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2008年10月23日 (木)

架空循環取引発覚による過年度修正は「重要な欠陥」になるのか?

(23日午後追記あり)

他人様(ひとさま)にご紹介しただけで、偉そうに申し上げるつもりは毛頭ございませんが、やっぱり期待に違わぬオモシロサの「会計腐蝕列島」。 最新エントリーの「架空取引はやめようをなくそう」は、これまで私がいろんなブログや本などで読ませていただいた中身よりもかなりマニアックで興味をそそるものであります。なるほど、架空取引といっても、いろんな目的で行われるものであり、また発覚防止のためには物の流れまで仕組む(っていうか、それでも架空取引と呼ぶのでしょうか?)ものもあるんですね。数字の裏にある人間ドラマに焦点をあててみないと架空取引発覚の困難性はわからないですし、なによりも内部統制の限界に近いものとして冷静に分析されているところがリアルだと思います。しかし、「ピーナッツ6個」って・・・(^^;、私よりもかなり年配の方だったのですね。。。

さて、架空循環取引に限るわけではございませんが、不正会計が明るみに出た企業(新興市場だけでなく、大手名門企業も含む)におきまして、不正が発覚した事業年度の内部統制報告書では「重要な欠陥あり」との監査意見が付されるケースは今後どれほど出てくるのでしょうか。(リスク管理の一環として、こういったことは考えておく必要がありますよね)先日、内部統制報告書における開示内容について、一般の投資家がどういった関心を抱くのか(もしくは全く関心がないのか)といった点が少し話題になりましたが、まず理屈とは別に、おそらく一般の投資家の皆様は、「なんであんな架空取引で問題になった企業なのに『内部統制は有効』とする報告書に適正意見が付くの?」と疑問を抱かれるケースは十分予想されるところであります。今後、実際に内部統制監査の報告をすべき監査法人さん方としましては、理屈の問題としては(評価の時点においては)重要な欠陥なし、とする意見が妥当だとしても、先に述べたような一般投資家の素直な疑問を無視することもできないような気がいたします。そして、最近の(連結子会社を含めた)上場企業における不正会計事件に関する報道や、不明瞭な会計処理に基づく過年度決算の修正リリースを読みますと、こういった事例において「財務報告に係る内部統制には重要な欠陥が見当たらなかった」と公表するには、株主や投資家に対する「それなりの」説明責任が問題となるケースも出てくるのではないでしょうか。やや短絡的かもしれませんが、「重要な欠陥」に該当するかどうかは、その企業における虚偽表示リスクに関する将来指標だということは頭では理解できても、一般の方々にとってみては、直近の会計不正に関するペナルティ表示として理解されるところが大きいのであり、この乖離をどう埋めるのか、それとも埋める必要はなく「重要な欠陥あり」とする意見を出していくのか、そのあたりがとても興味のあるところです。(なお、架空取引が発覚したといっても、それが内部調査で発覚したのか、内部通報によるものか、外部への告発によるものか、監査法人による指摘によるものかなど、モニタリングや自浄作用が機能した結果かどうか、という点も問題になるのかもしれません。)

また理屈の問題としましても、架空循環取引が組織ぐるみでなされており、経営上層部も絡んでいる・・・という場合には、そもそも実施基準でいうところの「内部統制の限界」に該当するケースも多いのではないでしょうか。内部統制の限界というのは、どんなに内部統制をしっかり整備(構築、運用)していても、関係者が証憑隠滅を共謀したり、経営者が統制を無視することによって「内部統制がまったく機能しないこと」を認めるものでありまして、もし、上記のような架空循環取引が「内部統制の限界事例」とされるのであれば、たとえ新聞報道されるような大きな架空取引によって過年度決算が修正されたとしても、それは「重要な欠陥」とは評価されないのではないでしょうか。(重要な欠陥とは、是正可能な内部統制の不備を指すものであり、将来的に是正されるべき重要な課題のことであります。そもそも是正したくてもできないような『内部統制の限界事例』であるならば、そもそも不備にも該当しない、ということになりそうです)架空循環取引を、もうすこし構成要素としてはバラバラにして、どの部分をどのように統制していけば再発が防止できるか・・・ということを検証する必要があるのかもしれませんが、どうもよくわからないところであります。架空取引が発覚したケースで、よく法定監査を担当されていた監査法人さんが「財務諸表監査のために依拠すべき内部統制が認められず、意見を表明できないので辞任する」と解説されますが、そもそもそれが「内部統制の限界」を超えたものと評価される以上(つまり内部統制がしっかりと整備されていても架空取引は監査論の域を超えて発生しうるものである以上)、財務諸表監査のために依拠すべき内部統制の問題とは関係がないのではないかと思うのであります。

そこで、あくまでも理屈の問題ではありますが、「一般に公正妥当と認められる内部統制評価の基準」「内部統制監査の基準」と「重要な欠陥」との関係について、すこし検討してみたいと思います。たとえば全社的内部統制について一般に公正妥当と認められる内部統制の「枠組み」に準拠して内部統制が整備運用されていることと、全社的内部統制に「重要な欠陥と評価されうる不備が存在しないこと」とはいずれも「内部統制の有効性判断」という意味では同義であるかどうか、という点であります。以前もすこし問題としましたが、「重要な欠陥」の意味について、経営者と監査人と意見が食い違う・・・というのは、あくまでも一般に公正妥当と認められる経営者評価、監査の基準に(お互いが)準拠していることが前提でありますが、もし経営者が「重要な欠陥」の判断基準すら理解する能力がない場合、いったい監査人はどのように意見を述べるべきか・・・というのも、同様の問題を含むものと考えられるのではないでしょうか。(以下、長くなりましたのでつづく)

(23日午後:追記)本文とは関係ありませんが、昨日エントリーしましたプロデュース社の不正会計の件、今朝の日経新聞でも大きくとりあげられていましたね。ジャスダックでの表彰式を終えた直後の不正発覚ということだそうです。ジャスダックの表彰理由も

ネガティブな内容でも積極的に公表する姿勢に好感がもてる。資料を読むだけで状況をかなり的確に理解できる

ことだそうで、なんか皮肉な結果になってしまったようです。新聞記事では疑惑の会計士さんのお名前もはっきり出ておりますが、昨日のエントリーで書きましたとおり、今回の事件はこれまでにないほどに「市場の信頼性を喪失させる」という意味におきましてはきわめて悪質だと思いますが、いかがでしょうか。

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コメント

toshi先生こんばんわ。またまた私のブログをご紹介いただいたようで。。。お恥ずかしい限りです。ちなみに、おそらく、私はtoshi先生より若いと思いますよw

さて、内部統制の限界を超えた不正が発生し、財務諸表に重要な虚偽記載が発生した場合、「重要な欠陥あり」となるか否かですが、この場合、制度の建てつけとしては、通常レベルの内部統制が整備運用されている限り、重要な欠陥となる要素がない、と判断すべきである思います。ただし、このあたりは、報告書の利用者には理解しにくいかとも思いますので、いずれなし崩しになる可能性が大いにあります。

一方、財務諸表に対する意見は、その不正に伴う重要な虚偽記載が解消されない限り不適正意見となり、虚偽記載の存在に確信を持てなければ意見不表明となるでしょう。以前、コメントで、内部統制監査の意見と財務諸表監査の意見を分離したのは制度設計の失敗なのではないかと書いた記憶がありますが、それがまさにこの点です。

とはいえ、虚偽記載の存在が疑われるが確信が持てない、という状況なら、監査人は間違いなく逃げるので、実際にはこうした段違い平行棒的監査報告書にはお目にかかれないでしょう。

投稿: こばんざめ | 2008年10月23日 (木) 23時14分

まあそういう状況が起これば内部統制監査どころではなくなってる
と思いますけどね(笑)。
と申しますか、内部統制報告制度そのものが重大な欠陥じゃん!
とか、さぞかし皮肉られることだと存じます。

言葉遊びをしているように捉えられるかもしれませんが、
でもこの今そこにある現実は何処か言葉遊び化しております。

専らの関心事は、金融庁による新銀行東京の監査結果です。
もしもお茶を濁したような結果しか出せないのであれば、
金融庁は重要な欠陥どころか
その存在意義自体を問われることでしょうね。
そういう組織に、金融機関でもない当社は
あれやこれや言われたくありません。

投稿: 機野 | 2008年10月24日 (金) 01時26分

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