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2009年4月 2日 (木)

「内部統制の本質と法的責任」(本のご紹介)

Cimg0989_320 内部統制報告制度も評価日を迎え(3月決算会社)、「経営者評価」という、もっとも「J-SOXと法的責任」に関連する重要な時期となりました。この時期に、(社外取締役ネットワーク関西勉強会でご一緒させていただいている)著者の方から頂戴した新刊書が「内部統制の本質と法的責任~内部統制新時代における役員の責務~」(コンプライアンス研究会編著 財団法人経済産業調査会 3,200円税別)です。初版発行日である4月1日を超えても、まだネット上で販売されていないようですので、私が撮影した写メで失礼いたします。

冒頭10ページほど河本一郎先生の「推薦のことば」が掲載されておりますが、関西の弁護士を中心として、大学教授、トーマツ代表社員、元RCC執行役員、証券取引所関係者、企業実務家等の方が参加した3年にわたる研究会の成果として出版されたものであります。この本の特徴は、なんといっても企業会計審議会意見書で用いられている「内部統制」の概念の内容を明らかにして、これを中心にすえて法的責任を論じているところであります。たとえば、「第二章においては、「基準」が掲げている①業務の有効性と効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守、④資産の保全それぞれについて、会社法上の制度との関連でどのように理解されるべきかを検討している」(河本一郎先生の推薦のことばより)とのことで、実際に読ませていただきましたが、たしかに今後の内部統制報告書が提出される時代における裁判で使えそうな内容になっております。また後半167ページあたりでは、「内部統制システムの不構築と経営上の裁量」など、最新の日本技術システム損害賠償事件をとりあげて解説がなされていたり、内部統制システムの構築と企業の責任(両罰規定)、「証券取引所と内部統制システム」など、きわめて企業実務的に有益な内容が豊富です。単にこれまでの学者さんや実務家による成果をまとめて整理したものではなく、研究会会員の自説を積極的に展開して、(おそらく読まれる方も賛否あろうかと思いますが)、今後の裁判実務等への問題提起を多分に含む点においてたいへん興味深く読ませていただきました。

何度かとりあげました日本システム技術損害賠償事件(この本の中では、事例の紹介と判例解説もなされています)といい、先日の貴乃花名誉棄損事件新潮社裁判の事例といい、内部統制構築義務違反が代表取締役の「重過失」を構成する(会社法429条1項)、といった事例が出てきており、これに加えてもうすぐ「内部統制報告書」が提出され、企業には内部統制の整備・運用評価を文書化したものが埋蔵されており、裁判で活用されるかもしれない、という時代が到来します。財務報告の信頼性確保のための「内部統制」を中心にすえて法的論点を考察する、という取組についてご関心のある方には、お勧めの一冊であります。

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