企業における反社会的勢力排除への取り組みレポート
4月22日、東京に本社のある反社リスクコンサルタント会社のセミナーがありましたので、参加させていただきました。上場企業の総務担当者の方なら皆様よくご存じの企業でありますが、反社会的勢力排除のための内部統制診断が100社を超えたことで、この5月には「企業における反社会的勢力排除への取り組み」に関するレポートをリリースするそうであります。22日のセミナーでは、このダイジェスト版のご報告もありましたので、たいへん興味深く拝聴させていただきました。
レポート内容を詳細にここで述べることは、当該コンサルタント会社にご迷惑をかけることになりますので差し控えさせていただきますが、レポート内容をお聞きした印象だけを述べますと、まずなんといいましても平成19年6月の政府指針(企業が反社会的勢力からの排除を防止するための指針;内閣府犯罪対策閣僚会議)で示された内部統制システムの構築について、各企業においては、その具体的な対応が進化してきている、というものであります。いわゆる従来型(不当要求等への直接的な対応を行うための体制)だけでなく、取引等を通じた一切の関係を遮断するための体制構築(フロント企業等、経済ヤクザに対応する仕組み)へと各企業の取り組みが変遷していることが理解できます。各企業における「反社への企業姿勢」の明文化、「反社会的勢力」の定義を明確化したり、認知もしくは侵入予防の仕組みを構築したり、判断基準の明文化や判断の仕組みつくりを平時から行っていたり、実際に反社会的勢力に入りこまれたしまった企業を想定しての対応方法(マニュアル化)など、かなり詳細に体制構築にいそしんでいらっしゃる企業も増える傾向にあるようです。
また、この内部統制診断ツールによる100社の診断結果は(ダイジェスト版だけでも)けkっこうおもしろくまとめていらっしゃいます。数字のうえで顕著な分析結果ですと、たとえば業種によってプロのコンサルタントが客観的に診断しても、大きな差が出ているのですね。(金融機関はさすがに診断結果でも高い点を取得されていますが、その他の業種では、けっこう意外な結果が出ております。ご関心のある方は公表されるレポートをご覧くださいませ)また、上場企業と非公開企業とを比較してみた場合、上場企業のほうが効果的な取り組みができているかといいますと、実はそうでもなさそうであります。(なぜそういった結果となったのか、という点も上場レポートをご覧いただくと80%くらいは理解できるものと思われます)また「組織的対応」とよく言われるところでありますが、どういったものが組織的対応として効果的なのか、といった点についても、具体的な事例などを通じて考えて、そこから平時の内部統制体制構築にフィードバックする視点は、なかなか参考になるところであります。たとえば「認知」のために、平時からどのような点に着目して調査をすべきなのか?といった問題も、けっこう大切であります。
取引先管理のなかで、もっともリスクの高いのが「社長の紹介先」というのも頷けるところです。こういった内部体制の構築にあたっては、「例外事項を作らない」ということだそうですが、社長自身から紹介を受けますと、現場としてはきちんとルールに則って管理することに躊躇することもありまして、反社会的勢力も、こういった社長さんを通じて企業に侵入することが、発覚リスクが少ないことを熟知しているようであります。ともかく、経営者のコミットメントは必要条件ではあるが、決して十分条件ではないことが、よく理解できました。(問題は、反社会的勢力に関する社内での情報共有ですね。これはセミナーをお聞きしていても、なかなか妙案があるわけでもなく、ひたすら現場社員のセンスを磨くしか方法がないのかもしれません。)
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コメント
各社が「反社」の定義をどう定めておられるか、とても興味深いです。
暴力団本体や警察で《認定》したフロント《など》判断しやすい勢力だけを「反社」とするのでしょうか。しかし膨大なこの周辺をどこまで入れるのか、入れないのかが知りたいところです。調査結果が待ち遠しいです。
「言うは易く行なうは難し」で、マニュアルは作ってもそれを《例外なく》運用することはとても大変なことだと思います。担当者のストレスが溜まり過ぎないことを祈ります。
投稿: TETU | 2009年4月24日 (金) 12時28分
tetuさん、コメントありがとうございます。
講師の方も「例外なく運用することが重要」とされていました。「例外」を探るのがプロの経済ヤクザの常道だそうです。
投稿: toshi | 2009年4月25日 (土) 02時21分