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2008年11月27日 (木)

三洋電機株式TOBを巡る攻防はどうなるんだろうか?

パナソニック(旧松下電器産業)による三洋電機子会社化をめぐって、大株主3社とパナソニックとのかけひきが本格化しているようですね。この件については、最近は日経新聞よりも読売新聞のほうが主導権を握って報道されているようにも思われます。M&Aネタの時には毎度申し上げているところでありますが、私はとくにM&Aに詳しい専門家でもなく、あくまでも当事者取締役や監査役などの立場であれば「どう考えるだろうか」といった興味からのエントリーでありますので、軽い読み物程度にお考えください。(当然、株式売買につきましては自己責任においてお願いいたします)

パナソニックがディスカウントTOBによって(つまり現在株価を160円とすると、買付価格を現在株価よりも安く120円程度に設定すること)、大株主3社に買付の打診をされたそうですが、コールドマンサックス・グループ(以下GSといいます)は「全株主にとって公正公平な価格でなければならない」として250円程度をTOBの適正価格だと主張しているそうであります。したがってGSからすると、「120円なんて話にならない」というところのようですが、パナソニックとすれば、GSがTOBに応じなくとも、三井住友と大和証券SMBCが応じてくれるのであれば過半数を取得できるのですから、そのまま120円でTOBを開始するのでは・・・・という推測もはたらきます。(ちなみに、三社とも優先株取得時の価格は普通株単位では70円程度だそうですから、120円でも利益は出るそうです)

しかし、大株主3社で優先株(普通株に転換した場合には、1株が10株の普通株となる)を引き受けたときの契約として、GSと大和証券との間で相互に先買権について規定していた、とのことでして、もしパナソニックのTOB価格よりも1円でも高い値段で買い取る旨を申し出た場合には、先買権によって契約相手方の保有する優先株を買い取ることができるそうであります。ということは、もしパナソニックが120円でTOBを開始して、その後GSが先買権を行使して大和証券保有株を取得した場合には、パナソニックとしては過半数の株式を取得することができなくなってしまう・・・といった懸念が生じるところであります。(そのようなことまでして、GSが三洋電機株式を現に保有する経済的意味がどこにあるのか?という疑問は生じるところでありますが・・・・)

そこで、ここからが素人的発想ではありますが、著名なアナリストの方々が希薄化(普通株式への転換)を見込んだ三洋電機の時価は100円から110円程度とするところからみて、パナソニックとしては120円程度のTOB価格を維持せざるをえないのではないかと思われます。もしプレミアムを付けるようなことになりますと、全部買付義務が発生して、一般株主もこれに応じる可能性が出てきますので、「三洋電機社をそのまま上場させておきたい」といったパナソニックの思惑がはずれることになりますし、なによりも多額の金銭が三洋電機社ではなく、三洋電機社の株主のほうへ流出することになります。また、たとえ120円程度を維持することによってGSにそっぽを向かれ、先買権まで行使されてしまって過半数を取得できない事態に陥ったとしても、そのときは三洋電機社から第三者割当によってパナソニック社に対して新株を発行すれば過半数取得に到達するのではないでしょうか。こうすれば、たしかに新株発行の際に、パナソニック社の追加資金が必要になりますが、資金はすべて三洋電機社に入るのであって、株主に流出するわけではありませんので、三洋電機社の株価も上昇するでしょうし、三洋電機社の上場を維持しつつ、支配権だって獲得することができるはずです。(例のキリンHD社が協和発酵社を子会社化するときに用いられた「合わせ技」スキームですよね)こう考えますと、なにもパナソニック社側がGS社に譲歩して大幅なTOB価格の上昇を検討する必要はないように思うのでありますが、いかがなものでしょうか。

ちなみに、121円以上の価格を適正とみる場合の先買権に応じる義務がありますので、大和証券SMBCの役員さん方としては120円程度のTOB価格に応じたとしても、「不当に安いTOBに応じた」として自社の株主から責任追及されるリスクは極めて小さいはずだと思います。(そもそもディスカウントTOBに応じること自体が経営判断と思われますし)そう考えますと、どうみてもパナソニック側に有利な展開が見込めるように思われますので、私は結局のところ120円に近いところで和解(妥結)するのではないかな・・・と考えているところであります。素朴な疑問に基づくエントリーですので、また明らかな誤り等ありましたら教えていただけますと幸いです。

11月 27, 2008 商事系 |

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受信: 2008年11月27日 (木) 13時14分

コメント

先買権を行使したとしてこの環境下で有力な買い手が現れるのか。
第三者割当増資の特別決議は通るのか。太陽電池事業が欲しいはずだが
金額によっては自社で投資する方が安くもしくは他社がまるごと購入できてしまう。

というあたりが気になりますね。また買収交渉が破談になれば
三洋の株価にネガティブなインパクトとなりますから
そのときどうなるかというのも気になるところです。
またここ数年間で見たときの収益率や一株あたりの純資産の違いも気になります。

以下、参考にご覧ください。
http://www.globis.jp/public/home/index.php?module=front&action=view&object=content&id=737&page=1
http://www.asahi.com/business/update/1125/OSK200811250100.html
http://www.sankei-kansai.com/2008/11/28/20081128-004053.html

投稿: ttttt | 2008年11月29日 (土) 17時04分

tttttさんのご意見、参照WEBとも非常に参考になりました。どうもありがとうございます。
企業買収問題に詳しい弁護士の方の記事も参考になりますね。
http://diamond.jp/series/nagasawa/10051/
ご指摘の点も踏まえ、今後の動きを注目しております。

投稿: toshi | 2008年12月 1日 (月) 23時23分

外部者なのでよくわからないのですが、

そもそも「パナソニックがなぜ優先交渉権者に選ばれたのか」という説明責任が三洋側に希薄であり、これが話をややこしくする最大の原因だと思います。
報道では「他の候補者も考えた」との記載も一部ありますが、これだけ情報が漏れる三洋案件でこれまでほとんど伝え聞かされていませんでした。

本来なら、入札があって、パナソニックが一番いい価格(または価格とその他を含めた総合条件)を提案したのでパナに優先交渉権を与えました、とすべきところを、メインバンクになし崩し的にされて、あんな大発表会まで開くというのが旧態依然としています。これでは「高度経済型M&A」(メインバンク主導型。昔昭和石油とシェル石油の合併とか)であり、世界の主要M&Aとは隔世の形のままです。

半年ほど前、米ゼネラルエレクトロニクスの家電部門が売却になっていました(金融危機で中断または中止)。その時も「プロセス」を踏んでいて韓国のLGとか中国のハイアールまたは日本の日立などの名前が報道されていました。

フォードの子会社だったランドローバー&ジャガーも入札の結果インドのタタ自動車に決まりました。

日本の第一三共も入札の末、インドのランバクシーを手中にしました。

最も今のタイミングで実際に入札してパナソニックだけが残った、というのがはっきりすればそれはそれでOKなのですが、なぜレンジでもいいのに価格も提示しない会社に優先交渉権を与えるのか、三洋のガバナンスを疑ってしまいます。

ついでに言えば、新聞報道でも、三井住友出身の三洋取締役が「相手はパナソニック以外にない」と記載されていましたが、彼は特別利害関係人とならないのでしょうか。

三洋電機のメインバンクでパナソニックの社外取締役が同行の頭取という関係で三洋電機側の取締役会、監査役会はどう動くべきなのでしょうか?

政策的、仕方ないでは、ちっとも日本は前進しないと思うのは私だけではありません。

今の価格が、こういった入札の結果ならGSもあきらめるのではないでしょうか?

情報が少ないので断言できませんが、パナに花を持たせたい、とする動きが「あるべき姿」を歪曲しているように思えてなりません。

私は中国企業が三洋を買収してくれた方が三洋にとっての企業価値が上がると思っています。たとえばパナと重複する白物家電事業でさえ、あちらからみれば技術者や製品は魅力に映るかもしれません。

誰のためのM&Aかが欠けています。三井住友の債権回収のためではありません。

投稿: katsu | 2008年12月 3日 (水) 19時53分

katsuさん、コメントありがとうございました。シャルレのように、TOBまでの社内意思形成過程について内部通報でもあれば、また透明感が増すのかもしれませんね(笑)
ちょっとここまでデカイ話になりますと、私の想像では判断しかねるところが多いです。今朝の報道では若干価格を上げて3社と交渉したところ、GSは交渉を再度拒否した、このまま51%超をめざしてTOBに進む可能性大、とありましたが、ご指摘のとおり少なくとも一般株主向けの説明についてはほとんどありませんね。関係者間で密室で大きな再編が進んでいるような感じがします。
こういったネタは日経ビジネスなどで連載モノとして内情が後日語られるのでしょうかね。

投稿: toshi | 2008年12月 5日 (金) 01時02分

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