船場吉兆の廃業報道について思うこと
本日の読売新聞の一面トップ記事として「船場吉兆、廃業へ」とありました。読売のネットニュースはこちらです。(関西版だけがトップ記事だったのかもしれませんが)何名かの方より、エントリーのご要望がありましたので、仕事中ではありますが、ほんのひとこと、感想だけ書かせていただきます。
民事再生開始を申し立てたころは、おそらく顧客の方々さえ来店いただければ、事業規模を縮小することによって営業を継続できるだろう・・・との期待があったと思われます。しかしながら、やはり「つかいまわし」は痛かった。これは最後の砦である「長年にわたる顧客からの信頼」を裏切ったことになってしまったことは間違いないでしょう。これでは接待で使うにも使えないですよね。不祥事の種類にもいろいろありますが、この企業体質を如実に表現するタイプの不祥事の怖さを痛感しました。
それと、関係者の方々にご迷惑をおかけしてはいけないので、これはあくまでも私個人の感想(といいますか推測)にすぎませんが、廃業と刑事捜査との関係はどうなったのでしょうかね?不正競争防止法違反容疑で大阪府警の捜査が継続していたと記憶しておりますが、もし経営者の方々の刑事問題が微妙なところに来ているのでしたら、「廃業」はまちがいなく不起訴処分(起訴猶予)と結びつく事情になります。あまり報道はされておりませんが、私はむしろこっちのほうが大事だったのかなぁと。企業コンプライアンスに身を置く立場として、ギリギリの司法警察との交渉は過去に何度か経験がありますので、ただ私個人の感想として読み流していただければ幸いです)
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コメント
他の本吉兆、東京吉兆、京都吉兆、神戸吉兆のことも考えて、廃業を選択されたのか感じました。
民事再生で、再建するのも困難。廃業の選択はもっと早い時期でもあり得たのだと思います。
放漫経営の一種だと私は思います。同族企業(個人事業を含め)の2代目以降の経営をどのように確立していくかの問題なのかと思いました。その意味では、船場吉兆問題は、コンプライアンス問題ではなく、企業の経営理念の堕落が生んだ問題である気が私はします。(初代の頑固親爺は、店がつぶれても手を染めないことがある。)
投稿: ある経営コンサルタント | 2008年5月28日 (水) 12時38分
ある経営コンサルタントさんの御書きの通りかと思います。今回の事件・騒動の根は人間性と言うのか、経営者の品格と言うのか、もっとも不適格な経営失格者を据えた組織の当然の末路でしょう。自浄作用と言うのか、正常化作用が皆無だったのかと驚きます。
まあ──最後の最後に内部告発が働きましたが完全に手遅れだったようです。
放漫経営⇒努力と研鑽を放棄した傲慢不遜な経営、もはや経営でも何でもない
∴リスク無視、法令無視、モラル無視、無自覚無反省⇒自滅
一連の事件と騒動のあまりの傍若無人さにいささか信じられない思いです。
こう言う閉鎖的な(と言ってもいいと思いますが)会社組織では経営者が腐ると言う事が本当にあり得るのだとあらためて痛感しました。
振り返って大企業にはないのか、ないと言う蓋然性があるのか……
論理的に考えてないとは断言出来ませんね、多分そう思います。
投稿: 日下 雅貴 | 2008年5月28日 (水) 14時28分
民事再生手続が廃止されるとなると、破産手続きが開始されるんですよね。そうなると個人資産も含めて精算に追われることになるわけで、普通の「廃業」とはちがうと思います。なので、司法取引のようなことは行われていないと思います。
投稿: unknown | 2008年5月28日 (水) 15時56分
はじめまして。いつも拝見して、勉強させていただいております。大阪の某商社の人事担当です。先生のご講演は何度か拝聴したことがございます。
船場吉兆さんに保全管理命令が出されましたので、もうお話してもいいかとは思いますが、私は件の船場吉兆さんには最近までよく通っておりました。おそらく同様の感想を持たれている方も多いかとは思いますが、吉兆グループのなかでも、この船場吉兆は抜群に料理は美味しかったですね。盛り付けも絶品です。おそらくここで料理を作っておられた方の腕は相当なものであり、まちがいなく、他店からは引っ張りだこではないかと思います。客のもてなしも一流でした。
ただ、気になっていたのは、いつもお土産にもらっていた「ちりめんの詰め合わせ」でした。(常連さんなら、かならず女将さんにもらっていたと思います)家に帰ってあけてみると賞味期限切れなんです(笑)ちょっとこれはまずいんじゃないかなと以前から思っていましたが、産地偽装などの体質はずいぶんと以前からあったと思います。
さすがに、使いまわしの話には閉口しましたが、世間に明るみに出てしまった以上は、やむをえないですね。接待でもたいへん評判の良かった料理店だったたけに残念ですが。
投稿: 沖舟 | 2008年5月28日 (水) 22時39分
経営者として最低のラインを踏み越えてしまった以上、
廃業は当然の結論と思います。全く同情しておりません。
不正が発覚したらどうなるか、全く想像しなかったの
でしょうか。多分、不正が発覚しないと思っていたので
しょうが。こう考えると、経営者を諫めて不評を買い、
会社を辞めていった志の高い社員の方がいらっしゃった
のではないか、そういった方の注意を今、経営者が思い
出しているのではと想像しております。
どの会社も、不正はどこかで発覚するということを自
覚しないといけませんが、船場吉兆は、他の事件ととも
によい反面教師になりそうです。
投稿: Kazu | 2008年5月28日 (水) 23時03分
前回の吉兆についての投稿時に消費者(お客様)に裁かれるだろうと
申しましたが、その通りになりました。
私も仕事の関係で招待されて利用したことがありまして
残念な気持ちもありますが、これでいいんじゃないかと思います。
彼ら一族には法律論を持ち出す以前に道徳的・倫理的に飲食業に
携わる資格はないですから。
最初の段階で偽装と同時に使い回しも表に出し、経営者は創業者
関連の役員が一斉に社外に退き、ニュー吉兆として従業員他の
第三者に経営してもらい「のれん」を存続させることは考えなか
ったんでしょうか。
財務状態がわかりませんのでなんとも推測でしかないのですが、
最後まで自分たち一族が大事だったのかな?
信用崩壊は本当に早いですね。私たちも気をつけましょう。
投稿: 若葉 | 2008年5月28日 (水) 23時23分
日経新聞の夕刊には過大な債務がこういった行き過ぎた原因になった遠因とありました。詳しい事実がわからないものの
仮に民事再生の段階で銀行借入金が過分にあって、社長等は高齢のため息子さんも連帯保証人となっていたなら、再生法申し立ての段階で、個人、一族の経済的な運命は自己破産となっていたでしょう。
一方、「刑事問題が微妙なところに来ているのでしたら、「廃業」はまちがいなく不起訴処分(起訴猶予)と結びつく事情になります」とすれば、
経済 X、刑事Xの「ダブルプレー」は避けたいと考えても無理ないなあと。かつ、経済は「論理的には」再生の可能性がありますし(自己破産のほうがむしろ経済的にゼロスタートになる。個人が民事再生する場合、マイナススタート)、息子さんは若いのだからやり直しの機会は何らかの形で残してもいいような気がします。
しかし、刑事のXは将来も消えそうになく(履歴書に残る)、ダブルプレーよりも将来○も残った形を選択することは、債務者サイドから見れば妥当な選択かもしれません(詳しい事情を知らず、そもそもこんなに有名となれば、経済が○の可能性は低いかもしれません)。
年配の方は、名誉や面子を重んじられる傾向が強いのもその可能性が無きにしも非ず。
この辺が、事業が再生できても個人の再生が難しい銀行債務の矛盾があるのですが。
一方、コンプライアンス経営の射程距離がわからなくなる、というご意見も客観的にそのとおりだと思います。
実際は本当に資金繰りが厳しくなっただけかも知れませんが、廃業すると刑事不起訴の可能性があるというのは勉強になりました。
投稿: katsu | 2008年5月29日 (木) 01時22分
そういえばRCCの関係で、元日弁連会長のN氏が詐欺罪で立件されそうになったときに「廃業」によって起訴猶予となったことを想い出しました。
たしかに破産に至る廃業と言う点では少し違いますが、基本的な構図はほぼ同じではないかと。これで不正競争防止法で立件の可能性がなくなったほうに一票。でも詐欺罪が成立する場合だと廃業してもアウト。
投稿: HIRO | 2008年5月29日 (木) 02時01分
DMORIです。
この廃業を不祥事対策のセオリーから見ますと、
1)マイナス情報は1発で出し切る。
2)隠し立てしない。
を実践できなかったことによる報いが、典型的に出てしまったケースであり、経営者研修の格好の実例といえそうです。
表示偽装の時から、残り物・使い回しの件も内部では分かっていたのでしょうが、こちらのほうが料理人の倫理にもとる大きなマイナスになると思ったか、発表しなかったのでしょうね。
内部告発が一般人にも浸透してきた時代であり、経営者は
「隠しても必ずバレて、より大きな打撃を受ける」と、しっかり胸に刻む必要を感じます。
投稿: DMORI | 2008年5月29日 (木) 09時02分
みなさま、ご意見ありがとうございます。
とくにDMORIさんのコメントで、「マイナス情報は一発でだしきる」という点は、重要でありながら、けっこうムズカシイ、というのが経験者としての感想です。そのあたり、また別エントリーで書かせていただこうかと思っております。
投稿: toshi | 2008年5月30日 (金) 02時50分
「マイナス情報を一発でだしきる」はその通りなので、自分も大きな会社に行って話すことがあるのですが、実は不能だと思っています。経験則的にもそう思います。それがひどいマイナスであればあるほど、全部は言わないと思います。
コンサルタントの教科書によくそう書いてあるのですが、不思議でなりません。誰が言い始めたのか知りませんが、もう少し人間の心理を踏まえて考えなければ実効性のある危機管理にはならないように思っています。
今の関心は最初のボタンを掛け違った場合の対処方法です。今回で言えば、いつかはばれる使い回しをどう処理するかだったと思います。弁護士も一定の関与していたわけですので、どういう水面下の動きがあったのかが最大に関心事です。相手の腹を中を読みながら、手を打っていくことが大事だと思うので、とてもマニュアルだけでは対応できないように思っています。
投稿: TETU | 2008年6月 1日 (日) 22時06分
郷原です。私を雇わないから危機管理が上手にできないのだよ。ふっふっふ。。。
って、それって業腹?
投稿: 郷原さん。。。凄過ぎ。 | 2008年6月 5日 (木) 00時47分
横浜桐蔭大学の関西講義(天満センター)で郷原先生の授業を聴講したのを思い出しました。たしかコンプロさんと会場でお会いしました。
あの講義で、コンプライアンスは現場実務と机上理論(研究)のバランスが必要だと思いましたし、現在も私なりに実践はしております。(私自身、どこまでスキルが身についているかは、いまだ心もとないのですが・・・)
投稿: toshi | 2008年6月 5日 (木) 12時11分