内部統制報告書の記載事項について(施行後第1号報告書)
内部統制実務にお詳しい方はすでにご承知かと思いますが、11月末に、金商法24条4の4に基づく正式な内部統制報告書が提出されておりまして、EDINET上で閲覧することができます。(JASDAQ 中小企業信用機構株式会社)正式な内部統制報告書の日本での第1号ということであります。なぜこの時期に?といいますと、決算時期変更により、それまで3月末だったのが8月決算会社に変更されたからであります。ちなみに内部統制監査報告書は財務諸表監査の報告書と一体的に作成されておりますので、有価証券報告書を閲覧ください。
おそらく来年3月決算の上場企業さんも、この第1号の内部統制報告書を参考にされるのかもしれませんが、多くの内部統制統括部署の方々や、内部監査人の方々そして監査法人さんが読まれた感じはいかがなものでしょうか?ずいぶんとあっさりとしたものとお感じになられた方が多いのではないでしょうか?たしかに「内部統制は有効である」と判断した場合の経営者による報告内容は、内部統制府令(および府令ガイドライン)に基づけばこの程度で構わないようにも思えます。基本的には内部統制報告制度は、各企業の財務報告に係る内部統制を開示することがディスクロージャー制度としての本旨ではなく、財務計算書類の正確性を担保するための内部統制システムの構築に向けて、企業がしっかりやっていることを報告するものでありますので、あまり詳細な報告内容となる必要もないのかもしれません。(「重要な欠陥あり」とする報告内容ですと、開示内容が大いに関心の的になりますので、ある程度詳細な内容になるのかもしれませんが)
とはいいましても、私の印象としましては、やっぱりこの第1号の報告書はあっさりしすぎているように思います。経営者が有効と判断した場合の内部統制報告書としては、財務報告に係る内部統制の評価の範囲の記載と、評価手続きの概要に関する記載がポイントになりますが、いずれも府令ガイドラインで記載要領について示されておりますので、ほぼガイドラインに沿った記述になろうかと思われます。この第一号の報告書も、評価範囲を決定した手順や方法についてはほぼガイドラインに沿った形で記載されておりますが、評価手続きの概要についてはどうなんでしょうか。この程度の記述でよいのでしょうか?(これで問題ない・・・ということでしたら、おそらくどこの上場企業さんも、事業拠点選定のための指標と事業目的に関わる勘定科目以外は、ほぼ同じ報告書が出てくることになりそうですね・・・笑)財務報告に係る内部統制の評価結果に重要な影響を及ぼす統制上の要点について、選定されたものを具体的に示すことまでは要求されていないでしょうが、統制上の要点選定にあたっての、自社の評価ポイント(リスク)あたりは説明が必要なのではないかと思います。
このあたりを検討するにあたっては、金融庁Q&A第62問(経営者の評価手続きの検証内容)や府令ガイドライン4-3あたりが参考になろうかと思いますが、そもそも内部統制監査は経営者報告書に対して意見表明をする制度でありますし、監査実務指針におきましても、監査人が不適正意見を表明すべき場合として「内部統制の評価範囲、評価手続及び評価結果に関して、内部統制報告書の記載内容が事実と異なり、著しく不適切な記述がある場合」とされ、経営者としての整備評価、運用評価の基本方針程度は記載しておくべきものではないかと思われます。また、せっかく金融庁Q&A第67問において、評価日以降に粉飾などが発覚しても、評価範囲外の原因によるものであれば訂正内部統制報告書を提出する必要はない、とされているのですから、評価手続きの概要などにつきましては、もう少し具体的な記述があったほうが企業にとっても有利なのではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。また、あまりあっさりしたものですと、結局のところ経営者が評価手続きに関与することなく作成が十分可能となりますので、こういった制度を導入した意味がかなり希薄化されてしまうのではないかと思います。(また、皆様のご意見もお聞かせください)
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