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2008年6月11日 (水)

日本ハウズ・原弘産 支配権争奪戦(本当のキーマンは誰なのだろう?)

昨日、ある財界の方と夕食をご一緒させていただく機会がありまして、その方が次のようなお話をされました。

「山口先生、『同族会社』を甘くみちゃいけませんよ。日本にはたくさんの同族会社がありますけどね。100年も200年も続いている同族会社は、みな、それなりに末永く組織が生きるための知恵を持っています。そういった会社は従業員も、その知恵が理解できているはずです。ですけどね、社長が情実で『同族』にしちゃうようなケースは絶対ダメですよ。親族がどんなに優秀でも、社員はみんな「社長の脇の甘さ」がわかっちゃいますから。そんな『同族会社』はきっと途中で崩壊しちゃいますよ」

同族性が崩壊することによって、むしろ企業価値が向上するケースもあるかもしれませんので、私はとくに失礼なことを申し上げるつもりはございませんが、日本ハウズイング社と原弘産社との支配権争奪戦は、いよいよ本格的な6月26日の株主総会における委任状争奪戦に突入したようであります。(なお、詳細はkatsuさんのブログが参考になります)6月9日の原弘産のリリース(日本ハウズイング創業家資産管理会社による「原弘産を支持する」との意見表明について)および6月10日の日本ハウズイング社リリース(当社株主の皆様に対する当社委任状の送付等について)などを読ませていただきますと、法律家として本当に勉強になります。なかでも、カテリーナ・イノウエ社作成による「当社質問書への回答書に関する件」と題する書面におきまして、これまでの両社のやりとりについては、

あたかも法務・ファイナンスなどの分野の専門家の方々によるような、細部にわたる枝葉末節な論争が目立ち、日本ハウズイングの企業価値を高めていくために本当に必要なことは何なのか、などの本質的な議論がなされていない。いわば「株主不在の些末な論争」が行われているように見受けられました。

日本ハウズイング社は、本年5月21日の決算説明会で、一連の「買収防衛」のため、証券会社、弁護士事務所等専門家への報酬等約6億円を特別損失として計上することを明らかにしています。平成20年3月期の当期利益が10億円ですから、その6割に相当する「常軌を逸した」額です。

などといった表現が含まれております。(私はどちらかといいますと、高額を支払ってでも守るべき価値があればいいのでは?とも思いますが、さすがに当期利益の6割・・・ということになりますと、うーーーん、と唸ってしまいそうになりました)法律的な論点としましては、カテリーナ・イノウエ社の大株主である創業家一族の方が、日本ハウズイング社の取締役に就任されていたにもかかわらず(ただし6月6日に辞任されたとのこと)、カトリーナ社が原弘産側につくことを表明した直後から、一般株主に対して原弘産側の委任状を提出するように電話勧誘をされているところであります。(そもそも、これが委任状勧誘規則に規定されている「勧誘」にあたるのかどうか、かなり疑問がありそうですが)そのあたりの細かい法律紛争は、また別の機会に検討させていただくこととしまして、この一連の紛争の本当のキーマンとは誰なのか・・・というところに一番の関心が湧くところであります。日本ハウズイング社が、そもそも同族会社ではなく、若き日の井上氏、小佐野氏の共同経営から始まった会社だとすれば、おそらく共同経営会社としての「社風」があったはずであり、そこにきしみが生じて、今日の一連の騒動に至ったのではないか・・・と素人ながらに想像するところであります。

平成20年3月31日現在の日本ハウズイング社の大株主(10位)までと、役員の所有株式数から、私なりに現時点の支配権関係を推測してみますと、原弘産側(ランドマーク社、カテリーナ社、原弘産社、井上投資、創業者親族1名)が41,97%、日本ハウズイング側(小佐野投資、カテリーナファイナンス社、従業員持株会、親族1名、取締役20名、ただし辞任した取締役分を含む)が33,32%となり、これだけをみると、すでに原弘産側がかなり有利になったものと思われます。行使される議決権数が85%程度だとしますと、すでにほぼ原弘産側が過半数を確保しているような趨勢にも思われます。ここまでの一連の流れをみますと、私は突然、カテリーナ・イノウエ社が「黒船」として登場してきたのかと思っておりましたがそうではなく、そもそも日本ハウズイング社が「同族会社」になってしまったころから、ふたつの創業家の間で確執が生じて、むしろカトリーナ社の意見表明のなかにもあるように、実際のところ原弘産社こそが「黒船」的な存在だったように思われます。ただ、上の説明で原弘産側として挙げておりますランドマーク社でありますが、ここは親会社(合人社グループ)が原弘産社と事業パートナーとして動いていたり、ここ数ヶ月で保有株式を増やしていることなどを根拠として整理しているわけであります。とくに原弘産社とは資本関係はないようであります。このランドマーク社保有の12、55%が命運を分ける株式数でありそうですし、これこそキーマン的な立場ではないでしょうか。おそらく、首尾よく原弘産側が支配権を争奪できた場合には、その後の事業展開上でのメリットを十分享受できる「おいしい」立場にあるのではないかと考えております。今後の株主間の力学のようなところに、注目をしておきたいと思います。

今年の株主総会シーズンも、あと2週間程度でピークを迎えるわけですが、大手ファンドによる一気の敵対的買収といったドラマは生まれる可能性が少なくても、長期投資を目的としたファンドなどがキーマンとなって、10%程度の保有株主(第二位、第三位くらいの大株主)が総会の主役の地位に立つような場面がけっこう増えるのではないかと予想しております。

6月 11, 2008 商事系 |

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コメント

こんばんは
単純な疑問なんですが、日本ハウズイング支持派の株主(多くは経営陣を兼ねる)も防衛策を発動してしまったら、みずからの財産がおかしくなってしまう、というロジックは働かないのでしょうかね。
論理的には、提案前の株価付近に落ち着くと思われますが、ブルドックの例を見ても、それ以下に放置されている(実質的に)ように感じたりもします。
株数が増えると、既存株主も売りやすくなるし、三角合併時のフローバック現象に似たような状況になりかねないとか。

逆にTOBに応募しないでほうっておいたら、原さんががんばって株価を1000円以上にしてくれるのでしょうから、一般株主も応募しない方がメリットがあるような気がします。
http://bizplus.nikkei.co.jp/manda/sayama.cfm?i=20071228ch000ch&p=2

したがって、株主提案で勝利してもTOBで勝利するんでしょうかね。カテリーナさんはTOBに応募するのか、やや先走りましたが、疑問です。

上場維持といえば、こんな問題が、上場廃止といえば「強圧的」といわれかねない、もっとシンプルなルールにならないかなあ。

金商法も1対1の買収合戦の場合は、なるほどとも思えますが、第三者の参戦はかなり難しそうなルールに感じますし、ライツプランの後にもう一回同じことやるのか? など疑問山積です。

この辺の疑問をまたエントリーしたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

投稿: katsu | 2008年6月11日 (水) 23時05分

katsuさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

経済産業省から報告書案が公表されたり、高裁の名簿閲覧仮処分が出されたりと、取締役の行動に影響を与える新事実が明らかになっていますので、katsuさんが疑問に思っておられるところにも参考になるかもしれません。また、本日の日本ハウズイング側からリリースされました「質問状」の中身も、ランドマーク社の立ち位置に関するようですし、いろいろと争点が多いですね。

私もkatsuさんの続編楽しみにしております。

投稿: toshi | 2008年6月13日 (金) 01時43分

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