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2008年12月24日 (水)

未曽有の世界同時不況のまん中で「コンプライアンス」を叫ぶ

(タイトルほど内容があるものではございませんが・・・)世界同時不況の真っただ中でありますが、とりあえずは「メリークリスマス」です。毎年12月23日は、家族で遊びに行くのが慣例でありましたが、残念ながら長女も「河合塾冬期講習」を受講する年齢となってしまいまして、今年は妻とふたりで「ひっそり」と過ごしておりました。(サンタさんのためにと、自分で勝手に少しだけ窓を開けて待っていた頃の娘の姿がなつかしい。。。もちろん、私が閉めましたけど。。。)

本日も紳士服のコナカ社によるデリバティブ取引の評価損94億円発生、といった報道がありましたが、どうも来年のキーワードは「デリバティブ評価損」と「SPCなどを活用した簿外債務」になりそうな気がしております。もちろん円高の進行もあるでしょうけど、それよりもCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)やCDO(債務担保証券)などの仕組みが引き金になって、とんでもない金額の評価損の発生がリリースされるケースが出てくるのではないでしょうか。アメリカのエンロン事件の場合には、すでに一年前から破たんすることを知っていた経営者が株を売り抜けていた・・・ということが大きな問題となりましたが、実際にデリバティブ取引による巨額の損失がリリースされたのは破たんのわずか3週間ほど前だった、とのこと。とくにエンロン事件のレポートを読んだから・・・というわけではありませんが、結局のところ「歴史は繰り返す」といいますか、7年ほど経過して、また日本でも同じような「プチ・エンロン事件」が発生するような気がしております。(内部告発などが頻繁に行われるような土壌もできつつありますし・・・)

実際に赤信号になってから公表してしまっては、もはや立ち直ることもできないのでしょうけど、黄信号の状況で公表していれば、金融機関や証券会社等と協議のうえ、対応することが可能だと思いますので、いかに企業自身が早期に評価損を公表できるか・・・という点にかかってくるように思います。いかなる評価損を公表すべきかとういことは開示ルールによるものでしょうし、また直前になってみないと損失がいくらなのか不明だ、ということも考えられますが、すくなくともエンロンのように「公表しない」といった判断を伴う場合には、その後の会社の状況次第では命取りになってしまうのではないでしょうかね。株価や為替相場の変動リスクを管理するためにデリバティブ取引は今後ますます活用されるものと思いますが、そのリスク管理については会社法上の内部統制が、またリスクが顕在化した場合の開示には金商法上の内部統制報告制度が、それぞれ有効に機能することを期待したいと思います。

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コメント

DMORIです。
山口先生、とりあえずMerry Christmasですが、このクリスマスの夜にも、寒空のもとで野宿する人たちのことを思うと、心が痛みます。

コナカ社がデリバティブ取引の評価損ですか。
駒澤大学やサイゼリヤもひっかかりましたし、「為替差損の防衛手段」といいながら、これほどの損害を生むというのは、サブプライムと同じくイカサマ金融商品なのでは。

いすゞ自動車が、期間従業員については中途での解雇通告を撤回して、期限満了までは雇用を継続することにしましたね。
条件はいろいろあるにせよ、少しはコンプライアンスの観点に立ち戻ったことは、評価します。

トヨタは、期間従業員との契約を中途解除することはしない、とか新卒内定を取り消すことはしない、と宣言しています。最低限のコンプライアンスではありますが、それでもそのようにできるかどうかは、必ずその企業の社会的評価として跳ね返ってくると思われます。

いすゞ自動車の解雇撤回では、期間社員と派遣社員で対応が180度異なり、当事者の方々も複雑な思いでしょう。
派遣社員の場合は、自動車会社と派遣会社との法人契約による間接雇用であり、個人との労働契約ではないから、という理由が上げられています。
しかし派遣社員の人には、派遣会社から退職届を返送するようにと、書類を送りつけられているケースが多いという報道があります。
事実上は、自動車会社からの仕事があるから、派遣会社が人を集めていて、その仕事がなくなったら派遣会社の社員でもいられなくなる、こういう図式が浮かび上がってきています。

大手企業側は「皆さん個人との労働契約ではないんです。私どもは派遣会社との法人契約でお願いしているだけですから、ご自分の派遣会社とお話ししてもらえませんか」と、非常に体裁の良いセリフを言うことができ、法令には違反していないことを主張できます。
派遣会社を、コンプライアンスの隠れ蓑として使える、良くない社会構造になってきていると思います。

コンプライアンスとは、単なる法令遵守だけでなく、社会に対して公正・フェアであることも、重要です。
かつてホリエモンが株の時間外取引に対して、「法律に違反してはいませんよね」と強弁したとき、世の中の年配経営者たちは、「法律に違反していなければ許される」という考え方ではだめなんだ、と非難しました。

その年配者たちが、こうした世界不況に遭っても、真のコンプライアンスを実践できるかが、いま問われています。

投稿: DMORI | 2008年12月25日 (木) 18時02分

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