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2009年3月 9日 (月)

コーポレートガバナンス論議の行方(コンプライ・オア・エクスプレイン)

土曜日は朝から社外取締役ネットワーク(関西地区法務講座)に出席しておりましたが、ちょうど昨今のコーポレート・ガバナンス改正論議の話題が出ておりました。現在の経済産業省「企業統治研究会」に近い方のお話などもお聞きしまして、私も2月23日のエントリーで書かせていただいたような今後の収束方向などについて意見を述べさせていただきましたが、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(遵守せよ、さもなくば説明せよ)というのも、(我が国における制度として)そんなに簡単に適用されるものでもなさそうであります。

たとえば証券取引所の企業行動規範において社外取締役の導入を原則義務化する、独立性の要件を強化する、その開示事項を示し、もし導入しない(独立性の要件を遵守しない)といった場合には、なぜ原則的な行動に従わないのかを開示事項として説明する、といったあたりが現在の議論の妥協点ではないか、といった素人的予想を抱いているところでありますが、実際にアングロサクソン系の法体系のなかで妥当している「コンプライ・オア・エクスプレイン」とは、その適用すべき土壌が違い過ぎる、といった説明を受けました。

英国のシティあたりの実務感覚からすると、そもそも自主ルールを遵守する、ということへの感覚が日本とは大きな違いがあり、もし遵守しないということを選択する場合には「村八分」に合うことを覚悟する必要があるとのこと。公権力を補完するための自主ルールということよりも、むしろアングロサクソン系では公権力の介入を極力排除するための自主ルールであるから、参加者には自主ルールの順守が厳格に求められるのであって、よって遵守しない場合の説明責任というものも、おそらく日本人が考えている以上に厳しいものだそうであります。「社外取締役としてふさわしい人材を見つけられなかったから」とか「候補者との間で報酬面での折り合いがつかないから」または「当社の場合、監査役制度によって社外取締役導入の趣旨を実現することができるから」といった説明では到底(原則遵守に代わる)説明責任を尽くしているとは言えないだろう、といったお話でありました。(なるほど・・・・、ひょっとすると、こういった自主ルールによる規制の在り方につきまして、各委員会等でも議論されるのかもしれませんね)

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コメント

山口先生
こういう話は、数値や法制・規制の文言などからは伝わらないものなので、貴重な情報ですが、他方、検証も難しいため、はたして真相がそうだといえるのか、なかなか判断が難しいところもあります。(個人的には、この方のお話は非常に実務家としてのこれまでの経験からも納得感があると思っていますが。)

我が国では、開示を通じ最善慣行をめざすといっても、なかなかその方向には進んでいかないのが実情であり、一部で変化があっても、中途半端であったりなかなか大勢を占めるまでいかないことが多いと思われます。他方、ルール化をしても、形式だけ整えて、やったではないか、と言い逃れをする事例はよく見られるところです。
たしかに、TOBルールなども18年改正でかなり開示実務は進化しました。しかし、相変わらずお行儀が悪いを通り超えてかなり問題というMBO事例はまだまだ散見されますし、表に出ている事案も氷山の一角だろうと思われます。
開示による規律が実効的な規律の在り方となるまでには、日本ではまだまだ時間がかかるのかもしれません。近い将来そうなる気配はあまりありないので、法的な義務化が伴わないと変革は進まない、ということになりそうです。そして一罰百戒のような事案があったりして、なんとか定着していく、というお決まりのパターンがしばらく続くのかもしれません。
強制されてやっと導入することが、規制への反発の原因にもなっている面があるので、進歩的な会社の実務を見習う動きが定着するような経営環境になっていくことが本当は望ましいところです。(企業自身のためにもなる点が多いのに、感情的または心情的な反発が強すぎて、なかなか議論が進まないのが残念です)
具体的な話をすると差しさわりがあるので、抽象的で分かりにくくなっていますが、ご容赦いただければ、と思います。

投稿: 辰のお年ご | 2009年3月10日 (火) 01時47分

経理担当者さん、はじめまして。ブログ拝見させていただきました。

ちょっと大きな問題だと思いますが、ネット検索しても、どういった問題が発生しているのか、具体的な事故内容がわかりませんでした。
もし差し支えなければ、追加コメントかメールにて、具体的なご事情をお教えいただけませんでしょうか。

投稿: toshi | 2009年3月13日 (金) 17時09分

経理担当者さん、ご回答ありがとうございます。かなり深刻なお話ですね。こういった問題だと、経理担当者さん以外の企業でもかなり問題化しているのではないでしょうか。

有価証券報告書の虚偽記載における課徴金は、インサイダー取引の場合と異なり、ある程度制裁的な意味合いを含んでいるケースが多いと思います。(たとえ故意過失などが認められない場合でも)その連結会計システムの不適合性によって誤謬が発生して、会社が不当に利得を得たような場合は別ですが、そうでないケースであれば、課徴金をかしてみても行政目的を達成できないわけですから、そもそもキソク行為と捉えてみても課徴金は課されないように思うのですが、いかがなものでしょうか。
ただ、内部統制の有効性判断については別途検討を要するように思います。将来における虚偽表示のリスクが残る以上は、それなりに厳格な評価が必要ではないかと思います。
このあたりは、他の方のご意見もお聞かせいただければ幸いです。

投稿: toshi | 2009年3月31日 (火) 01時59分

経理担当者とのやりとりについて横槍です

昔、会計監査をしており、少し前までJ-SOXコンサルに関わり、また、SI(システム・インテグラ)サイドの仕事をしている経験からいって、会計システム、連結会計システムについて、バージョンアップ費用(ないしリプレイス)を惜しんで、システム的には計算書類規則改正対応、財務諸等表規則等改正対応をしないという会社さんも、結構ありますね

これをどう考えたらよいかですが、システムだけでみれば、そんな風で良いのか?と思われたりする部分はあるのでしょうが、システムから出力した情報を適切に組み替えする作業が必要だね、というだけのことであって、コンプライアンスの点で、システムが未対応であることは、財務報告の内部統制からは、道半ばの話です

会社法、金商法の会計監査の監査証明の対象となる財務諸表は、招集通知に添付される(or総会決議に出される)計算書類、有価証券報告書に含まれる財務諸表です。
システムから出力された帳票が会社法未対応であったり、バグで間違っていても、招集通知、有価証券報告書の原稿に載せるまでの間で、適切なチェック・修正が行われていれば、問題なしだと考えます

むしろ、内部統制構築の観点からは、システムから出力をされた財務諸表を何らチェックせずに利用している、とか、法改正への知識が追いついておらず会社で必要なチェック事項がわからないでいる、ということであれば、その点についてが、かなり問題であり、不備の認識(ちなみに、欠陥レベルではないか?)が必要です

委託業務への内部統制と同じ話ですが、内部統制実施基準のフレームワーク下の内部統制では、外部に任せっぱなしはダメです。外部に委託した作業結果が適切な結果であるか、チェックしなければなりません。また、技量的に会社は点検できなければなりません。そして、チェックで問題があれば、必要なレベルまでは、会社が補完できなければなりません。
今回の話であれば、「外部」を「システム」に読み替えすることになりますが、「システム」にバグがあっても、指摘して適切に修正できればよく、会社は、それができなければいけません。

余談ですが、パッケージ屋さんていうのは、最近は、バージョンアップで儲けることが重要になっており、会社法への修正パッチ(バージョンアップと似たモノだと思って下さい)が別料金だったりすることも見られたようです。他方で、計算書類を組み替える程度のことは、Excelでも出来ることですので、投資対効果の判断により、修正パッチをやめた会社もあったりします。
また、大規模な修正パッチであれば、バグがある可能性も考えられることから、パッチの適用をすぐには行わず、他社でバグが出尽くした頃まで適用を見送るという判断も合理的にあるでしょう。なにせ、制度改正の修正であれば、会社の判断でExcelで組み替えれば改正対応できますが、システムバグであれば、どこでどう違ったのか、会社だけ見極められないこともありますから
ちなみに、内部統制の観点からは、これらの判断は、適切な権限者が判断し、資料・議事録で判断過程明確にしておくことが必要と考えられます。

また、それはそれとして、パッケージが法改正に対応していないというのは、ひどい話ですね
でもそれはそれで別な話だと考えています。権利責任関係の切り分けは、法改正対応が済んでいる、というのであれば、その内容が誤っていたことにより生じた損害(人件費)について、ベンダーへ請求する余地がありそうですね。ただし、法改正の内容の認識が、会社とベンダーの間であっているかが争点になるかも。
誤った開示をしてしまったことによる損害は、今回の内部統制の制度での委託の場合の内部統制の考え方があるので、ベンダーへの請求が難しいように考えます。
この辺りの法律的な切り分けは、小生はまったく素人なので、弁護士のtoshi先生のブログのコメントで書いててはマズイ知れません。マズイようでしたらごめんなさい

投稿: 通りすがり | 2009年4月 4日 (土) 19時53分

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