西松建設社の内部統制に「重要な欠陥」は認められるのか?(ビックリ編)
先日、西松建設社の内部統制に「重要な欠陥」は認められるか?といったエントリーを書かせていただきまして、そのなかで
経営トップの関与する企業不祥事すべてを採り上げて、内部統制報告制度における「有効性評価」を問題とすることはできませんが、今回の「裏金工作」は、やはり財務報告の信頼性とかなり密接な関係にたつ不祥事ではないかと思います。さてそれでは、経営トップが辞任することで、こういった全社的内部統制の不備が是正されるのでしょうか?監査人と監査役、また監査人と内部監査室との連携・協調がますます重要視されるなかで、とりわけ「不正」と重要な虚偽表示リスクとの関係に留意しなければならない企業においては、(そもそも監査人は「不正」の法的判断は一切しないわけですから)モニタリング部門にも何らかのしっかりとした対策が必要ではないかと(少なくとも私は)思います。
と意見を述べましたが、その西松建設社がコンプライアンス強化のために外部諮問委員会を設置したそうであります。また、その委員の構成がスゴイ・・・・・・これ以上の「モニタリング部門における何らかのしっかりした対策」はいまのところチョット思い浮かびません。(とりあえず)
これで(期末日において)全社的内部統制に重要な欠陥あり、と評価できる監査人がいらっしゃったら「監査は胆力」と絶賛されるかも。
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コメント
はじめまして、いつも興味深く読ませていただいております。
監査の世界から離れて久しいこともあり、特にJ-SOXに関する考察にはいろいろ勉強させていただいております。
今回のような状況で、仮に「重要な欠陥あり」と評価すると判断していた場合、この「モニタリング組織を設置した」という状況だけで、その後のアクションが何も取られていないのであれば、「重要な欠陥あり」と評価すると、個人的には思います。
逆に言うと、経営者の立場からも、検出された全社的な統制に係る不備が「重要な欠陥」であると認識し、そうであるが故、これ対応するために強力なモニタリング体制を整えたが、実際のアクションが取られていない以上「是正された」とは判断せず、内部統制報告書にて「重要な欠陥あり」と報告して欲しいかな、とも思います(その場合は、外部監査人の側からは「重要な欠陥あり」にはならないのかもしれませんが)。
感覚的に、全社的な統制に係る不備が重要な欠陥にあたると判断するのは、よほどの状況とも思いますので、それだけの判断をする事象に対して、「設置した」ことで「是正した」とするのは、ちょっと違うかな、という印象です。
あくまで感覚的な反応ですので、制度実務との整合性は厳密には捉えていない点ご容赦ください。
投稿: jj-master | 2009年2月 3日 (火) 08時50分
おはようございます。いつも勉強させていただいております。
私もjj-masterさんに同感です。
たとえ「重要な欠陥なし」と評価されても、それは特に財務計算書類の適正性とは関連性が薄いという判断によるものであって、是正された、という理屈にはならないと思います。
どんなに偉い方が諮問委員会の委員に就任されても、監査リスクを低減することに結びつかなければ無意味ではないでしょうか。
投稿: 会計士嫌い | 2009年2月 3日 (火) 09時50分
形は中味をつくるために重要ということだと思います。今回の件は、もうちょっと控え目な表現が好ましいかなぁ・・・と思いました。。。
投稿: 丸山満彦 | 2009年2月 3日 (火) 10時51分
諮問委員会のメンバーは、きっと、法律実務家の方々からみるとドリームチームなのでしょうね。
ただ、御説にはいくつかの仮定が含まれていると思いますので、私も結論には、やや、疑問があるような気がいたします。
それと、豪華メンバーは、内部統制報告のために招集されたんでしょうかね?
いずれにしましても、昨日の記事もそうですが、近いうちに結論がはっきりする事柄にあえて予測をされるのは、実務家としての、ひとつの御見識だと思います(御議論の内容には賛成できかねる部分がありますが)。
投稿: ロックンロール会計士 | 2009年2月 4日 (水) 00時09分
みなさま、熱いコメントありがとうございます。(とくに会計士の先生方を揶揄するような意味でエントリーを書いたものではないことだけはご理解ください)
集中砲火を浴びてしまいましたが、こういったコメントをいただきますと、ご覧頂いている方も、どのあたりが常識的な見解かはおわかりになると思います。ロックンロール会計士さんがおっしゃるように、仮定に含まれることも存在するのは事実ですね。
まあ、しかし「内部統制が有効ではない」との結論について、一般の投資家の方々がどのような印象を抱かれるのか?という点についてはたいへん関心のあるところでして、専門家の意見と投資家の「思い」のギャップを誰がどのように説明するのか、そのあたりも私自身としては結構気にしているところです。
ところで「近いうちに結論がはっきりする事柄」を予測するって、私自身は一番楽しいエントリーなんですよ。結論に至る過程を開示することで予測する人の力量が誰にでもわかるわけでして、赤恥をかくときもあれば、ちょっとうれしくなるときもあります。(私は前者の場合が多いですけど)
ただし、本業(裁判上の戦略)にもっとも近い分野につきましては、ノウハウの問題もあって、予測エントリーは書かないようにしております。
投稿: toshi | 2009年2月 4日 (水) 01時57分
「真面目な内部監査人は命がいくつあっても足りない」、
と、ありていに云って、
こちらさんはそういう企業のひとつなんじゃないかと
報道を見る限り思うわけであります。
内部監査人が仮に運良く(というか運悪く、かな?)発見しても
指摘することができず(命は惜しいですから(笑))、
外部監査人が発見できるとは到底思えない事例の典型でしょう。
監査役だって見抜けるとは思えません。
つまり、「内部統制の限界」「監査の限界」に当たるわけであって、
見つけられなかったことを以て「虚偽報告」とすることはできますまい。
全社的内部統制に重要な欠陥がなかったとはウソでも書けませんが、
そもそもこういうことが予防できたり発見できる内部統制というものは
構築し得ることなのかどうか。
これは私見と偏見に基づき申し上げているにすぎないのかもしれませんが
この業界に(上場企業に必要とされる最低レベルの)コンプライアンスを
求めるということは、どだい無理な相談なのかもしれません。
決して暴言ではありませんよね?
ここまで不祥事が絶えないわけですから…
どんなに立派な委員を集めても、一企業だけではなく業界そのものを
一度滅ぼすところから再生させないと改善は無理なような気がします。
しかし使途不明金がゼロ、(不正な)政治献金もゼロ、談合もゼロ、
賄賂もゼロ…
そんなゼネコンって想像できます?(笑)。
投稿: 機野 | 2009年2月 5日 (木) 00時27分
TOSHI先生
まったく違う感想をもってます。この会社、徹底的にわかってないんだな、という印象しか持ち得ません。
田中角栄がロッキード事件で検察の大物ばかりで弁護団を組んだが、力不足であることを見抜いたため、控訴審では刑事事件で本当に検察とがちんこで勝負してきた石田省三郎弁護士らを選任したという話がありましたが、それを思い出させます。ただし、不祥事調査では控訴審はないので、はたしてどうなるかです。いくら大物でも内部統制や不祥事調査の経験がない方々をずらっとならべても、納得感はありませんね。
企業不祥事調査では有名なK弁護士は、第二東京弁護士会の会派の雑誌で、事件受任の条件として、原因の追究、責任の明確化、不祥事報告の公表を要求するため、依頼の2割しか受任できないといっています。この会社はこのような条件を突きつけられてもやってくださいといえるのでしょうか。
投稿: とも | 2009年2月 5日 (木) 01時20分
お返事どうもありがとうございます。
私はとくにtoshi先生をご批判するつもりはなく、こういった話題に毅然と持論を展開する姿勢にこそ敬服しております。ただ、やはり西松建設のこういった「力でねじ伏せる」ようなリリースを読んで、拒絶感といいますか違和感を覚えたものなのです。なんだか、結局また同じことを繰り返すようなイメージしか湧かないのです。(独断で失礼いたします)
ともさんのコメントには感激いたしました。トーマツさんが出している「企業リスク」や中央経済社の「経理情報」の最新号あたりで「調査委員会の在り方」が議論されていますが、これまであまり知られていなかった社外調査委員会活動などが「なるほど」と理解できました。
投稿: 会計士嫌い | 2009年2月 5日 (木) 01時56分
今回の事件報道にて、同社は普通の企業ではないのだと
知りました。私らが知らないとてつもない人脈が背後に
横たわっていて、その一端を示すものだと想像します。
このような会社は一般企業の枠組みではどうこう
いえないと思います。
一応事件になったわけですから何らかの適正化対応は
行うでしょうが、会計処理であろうが内部統制であろ
うが税務であろうが最終的に「ウン」と言わせる筋道
が立っている、
つまり「当社は適正で押し切る所存です」という意思と
自信の表れだと思います。
結果的に、今までどおり生きながらえると予想します。
投稿: JFK | 2009年2月 5日 (木) 20時33分
私はtoshiさんの意見に同感です。そもそも経営者が関与していた問題は「内部統制の限界」に位置づけされるわけですので、特にゼネコン業界などは内部統制の観点で評価するのは難しいのではないでしょうか?決算財務の健全性をうたう前に経営理念、ようするに全社的統制から再度見直すべきでしょうか。そう統制環境あたりから(笑)
投稿: トッチー | 2009年3月 4日 (水) 23時50分
トッチーさん、ご意見ありがとうございます。なんだか西松建設の件はずいぶんとたいへんなことになってきましたね。内部統制の「重要な欠陥」どころか、某政党の内部統制にまで派生してしまったようで。
エントリーで書くのは控えますが、作家の江上剛さんが自身のブログで書かれているように、私も検察への挑発的な言動は控えるべきではないかな・・・と思いますね。(これまでの歴史が証明しています)検察というところは、長い歴史のなかで「威信」を重んじますので、その威信を損ねるものに対しては、相手が総理大臣であろうと、その権力を最大限行使するものと思います。
とりあえず、財務報告の信頼性との関係で、今回の事件がどのように反映されるのか、注目したいところです。
投稿: toshi | 2009年3月 5日 (木) 01時55分
■小沢代表、潔白であるならば
DMORIです。
山口先生は実名でコメントするので、この問題は書きづらいことでしょう。私はハンドルネームですので、ずばり言わせていただきます。
小沢さんに問題がないなら、「国会の場で潔白を証明するから、参考人でも証人喚問でも、早くやろうではないか」と自ら言い出すとよいでしょう。
この種の喚問は、みんな概して出たがらないのですが、民主党のコンプライアンス度を国民にアピールする上でも、非常に良いチャンスです。
「静止画でなく、動画でテレビ中継もやってほしい。私はなんら恥じるべきところはないのだから」と言えば、なお国民は注目し、大きな信用を得られます。
逮捕された西松側のメンバーからは、小沢さんに不利な調書が、きょうも続々と報道されていますね。ここは早い勝負に出ないと、泥舟のように沈んでいくのではないでしょうか。日本経済にとっても悪い影響です。
よく「司法が進めているので、コメントは差し控える」と言い訳する人が多いのですが、民主党としては「検察が不当な弾圧行動をしている」と公言し、正面切った対決を挑んだわけですから、ここは堂々と司法の向こうを張って、立法府の場で大きな勝負に出るべきです。
うまくやれば“小泉劇場”以上の劇的な演出効果を出せるでしょう。
今後に注目です。
投稿: DMORI | 2009年3月 5日 (木) 18時26分