ビジネスマンのための法令体質改善ブック
ひさしぶりの「本のご紹介」であります。といいましても、実は昨年発売と同時に購入して、すでに読み終えている本でして、ご紹介については「どうしようかなぁ」とためらっておりました。
ビジネスマンのための法令体質改善ブック(吉田利宏著 第一法規 1000円税別)
衆議院法制局に15年ほど勤務されていた著者のビジネスマン向けの「電車でも読める」(著者のことば)法令の読み方解説、法律情報の検索指南の本であります。なぜご紹介をためらっていたのか、といいますと非常にセコイ話でありますが、「なるほど・・・、これはロースクールの授業で学生に小ネタとして紹介したら先輩風を吹かせることができるかも・・・」といった気持がありまして、私の情報源を秘匿しておこうと思っていたからであります。(笑)ところが最近、本書がいろんなブログで「おもしろい!」と紹介されているのを拝見しますと、逆にエラそうに小ネタを開陳したところで、「あっ、それって、あの本で紹介されてたやん!」みたいなツッコミを学生から入れられるリスクの方が高くなってきたようですので、素直にご紹介することにいたしました。(ホンマにセコイ)
法律の条文で使われる日本語というのは、法令用語独特の言い回しがあるわけでして、その言い回しを知らないと法令の意味を十分に認識できない場合があります。また、条文の並び方にも、きちんと意味があったり、法令と附則や整備法との関係なども、それなりの意味があるわけでして、そういった「法令のオキテ」を学ぶことによって、(たとえば)会社法の条文が身近なものに思えてきます。たとえば、ある程度会社法の勉強をしている人に対して「こういった法則がある、だからこう解釈されているんだよ」といった講釈をたれたくなるような小ネタがいっぱい詰まった本です。前半部分は平成17年会社法を題材にして法令の理解に資するようなヒント(法則)が紹介されておりまして(たとえば「その他」と「その他の」って何が違うの?「当分の間」と「さまたげない」の違いってどうよ?とか、「しなければならない」と「するものとする」の違いってあるのかなぁ?みたいな)、後半部分は法令理解のコツや法令情報へのアクセス法など、どれも(法律の素人向けということですが)法曹実務家が読んでも(4つにひとつくらいは)「あれ、政令と省令ってそんなに違うもんだったの?知らなかったよ」と感嘆するような話題がてんこ盛りです。
おそらくこういった法令の読み方(条文の並び方や法律体系も含めて)というものは、法律学者の方々にとっては「ごくあたりまえ」のことだとは思いますが、法曹実務家のなかには、私と同様、この本を拝読して初めて知る方も多いのではないかと想像いたします。ビジネスマンの方だけでなく、法律家や会計実務家の方々にもぜひお読みいただくことをお勧めする一冊です。(しかし立案担当のお役人の方にとっても、内閣法制局参事官の審査というのはトホホな気分になるほど厳格なんですねぇ・・・)
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