西武鉄道株主賠償裁判(今度は最高額237億円)
金融・商事判例の2009年4月1日号に、先日の西武鉄道株式一般投資家集団訴訟の控訴審判決(東京高裁平成21年2月26日)の判決全文が掲載されておりましたので、解説も含めて興味深く拝見しました。(なるほど、被告側代理人の主張内容を、かなり受け入れた判決理由だったのですね)
財務内容に関わる事項と、大株主に関する事項とでは、企業価値評価への影響度に差があるといった判決理由の骨子でしたが、本日はまたまったく別の視点から新たに西武鉄道株式の機関投資家(企業年金連合会等16法人)だった企業が原告となっている訴訟において、原告らの損害額を237億円(ほぼ原告らの主張どおりの金額)とする判決が東京地裁で出たようです。(ニュースはこちら)有価証券報告書の虚偽記載に関わる損害額認定の理論の形成は、これからまだまだ流動的かもしれませんね。(金融商品取引法の推定規定が適用されない場面というのも、今後予想されますので)
(追記)毎日新聞ニュースによりますと、本日別の裁判(日本トラスティ・サービス信託銀行など4銀行が堤元会長らに約121億円の賠償を求めた訴訟)の控訴審判決が出されまして、東京高裁は、請求を棄却した1審判決を取り消して、総額約9億5700万円の支払いを命じたそうであります。この判決内容は、冒頭に紹介しました2月26日の東京高裁判決とほぼ同様の判決理由で名義偽装公表直前の株価の15%程度を損害額として認定したようであります。
ところで、本日判決が出された東京高裁判決も、先日(2月26日)の東京高裁判決(裁判官は違うようですが)も、いずれも民事訴訟法248条による損害認定をされたようです。つまり、原告株主に損害が発生したことは認められるが、その損害額の立証は極めて困難であって、原告株主へ立証責任を負担させることは当事者の公平を欠く・・・といった場合にのみ、裁判所が自由裁量によって損害額を決定する、というものです。しかしながら、本日判決の出された東京地裁判決は、原告株主が取得した時点での株価と、売却した時点での株価との差額を損害額とみて、これは当事者の立証活動によって立証可能な損害である、とみているわけですから、今後の主な対立軸としては、有価証券報告書の虚偽記載の事実について、これが公表された場合の株主の損害金額というものが、はたして裁判において立証可能なものなのかどうか、といったあたりがポイントになるのではないでしょうか。その際に、金融商品取引法における損害額推定規定の存在をどのように理解するか、ということも併せて検討すべき課題になるように思います。(自由心証主義の例外なのか、ということが果たして最高裁の判断対象になるのでしょうかね?---もう少し考えてみます)
小ネタの提供さんから紹介いただいた若杉先生の講義録も、最近の有価証券報告書虚偽記載における損害論(経済学からみた株主の損害)についてのものですし、たいへん参考になるところであり、お時間がございましたら参考にされてはいかがでしょうか。(小ネタの提供さん、ありがとうございました)
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