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2008年3月29日 (土)

株主総会対策のトレンド-敵対的買収防衛策と委任状争奪-

昨日(3月28日)、サッポロホールティングスの定時株主総会におきまして、買収防衛策を継続する旨の会社側提案が可決(ただし3分の2の賛成票を得るには至らず)されたとのことであります。今年も新たにライツプランを導入する予定の上場企業も多いようでして、勧告型、定款変更型を問わず、株主総会に諮ることを予定しているところが大半のようですので、今年の株主総会対応のトレンドとしてはタイトルのとおり「買収防衛策の導入(継続)」と「委任状争奪戦」のようであります。ブルドック最高裁決定、モリテックス東京地裁判決など、参考となる司法判断も出ておりますので、これらの話題に関心が集まるのも当然かもしれませんね。

さて、すでに書店ではこの時期の恒例であります「総会対策本」がずらりと並んでおりますが、毎年購入しております「株主総会徹底対策」(鳥飼、菊池著)は別として、このトレンドを学ぶにあたって最も刺激的な2冊を拝読いたしました。

32042926 1冊目は「株主が勝つ 株主に勝つ」。(江頭憲治郎教授、日比谷パーク法律事務所 商事法務 2000円税別)なお副題として「プロキシファイトと総会運営」と記載されております。この本は「はしがき」にありますように、日比谷パーク法律事務所開設10周年を記念して行われた江頭憲治郎東大名誉教授の基調講演とシンポジウムをベースとして出版されたものであります。日比谷パークの著名な先生方の渾身の論文も掲載されており、読み応えのある一冊であります。しかしなんといいましても、会社法実務に多大な影響を与えていらっしゃる先生の「ブルドック最高裁判決が日本の買収防衛策に与えるインパクト」なる基調講演録と参考資料「法の支配」145号に寄稿された「事前の防衛策-発動時の問題-」におけるご意見は、いま最も注目されているところではないでしょうか。江頭教授の事前警告型買収防衛策に関するご意見は、「株式会社法」の第二版のほうでも少しだけ述べられておりますが、この基調講演のお話によって、かなり理解できたような気がいたします。江頭教授のご意見へのコメントではございませんが、一つとても感銘を受けましたのは(あたりまえのことと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが)、

ブルドック事件の最高裁決定については、批判を含めていろいろ意見があるわけですが、判例を読む場合にまず最初にやるべきことは、裁判所は何を判示したか、具体的に申しますと、どういう事実について何を判断し、何を判断しなかったのか、ということを客観的に認識することであり、判決を批判・評価するとすれば、それを終えてからということになろうかと思います。

なる「前置き」のお話であります。(ここだけ引用、ご容赦ください)あたりまえのように思えますが、実はとても重要なことであります。民事裁判でも、一方当事者が自分に有利な過去の判例を引用する場合がございますが、ここのところがしっかりできていないと裁判官を説得することは困難であります。江頭教授は、先の基調講演におきまして、まずこの作業をされ、そのうえでご意見を述べておられますので、内容につきましては賛否両論あるとは思いますが非常に説得的であり、勉強になるところです。(なお、このあたりはモリテックス東京地裁判決の解説を商事法務に出されたN弁護士の論稿を拝読したときにも痛感したところであります)

Saizensennisimura 2冊目は「敵対的買収の最前線」(西村高等法務研究所叢書 商事法務 1400円税別)。副題として「アクティビスト・ファンド対応を中心として」とあります。こちらも落合誠一教授を中心に、ご存知西村あさひ法律事務所の著名弁護士の方々の基調講演とシンポジウムの記録を中心としたものでありまして、なんと(!)敵対的買収と委任状争奪戦の「最前線」を語るにおいて、ブルドック最高裁決定やモリテックス東京地裁判決が世に出る前の講演録をそのまま公開するという「堂々たる」自信作であります。(なお、ブルドック最高裁決定につきましては、注記として参考文献等にすこしだけ触れておられます。)落合教授が買収防衛策と「公正」に関するお話をされており、そのなかで多数派株主と少数株主の関係について言及されておられますが、そもそも上場企業といっても50%近くを同族で保有しているような場合と、ブルドックソースのように、スティール以外は3%以下の保有株主であるような場合とでは「多数の賛同を得た」という意味も変わってくるのではないか・・・といった問題なども非常に新鮮であります。また、委任状勧誘ルールや会社側の勧誘に絡む法的問題点を紹介しているN弁護士(元ふぉーりん・あとにーの47thさん)の講演録は、それ自体が今後のブログの検討課題として使わせていただけそうなものばかりであります。

どちらも一気に読める程度のソフトカバーですので、年度末のお忙しい時期とは存じますが、平成20年度のトレンドを探るという意味ではオススメですので、また読了された方のご意見、ご感想などお待ちしております。

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コメント

いつも楽しく拝読しています。
推薦されました図書はじっくり読んでみたいと思います。

企業の現場に携わるものとしまして、3月決算会社で買収防衛策を導入している企業は、その買収防衛策の継続、変更、廃止等の是非を取締役会でどのように検討されるのか大変関心があります。

また特別委員会や監査役会はどのような観点から検討するのでしょうか。
先日このブログで防衛策を廃止された企業についてコメントがありましたが、継続、変更、廃止等について十分に議論すべきではないでしょうか。

昨年は裁判所の正式見解はブルドック事件しかありませんが、この事例は
有事の状況下での対応についてであり、平時導入の企業については観点が異なるとは思いますが、ブルドック事例のどの点を参考にすべきなんでしょうか。

参考となるご見解をこのブログででも取り上げていただければ、
ありがたいと思っております。またこれを読みなさい!でも結構です。

以上、勝手を申しましてすみません。


投稿: 若葉 | 2008年3月30日 (日) 14時06分

>若葉さん

コメントありがとうございます。
廃止(非継続)決定については、私も取締役会で十分な協議が必要かと思います。導入にあたっては勧告型にせよ、定款変更型にせよ、株主総会における判断によるものでありますが、有効期限は1年とか2年とかですよね。自動更新というものはありませんよね。ということは、株主の意思で導入しておきながら、継続するかどうかは事実上は取締役会の判断(継続議案を上程しないことの決定)と考えることになりますから、なぜ継続的に維持しなかったのか、その理由は詳細に検討しておく必要があろうかと思います。
たまたま日本オプティカルさんは、この4月からの医療費制度の激変という業界事情のなかにおける経営方針と、ブルドック事件最高裁決定の検討ということを理由としておりますが、今後防衛策を廃止(非継続)を決定する企業におかれましても、株主が導入に同意したものを継続しないという判断の根拠は明示しなければいけないでしょうね。
なお、ブルドック事件最高裁決定が、平時の防衛策にどのような影響を与えているか、という個人的な意見につきましては、また別途関連エントリーのなかで述べさせていただこうかと思っております。(ここは有識者の方々のご意見もお聞きしたいところですし)
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2008年3月30日 (日) 17時40分

ご紹介頂き恐縮です。
去年講演をやった時には、ほとんど文献もなかったのが、次々に委任状勧誘をテーマとした本も出版され、はからずも世の移り変わりの早さを感じさせることとなってしまいましたが、これはこれで臨場感ということでお許しを頂ければと思います。
今年は、もう少し真面目に執筆も進めていきたいと思いますので、またご意見などお聞かせ頂ければ幸いです。

投稿: 47th | 2008年3月31日 (月) 22時06分

47thさん、おひさしぶりです。

臨場感という点でいえば、いまでも「ふぉーりんあとにーの憂鬱」のブログには臨場感がありますよ。いまでもドリコム時代の「憂鬱」までさかのぼって参照させていただくこともあります。あのブログは不滅ですし、色褪せない名作だと思います。(しかしドリコム時代のエントリーは読むだけでも一苦労ですね・・・笑)

投稿: toshi | 2008年4月 2日 (水) 01時43分

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