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2008年9月29日 (月)

エンジェルからみた日本企業の内部統制

アントレプレナー(ベンチャー起業家)を多数支援しておられるビジネスエンジェルのような方は、ともかく支援先企業を上場まで持ち込んで、適当な出口さえ見つけて「儲け」を出すことに注心されるのであり、ともかく商品の開発とマーケティングだけに興味を示し、ガバナンスや内部統制などはまったく関心の対象でなないといった印象を(少なくとも私は)抱いておりました。しかしながら、八幡恵介氏の新刊「(日本初のエンジェルが教える)投資できる起業、でいない起業」(光文社 税込1000円)を読ませていた印象としましては、私の先入観は、かなり現実とは異なるもののようであります。

Toushi001_2 著者はNEC出身の技術者として、外資系日本法人の立ち上げに成功され、その後多数のベンチャー起業家を支援されておられる方でありますが、本書は基本的には起業家向けに、ビジネスエンジェルの立場からの「成功指南書」として書かれたものであるものの、自身の投資失敗事例が20社ほど紹介されておりまして、起業家のみならず、一般事業会社のCEO、CFOの方にもたいへん参考となる一冊であります。(いや、実におもしろい。このようなブログで紹介せずとも、これは相当に売れる本だと思いますが・・・・)おそらく、どんなに頑張ってみても、上場にまで至る企業は20社に1社程度、それでもエンジェルとしては20社に分散投資して、1社から元がとれればハッピー!!といった非常に現実を直視された目線で起業家へ提言されている点も、この本の説得性を物語るものであります。

私的には、起業の成長段階に応じて、企業に要求されるガバナンスのレベルを具体的に解説されているところがもっとも考えさせられる点でありましたが、なんといっても「安易な起業」や「マンパワー不足」などに分類された20の失敗事例は企業コンプライアンスとの関連性も想起させるものでして、たいへん参考になりました。また、ビジネスエンジェルの方から「成長時点においてこそ内部統制の整備が重要である(上場準備の段階において、すぐに内部統制が整備されるということはありえない)」「経営者は職業的倫理感が不可欠」とされ、さらに昨今の「日本版SOX法」施行への思いについても記述されている点につきましては、たいへん勇気付けられるところであります。(ちなみに、著者は自身が社長を務めておられた企業で米国SOX法への対応も経験されておられたようです)

IPOに向けての知識を蓄える、というよりも、知恵を養うための一冊といえるものですので、とくに専門的な予備知識が必要ということもなく、おそらくどなたでも内容は理解できるものと思われます。内容を理解したうえで、著者の考えに賛同するか、批判するかは読まれた方の自由だと思いますし、それがまた読まれた方の楽しみではないかと思われます。なお、八幡恵介氏のブログも開設されているようですので、そちらも参考にされてはいかがでしょうか。(値段はペーパーバック版のため1000円ですが、中身はしっかり244頁の充実版であります)

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