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2008年7月13日 (日)

ドラマ「監査法人」第5話と「反社会的勢力と共生する人たち」

第四話を見逃しているうちに、ジャパン監査法人は崩壊してしまい、元理事長は逮捕勾留されてしまったのですね。(茜さんは監査法人辞めてしまってるし・・・)このドラマも、最初の1話、2話あたりは「粉飾決算とこれに対応する監査手法」がメインテーマでしたので、素人ながらも「監査の世界」を知ることができて結構おもしろかったのですが、3話あたりから、どちらかといいますと「監査の現場周辺で発生する社会事象」のほうにドラマの視点が移ってきたようで、おそらく会計専門職の方々にしてみればツッコミどころが減ってしまったのではないでしょうか?

ただこの第5話を視聴しての印象でありますが、たしかに監査現場におけるツッコミどころは減ってしまったものの、我々弁護士からみても、たいへん深刻な「上場企業と反社会的勢力と共生する人たち」のお話がけっこう真剣に描かれていました。あえてツッコミを入れるとすれば、もし反社会的勢力が市場マネーに介入するのであれば、決して対象企業の社長に暴力をふるうようなことはないわけでして(そんなことをすれば当然に警察が動きますし、上場後の増資による利益獲得の機会もなくなって、自らのマーケットを減らしてしまうことになります)、ちょっと現実の反社会的勢力と市場マネーとの関係とは違うのではないかと思いました。

Yakuza001 そういえば昨年11月にNHKスペシャル「ヤクザマネー」が放映され、大きな話題となりましたが、先日このNHK取材班による詳細な記録が一冊の本として講談社から出版されました。2週間ほど前に拝読いたしましたが、今回のドラマで登場する新興企業(プレシャスドーナッツ社)は、飲食店のフランチャイザーとして飛躍的に伸びていた会社であることや、その売上高が50憶という点などからして、すでに倒産したゼクー社がモデルになっているのかもしれませんね。(加盟料の売上収益の認識時期が問題となっている点はNOVAあたりがモデルなのかもしれません)

新聞等では、よく「新興市場と反社会的勢力」、「反社会的勢力との関係を断絶する仕組みを要求する企業行動規範」など、市場と反社会的勢力とのつながりが問題とされますし、最近でもスルガコーポ社のように、反社会的勢力との関係が企業倒産につながる事例なども後をたたないようです。しかし、上記の「ヤクザマネー」を読む限りでは、反社会的勢力が市場の表舞台に登場するような場面はほとんどなく、市場と反社会的勢力との間にかならず「共生する人」が介在することがわかります。この共生する人たちは、もちろんカタギのビジネスマンであり、ヤクザとは徒弟関係にもなく、普通にビジネスとしておつきあいをしている方々であります。今回のプレシャスドーナッツの社長さんも、自らの上場にかける夢や崇高なビジネスとしての理想は追いつつも、どうしても「お金が必要」であるからこそ、てっとり早くヤクザマネーに支援を求めてしまったんでしょうね。また一般に「共生する人たち」は元証券会社社員や投資銀行の行員だったり、公認会計士さんだったりするわけで、こういった方々が表社会に登場して上場企業と密接な関係を持つわけですから、なかなか反社会的勢力であると第三者が断定することは困難を伴うこととなります。リスクマネーを扱う商売でありますので、こういったリスクを背負ってしまった証券マン、銀行マンなどの方が、借金返済などのために反社会的勢力の有力者と手を組む可能性はこれからも減ることはないでしょうし、ますます上場企業や取引所からすると「反社会的勢力」の断定は困難になっていくのではないでしょうか。蛇の目ミシン最高裁判決に代表されるような反社会的勢力のイメージは、会社を恫喝したり、総会で脅したり、雑誌を講読させたりするような「会社荒らし」の印象が先に立ちますが、現実の反社会的勢力の姿は、有能なベンチャー社長や財務コンサルタント、投資事業組合などを活用して、いわば資金支援に基づく収益獲得を目指している、ということになります。その収益獲得のために、「共生する人たち」を利用してカラ増資させたり、粉飾決算をさせて上場させたりすることになります。このような現実を目の当たりにしますと、今後ますます反社会的勢力による市場介入は問題が深刻化する可能性が高いものと思われます。

7月 13, 2008 未完成にひとしいエントリー記事 |

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» 「ヤクザマネー」(NHK「ヤクザマネー」取材班) トラックバック 企業会計に関わる紛争についてのデータベース
話題の「ヤクザマネー」を読みました。 「ビジネス法務の部屋」のエントリー(少し前のものですが)をみて購入したものです。 「ヤクザマネー」(NHK「ヤクザマネー」取材班、講談社、2008年) 本書を読んで、上場企業(とりわけ資金が枯渇しがちな新興企業)....... [続きを読む]

受信: 2008年9月11日 (木) 07時15分

コメント

報道局が制作に加わっていたら、また違ったドラマになっていたかも
しれませんが、これはNHK名古屋が作ったオトナのエンターテイメント
ですからねえ。

リアルかどうかではなく、一個の純粋なドラマとして楽しめるように
なりました。多岐川裕美さんまで出てくるとは思いませんでしたし。
津川雅彦氏演じる理事長率いる「あすなろ監査法人」のモデルは
一応「新日本」なんでしょうね。
最終回はその「あすなろ」に見捨てられ"監査難民"となった「尾張
部品」を、全てを失った主人公がいかに救うかという話になるようです。
「尾張部品」は名古屋の自動車部品製作会社だそうですが、
NHKでなければこんな設定は到底通らないでしょうね。

投稿: 機野 | 2008年7月13日 (日) 17時25分

ふだんあまりドラマを見ないものなんで、大滝秀治さんとか左右田一平さんなどが出演しているのをみて「ああ、懐かしい」と感慨にひたっておりました。多岐川裕美さんは、昔「夢で逢えたら」という大瀧詠一さんの唄でレコードを出しているのですが、たぶん誰もそんなことは知らないでしょう(笑)
たしかに名古屋の自動車部品製造会社をモデルにするとなると・・・、NHK以外は無理かも(^^;

投稿: toshi | 2008年7月15日 (火) 21時20分

「反社」は容易ではないテーマですね。かなり多くの人が存在を許しているというか、もっと積極的に認めているわけです。たくさんの《利用者》や《仲間》や《使用人》の人たちは、知らずに付き合っているわけではありません。市場の人たちが知らないはずはありません。表の人たちのやっていることとほとんど差がないということではないでしょうか。粗暴的資金収奪はどんどん難しくなっていますから、知能戦でしょう。原資が違うだけで、土俵はほとんど同じになってきました。だから表と裏の差がなくなってきたのではないでしょうか。ステロタイプにいうのは一見分かりやすいように見えますが、本当にそうか最近疑問に感じるようになりました。
大事なのは、反社行動を否定することではないでしょうか。倫理に反する、道義に反する、法律に反する行動を否定することを徹底しないと、周辺の表風人種を応援するだけになってしまうのではないでしょうか。同様の商法は表のビジネスでもあるように思います。
コンプライアンスの意味はこの辺りにもあるように思っています。投資判断のためだけでなく、だましはダメだし、うそつきもダメということでしょう。上を向いて歩ける商売をしましょうということでしょう。「そうはいっても商売は難しいんだよ」と突っ込まれるのは、百も承知で言えば、自分のところは「反社」商売はしないということが守れないなら、コンプライアンスの意味はないだろうし、「反社」勢力との決別なんて、うそはいわないことです。
仕手の資金を洗っていけば、裏の資金が入っているといわれることがありますが、一緒に一応表の資金も入っています。裏的表の掃除を徹底的にやることからしか、この問題は前進しないように感じます。

投稿: TETU | 2008年7月16日 (水) 02時34分

茜さんが戻ってくれただけで満足なので、内容についてはコメントしません。ライブドアの経理部長は、確か女性会計士だった気がします。この辺がモデルでしょう。

共生者でも、金融・証券に詳しい人物はそう多くなく、100名くらいといわれています。警察も氏名は把握しているようで、最近大物が逮捕されていますね。

昨年、犯罪対策閣僚会議が反社会勢力を排除するための指針を作成していますが、それを受けて内部統制システムを改訂し決議している会社もありますが、やはり行うべきでしょうか?
その他の場合でも、例えば組織の変更が行われるケースも多いと思いますが、どの程度の変更の場合に改訂決議を行うべきでしょうか? 

投稿: 迷える会計士 | 2008年7月16日 (水) 22時09分

「ヤクザマネー」を読んでみました。率直な感想として、反社会的勢力の方々もその共生者の方々も、意外とまじめに、手間隙かけて仕事をしているんだな、という印象を受けました。もちろん、インサイダー取引とかは論外なわけですが、エンジェルになるにあたって投融資先企業の経営者の素行をチェックするとか、地道な努力をしているなあという印象です。反社会的勢力の方々でなくても、本書に紹介されているような反市場的な行為をしている人はたくさんいるんではないかと推測されます。したがって、市場の健全性を確保するためには暴力団のみを締め付ければ済むという問題でもないような気がします。じゃあどうしたらよいのかという結論はありませんが、興味深い本でした。

投稿: あかつき | 2008年7月28日 (月) 21時55分

反市場的な行為が繰り返されると、結局のところ「反社会的勢力」と評価される場合も出てくるのではないか、というのが私見です。たしかに「反社会的」かどうかの境界をどこに引くか・・・というのはたいへんむずかしい問題ですが、その重責を今後の金融機関、金融商品取引業者が負うことが期待されているのでしょうね。つなみに証券取引等監視委員会の平成20事業年度の重点分野として、まっさきにこの金融機関による反社会的勢力排除への内部管理体制があげられています。

なお、迷える会計士さんの疑問ですが、証券取引所の企業行動規範のなかに、上場企業の「反社会的勢力との関係断絶のための仕組み」が盛り込まれたことから、内部統制システムの基本方針のひとつとして決議するところが多いのではないでしょうか。コーポレートガバナンス報告書にも記載されることでしょうし。

投稿: toshi | 2008年7月29日 (火) 14時08分

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