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2008年6月29日 (日)

ドラマ「監査法人」(第三話)にみる公認会計士の重責

(週末恒例のNHKドラマ「監査法人」に関連するエントリーですが)第三話もしっかりとビデオに収録して、茶の間で楽しく拝見させていただきました。監査法人の経営にも関わるような重要案件については、本部審査会で結論が出るのではなく、もっと上の理事会で決定されるのではないの?とか、あれほど吉野会計士を軽蔑していた茜さん(松下奈緒さん扮する)Rosonakaikei が、ペットショップの前でばったり出会ったくらいで、なんで女心に変遷がみられるのだろう?などといった重大な疑問も生じるところでありますが、今回はあまりツッコミをいれる気分にはなれませんでした。(期待されていた方、ごめんなさいです。。。)といいますのも、本日のNHKドラマ「監査法人」第三話は、吉野会計士の東都銀行監査の主査として「適性意見」か「不適正」かに悩むプロの会計専門職の重責を見事に映し出していて、会計素人である私にはとても感動モノだったからであります。正義感あふれる若杉会計士が、毅然とした態度で粉飾を暴く・・・というシーンは少なかったですが、2002年ころの銀行と監査法人、そして金融庁(金融監督庁)との攻防のなかで、ひとりの優秀な中堅の公認会計士が、大きな重圧に悩みもがく姿は、2003年に出版された「りそなの会計士はなぜ死んだのか」(山口敦雄著 毎日新聞社)を思い起こさせるものであり、そこに「人間の血の通った」会計職業人をみるようで、私的には好感のもてるドラマ展開でした。

毎日新聞社経済部の記者である山口氏の上記著書は、約3年前にも当ブログの「粉飾決算に加担する動機とは(2)」でご紹介いたしました。本書は、2003年4月に自殺された(といわれている)りそな銀行の監査担当者(当時38歳の朝日監査法人の会計士さん)が、死を選択するに至るまでの銀行や監査法人の板挟みとなって苦悩する姿を多くの証言から浮き彫りにしたものであります。ご承知のとおり、りそな銀行が破たんを免れるためには、当時4%の自己資本比率を確保しなければならなかったわけですが、繰り延べ税金資産を5年分積むことが可能であればこれをクリアできるところ、監査法人は厳しい資産評価の末、(りそなは)3年分しか積むことができないとして、りそな銀行を自己資本比率4%未満の「公的資金注入銀行」(銀行の国有化)へと進ませるに至ったものです。まさに、本日のドラマにおけるジャパン監査法人と東都銀行の関係と同一であります。

朝日監査法人の経営判断が下された直後に亡くなった「りそな銀行監査担当会計士さん」は、たいへん優秀な会計士であり、金融庁(金融監督庁)に出向された経験も有し、著書も豊富で、監査法人内では「厳格監査派」のひとりでありました。しかしながら、山口記者の評価によりますと、彼は厳格監査のためであれば会社はつぶれてもかまわない、というタイプではなく、企業が破たんすることの社会的影響を考えて、最後まで「監査を投げずに」調和点を求めるタイプの会計士であったとされています。このあたりも、本日のドラマにおける吉野会計士の姿とまさにダブるものであり、公認会計士としての「誇り」や「使命感」、そして巨大な権力(金融庁や大手監査法人、都市銀行の思惑など)のなかでもがき苦しみ、経験した者でなければ到底理解できないほどの精神的疲弊をを来したものと想像されます。(ドラマの中で)意識朦朧としていた吉野会計士が、第四話ではどうなるんだろうか?と若干心配しておりますが、予告編ではジャパン監査法人に検察の強制捜査が入る模様ですから、あまり良い方向へは進展しないのかもしれません。(ちなみに、監査法人に強制捜査が入る場面というのは、元中央青山監査法人の代表社員でいらっしゃる浜田康氏の「会計不正」の冒頭に詳しく描かれています。そういえば「7年2年ルール」(会計士のローテーション)が導入される公認会計士法の改正も、ちょうどこの2002年頃だったんですね)

6月 29, 2008 未完成にひとしいエントリー記事 |

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受信: 2008年7月 1日 (火) 12時03分

コメント

なるほど、その山口さんの著書で取り上げられたかたが
吉野会計士(演:勝村政信)のモデルだったんですね。
吉野は(とりあえず)自死を選んだわけではなく失踪したという話に
なるようですが。

投稿: 機野 | 2008年6月29日 (日) 22時29分

いろいろ突っ込みたいところはありますが、ひとつだけにしておきます。架空循環取引について、いきなり相手企業に乗り込んで資料をチェックしていましたが、これはいつものことなので置いとくとして、相手企業の資料にソフト購入が記載されていないことから架空取引であることを発見する。これは絶対にないですね。
商社やIT業界では、2社の取引の間にもう1社かませる帳合取引が普通に行われています。間に入った会社は、黙ってても手数料が入りますから、これほどうまい商売はありません。経理上の処理は、必ず行われているはずです。
架空取引であることを知らずに取引に参加した会社は、不当利得として返還義務を負うのでしょうか?例えは、IXIの架空循環取引の場合、東京リースが800億円を騙し取られ、その資金が架空商品の代金として決済されています。架空取引と知らずに参加した会社は、架空の商品の仲介手数料を現金で受け取っているため、なんらかの会計処理が必要となります。返還義務があれは、預り金処理でしょうし、返還義務がないのであれば営業外の雑収入でしょうか。
架空循環取引は、資金の決済が行われる場合にはそう簡単に発見できるものではありません。

投稿: 迷える会計士 | 2008年6月29日 (日) 23時05分

厳格監査派の小野寺会計士はジャパン監査法人の理事長に対して「東都銀行の今回の監査は降りるべきだ」と進言しておられましたが、決算期に監査を降りるというのは最もあってはならないことだと思いますし興ざめしました。まあ、理事長側から降りるという選択肢があってもいいかとは思いますが。

投稿: 守旧派会計士 | 2008年6月29日 (日) 23時40分

架空循環取引における売買代金の返還請求については,無効な売買の連鎖という形式面を重視するか,それを承知で取引しているという実質面を重視するかで,結論が変わってくるのではないかと思います(NBL859)。
参加者みんなが架空循環取引であることを知らなければ,参加者が順次売買代金を返還していくのが筋だと思いますが,「みんなが知らないで循環取引が成立する」ことなんてありえないですし,架空循環取引は関与企業の倒産によって誰かがババを引いたところから問題になる(誰が損失負担すべきかの押し付け合いになる)ので,解決は容易ではないように思います。

私も今回の「架空循環取引の発見」は大胆な手口だったと思いました。
しかし,在庫の異常な変動を分析的に検証するといった監査手続では視聴者に分かりにくいですし,放送時間も食いそうなので,敢えてあんな風にしているのでしょうね。

それにしても,日常の監査でこんなに毎回粉飾に遭遇することってあり得るのでしょうか。。。

投稿: 南国弁護士 | 2008年6月30日 (月) 01時17分

迷える会計士さんのご質問に対する南国先生のご回答に、とくに異論はございません。おそらく法律家の間でも、結論は分かれる(正義は一律的には決められない)と思います。また、不当利得といいましても、利得や損失の範囲、因果関係、また不法原因給付かどうか、という点で当事者の細かな事情が斟酌されるので、架空循環取引でも個別事情によるものと考えています。

守旧派会計士さんの疑問点は、うーーーん、たしかに・・・回答するのがむずかしいなぁ(笑)ちょっとまた別の機会まで考えさせてください。

投稿: toshi | 2008年7月 1日 (火) 11時41分

津川雅彦、大滝秀治といった大物俳優も終盤出演するようですね。

監査人と監査対象の事業法人の社長が友人で…
という本来あってはならないパターンがこの先も繰り返されるらしく、
「あんた、厳格監査って言ってたやん!」と
皆さんがツッコミを入れてしまう展開も待ち受けていますので
お楽しみに(笑)。

投稿: 機野 | 2008年7月 3日 (木) 01時15分

粉飾決算をした企業が上場を維持する場合と廃止になる場合がありますが、その分かれ目は何でしょうか。

先生はどのようにお考えですか。

投稿: 東京の弁護士 | 2008年7月 6日 (日) 16時16分

>機野さん

第四話を視聴できなくなってしまったので、どこでどうなってしまうのか、あらすじを追えずに不安になっています(笑)どうも今度は海外の監査法人とのネットワークも話題にのぼっていますが、そのあたりが第五話で話題になるんでしょうかね?(うーーーんん、残念です)

>東京の弁護士さん

こんばんは。
日興コーディアルの後、企業行動規範の改訂や、特定注意銘柄市場が開設されたことなどによって、ずいぶんと粉飾決算企業の上場廃止基準にも変化があったのではないでしょうか?原則的には経営者の関与する悪質な粉飾か否かというところが判断の分かれ目になるように考えております。また、内部統制にまったく改善が期待されないような組織体制である場合にも、今後は要注意ではないかと思います。ただいずれにしましても、個別具体的な事情を十分斟酌したうえでの判断になりますよね。

投稿: toshi | 2008年7月 7日 (月) 23時09分

NHKの公式サイト内に、ドラマ『監査法人』のページがありまして
最低限の粗筋は記載されております。

それよりも「NHKドラマ「監査法人」を斬る!」ブログさんが
ずっと詳しいですね(笑)。ご存じでしょうが。
http://kansahojin.seesaa.net/

投稿: 機野 | 2008年7月 8日 (火) 00時13分

>機野さん

ご指摘のブログはligayaさんのとこのブログですよね。とりあえず4回目についてはここであらすじだけ抑えときました。(笑)さて、きょう(7月12日)はしっかり「第五話」録画予約していますので、ちゃんと視聴しますよ。。。

投稿: toshi | 2008年7月12日 (土) 19時49分

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