« ドラマ「監査法人」第5話と「反社会的勢力と共生する人たち」 | トップページ | 「重要な欠陥」の判断はコストによって影響を受けるのか? »

2008年7月14日 (月)

社外取締役の取締役会出席義務と説明責任

7月12日土曜日の日経新聞朝刊では、「『低出席率』の社外取締役 主要企業の一割に」という見出しで、取締役会への出席率が75%を割る社外取締役に対して議決権行使助言会社が厳しい目を向け始めている、といった内容の記事が掲載されておりました。ご承知のとおり、会社法施行規則124条4号にて、社外役員の場合には事業報告のなかで取締役会への出席状況や発言状況などが報告されることになっておりますので、上場企業の場合には社外役員(社外取締役、社外監査役)の取締役会への出席状況は開示の対象となります。日経500種採用銘柄の上場企業のうち400社を対象とした調査結果によりますと、約1割の企業において出席率75%未満の社外取締役の再任議案が上程されたようですが、大手議決権行使助言会社であるISS社およびJPG(日本プロクシーガバナンス社)は、こういった取締役は報酬に見合う責任を果たしていないとして再任に反対するよう呼びかけている、とのことであります。

たしかに、取締役については取締役会に出席することは基本的職務であり、善管注意義務を尽くす「第一歩」であることは否めないところでありまして、さらに社外役員の活動状況の開示を規定する会社法施行規則の趣旨は、(取締役会への出席状況等に関する)事業報告における開示によって、間接的に社外役員の職務の活性化を求めているわけでありますので、社外取締役が最も職務として期待されている取締役会への出席に積極的でないことについては、職務怠慢の疑惑をもたれることもいたしかたないところであります。ただ、私自身も社外役員としての前事業年度の出席率が78%だったことで、あまり偉そうなことは言えない立場ではございますが、(とくに社外取締役の場合)取締役会への出席率だけをもって「報酬に見合った職務を行っていない」とみることは大いに違和感を抱くところであります。出席率が厳格に審査されることとなりますと、社外役員候補者が限られてくるのではないかという懸念もありますし(企業にとっては誰でもいいから出席できそうな人、というわけにもいかないでしょうし)、また社外役員としては「取締役会議事録に異議をとどめる」方法以外にも、社外役員に期待されるようなガバナンス効果を発揮する場面は十分にあると考えられるからであります。

たとえば実質的な経営判断が形成される経営会議や常務会(もちろん長時間に及ぶケースも多い)などには参加される社外役員さんが、別日程の短時間で終了する取締役会には出席できないケースもあるでしょうし、重大な案件が持ち上がった場合に、会社側からの要請もしくは社外役員からの申出によって個別に代表取締役と交渉するケースも多いと思われます。また最近は、社外役員が買収防衛策やM&A処理案件などにおいて独立第三者委員を兼務したり、コンプライアンス委員会やリスクマネジメント委員会での委員を兼務する機会も増えており、株主共同利益の代弁者として、取締役会とは別途会社における会議体の構成員として執務する場面も増えております。本来ならば取締役会に出席して意見を述べることが最も重要な職務であるかもしれませんが、その実態をみるならば、社外役員としてはそれ以外の意思決定の機会に関与するほうがよっぽど重要と思われます。(あくまでも、これは実質的な経営活動の現場をみての意見であります)

このような実態からすると、私自身は社外役員の取締役会への出席率だけをもって再任に反対する、というのが少し短絡的にすぎないのではないかと考えますが、だからといって社外役員が取締役会への出席義務を軽視してもよい・・・とは思っておりません。むしろ、こういった議決権行使助言社会のような厳しい目があることを当然の前提としまして、たとえば出席率が75%未満の社外役員の方がいらっしゃる会社としましては、たとえ75%を割るような出席率であったとしても、当該社外役員の方がどのような形で経営意思決定に参画しているのか、きちんと事業報告で説明責任を果たすべきだと思います。会社法(施行規則)が、株主への開示事項を規定することによって間接的に社外役員の活発的な職務執行を促していることの意味は、各企業の置かれた環境のなかでの社外役員の活動を柔軟に説明することまでを含んでいるのではないでしょうか。日経の上記記事のなかで、ある食品会社は、二名の社外取締役がいずれも取締役会への出席率が50%未満であることについて「取締役会以外でも、助言をいただいており、問題はない」と回答されておられるようですが、その回答内容については私も賛同するものの、やはり「どういった場面でどのような活動をされているのか」、50%未満という出席率である以上は、きちんと説明責任は尽くすべきではないかと思います。

7月 14, 2008 社外取締役に期待するものは何か |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/41829544

この記事へのトラックバック一覧です: 社外取締役の取締役会出席義務と説明責任:

コメント

取締役会に付議すべき案件を絞り込んで社外役員はそちらを重視してもらうか

取締役会以外の開催回数の開示も義務化するか

投稿: 名梨 | 2016年7月 5日 (火) 12時41分

コメントを書く