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2008年11月16日 (日)

「ジャッジⅡ島の裁判官」第四話もおもしろかったです。

遺産分割調停→審判という、テレビドラマでは比較的描きにくいテーマを中心に、主人公の裁判官があえて最高裁決定に反する審判を下すシナリオにはたいへん感動しました。回を重ねるたびにおもしろくなってくるドラマですが、もう来週が最終回になってしまうんですね。

嫡出子と非嫡出子の相続分を2:1と定める民法の規定が、憲法14条(法の下の平等)に反するものかどうか・・・という問題は本当にむずかしいですね。私個人の考え方は、残念ながら、この主人公の裁判官とは異なり、正式婚重視の考え方に近いものですが、「子は親を選べない」ということや、死亡した父親が分け隔てなく子供をかわいがっていた意思を尊重するならば、憲法違反、という考え方もありうると思います。

ただ、あのような労働災害の事例で父親が死亡した場合の補償金としては、労災補償金ということであれば、事実婚主義が採用されますし、また会社の規定による死亡補償金であれば、会社の規定に受給資格が定められていますので、弁護士としてはこういった憲法違反などのむずかしい問題に持ち込む前に、調停前の遺産確認訴訟の提起、別事件としての寄与分の申立など、相手方の譲歩を引き出す手段を検討するのが得策だと思いますね。

しかし、大美島支部に配属された司法修習生が、主人公の裁判官と接するうちに、内定していた東京の大手渉外法律事務所への就職を白紙に戻して、もういちど自分の進路を考え直すに至った・・・というシナリオ、東京の渉外事務所の先生方が見ていたら、どう思ったでしょうね。(笑)なんか異議が出そうな気もしますが。。。

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コメント

TOSHI先生こんばんわ。
このドラマ、今回初めて見ました。わかりやすい対立軸をいくつか並べて戦わせる手法は、見ていておもしろかったですね。主人公の人間ができすぎているところが期待感を持たせます。
非嫡出子の遺産相続の問題については、おそらく理論的な正解はなくて、社会情勢に伴って変化する可能性があるということなのでしょう。かと言ってそう簡単に違憲審判出すかなあ、とも思うし、その反面、最高裁判例を金科玉条にして思考停止していた修習生もどうかなあ(最後は軟化してましたけど)、とも思いました。

投稿: こばんざめ | 2008年11月17日 (月) 00時50分

志を同じくした親友の死、離島の「おばぁ」との出逢い(平良とみさん、
さすがの好演)、自分の娘とのやりとりなど、
その結論に達するまでの主人公の苦悩と迷いを描いているからこそ、
このドラマから薄っぺらではないリアリティが感じられたのでしょうね。

正式婚主義がこの国の少子老齢化をさらに促進たらしめているかも
しれないことを考えると、またいわゆる「できちゃった婚」が普通に
なっている現状を考えると、いい加減「結婚は法的婚姻によるものでは
ない」というところに踏み出すべきでありましょう。

裁判員制度は、裁判員制度こそは、刑事裁判ではなく、
こういう判断こそ行われる場ではないかと思うのですがね。
例えば行政の、公務員の失策怠慢を(人民裁判にならないようにしつつ)
最高裁や政治家の顔色を見ることなく厳しく裁くことが出来るのは
市民ではないでしょうか。

因みに私のところに裁判員の赤紙(バク)が来るようなことがあったら、
真っ先にブログに公開します。その旨は審査?される際はっきり
申し上げてそれで免ぜられるのならそれでも構いませんし、
罰せられるのであれば私なりに戦います。

投稿: 機野 | 2008年11月17日 (月) 01時39分

こばんざめさん、機野さん、内容をよく把握されたうえでのコメントありがとうございます。

そうなんですよ。このドラマはいつも対立軸がわかりやすくちりばめられています。今回は司法修習生とか、親友の死とか、そして機野さんがおっしゃるように離島での「おばァ」の成年後見問題など、じつにシナリオが凝ってるなぁと感心しておりました。

私の感覚では、塚本判事(亡くなった親友)が言っていたように、最高裁判決による先例があるにもかかわらず、地裁の裁判官が自由な感覚で判決を書くことができる・・というのは、やはり現実では相当な勇気が必要ではないかと。民法900条が合理的と判断する「立法事実」がすでに変容してきている・・・といった説明を説得的に展開する裁判官の方がいらっしゃったら、ぜひともそういった判決文を読んでみたい、という気はしております。

機野さんの裁判員制度へのお気持ちは、まったく同感です。
そろそろ、機野さんのような意見などが、もっと大きく取り上げられないと、なんのための裁判員制度だったの?といった結果になってしまうと思うのですがね。

投稿: toshi | 2008年11月17日 (月) 02時41分

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