« 民法上の使用者責任と内部統制 | トップページ | 消費者保護行政とソフトバンクモバイルの対応(素朴な疑問) »

2008年8月20日 (水)

アーバンコーポレーションによる情報開示の問題点(まだ思案中)

数日前に備忘録として若干触れましたアーバンコーポレーションの民事再生申立の件ですが、昨日あたりのニュースによると、東京証券取引所も調査を開始するようですし、また監督委員の弁護士さんもスワップ取引の経過について関心を寄せておられるようであります。ただ、本件はコメントでKazuさんやろじゃあさんがご指摘のとおり、いくつかの問題に整理して検討するほうが適切だと思います。噂としてはいろいろと出ているところのBNPパリバとアーバン社との5月以降の経過とか、スワップの仕組みの問題点というのは、純粋な倒産法上の法律問題ですから監督委員の先生にがんばっていただくことになるでしょうし、タイムディスクロージャー(適時開示)として適切であったかどうかは、証券取引所の方に検討していただくことになるでしょうし、そして「臨時報告書」および「訂正臨時報告書」に関する点につきましては、まさに金融商品取引法上の民刑事問題として検討されるべき問題かと思われます。

実は、ここ数週間に開示されたアーバン社以外の適時開示情報のなかにも、はっきり言ってヤバい(明らかに問題になる)開示情報がいくつかありますよね。重要事実に関する解釈を曲解したり、重要事実の発生時期を開示による影響を恐れて周到に操作したり、といったことが明らかに行われています。ただ、世間で情報開示が問題になるのは、今回のアーバン社のように、その情報の裏側まで世間に周知されることが前提であって、「あの会社は怪しい」といった議論がなかなかできないところに特徴があります。開示ルール違反ではないか?と、首をかしげたくなるような「グレーゾーン」は頻繁に指摘されるところですが、結局のところ一般投資家に大きな損害が発生して初めて事後救済の段階でやっとルール違反の有無が問われることになるということなんでしょうね。開示ルールの事前規制ということでいえば、結局のところ内部管理体制を厳格に要求するか、改正金商法によって創設されるプロ向け市場のNomad(上場企業後見人制度)的な制度を一般上場企業にも採り入れるか、といったことが必要になってくるのではないでしょうか。

さてEDINETでアーバンの開示情報を検索しますと、Kazuさんがご指摘のとおり、訂正臨時報告書が8月13日に出ていますね。内容的には適時開示情報と同一のものと思いますが、スワップ契約に基づいて割当先にいったん社債金額300億円を全額支払って、スワップ契約に基づく受領金を適宜受領する・・・という内容が「訂正」された資金使途ですが、これは本当に訂正で済むのでしょうか?ご承知のとおり、金融商品取引法197条の2第6項では、臨時報告書の重要な事項につき虚偽記載のあるものを提出した場合には刑罰の対象となるわけでありますが、たしかに開示府令第19条の内容を検討してみましても、新株予約権付転換社債発行時に臨時報告書へ記載すべき内容のなかには、そういった条件を記載することまでは要求されていないようであります。しかし(形式的にせよ)300億円という資産が(信用リスク回避のために)アーバン社からBNP社に対して移動しているわけですし、これは投資家の判断に著しく影響を与える事実ではないでしょうか。少なくとも、スワップ契約の内容が事前に開示されていなければ、一般投資家の自己責任を問えないと思いますが、このあたりはいかがでしょうか。また臨時報告書虚偽記載の問題ではないとしても、金商法157条のバスケット条項の適用が問題となりそうな気もします。一般投資家の判断を基にすれば、BNPパリバによる300億円の資金支援の事実はアーバン社にとっては起死回生の事実と受け取るのが一般だと思うのですが、こういったスワップ取引の存在を同時に知っていた場合には別の考え方が成り立つはずですし、いずれにしましても、本件の開示ルール違反疑惑につきましては、どのような問題に発展していくのか、非常に関心の高いところであります。(ただ、アーバン社の場合、最近まで元検事総長の方が社外取締役に就任されていらっしゃったので、そのあたりも影響があるかもしれませんが・・・)

8月 20, 2008 ディスクロージャー |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/42218365

この記事へのトラックバック一覧です: アーバンコーポレーションによる情報開示の問題点(まだ思案中):

» アーバンコーポレーションとBNPパリバのデリバティブ取引 トラックバック ある経営コンサルタント
やはりアーバンコーポレーションとBNPパリバ(ホームページはここ)との取引につい [続きを読む]

受信: 2008年8月20日 (水) 20時42分

» アーバンとパリバへの株主損害補償を考察してみた〓 トラックバック 勝手なるままに・・・
またかよって思う訪問者の方いると思うけど、とんでもない事なので、まだまだ書くよ。読みたくない人ごめんなさい。 毎日ネット見ていると、アーバンのブログ記事がたくさん。 掲示板のスレ(2chとか)どんどん進む。 マスコミまで問題視。  時間が経ち、少しずつ冷静になってきたけど。 アーバンは ・IRでのスワップ契約隠し。 ・300億円全額振込みの虚偽の報道。 ・しかも、300億円一旦受け取って、パリバに返した後、株価に応じた金を貰う事になっていて、300億円調達して..... [続きを読む]

受信: 2008年8月25日 (月) 21時08分

コメント

訂正報告書の内容からみて、この間にパリバが株を売却していたとすればインサイダーに該当するのではないですか?

投稿: ただの通りすがり | 2008年8月20日 (水) 09時50分

同じく金商法の話で行きますと、平成20年3月期有価証券報告書の後発事象の注記において、スワップ契約締結の旨は記載せずにCB発行の旨だけ記載し、且つ、その資金の使途を債務の返済としている点が、重要事実の不公表を前提とした虚偽記載に該当すると考えることはできないでしょうか。
個人的にはこの部分について、監査法人がどのような監査手続をとったのか、また、内容を認識しつつ不記載を容認したのか、それとも何らかの理由に発見できなかったのか、といった点にも興味が沸きます。

投稿: blanknote | 2008年8月20日 (水) 23時37分

はじめまして。
BNPパリバとの件で、業績回復を信じて、持ち続けた個人投資家が
株主訴訟を起こすことはできるのでしょうか。
どのような手続きをすればよいのか、ご教示ください。
またその費用などは?
(冷やかしでもなく、本当に切実です。)
もしほかに相談先があれば、あわせてご教示ください。
株自体は、民事再生法のニュースの後、16日と、18日に
売却しましたが、たった10円です。

投稿: hachibo | 2008年8月21日 (木) 07時29分

皆様、コメントありがとうございます。

インサイダーにせよ、株主訴訟にせよ、現時点では開示方法の是非について問題としておりますが、でははたして「不当な利得」や「株主の損害」がどの程度認められるのか、といった問題については別途残ることになりますね。これが非常にむずかしい問題だと思います。
普通の株価下落の事例と異なり、すでにアーバン社は倒産して監督委員が選任されていますので、今後の監督委員による報告内容などをみなければ実際に個人投資家の対応も決まらないと思います。

投稿: toshi | 2008年8月21日 (木) 18時33分

ありがとうございます。
アーバンの件は、ぜひ続報を
フォローお願いします。

投稿: hachibo | 2008年8月21日 (木) 21時46分

アーバンの続きを期待しております

投稿: BB佐藤 | 2008年8月23日 (土) 09時42分

東証が適時開示に関する要請を、9月1日に出しましたね。

「今般、エクイティファイナンスに関する適時開示において、重要な事項について事実と異なる理解を投資者に与え、投資判断を大きく誤らせたといっても過言ではない事例がみられました。」と、アーバンコーポレーションを念頭に置いたものです。

投稿: 迷える会計士 | 2008年9月 2日 (火) 11時26分

情報ありがとうございました。

次のエントリーの参考にさせていただきます。今回は結果として上場廃止になってしまうわけですから、東証としてはここまで・・・ということでしょうかね。今後の「企業行動規範」の検討に生かしてほしいです。

投稿: toshi | 2008年9月 2日 (火) 12時12分

はじめまして。アーバンの件の続報を心待ちにしている一読者です。
最近Yahoo掲示板とかを見ると「9月17日までに再生債権の届出書を出そう」といっていますが、損害賠償が発生していないのに、そんなことができるのでしょうか。仮に損害賠償権が成立しても、アーバンに払えるのかが疑問ですね。
ところで、もし、パリバがインサイダー取引で行政処分を受けた場合、それを根拠に、個人投資家がパリバを不当利得で訴えて、それを投資家救済に充てる、ということは可能でしょうか。

投稿: renshi | 2008年9月 9日 (火) 21時06分

コメントありがとうございます。

アーバンの件、続報を書くといいながら、なかなか書けずにおります。(どうもすいません・・・)本来ならば証券取引所による制裁的処分が妥当なところなのですが、そもそも民事再生法の申請によって上場廃止になってしまうわけですから、証券取引所による脅しが効かないことになってしまっているところが大問題ですよね。

パリバの行政処分ということは課徴金処分ということでありますが、インサイダー取引の場合、そもそも課徴金の金額が「不当利得」として算定されるので、原則として「利得は吐き出した」ことになりますよね。したがいまして、行政処分が出された場合には、もはや「不当な利得」はパリバ側には存在しなくなったとして、個人株主の皆様からの不当利得返還請求はちょっと困難になってくるのではないでしょうか。ただし、株主の損害とパリバの違法行為(もし認定されるとすれば)との間に因果関係があれば、不法行為による損害賠償請求権の行使については検討されるかもしれませんね。

投稿: toshi | 2008年9月11日 (木) 02時27分

ありがとうございます。
インサイダーの場合、野村証券での社員の犯行ではなく、組織ぐるみとなるでしょう。数年前のシティのケース以降、外資系ではコンプライアンスはとても厳しくなっていると聞いていますが、パリバのコンプライアンスはちゃんと機能しているのかな?まあ、勝算有りとしての所業なんでしょうけど、そう考えると、鮮やかなというべきかも。
いずれにしても、これからもウオッチしていただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします。

投稿: renshi | 2008年9月11日 (木) 13時09分

こんにちは、
ヤフーファイナンスでは、個人の間で、再生債権届書を提出する動きがあります。これは意味があるでしょうか。
これによって、東京地裁が動く可能性などあるのでしょうか。
株主による集団訴訟以外ないと思いますが、勝算がなければ、
裁判費用だけでも、さらに個人が負担を負うことになります。
どのように対処すべきでしょうか。
ご教示お願いします。

投稿: hachibo | 2008年9月11日 (木) 21時33分

もう、済んでしまった話題でしたら、お詫びいたします。
1番目の方がコメントされている通り、「資金使途」が虚偽記載になるんじゃないでしょうか。
資金使途の開示は、臨時報告書なら開示府令19条2項2号イで準用する1号へに、後発事象なら(直接的には会計士に対する規制かもしれませんが)、会計士協会の委員会報告「後発事象に関する監査上の取扱い」付表2、開示後発事象の開示内容の例示3、①の6に規定されていると思うんですが。

投稿: ロックンロール会計士 | 2008年9月20日 (土) 18時53分

コメントを書く