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2008年10月 6日 (月)

不適切な開示と証券訴訟による事後規制の有効性

NERA証券さんでは、金融プラクティスセミナーの一環として「証券訴訟と損害賠償」に関する講演を10月30日に開催されるそうであります。(NERA金融プラクティスセミナーのお知らせ)ここのところ、西武鉄道事件、ライブドア事件に関する株主損害賠償請求事件の判決が出ており、最近はアーバンコーポレイション社、IHI社などの不適切開示事例についても株主集団訴訟が提起(もしくは準備)されております。また発行企業や発行企業の役員を相手方とする民事責任につき、原告側に有利となるような金融商品取引法の規定も活用されるようになりましたので、こういった集団株主訴訟が提起された場合における損害賠償額がどの程度になるのか、賠償額の立証をどのようにすればいいのか、賠償額と違法行為との因果関係はどのように立証すればいいのかなど、株主側も、また企業側も関心が高まるのは当然の流れのように思います。アーバンコーポレイションの不適切開示に関する2ちゃんねる掲示板の議論などにもあるように、たしかに発行企業ではなく、役員を相手方として損害賠償請求訴訟を提起したとしても、その個人的資力からみて、「勝訴判決は絵にかいた餅」(執行しても何もとれない)に終わってしまう可能性は否めないところだと思います。ただ、株主の皆様方としましても、「不適切」であることと「違法」であることとの差は明確にされたいでしょうし、少しでも被害填補がはかられる可能性があれば訴訟を提起したいとの意欲はお持ちでしょうから、積極的な訴訟提起の姿勢につきましては、私は賛同するものであります。また、たとえ副次的な効果でありましても、そういった勝訴判決が出ることで、グレーゾーンをなかなか取り締ることができない事前規制を補完する機能が発揮されることには十分な意義が認められるように感じます。

ところで、アーバンコーポレイション社の株主の方々による集団訴訟のケースでは、私が聞き及んでいるところですと、CB発行のリリースがなされた本年6月27日以降に、そのリリースを知ってアーバン社の株式を購入された方々を原告として募集するものであり、それまでアーバン社の株式を買い支えてこられた一般株主の方々は対象外ということのようであります(もし間違っておりましたらご連絡ください。訂正いたします)たしかに金融商品取引法を活用して役員の損害賠償責任を追及するということになりますと、情報開示規制違反によって損害を被った株主が救済の対象となりますので、リリース後に購入された株主の方のみが対象とされることになるのかもしれません。(本件では臨時報告書に記載すべきスワップ取引に関する事項が記載されていなかったことを法令違反と主張することになるものと思われます)しかしながら、リリース以前からアーバンコーポレイションの株式を保有している方々にとりましても、役員の責任追及を通じて訴訟における救済の道というものがあっても不思議ではないような気もします。たとえば、不公正なCB発行としての差止請求については、その権利行使の是非を判断するための情報開示がなされていなかったということであれば、役員に対する善管注意義務違反を問いうるのではないか、CB発行とスワップ契約が一体であれば、アーバンコーポレイション社のファイナンスに関する実質的な経済的効果は(すでに証券取引所によって規制対象となっている)MSCBもしくはMSSO(行使価額修正条項付き新株予約権)と同視すべきものでありますので、規制の潜脱行為ではないか、といったあたりの主張は検討されないのでしょうか。金融商品取引法による請求であれば形式面が重視されるでしょうが、会社法もしくは民法による責任追及ということであれば、実質的な取締役の行為について問題にすることが可能のように思います。(ただし、損害額、因果関係についてはやはり立証が困難な点は否めないかもしれませんが)いずれにしましても、投資家の事後救済といっても、その救済の範囲はごく一部にしか過ぎないのが現状ではないかと思われます。

なお、民事再生事件の関係者でもないかぎり、BNPパリバとアーバンのスワップ契約の真意についてはなかなかわからないところです。(これだけ巨額の損失リスクがあってもアーバン社が資金調達をしなければならなかった理由とか、下限価格175円の経済的合理性など)そこで、せっかく2008年4月より財務報告に係る内部統制報告制度が施行されたのですから、発行企業を被告とする訴訟ではありませんが、発行企業における内部文書の開示を訴訟のなかで求める方法など検討されるかもしれませんね。たとえば監査役が取締役会で決議された内容もしくは手続きについて、これを適法と判断した根拠資料など、最近の金融機関に対する文書提出命令に関する最高裁決定の流れからしますと、開示の対象になるかもしれません。(単なる内部資料ではなく、内部統制報告制度という法律に基づいて作成され、外部監査人に閲覧されることを予定して保存される文書であるため)今回は民事再生企業の役員個人が被告であるために、ちょっと苦しいかもしれませんが、一般の上場企業の不正会計や不適切開示が問題となるケースにおきましては、今後は内部統制報告制度によって作成、保存されている文書はどんどん開示命令の対象となり、こういったファイナンスの仕組みの是非についても外部の第三者に判明しやすくなる可能性は十分にあるものと考えております。またそういった文書開示命令申立にもかかわらず、文書を作成していないとか保存していないといった抗弁が出された場合には、主張立正責任が転換されるとか、内部統制構築義務違反など、企業やその役員の責任が認められやすくなる効果も発生するかもしれません。(あくまでも私見でありますが)

10月 6, 2008 ディスクロージャー |

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