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2008年3月13日 (木)

買収防衛策を撤廃することの是非

すでに新聞報道されているとおり、私が独立委員会の委員をしております日本オプティカル社は、平成18年より2年間継続しておりました事前警告型買収防衛策(ライツ・プラン)を廃止すること(正確には、3月の株主総会において継続に関する議案を上程しないこと)を決議いたしました。おそらく300社を超える買収防衛策を導入する上場企業のなかでは、平時に廃止決定(非継続決定)するのは初めてではないでしょうか。(きちんと調べたわけではございませんが。なお、廃止に至った理由につきましては、3月10日付の開示情報のとおりであります。→買収防衛策「事前警告型ライツプラン」の非継続に関するお知らせ)(注-ニッセン社のほうが先に非継続を公表しているようですので、はじめてではないようであります 4月21日追記)

決議に至る意思形成過程につきまして、ここで詳細を述べることは控えますが、リリースのとおり、独立委員会としても継続、非継続に関する意見をそれぞれ申し上げ、法務アドバイザー事務所の意見なども参考にして、最終的には日本オプ社の取締役会で判断したような次第であります。「イマドキの独立第三者委員会」シリーズのエントリーにも書きましたように、独立委員会はけっこうマジメに「この会社の企業価値を守ること」の意味を勉強してきましたし、ブルドックソースの最高裁決定が出されたときにも、急遽委員会を招集して、法務アドバイザーの法律事務所も交えて有事の対応策(あくまでも手続のみであります)なども検討しておりました。

事前警告型の買収防衛策の有効性につきましては、ご専門の先生方の見解なども拝聴し、私自身も認めるところであります。うまく活用できれば企業価値を毀損するような非効率な支配権移転を排除できることを否定するものでもございません。しかしながら、以前からもこのブログで申し上げているとおり、買収防衛策の導入(および継続)にあたっては、その二面性については十分な配慮が必要だと(現在でも)考えております。ひとつは、もちろん裁判で勝てる「建て付け」をどうするか、というものでありますが、もうひとつは、株主、一般投資家、ステークホルダーからみて、防衛策を導入していることがどう映るか・・・という開示(説明責任)に関する点であります。

本日の日経ヴェリタスの記事「買収防衛策への冷たい視線」、昨日の日経朝刊「経済教室」におけるU教授のご意見、また先週3月6日の同じく日経「経済教室」のT代表(全国社外取締役ネットワーク)のご意見、そして旬刊商事法務3月5日号「買収防衛策導入の業績情報効果」などを拝見しますと、買収防衛策の見直しが求められたり、過渡的なものであると評価されたり、また防衛策導入が企業パフォーマンスに及ぼす経済的影響度が検証されたりしております。こういった最近の傾向からみても、先の二面性につきましては、バランスよく配慮する必要があると思いますし、企業のおかれた経営環境や経営方針からみれば、「いったん導入はしたものの、その後の経営環境が変わったので廃止した」という選択も経営判断としては十分ありえるのではないか、と考えております。もちろん、今年の株主総会で新たに導入する上場企業もあるでしょうし、その効用は認めるところではありますが、すべての企業にとって、等しく導入の必要性が認められるわけではなく、業界全体の経営環境や、当該企業の成長過程の度合い、将来の収益見込みに及ぼす不確定要素の有無、その他株主構成や資本政策、従業員が防衛策導入をどうみているか、などを十分検討のうえで、導入(継続)の是非を検討するべきではないか、と私個人としては思う次第であります。

※なお、上記エントリーは個別企業の業績予想や新たな重要事実を含むものではなく、あくまでも過去の決定事実に対する管理人の個人的意見を開示したにすぎません。したがいまして、個別企業発行に係る金融商品への投資判断にあたりましては自己責任でお願いいたします。

3月 13, 2008 独立第三者委員会 |

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コメント

企業価値を高めるとは難しいものですね。
本来、企業価値を最大化するための仕組みだったのですが、いつの間にか専守防衛型の議論になっていた事例が多く、そこに矛盾があったのではないでしょうか(該当企業のことではなく一般論です)。

買収防衛に対する考え方は百家総論になってしまうのですが、経営者のご判断でしたら前向きなことで評価されることではないでしょうか。

法解釈や権力者の都合ででこじれるような設計ではなく、透明性のあるルールを作って欲しいと感じます。

投稿: katsu | 2008年3月13日 (木) 03時44分

 はじめまして、いつもブログを拝見させていただき、勉強させていただいております。
 さて、ここでコメントに書くのが適切かわかりませんが、ひとこと。
 3月10日に開示された「買収防衛策の非継続に関するお知らせ」の2ページ5行目に記載されている『敵対的買収成立した事例はなく』が気になっております。 
 捉え方の違いかもしれませんが、昨年、①韓国のM&FCが日本精密を修正動議と委任状勧誘で②大株主(投資組合)が東京衡機製造所を修正動議と株主提案でそれぞれ経営権が移転し、事実上敵対的買収が成立したと思います。
 また、③ソリッドグループホールディングス(旧ライブドアオート)が敵対的TOBにより子会社化しました。

 日本においては、まだまだ敵対的TOBは成立しにくい環境かと思いますが、成立した事例がないという一文に疑問を覚えました。

投稿: トラジ | 2008年3月13日 (木) 09時28分

>katsuさん

リリース直後からの株価推移を注目しておりますが、あまり好感はされていないようですね。(といいますか、変動がないといいますか・・)
やはり買収防衛策の撤廃だけでなく、中長期計画の中身がどれだけ市場で評価されるか、といったところにもよるのではないでしょうか。

>トラジさん

はじめまして。ご指摘どうもありがとうございました。私は開示統制手続には関与しておりませんので、会社の方が、ここを見ていただければいいのですが。敵対的買収の形式をどう評価するか、という点もあるかもしれませんが、勉強になりました。
これからも、こういったテーマのときには、ご指摘ください。管理人の誤りはすぐに修正いたしますので。

投稿: toshi | 2008年3月14日 (金) 01時27分

検索経由でたまたまこのサイトにたどり着いた某個人トレーダーです。

日本オプティカル、ニッセン、イーアクセスのような企業が今後も勇気を持って出てくれば株価もちょっとはあがるんですが。マスコミも、ファンドVS保守的経営者ばっかりを取材するんじゃなくて、もっとこういう企業を取り上げてほしいですね。

PS.どっちでもいい話ですが、上のほうで買収防衛撤廃は日本オプティカルが上場企業で初めてと書かれてましたが、実際には、ニッセンのものが2月下旬の召集通知で既にマーケットで情報開示されてましたので、正しくは、ニッセン⇒日本オプティカル⇒イーアクセスの順番ですね。いずれにせよ、勇気ある企業経営者に拍手!!

投稿: やまちゃん | 2008年4月20日 (日) 19時50分

>やまちゃん さん
「たまたまこのサイトにたどりつく」というのは、検索エンジンのおかげですね。どうもありがとうございます。最近、自分で調べものをしようとグーグルで検索しますと、自分のエントリーが一番最初に出てきたりして、ビックリすることがあります。
そうですね。気が付きませんでした。日本オプのほうは、自分が関与(独立委員会)していたものですから、ついついそっちを中心に考えておりました。修正をしておきます。今後もぜひ気軽にツッコミを入れてください。

投稿: toshi | 2008年4月21日 (月) 11時24分

自主的なライツプラン撤廃企業として注目されたのですが、売却を発表されましたね。
四季報にも「他社との提携模索」と書いてあったので、その通りになっただけなんですが、だったら廃止する必要もなかったのかなあとも今更ながら感じ入りました。

仮にその時点で売却の計画があったのなら、オーナーが少しでも株価を上げたかったのかなあ、なんて見方をしてしまいそうです(結果的に株価はライツプラン廃止には反応せず、TOBにだけ反応しているようですが)。


投稿: katsu | 2008年9月 3日 (水) 16時43分

katsuさん、こんばんは。

この件は、私もニュースで初めて知りましたので、非継続決定の際に具体的な話が出ていたことは一切なかったですね。もちろん詳しい社内のことは社外の独立委員にはわからないところですが。

ただ、もっと早い時点から独立委員の間では「買収する側に回る可能性があるんだったら、防衛策は足かせになるのではないか。王子は自社が買収されそうになったら、北越と同じことができるのだろうか」といった話は出ていましたね。私も買収防衛策否定論者ではなく、それなりの効用は認めるところです。ただ、それは企業ごとに環境が違うわけですから、必要なところは導入すればいいし、株主に説明がつかない企業は導入すべきではないと考えていました。会社側が非継続を決定したのも、「提携先を模索しているなかでの選択肢のひとつとして」そういった事情も考慮されてのことだと認識しています。(具体的な売却の計画はなかったですし、もしあったとしたら、私もホイホイと日経新聞のインタビューにはお答えしておりません・・笑)

投稿: toshi | 2008年9月 5日 (金) 01時57分

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