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2008年11月13日 (木)

子会社の不祥事と親会社経営陣の法的責任

私が非常勤講師を務めております同志社大学ロースクールの商法演習の前期期末試験とそっくりの事案が実際に発生したようであります。学期末試験では、「設問5」として、上場している親会社の100%子会社(レストラン)が食中毒事件を起こして、お客様に損害を与えた事例でありますが、そのお客様は誰にどのような責任を追及できるか?といった問題であります。基本的には親子関係といっても別法人ゆえ、親会社(もしくは親会社経営者)には責任は問えないのでありますが、親会社と子会社との特別な関係があるような場合には、例外的に責任追及が可能となる場合もあるのではないか・・・といったところを書いていただければいいわけです。ただ、もう一点、企業集団における内部統制システムの構築義務(会社法施行規則100条)をどうとらえるか?という点についても検討していただきたいという出題者(実は私ですが)の狙いもあったのですが、そこに触れていた答案は皆無でした(^^;出題者の能力の問題かも・・・

12日夜の時事通信ニュースや産経ニュースによりますと、東京ディズニーランド内のレストランで食事をした方が腹痛を訴え、病院に運ばれた件で、レストランで調査したところ、その男性は消費期限切れの鴨肉を使った料理を食べていたそうでありまして(ただし、腹痛との因果関係については調査中とのこと)、このレストランはTDLの運営母体であるオリエンタルランド社の100%子会社であります。(TDLのHPでも本件についてはリリースされているようです)

原則としては、本件は当該子会社の食品管理ミスに起因する事態だと思われますので、子会社自身が(因果関係が認められた場合には)この男性の損害を補てんする責任があると思われます。しかしながら、別法人といいましても、当該レストランはTDLの敷地内にあるわけで、運営している子会社(連結子会社)もオリエンタルランドの100%出資を受けたものであります。また調べてみたところ、役員構成も、社長および会長以外の取締役、執行役員はオリエンタルランドの取締役を兼任されている方がほとんどであります。いわば実態面でいえば、オリエンタルランドという上場企業の一事業部であるとみても何ら問題はないと思います。こういったケースでは、親会社(もしくは親会社役員)の法的責任については別途検討すべき対象になるのかもしれません。このあたりは、法的責任を追及する立場にある代理人の腕の見せ所のような気もします。

そして、私的な考察でありますが、こういった場面において、「法的責任追及」とまでは申しませんが、再発防止策をとるにあたり、親会社たるオリエンタルランド社については何らの対応も必要ないのでしょうか?(リリースを読む限りは、「重要な拠点」と評価しうる子会社であるにもかかわらず、親会社としての対策は何ら記載されておりません。ちなみにオリエンタルランド社のガバナンス報告書を読みますと、内部統制の基本方針としてグループ管理体制を整備することが決定されております。)こういった重要な子会社の問題発覚時こそ、親会社としての対応を検討することが、グループ企業内部統制の「運用」評価に影響するのではないかと考えますが、いかがなものでしょうか。

なお、本件ではもうひとつ特徴的な問題点がありまして、たとえレストランの出した鴨肉に関して、男性の腹痛との因果関係が認められなかったケースであったとしても、本来ならば大きくマスコミでとりあげられなかった(つまり、それだけでは報道価値が低く、公表されることもなかったであろう)不祥事が、突発的な事件を契機として大きく浮かび上がる、という「やぶへびコンプライアンス」の典型事例、ということであります。「この程度なら報告や公表せずに放置しておこう」といった不祥事は世間に山ほどあると思いますが、不祥事とはいえない偶発的な出来事によって、その放置していた不祥事が表面化して、マスコミからは「なぜ隠していたのか?」とか「これが表面化していなかったのであれば、同種不祥事は100倍程度発生しているのではないか?」といった質問を浴びせられ、企業の社会的信用を揺るがすような事態に陥るケースに発展するのであります。「ヒヤリ、ハット事例」を平時においてどのように処理していくべきか、このあたりも企業コンプライアンスの要諦であります。

11月 13, 2008 企業集団における内部統制 |

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