「ジャッジⅡ島の裁判官奮闘記」は法律家からみても素晴らしい内容です。
昨年好評だったドラマの続編「ジャッジⅡ島の裁判官奮闘記」の第一回を視ました。シリーズの続編モノは期待ハズレに終わってしまうことも多いと思いますが、率直に言って前篇よりもドラマの内容がしっかりしていて、法律家の目からみても「よくこれだけリアルに描ききっているなァ」とビックリいたしました。休日開放している島の小学校の校庭で、5歳の男の子が設置物(営造物)から落ちて怪我をする、両親が小学校(町)を相手方として、営造物責任(国家賠償法2条)を問うわけでありますが、裁判官の安易な和解勧告が原告にも、そして被告(実際には小学校)、そして最後には島の生活にも大きな影響を与えてしまう・・・という設定は、実際にこういった紛争に関与した人間としても、非常にリアルであります。(通常は安全配慮義務違反の有無が問われることが多いのですが、「休日開放における生徒以外の幼児の事故」というところがミソなんでしょうね)あまり裁判になじみのない方からしますと、怪我をした子供の父親(俳優の保坂さん)が味方である代理人弁護士の対応に激怒する場面が「おおげさ」に思えるかもしれませんが、あれこそ普通の依頼者の姿であります。あのような依頼者を畑弁護士(浅野温子さん)のように冷静に説得しなければならないのが現実でして、これも深く頷きながら視ておりました。
ただ現実の裁判官の方々からみて、このドラマの主人公の姿はどう思われるのでしょうかね。「常時150件も裁判を抱えているのに、そのうちの1件にこれだけ没頭できるというのはありえない」という感想も聞かれるかもしれません。「安易に和解を勧告して失敗したからといっても、それは双方の弁護士に紛争解決能力がないからであって、なにも裁判官が謝罪するようなことではない」という意見も出るかもしれませんね。ただ、先日のドラマ「監査法人」における「期待ギャップ」ではありませんが、裁判員制度が始まるにあたり、国民にとって期待される裁判官像というものが、このドラマでは如実に表現されているといってもいいのではないでしょうか。このドラマでは、最終的には主人公の裁判官は苦悩の末、原告(慰謝料請求の関係からみてたぶん子供と両親)の請求を棄却する判決を下すわけでありますが、判決を不服とした原告らがなぜ控訴をしなかったのか(判決を真摯に受け止めて、新たな人生を再出発させようと決意できたのか)・・・という結末に至る場面にも現役の裁判官の方々は目を向けていただきたいと思います。裁判外における人間ドラマによって、この紛争が一件落着するに至ったことは、おそらく主人公の裁判官も知らないところが実はミソであります。(超リアル♪)「国民の目線」で紛争をみていただきたい・・・・・、つまり裁判員制度は国民が裁判に参加するだけでなく、職業裁判官もまた新たな目線で裁判に参加する制度なのであります。※1
長年、美容整形の被告(医師側)代理人をつとめておりますが、裁判にまで発展する美容整形トラブルのうち、8割程度は「もしトラブル発生直後の医師もしくは看護師の対応が誠実なものだったら、謝罪で済むか、もしくは簡単な示談が成立していたはず」だと私は確信しております。裁判員制度が開始されるいまこそ、裁判官の方々にも、紛争はどのように解決されるべきなのか、あらためて知っていただきたいと思います。
弁論終結前の和解期日にもかかわらず、弁論を経過せずに判決言渡しに至ったり、判決書謄本に裁判官の押印があるなど、「ありえねェ~」とツッコミを入れたくなるところはございますが(^^;、そんなことはまったく気になりませんでした。唯一「ありえねェ~」と気になるのが小学校の担任の先生と新任の刑事書記官に扮するのが安めぐみさんと酒井彩名さん(ムム、ウラヤマシイ・・・)ということぐらいでしょうか(^^;; 次回は刑事事件の「共犯関係」に焦点を当てた話のようで、これも実におもしろそうです。第二話以降も期待しております。
※1;もちろん裁判員制度は刑事事件についてのみ開始するものでして、民事事件について「裁判員」が参加するものではありません。
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