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2008年5月20日 (火)

サンエー社のインサイダー疑惑とベターレギュレーション

以前日経新聞でも伝えられておりましたが、また読売ニュースにてサンエー・インターナショナル社(上場会社の役職員)のインサイダー取引について証券取引等監視委員会が課徴金処分を念頭に勧告を行う予定であることが報じられております。私の手元にあります東京証券取引所発行にかかる「インサイダー取引Q&A第三版」の29ページには、「決定事実」が最高裁まで争われた事例をもとに①決定は商法上の機関によるものに限られず(つまり社長の意思決定だけでもあたる)②条件付きの決定(たとえば親会社が第三者割当てに難色を示しており、この親会社が承諾することを条件に割当てを行う、といったケース)であっても該当する、とありますし、またQ&Aのなかでも半年前くらい遡った初期段階においては、かなり微妙ではあるが、社長がトップダウンで重要事実案件実現を目指して検討が開始されているようなケースでは初期段階であっても重要事実が成立していると考えられる(16ページ)とあります。この本の副題のとおり「30分でインサイダー取引がわかる」かどうかは別としまして、こういった一般の方向けの解説を読みますと、サンエー社の件は普通に考えても「ちょっとヤバイんじゃないかな?」と考えられるところだと思います。実際のところ、サンエー社としては「ヤバイ」と思って証券会社さんに意見を求めたわけですから、どうして証券会社としては、違法性なし(だいじょうぶ)といったサインを送ったのでしょうか。下手をすると、先日の証券会社社員によるインサイダー取引を発生させてしまった内部統制上の問題点ともつながってしまうのではないかと邪推してしまいますが、このあたり、もうすこし詳しい事実関係が知りたいところであります。

インサイダー取引が刑事事件として立件されるのであれば、サンエー社役員の方に故意が認められる必要性がありますので、証券会社さんの意見にしたがって公募増資を行ったというものであれば「故意が認められない」(もしくは行為に違法性なし)とされるでしょうが、課徴金賦課につきましては「うっかりインサイダー」なるお馴染みの用語でもおわかりのとおり、明確な違法性に関する認識がなくても柔軟に課されてしまうわけですから、サンエー社の役員の方にしてみれば納得のいかないところだと思われます。

金融庁HPで「ベターレギュレーションの進捗状況について」と題する報告書が公表されておりまして、そのなかでプリンシプルベースとルールベースの最適の組み合わせが大きな柱とされ、一例として先日公表されました「内部統制報告制度に関する11の誤解」が引用され、「ルールの解釈にプリンシプルから光をあて、実務が過度に萎縮することがないよう、制度の趣旨を明確に示す取り組みを実施」した、と説明がなされております。私はこの金融庁の「11の誤解」につきましては、かなり画期的であり、評価している立場でありますが(当ブログにお越しの常連の皆様は別の意見と思いますが)、これがルールベースとプリンシプルベースの最適な組合せの適例かどうかはちょっとよくわかりません。先のサンエー・インターナショナル社の例などをみますと、この「プリンシプルベースとルールベースの組合せ」なるものは、ルールの隙間をプリンシプルで埋める、といった印象が強いのではないでしょうか。そもそも金融市場の健全化をはかる為には、厳格な司法判断やがんじがらめの事前規制では機動的な取締りが困難なために、専門性を発揮した柔軟な取締りのために、プリンシプルベースで「穴」を作らない方に目的があるのではないかと疑ってしまうところがございます。となりますと、むしろプリンシプルベースというのは使い方次第では、実務に対して過度の萎縮的効果を与えてしまうのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

そもそも、「11の誤解」につきましても、実務が過度に萎縮することがないように」とは言いますが、経営者評価と監査とは別々の「実務」があるわけですから、経営者にも監査法人にも、それぞれの業務が萎縮しないことへの効果はあったのでしょうか?私には、どっちかに効果があれば、一方は萎縮してしまう関係にあるのではないか、と疑問に思っております。いずれにしましても、いま私が期待しておりますのは、相談センターなどの問い合わせ事例を集計して、世間ではこの内部統制報告制度を施行するうえで、どんなことが問題になっているかを早期に公表していただくことであります。それと、「金融専門サービス士」構想ですが、これはまた別の機会に思うところを書かせていただきます。

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