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2008年11月26日 (水)

金融庁「インサイダー取引規制に関するQ&A」(役職員の自社株売買)

三洋電機に対する買収方式や買収価格についてはいろいろとニュースが飛び交っておりますが、買収側と大株主側でこれだけ評価価格に差がありますと、パナソニックの取締役としてはたいへんですね。TOBが選択された場合の「大株主との事前合意」や買付方法の選択なども問題になりそうですし、今後どういった経過をたどるのか、注目されるところであります。

先週のこちらのエントリーにおきまして、インサイダー取引防止に関する金融庁Q&Aをご紹介しましたが、25日、追加Q&A(第2問)が公表されております。(追加Q&Aはこちら)第1問は自社株売買における会社自身の取引形態に関するものでしたが、第2問はインサイダー規制防止に関する社内体制(役職員による自社株取引の管理体制)に関するものであります。これも先日の日経新聞の特集記事で「過度の自社株売買禁止体制のデメリット」の実例が挙げられていたところだったと思います。先週の「週刊経営財務」(2894号)でも、東証COMLECの売買審査部調査役の方による「インサイダー取引に対する関係機関の取組と未然防止体制上の留意点」なる、かなり詳細な解説が掲載されており、この「望ましい社内管理体制の明確化」「自己株式取得時等に係るセーフ・ハーバー・ルールの導入」がインサイダー取引規制に関する今後の論点として取り上げられていたところであります。

上場企業の「インサイダー取引防止体制」に関する東証の調査によりますと、上場会社のうち74%程度が役職員の自己株売買禁止型(つまり一般的に禁止しておいて、個別申請のある場合に審査のうえ許可する、というものだと思われます)を採用しておられるようです。(平成19年5月時点)役員が自社株取引を行うことによって役員個人ではなく、会社自身に課徴金処分が下され、企業の社会的評価に影響が出るケースもあるために、こういった厳格な社内体制がとられることになっているのでしょうね。これが売買の禁止期間を設けることなく採用されるとなりますと、ずいぶんと過剰な規制のように思われますし、また、個別審査等に要する経費や人的負担なども問題になるところであります。もちろん社員の方々にも不便を強いることになります。そこで自己株式原則禁止期間を、もっともインサイダー情報が発生しやすい期間にだけ限定したうえで、なおかつ事前規制だけでなく、事後規制などの柔軟な体制を工夫するなどによって、役職員の方々の自己株式売買が過度に委縮しないように・・という趣旨で本Q&Aが作成されたものと思われます。

なお、先日のエントリーへのコメントとして、Kazuさんより、

ところで、自社株買いについてインサイダー取引を緩和して欲しいという要望があるようですが、自社株買いが禁止されていた理由の一つとして「インサイダー取引や株価操作等の不正の温床となる」ということがあって、その防止策を十分に行うから自社株買いが解禁されたのだと理解しています。インサイダー取引を緩和してよい程、インサイダー取引や株価操作のおそれが小さくなったとは思えないので、インサイダー取引規制など、自社株買いに関する金商法上の規制は緩和できないと思うのですが、山口先生はいかがお考えでしょうか。

と、ご質問を頂戴しておりました。たしかにKazuさんがおっしゃるように、自社株売買が禁止されていた旧商法(平成6年改正前の商法)の時代の基本書(教科書)には、どれも「インサイダー取引や、不正な株価操縦を誘発するために禁止されている」と説明されております。そして、そのような禁止理由があるにもかかわらず、これを解禁するに至った理由としては、インサイダー取引や相場操縦誘発のおそれについては、会社法ではなく、証券取引法によって厳格に規制することで弊害を防止できるから・・・とされていたのが一般的なところだったと思います。ただ現実にはインサイダー取引規制が開始された昭和62年以来、改正はあったものの、ほとんど骨子は変わっていないですよね。(すでに20年も改正されていないので、インサイダーの規制の現実と合致していない、といった批判もかなり出ているようです)ですから、Kazuさんのご指摘はもっともだと思います。ただ現実には上場企業の資本政策の幅を広げて国際競争力を強化したり、資本市場そのものの充実を図ったり、ストックオプションを浸透させて報酬体系を柔軟化する要請もありますし、いっぽう規制方法につきましても、法令による「事前規制」から、内部統制などの企業の自律作用、SESCによる事後規制強化へと傾斜しているところですから、現在のような運用も(いちおう)肯定的に受け止められているのではないか・・・と考えております。でもこうやって萎縮効果が問題とされておりますので、やはりもっと規制内容の明確化を図る必要はあると思いますね。

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コメント

 お返事ありがとうございます。自社株取得については、自社株買いについてインサイダー取引を適用除外にした方がいいという見解を聞くに至り、インサイダーリスクが元々高いという認識が間違っているのではないかと思い始めて質問させて頂きました。
 自社株買いについては、需要を増加させ供給量を減らすことで「株価を上げたい」という動機での自社株買い(違法かどうかはともかく株価の変動に発行会社が力を加えることですよね。)が少なくないのではないかと思います。そうでなかったとしても、ROEの向上(本当は、業績向上による配当増でROEを上げることが必要なのでは。)、資産の有効活用(手元流動性をどこまで考えているのか、また、資産を有効活用していないことを自認して自社株買いに動いているのか。)などとの関係では、自社株買いは「ウラ技」のような気がしてなりません。
 せめて、会社経営全体の中で自社株買いがどのように位置付けられているかをきちんと開示して欲しいものです。もっとも、「株主への利益還元」という格好のいい言葉も実質は「当社の株を手放す方に利益還元をします。」という、株式長期保有者へ利益還元をしないという宣言でしょうから、こうした開示の内容を解りやすく開示しようとすると、困ったことになるかもしれませんが・・・。

投稿: Kazu | 2008年11月28日 (金) 12時06分

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