プロデュース社の粉飾決算と会計士の関与(備忘録程度)
昨日は、ビジネス法務に関するエントリーではありませんでしたが、思いのほか多くの方のアクセスをいただきまして、ありがとうございました。(こういった話題のほうがアクセスが増えるのですね。やはり当ブログは普段かなりマニアックな話題をとりあげていることを再認識いたしました。)さて、9月18日から始まったプロデュース社(本社;新潟県長岡市 9月26日民事再生申立中)への証券取引等監視委員会の強制捜査の結果として、2005年12月の上場時期より監査に関与されていた公認会計士さんが粉飾にも関与されていた疑いが強まっている・・・と読売新聞ニュースが報じています。この会計士さんが所属する(非常勤?)監査法人は強制捜査の直後(9月24日)にプロデュース社に対して「法令遵守や会計基準遵守など監査嘱託者責任を履行していないこと」を理由として契約を解除しておられるようです。(EDINETと本ニュースの内容から、すぐに会計士さんは特定されてしまいますね。この方の決算書解説本は以前、読ませていただいた経験があります。)
このニュースの内容では2005年12月、つまり上場時から粉飾決算を続けていた、とありますが、これは本当なのでしょうか?もし本当だとしますと、取引所(JASDAQ)をも騙したことになりますし、普通の粉飾決算の動機(上場後の業績悪化の糊塗、買収や資本政策のための時価総額の向上、担当役員の名誉欲など)に基づくものでもないようでして、きわめて大きな問題を投げかける事件ではないでしょうか。上場を一年後に控えた2004年、新潟地震によってプロデュース社の業績は大きなピンチに立たされたようでありますが、困難を乗り越えて無事、予定どおりに上場に至ったそうであります。しかしながら、実際には無理な状況での上場申請だったのかもしれません。本件における粉飾決算の動機を考えるにあたり、当該地震と粉飾決算との関係についての検証が必要ではないかと思われます。(とりいそぎ、備忘録のみにて失礼します)
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コメント
toshi先生
おはようございます。エントリー興味深く拝見しております。
この会社の件については、とりあえずウチでもエントリーしてみましたが、監査人関係もなかなか興味深いものがありました。
上場時の監査人のお二人が、2つの監査法人を経由していたりします。それはさすがに指摘食らうだろうなと、過去の事例を見ても思いました。(麹町とつばきが関係したTTGの事例)
民事再生法ですから、監督委員側の補助として動かれる会計士の先生方がどのような調査報告をされるかがとても興味がございます。
投稿: grande | 2008年10月23日 (木) 04時00分
grandeさん、おはようございます。そちらのブログのエントリー拝見しました。やはり同業者の方らしく、詳細に分析されており、たいへん勉強になります。私も「稲○産業」については気になっておりましたが、それこそあまり先走っては書けませんので、とりあえず備忘録程度・・・とさせていただきました。そうですね、民事再生法の場合、会計士さんがおつきになるわけですから、そちらの意見も今後重要になってきますね。
投稿: toshi | 2008年10月23日 (木) 09時52分
隆盛監査法人の実態を指摘したブログがあります。http://blog.goo.ne.jp/alen_smithee/e/81e46c108aab6e895753678f259ed11d
投稿: kakashi | 2008年10月23日 (木) 14時24分
新聞の記事なので真実かどうか分かりませんが(新聞もいい加減なので)、規模の大きな監査法人はある程度クライアントを切り捨てても収入があるが、零細監査法人はそういうわけにはいかない。なんでもかんでも会計基準を杓子定規に解釈して、だめだだめだといってはクライアントの大半は上場廃止となってしまう。そうすると、零細監査法人がそのような高リスクな会社の監査を引受けるしかない。
おとしどころをどうつけるかです。
「売上として計上するには実現していなければならず、出荷の事実を示す証憑類が必要だ」というのか「証憑類さえあれば売上の計上はOKですよ」というのか。
私個人の感覚からすれば、会計士の資格を失うリスクを負ってまでクライアントの不正に積極的に加担する気にはとうていなれませんね。ぜいたくしなければ、会計士だったら、最低限の生活はできるだろうから。
会計不祥事は、第一義的に、被監査会社であるクライアントの責任です。
カネボウの事件でさえも、いまだに私は会計士が積極的に犯罪に関与したとは思ってませんよ。
投稿: piperekiban | 2008年10月28日 (火) 00時53分
piperekibanさん、コメントありがとうございます。
>おとしどころをどうつけるか?
こういった問題は当ブログでは初めて提起されたものだと思いますし、個人的にはたいへん興味のあるところです。
>「売上として計上するには実現していなければならず、出荷の事実を示す証憑類が必要だ」というのか「証憑類さえあれば売上の計上はOKですよ」というのか。
この具体例であれば、私でもよく理解できるところです。零細というのがどの程度の監査法人を指すのかはわかりませんが、その「おとしどころ」というのは、現場の監査責任者で判断できるのか、それともやっぱり品質管理担当者が「おとしどころ」を判断するのか、どうなんでしょうか?
現場を知らずに「おとしどころ」など判断できるものなんでしょうか?またよろしかったらご教示いただきたいと思います。
投稿: toshi | 2008年10月28日 (火) 01時49分
会計士にも色々な方がおられると思いますが。
会計基準を杓子定規に解釈したら、上場廃止となってしまうようなクライアントなら、上場廃止にするしかないんじゃないでしょうか。
幸い、昨今、監査過誤の責任が、昔よりは厳しく追及されているようです。損得勘定からいっても、いいかげんなおとしどころは避けたほうがよさそうです。
投稿: ロックンロール会計士 | 2008年10月29日 (水) 20時10分