« 法人に対する金銭的制裁と取締役の法的責任論 | トップページ | 企業サイドからみた「消費者庁リスク」(その2) »

2008年7月25日 (金)

続・「監査役の乱」を冷静に考える

Tushinbo_img 「アホくさ~・・・」と思いつつ、ついやってしまいましたブロガーの間でブームとなっている「ブログ通信簿」。(どうしても一回やってみないと気が済まなかったので・・・・・)

「あなたは『放送委員』タイプです。周囲に大きな影響を与えています。もっと自分の意見を言ってみてもいいのでは。よく話題にしている資産運用の知識や経験をいかして、警務官を目指しましょう。」ですと。。。(最後のほうは若干意味不明な気もしますが)

うーーーん、なんか当たっているような、いないような。しかしブログ年齢が実年齢よりかなり上なのは、ちょっと悲しい気分になりました。(笑)たしかに「もっと自分の意見を言ってみてもいい」かもしれませんね。でも、毎日の本業でいやがうえでも強烈に自己主張していますので、ブログではこの程度で十分のような気もします。「マメ度」はもうちょと上だと思ったのですが、こんなもんですかね↓

さて、本日(24日)は土用の丑の日ということで、ウナギに関連する話題をひとつ。本日午前中にある新聞社の記者さんとお話していたのですが、今年の荏原社の株主総会ような「監査役の乱」が実は昨年の株主総会でも発生していた、ということをお聞きしました。(私はこの事件、まったく存じ上げませんでした。グーグルでも検索してみましたが、ネットニュースにもならなかったようですし、ブログ等でもほとんどとりあげられた形跡はないようです。)

昨年マルハニチロHDに統合される前の株式会社ニチロの最終事業年度に係る監査報告ですが、4名いらっしゃる監査役の方のうち、おひとり(Y常勤監査役)が、その監査報告書のなかで単独意見を述べておられます。

監査役Yの意見:

監査役Yは内部統制システムに関する判断には同意しない。内部統制システムに関する取締役の職務執行については相当であるとはいえない。平成18年4月常務会、同月取締役会、および7月常務会において内部統制システムに関する取締役決議は法令の定めを満たしていないと監査役が指摘したにもかかわらず、取締役会にて再決議されたのは平成19年3月であった。平成18年6月、監査役会の決議に基づき、監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制の整備について使用人の配属をはじめとする4項目の申し入れを行ったが、再三の督促にもかかわらず、回答は平成19年3月まで引き延ばされ、取締役会にて取締役全員の謝罪の意向が表明されたものの、実効ある対応は今なお未実施のものが多い。また、複数部署における監査役監査実施時の虚偽報告の疑い、不適切な売上計上の疑いなど、看過できない幾つかについて適切なる報告および是正措置を求めたが、相当日数経過後も実施されなかった。さらに、会計監査人による期中監査時の改善指摘事項が相当日数経過後も是正されない事態もある。商品に散弾銃の銃弾が混入した事態を社内規則「危機管理マニュアル重大事故処理基準」の重大案件に該当しないと判断し、処理された。これらの一つ一つは法令あるいは定款に違反する重大な事実とまではいえないが、取締役に規範意識の弛緩があり、再発防止のための諸施策が有効かつ適切に実施されたとはいえない。したがって、内部統制システムに関する取締役の職務の執行が適切になされ、相当であるとはいえない。

先日の荏原社の社外監査役の方による「事業報告を相当と認めない」とする意見よりも、こちらのY監査役ほうが数段具体的かつ論理的な内容であり、監査役による内部統制システムの相当性監査のひとつのモデルではないかと思います。とりわけ、意見内容をみますと、内部統制システムの運用面に関する「重大な欠陥」(重要な欠陥ではありません)と思料される根拠事実を明示しているところが説得的だと思われます。このY監査役は、昨年6月に退任されたそうでありまして、退任前に思いのたけを監査意見で述べたと推測することも可能でしょうが、たとえそうだとしても、ここまで経営陣による内部統制システム構築に向けた取り組みに問題がある、と言い切るのはたいしたものだと思います。(ちなみに、このY監査役は某新聞報道によりますと、1967年にニチロに入社された常勤監査役さんです。)

ウナギ産地偽装で揺れている神戸の会社は、そもそもマルハ側の子会社だったわけですが、ニチロ側における、このY監査役が指摘していた内部統制システムの欠陥への指摘を統合後も真摯に受け止めていれば、もう少し別の展開があったのかもしれません。とくに上記意見には財務報告の信頼性に大きな疑問を抱かせるような具体的な指摘があり、もし監査役がこのような意見を述べている場合に、内部統制報告制度(J-SOX)施行後の内部統制の有効性判断のための経営者評価はどうなるのでしょうか?内部統制監査人の意見もほぼ固まった時点で、たとえば「内部統制は有効であるとする経営者の評価は適正と判断する」と考えている場合に、このような監査報告書が出てきた場合、「監査役の少数意見だから・・・」ということで無視してもいいものでしょうか?(ここで監査役が「独任制」の機関である意味が効いてくるように思います)

7月 25, 2008 監査役の理想と現実 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/41961803

この記事へのトラックバック一覧です: 続・「監査役の乱」を冷静に考える:

» [法律]「監査役」誤訳説考 トラックバック 漉餡大福日記
株式会社の機関として「監査役」を設けているのは日本だけである。しかし、その日本の会社法(旧商法)は、ドイツ法を参考に制定された歴史的経緯がある。当時の立法担当者がドイツ法の規定を誤訳したために、諸外国に類を見ない「監査役」制度が導入されたという説がある。... [続きを読む]

受信: 2008年7月26日 (土) 18時44分

» 流行ってんのか?ブログ通信簿(苦笑) トラックバック 法務の国のろじゃあ
このエントリーは公開時刻自動設定機能によりエントリーしております。 なんか、to [続きを読む]

受信: 2008年8月 4日 (月) 11時00分

コメント

「ウーム・・・」としか言いようがありません。
昨年あったということですが、マスコミの反応は何故鈍かったのでしょう。
また、株主総会で株主からの問題視する発言は何故無かったのでしょうか。
小職も以前は某上場会社の管理職でしたが、いやというほど閑散役と事なかれの役員がいかに多いかをみてまいりました。
(でも、総会では株主から結構きつい質問が出てましたが・・・)

そのときの経営者は、仕切っていた小職に「一年を一日で暮らす・・」とのたまわっており、相当頭にきましたが、このご時勢でも
そういう意識を持った経営者が大手上場会社に多いということですね。

まさに「理想と現実」です。監査役でも会社運営でも取締役でも株主でも上場でもギャップがありすぎです。
本日のどなたかのブログにもありましたが、現在の日本の上場会社の上場資格を本当に持つところは少ないのかも知れません。

理想には相当時間が必要かあるいは永遠に日本には根付かないかです。
監査役として本当に会社にきちんとものが言える監査役がどれだけ育っているか、また育つか疑問です。
多くは経営者の意に沿わないと退任させられる現実では無理かも知れません。

そういうお前は理想どおりきちんと出来ているかと言われると、少し自信が無いのですが・・・
(「いつでも辞めてやる。」と言いたい事をいっている小会社の極楽閑散役)


投稿: ご苦労さん | 2008年7月25日 (金) 10時51分

たしか朝日新聞にこの件がニュースとして掲載されたいたような記憶があります。NOVAの監査役さんのインタビューとかといっしょに。

まえの荏原製作所の監査役の場合もそうですが、全員の連名があるにもかかわらず、ひとりだけの少数意見が掲載されていますが、こういった場合には監査役会での議論の結果などは報告する必要はないのでしょうか。なんだか無視しているみたいで、不自然な気がするのですが。

投稿: hiro | 2008年7月25日 (金) 11時57分

いずれの事項も、内部統制の「重要な欠陥」には該当しなくても「不備」には該当しそうですね。
「重要な欠陥」に議論が集中するのは自然な流れですが、「不備」についても会社が改善すべきものと認識しているわけですから、「不備」を長期間放置することは、改善に一応「費用対効果」が適用されるにせよ、取締役の任務過怠となりませんか。

特に今回のように、監査役が意見を述べているわけですから、いくら会社法と金商法で法制度が違うからといって、開示についてなんらかの方法があってしかるべきではないでしょうか。

投稿: 迷える会計士 | 2008年7月25日 (金) 20時09分

私は、冒頭に紹介あった「ブログ通信簿」に自分のブログのURLを入れてみました。

性別は「女性」になりましたが、ブログに性差はないので、それはよいとします。一方、主張度が1で「もっと自分の意見を言ってみてもいいのでは」と出てきました。

やはり「ブログ通信簿」より、自分の信念を信じる方が、確かだなと思いました。

(書いてあると一回やってみないと気が済まなかったので・・・・と引きずり込まれました。)

投稿: ある経営コンサルタント | 2008年7月26日 (土) 10時34分

経営統合された企業なので、「放置されていたかどうか」は事実認定が難しいと思いますが、やはりここまで監査役さんに報告されてしまいますと、無視することはできなくなっていたのではないでしょうか。

本当は、こういった監査報告が出てしまう前に、監査役さんの意向を聞いて、経営者としても改善計画を出すとか、すぐに対処するとか、前向きに対応していただくのが理想なんでしょうね。実際にそのように動いておられる企業もありますし。

25日の日経の「社外役員を問う(下)」では、昭和ゴムさんと荏原さんの件が掲載されていましたが、この事例はなんといっても「常勤監査役」さんの事例なんで、かなり強烈ですよね。

>経営コンサルタントさん
おひさしぶりです。
主張が1ですか?これは意外です。私よりもずっと断定的に意見を発信されておられるブログであることは間違いないのに(笑)

投稿: toshi | 2008年7月26日 (土) 11時59分

コメントを書く