食品偽装事件にみる企業コンプライアンスとは?(その1)
6月27日付けのエントリー「食品偽装事件と企業の公表義務違反」をご覧になったAさん(仮名)よりご意見を頂戴しました。農水省による立ち入り検査の実態に関する当ブログの記述にかなり誤りがあるとのことで、最近のうなぎ偽装問題を含め、メールをいただいたAさんと、とりあえず面談のうえ(やはり直接お会いしてお聞きしなければブログにも書けませんので)、詳細をうかがってまいりました。ちなみにAさんの勤務する企業(上場企業ではありません)もうなぎ偽装同様、農水省より立ち入り調査を受け、新聞報道もされました。Aさんは担当者として、農水省とすべての対応をされた責任者であります。(当ブログが実名ブログとして『まじめに』食品偽装問題をとりあげている、ということで協力してもらえることになりました。どうもありがとうございます)以下は、今後の当局による調査や、AさんおよびAさんの勤務する企業にご迷惑のかからない範囲で、インタビューの一部を紹介いたします。(なお、当ブログは当局およびAさんの企業に対する何らの意図もなく、今後の商品偽装問題に対する企業コンプライアンスのあり方を研究する趣旨で公開し、皆様のご意見をうかがうものでありますので念のため申し添えいたします)
|
報道されない可能性については、意外でした。私は相当数の「厳重注意」で終了しているものがあるのでは?と推測しておりましたので、違反が確認された事例では必ず公表される・・・ということで驚いております。同時並行して調査を行う数がそれほど多くない、ということなんでしょうか。(端緒はものすごい数だと思いますが)違反事実が確認される前に調査が終了するケースもあるようですが、確認のための証拠収集不足、ということであれば、それほど簡単には終了しないようであります。「2年以上も調査を継続している」ケースもあるようでして、おそらくこういった事例は多方面から情報が農水省に集まってくるのでしょうね。また最後の「警察との連携」ですが、これは業者間取引についてもJAS法違反が問われるようになったことと、その違反事実について警察管轄である不正競争防止法違反が問題となるケースが増えていることに関係があるんじゃないでしょうか。
|
これはAさんの推測も含まれた会話の一部ですが、私がリスクコンサルタントの方からお聞きしている内容ともほぼ一致しておりますので、あえて掲載いたしました。本当はもう少し詳しい具体的な内容も聞いておりますが、関係者の方々への配慮として、この程度にとどめておきます。こういった話から推測するに、「調査が終了した」⇒「自主公表すべきか?」なる公式はあまりにも短絡的のようであります。実際のところ、企業にとって農水省の調査が終了したのかどうかはわからず、そもそも「疑惑情報」は悪質なものほど次から次へと農水省に届くわけですから、新たな証拠が見つかった場合には、ふたたび調査が再開される、ということなんでしょうね。Aさんのお話をお聞きしての印象でありますが、「立ち入り調査があった場合には」というよりも、内部告発や、消費者情報の存在が企業に判明した場合には、かなり高い確率で「食品偽装はばれる」と考えておくほうが妥当ではないかと思われます。
|
これも私自身の拙い経験を一般化してしまったようです。(これは訂正をいたします)強制権限のない調査であるがゆえに、農水省側としても被対象企業側の任意の協力は不可欠だと思われます。そうしますと、過去の不祥事がなかったかどうかを企業側に調査させることになるわけで、これに真摯に対応するとなると、その自主的な調査の期間が必要になってくるわけであります。これであれば「空白の時間」ではないですね。また、お話では農水省の発表資料の作成には相当の時間を要するようであり、これにも時間がかかるとのこと。霞が関と地方事務局との間で、確認事実に関する綿密な打ち合わせがあるのかもしれません。(以下、不定期ではありますが「その2」につづく)
| 固定リンク
コメント
興味深く読ませていただきました。
特に「どういった事情がわかりませんが、違反事実が確認される前に調査が終了してしまうことがあります。」には驚きました。違反事実があるのにUターンすることがある、と読めましたが、となるとどういうことなのでしょうか。捜査しても立件できないのは普通のことですが、それは固められなかったため。手心を加えて止めるのは、相当の理由がないとなかなかできないと感じています。
だから、行政の取り締まり権限は役に立たないといわれるのです。コンプラの前提が崩れますね。消費者庁になって少しは変わるのでしょうか。
投稿: TETU | 2008年7月12日 (土) 22時57分
>tetuさん
コメントありがとうございます。このあたりは、たしかに真実のようです。また、消費者庁が誕生して、権限移譲があったとしても、「どういう事情かわからないが」調査が終了する、という場面は存在するのではないかと予想しています。
ただ、企業コンプライアンスという視点からすると、調査が終了もしくは中断したかにみえた場合でも、その後調査が復活する可能性があることに注目してみたいと考えています。このあたりの実例は、実は詳細にお聞きしているのですが、どうしても私を含め、関係者の方の利益に配慮しますと、エントリーのように「舌足らず」の表現になってしまいました。
(その2)につきましては、また近々エントリー予定ですので、またよろしかったらご意見ください。
しかし現場で行政相手に苦労されている方の経験は、やはりコンプライアンス経営にとって有益ですね。
投稿: toshi | 2008年7月14日 (月) 02時01分