取締役経理部長(元)の不正行為と「重要な欠陥」
「重要な欠陥」の判断問題について、たいへん有益なご意見をいただき、ありがとうございました。コメント欄で少し書きましたとおり、重要な欠陥と取締役の法的責任との関係等につき、また改めて(その3)で自身の見解をまとめてみたいと思いますので、またご意見よろしくお願いいたします。
さて、ligayaさんのブログでも紹介されているスギ薬局さん(東証1部、名証)の元取締役経理部長だった方が、長年にわたる帳簿偽造等によって4億3000万円あまりを私的に流用していた、という件がリリースされております。(当社元取締役による不正行為について)また、日経ニュース(その他のニュースも含め)によりますと、内部統制システムの構築を進めていたなかで、元取締役さんは、隠しきれないと悟ったのか、この7月1日に横領の事実を自己申告されたそうです。スギ薬局さんは2月末決算の会社ですから、まだ内部統制報告制度が施行されているものではありませんが、事実上はすでにパイロットテストが行われているところでしょうし、こういった報道内容に触れますと、やはり法制化された内部統制制度への全社的対応というものが、社内不正をあぶり出すことに寄与するのかも・・・と期待をしております。なおこの報道をうけて、スギ薬局さんの株価は前日から6%も下落しており、こういった社内不正が相当に株価へ影響するのも特徴的かもしれません。
ところで、スギ薬局さんの財務報告に係る内部統制評価はまだだいぶ先のことになりそうですが、もし施行後にこのような経理担当取締役による会計不正(しかも権限の一極集中が原因と記者会見で述べている)が発覚した場合、その企業の財務報告に係る内部統制は有効と判断されるのでしょうか?ここ数年の連結での税引前利益の平均がどの程度なのか、きちんと調べてはおりませんが、4億3000万円というのはかなり大きな数字ですし、まさに財務報告内部統制の会社責任者たる地位にある方が横領し、また預金残高の数字を改ざんしていた、というのでありますから、内部統制の有効性判断にとって無視できない事例だと思います。こういった場合、内部統制に重要な欠陥があるとされるのか、されるとして期末日までにどういった是正があれば有効と判断してもいいのでしょうか?統制環境の問題もあり、また決算財務報告プロセスの問題もあり、さらに自己申告があるまで発見できなかったモニタリングの問題もあるでしょうから、是正すべき点はいろいろと指摘できそうであります。不備の影響度の算定方法や、虚偽記載の発生可能性の検討も重要でありますが、こういったベタな問題もけっこう重要ではないでしょうか。
| 固定リンク
コメント