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2009年2月24日 (火)

監査役の利益相反問題について考える

昨日は、かなり難しいエントリーだったにもかかわらず、辰のお年ごさん、機野さんに励ましのコメントをいただきまして、ありがとうございました。「具体的な問題について、さらに検討してください」といった辰のお年ごさんのご要望とは少しずれるかもしれませんが、2月23日の適時開示情報のなかで、コーポレート・ガバナンスの問題として、少し気になったものがありましたので、簡単にご紹介いたします。

昨年「続・監査役の乱」のエントリーにて、すこしだけご紹介しました昭和ゴム社の件でありますが、元社外監査役の方が取締役を相手に責任追及訴訟を提起した件につきまして、半年以上経過した後に(本件に関する)情報を開示した、というものであります。(当社による当社取締役に対する訴訟提起に関するお知らせ)このお知らせでは、「なぜ情報開示が遅れたのか」という点についての理由も記載されておりまして、またそもそも昭和ゴムさんの場合には、かなりその支配権をめぐって紛糾している状況もありそうですから、部外者である私が詳細も知らずにツッコミを入れることについては差し控えさせていただきます。

ただ、昨年6月18日に元社外監査役の方が、取締役らに対して責任追及訴訟を提起したのは、一般株主からの提訴請求を受けてのことでありました。先の「お知らせ」によりますと、半年以上の間、この訴訟は進行していなかったことになりますので、はたして当該提訴請求株主へはどのような説明をしていたのだろうか?という点が気になります。今回の件で、そのまま訴訟を取り下げずに継続しよう・・・といった決断に至ったのは、もし取り下げるとするならば、この提訴請求株主に対して不提訴理由通知(正確には提訴はしていますが、会社判断によって取り下げるのであれば、やはり不提訴理由通知は必要なんでしょうね)が要求されるからではないでしょうか。また面倒なことになるよりも、このまま裁判を継続したほうが穏便に済ませることができる・・・といったことから、訴訟を進行させることになったのではないかと(このあたりは、あくまでも推測でありますが)

そして、もっとも気になりましたのが、訴訟を提起した監査役が辞任されたということで、その後を承継して訴状を陳述した、という社外監査役の方であります。有名な米国法律事務所の弁護士さんでありますが、そもそも被告である取締役のなかには、この方を社外監査役に選任する議案を決議した取締役さんが含まれております。ご自身を監査役として推薦した人を相手に責任追及訴訟を提起する・・・ということだけでしたら、むしろ社外監査役としての正当な職務権限の行使であります。しかしながら、この社外監査役の方は、その監査役選任の発端となった株主支配権をめぐる新株発行差止仮処分命令事件におきまして、会社側に補助参加人として参加した新株引受企業の訴訟代理人を務めておられた方であります。また、この仮処分命令申し立ては、元社外監査役の方の責任追及訴訟の原因事実と極めて関連性のある裁判であります。そのような仮処分事件におきまして、第三者割当増資の引受企業の代理人をされておられた方が、その仮処分事件の結果(昭和ゴム社側の勝訴)によって監査役に就任されたわけですから、独立公正な立場で監査役としての職務を全うできるかどうか、という点においては少し疑問符がつくのではないでしょうか。(あくまでも私見にすぎませんが)

もちろん昭和ゴムさんの複雑なご事情については知悉しているわけではございませんので、実質的にはいろいろと理由があるのかもしれません。また、昭和ゴムさんの場合、社外監査役はもうひとりいらっしゃいますが、こちらも顧問弁護士たる立場として、先の新株発行差止め仮処分事件では昭和ゴムさんの代理人を務めておられますので、こちらも責任追及訴訟を継続するにあたっての「適任者」とはいえないかもしれません。ただ、常識的に考えてみても、はたしてこういった方々が、一般の株主に代わって独立公正なる立場で取締役さんらの責任を追及できるか?といえば、外観的には首をかしげたくなるのではないでしょうか。会社法の教科書的な説明ですと、監査役には善管注意義務はあっても、忠実義務は認められないとされております。しかしながら、こういった場面において、監査役にも外観的には利益相反問題が発生することで、「忠実義務」に近い責務が認められることもあるのではないか・・・と感じる次第であります。なお、この昭和ゴム社の問題については、先日の春日電機社の株主総会開催禁止の仮処分決定でも話題となりました「第三者増資と会社による議決権行使株主の選択」に関する論点もあるようで、たいへん興味深い事例であります。

2月 24, 2009 監査役の理想と現実 |

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