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2009年3月13日 (金)

あちゃ!これは痛いニュース(>_<)・・・監査役のインサイダー取引

監査役さんの痛いニュースはあまり採り上げたくないのでありますが、パイオニア社の元常勤監査役さんが元秘書名義を利用したインサイダー取引により課徴金処分をSESCより勧告されているようであります。(証券取引等監視委員会HP)また、この課徴金納付命令勧告のリリースに基づいて、パイオニア社としては、事実関係の調査、処分の検討、再発防止策の検討を開始するそうであります。(パイオニア社のリリース)SESCのリリースでは、「監査役」といった役職が記載されておりますが、金融庁課徴金・開示検査課によりますと「高い倫理観が要求される監査役が違法な取引を行っていたことは重大」であることから、役職公表に至ったようでありますので(時事通信ニュースはこちら)、監査役の皆様、たとえ課徴金事案であっても、(ネット検索によって)実名公表に等しい重大事案として取り扱われることに十分ご留意ください。

過去の監査役によるインサイダー取引事例といいますと、平成9年に監査役を務めていた顧問弁護士が、自社に対する第三者割当増資(新株発行)の事実を職務に関して知ったうえで、知人名義で自社株を購入した事例(刑事罰事案)、本年1月に逮捕されたエネサーブ社の元取締役につき、ゼンショー社監査役時代におけるインサイダー取引疑惑(最終的には立件されず)などが記憶されているところでありますが、TOBを行う会社の役職員へのインサイダー事件摘発は全く初めてのようであります。しかし、東証一部企業の常勤監査役さん(7年間)であり、また2年ほど同社の取締役財務グループ部長もされていたような方ですから、秘書名義にてTOB情報公表前に大量に自社株を取得して、公表後直ちに全株売却する、といったことが、直ちにインサイダー事件として審査→調査対象になるリスクというのも十分認識していたのではないかと思うのでありますが、「それでもやってしまった」という、そのあたりのリスク感覚の欠如がとても不思議であります。近時の証券会社→取引所→金融庁といった審査連携体制、情報共有体制からすれば、ネット口座が知人名義であったとしても、容易にインサイダー取引疑惑は浮上するわけですから、こういった露骨な自社株売買は、摘発される可能性が高まっている認識はなかったのでしょうか。しかも最近は、証券会社、放送局、ディスクロージャー印刷会社、監査法人などなど、インサイダー情報にアクセスしうる者であるがゆえに、高度な倫理観が要求されている人達が「ターゲット」として摘発されているご時世ですから、監査役についても優先的に摘発対象になりうるところであります。

ところで、インサイダー取引による法令違反につきましては、財務報告の信頼性に直接関わる問題ではないとしても、たとえば現役の監査役さんがインサイダー取引によって課徴金納付命令を受けるような事態となった場合、内部統制報告制度における全社的内部統制は有効と評価することはできるのでしょうかね。常勤監査役さんはモニタリング機能の中枢にあたるところであり、高度の倫理観をもって職務に専念することが期待されるわけでありますが、こういった法令違反を行っていたとするならば、そもそも監査役としての倫理的行動は期待できないものでありますから、内部統制の有効性は疑問とされるのではないでしょうか。また、監査役自身がインサイダー取引を行っていた場合の再犯防止策についても、どの程度説得的な防止策が考えられるのか、その思考には相当の困難が伴うようにも思われます。

3月 13, 2009 監査役の理想と現実 |

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コメント

 監査役の風上にも置けない、最悪の監査役ですね。
 新聞では他人名義の口座を利用したそうですが、ここまでされると内部統制としては何ができるのでしょうか。SESCの調査の目は誤魔化せないことを社内教育する、くらいしか考えられませんが、それを監査役にするというのは、本当は筋が違いますよね・・・・。
 他人名義を利用しても発覚する可能性については、山口先生はリスク感覚の問題と捉えていらっしゃるようですが、私としては、発覚しないようにならやってもいいといと誤解されそうなので、「そもそもモラルが欠如している。」「法令違反が損であるという認識がない。」という問題と考えたいと思います。

 まだ、インサイダー取引が公表された事実から疑われる事例が他にもあるので、そちらも気になります。

投稿: Kazu | 2009年3月13日 (金) 18時56分

Kazuさん、コメントありがとうございます。ご指摘のとおりで、ちょっと誤解を招く表現だったかもしれませんね。私ももちろんモラルの問題がまず第一だと思います。(まさに金融庁も倫理を問題としているようですし) 不正検査をやっておりますと、人間の心の弱さを垣間見ることがありまして、たとえ倫理観が麻痺したとしても、「こんなことやったらすぐに発覚するだろう」といった予測がつくことで犯罪を制止することも可能ではないか?といったところを本文では表現しております。

しかし、こういった事案、どういった再犯防止策を講じると効果的なんでしょうかね?モニタリング部門のインサイダーの再犯防止はかなり困難だと思うのですが。

投稿: toshi | 2009年3月13日 (金) 21時09分

なんということかです。恥を知れです。

小職は本当に小さな会社の監査役ですが、矜持だけは
高く持っているつもりです。
従来とは違い、監査役の責任の重さに逃げ出したくなる
このごろですが、自分が監査役に株主総会で選任された
とはどういうことか、分かっていないのでしょうか。

大会社であれば、スタッフからの業務説明や内部統制の話
等々聞いているはずです。
小職はスタッフもいませんので、自分なりに一人で情報や
監査報告等を作成してますが、大会社ならその手間も多分
なく、時間は有り余っているはずです。
月間監査役の本を購読、監査役協会へ入会もしているはず
です。

これでは泥棒に警備を依頼しているのと同じです。
いつも言いますが、やはり上場に価する会社は少ないと
云う事になります。

投稿: ご苦労さん | 2009年3月16日 (月) 11時14分

 再発防止策ですか・・・・・。報道レベルでは秘書名義を借りて行ったとのことですが、これをされると、防ぎようがないと考えております。これは摘発する方も難しそうですので、SESCの方には脱帽です。名義を借りても発覚するのですね。
 野村証券の事例のように、本人以外の者と共謀するインサイダー取引の防止は、教育や企業風土の改善以外にはないような気がしますが、いかがでしょうか。せめて「上場会社に値する企業風土」の醸成はして欲しいです。

投稿: Kazu | 2009年3月16日 (月) 22時06分

コメントありがとうございます>Kazuさん
効果的といえるかどうかは不明ですが、たとえばこの元部下(役員秘書)の方が、役員によるインサイダーリスクをもうすこし認識していれば防げなかったでしょうかね。悪いことと知りつつ監査役の指示に従うということもなかったかもしれませんし、また監査役のほうも依頼をしなかったかもしれませんし。(まったくの他人名義での売買ということになりますと、もはやお手上げでありますが)
結局のところ、地道な防止体制構築に向けた努力以外に方法はないのかもしれませんね。

投稿: toshi | 2009年3月17日 (火) 14時22分

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