スティールP、ノーリツ社に買収提案(速報版)
スティール・パートナーズ(以下、SP社といいます)の活動がふたたび本格化したきたようでありますが、SP社は従来より経営改善を求めてきたノーリツ社に対して、本日(9月11日)最終手段としての買収提案をされたようであります。(9月10日現在、SP社はノーリツ社の18,7%の株式保有)M&Aネタの場合には、毎度のことながら申し上げますが、私はM&Aに詳しい弁護士でもなく、あくまでも社外役員としての立場からの関心において記述するにすぎません。ただ、このたびのノーリツ社の事前警告型買収防衛策におきましては、大量買付行為者による買収行為がノーリツ社の企業価値及び株主共同利益の確保向上に反するかどうかに関する取締役会の判断について、特別委員会の勧告と同時に、社外監査役全員の同意が必要とされております。(なお、ノーリツ社の場合、監査役4名中、社外監査役は3名)社外監査役が「独任制たる監査役の地位において」有事における企業価値判断を行うといった、特別な職責を負うもののように思われますので、かなり興味を持って注視したい事例であります。(ちなみに、もし企業価値判断に監査役が関与する場合、監査役さんのなかで法務とか会計など、専門職の非常勤社外監査役さんがいらっしゃると、その善管注意義務のレベルは高くなるのでしょうか?)
さらに、本件はブルドックソース事件とは異なり、買収交渉の機会確保に向けての「事前警告型買収防衛策」が導入されている企業に対して、買付希望者がTOBを前提とした交渉を行うものでありますので、6月30日に企業価値研究会から公表されております「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(以下、企業価値研究会報告書といいます)における指針が現実の事案において、どのように生かされるのか、非常に注目されるところであります。従来の報告書に比べて、この6月30日の報告書は多方面で高評価を得ているようですし、(MBO事案に関する報告書ではありますが)レックスホールディングスの価格決定申立事件の東京地裁決定におきましても、その決定理由のなかで企業価値研究会の報告書の内容が(相手方に有利に)援用されたりもしておりますので、やはりモノサシとしての貴重な役割は担うものと思料されます。
ノーリツ社は12月決算の企業であり、定時株主総会は来年3月下旬ということですし、取締役の任期も1年ですので、今後の交渉も、とりあえずこの定時株主総会の日程などにも配慮されるのかもしれません。また、ブルドックソース事件の頃とは異なり、SP社はアデランス社の株主総会において、現経営陣7名の会社側選任議案を否決させた経験を有しておりますので、その属性要件も変わってきているのではないでしょうか。「現経営陣の交渉次第ではTOB価格を見直す用意がある」と通告しておられるようですので、そういった価格見直しへの現経営陣の努力も必要になってくるかもしれませんし、一般株主への説明責任を尽くす必要もあります。全部買付義務を負わない範囲でのTOBとTOBに応じない少数株主との関係が生じる可能性を、ノーリツ社側としてはどのように評価すべきでしょうか。また、たとえ導入にあたって株主意思が斟酌されているとしても、はたして株主意思の確認を得ることなく、発動ができるほどに発動要件が具体的かどうかも不明でありまして、考えてみると、とても多くの論点がありそうな事例であります。
しかし、ここまできますと「魔除け」としてではなく「勝負に勝つ」ための防衛策の意味が問われるでしょうから、内部統制と同様に買収防衛は「動的プロセス」が「適法性」のためには重要になってくるのでしょうね。商事法務の9月5日号、同15日号の座談会記事なども参考になりそうですし、今後の展開に注目をしております。(とりあえず速報版で失礼します)
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