょうか。もちろん理論上では経営権を保有する目的ではありませんので、自らの経営計画などを示す必要はなく、また権限分配法理とも無関係であると思われますが、金融工学を駆使して、空議決権行使を行う可能性があるファンド、ということでしたら、企業価値の向上ということからすれば、あまりにも大きな障碍になるのではないか、という疑問が生じます。だからといって、事前警告型の買収防衛策が容認される、とみるのは論理の飛躍があるかもしれませんが、やはり買収防衛策が「株主共同利益の確保」を目的とするものである以上、「株主共同利益」を概念しえない状況を現出させてしまう前になんらかの手を打つことの当否についても検討されていいのではないでしょうか。また、このあたりは詳しい方にもご教示いただきたいところであります。

3月 12, 2008 株主総会関連 |

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コメント

http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2007/2007sum17.html
この程度の情報ですが、同様の問題視がされていますね。
ただし、アクティビストヘッジファンドの場合、特にSPさんの場合は四六時中ダイヤモンドや東洋経済さんなんかが大量保有情報をウオッチされていると思いますので、簡単にこういうことが出来ないのではとも思いますが。
借株の場合は、決算越えは貸し手も嫌がるようですので、なかなか思うようには行かないのが現状でしょう。

NYタイムズによるとカール・アイカーン(日経新聞では「米国著名投資家」と紹介される、アクティビストの大御所で、リヒテンシュタインさんの親分のような方)のアイカーン・パートナーズというファンドが07年第3四半期に赤字になったそうです。サブプライムの始まった時期です。
彼はブーン・ピケンズ(小糸製作所株買占めの米国人)時代からの「乗っ取り屋」で、最近ではモトローラの携帯電話事業を売却させることに成功しつつあります。
その彼をもってしても株の下げ局面では不調になっています。またNYタイムズ紙は、結局アクティビストはM&Aが発生しないと儲けにくいのでは、との仮説を投げかけていました。

最近もカーライル(プライベートエクイティですが)の投資先がデフォルトになって大問題となっていますね。大きなポーションを張るファンドにはなかなか難しいのではないかとも実務的にはと、「感想」ですが・・・。

投稿: katsu | 2008年3月15日 (土) 00時36分

katsuさんがおっしゃるとおり、エントリーで書きました手法というのも、最近話題になっていますが、果たして主流になるかどうかは不透明である、と先の仮屋教授も述べておられます。
理論上は33%のままでも、実際には経営支配を及ぼしうるわけですので、そのまま踏みとどまるのかもしれませんし、なかなか真意はわからないところだと思います。きょうの報道では、協議入りが検討されているということらしいですね。
議決権行使助言会社も活発に意見を表明しているようですし、今後も目が離せないです。

投稿: toshi | 2008年3月15日 (土) 23時03分

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