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2009年4月 8日 (水)

過年度決算訂正の法務(本のご紹介)

Kanendo 別に福島銀行が誤配当によって行政処分を受けたから・・・というわけではございませんが、霞が関での某団体の会議終了後、弁護士会館地下の書店で購入したのが「過年度決算訂正の法務」。(弥永真生編 中央経済社)題名と編者のお名前をみて、思わず衝動買いしてしまいました。

まだ途中までしか読んでおりませんが、実におもしろい。過年度決算訂正という、上場企業におけるクライシスマネジメントについて、まず、読み手にわかりやすいようにきちんと機能的に単元を整理しているところが素晴らしいです。(おそらく、これだけ整理されているのであれば、このテーマの流れで「過年度決算訂正について」と題する講演も可能ではないでしょうか。)つぎに、執筆者の問題解決のための自説が展開されているところが良いですね。金商法を解説する本というのは、条文や改正点などを丁寧に紹介するものはあっても、解釈上の問題点を指摘して、自説を論じるものは(著名な学者の方の基本書を除き)少ないと思います。(したがって、執筆者の見解については、おそらく賛否分かれるかとは思いますが。たとえば「内部統制と相当の注意の抗弁」あたりは、私個人としては異論のあるところですし、「公表」時期をどこに求めるか?といった解釈上の論点についても説が分かれるかもしれません。)そして、何といってもこれまで法律家の立場から「過年度決算訂正に係る法的な論点」を扱う本はほとんどなかったところでありまして、非常に新鮮です。関連するテーマを扱った論文なども紹介されており、そういった情報収集のためにも2400円は安いなぁと感じました。おそらく、当ブログに毎日お越しになられている方々なら、ご関心のあることが全編語られております。なお、第6章に盛り込まれている「過年度決算の訂正という危機に直面したときの企業の対応」につきましては、ちょっと前の旬刊経理情報や、トーマツさんの「企業リスク」にも特集が掲載されておりましたので、そちらも参考になるかと。

若干、表の説明などに首をかしげるような誤記がありますが(たとえば140頁あたり143頁の「公表 開示が価格に与える影響の仮設例 」と題する説明図)、そういったことなど気にならないほどに、目新しい論点解説に挑戦されており、会計士さんと経営者との世界だった「過年度決算訂正問題」に、法律的観点を盛り込んだところは敬意を表したいと思います。(もうすこしきちんと読んで、勉強させていただきます)

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コメント

この本の著者の方が調査委員会の委員長に就任した事件がリリースされましたね。この会社は、山口先生が先日、出演されていたシンポジウムのパネリストの監査役さんの会社ですね。内部統制が効いたから、というべきか、内部統制の限界というべきか、どうなんでしょう?

投稿: ポパイ | 2009年4月10日 (金) 20時22分

「会計上の変更及び過去の誤謬に関する会計基準」(案)が公表されましたね。
過去の誤謬に関しては、修正再表示とされています。会社法でも、一般に公正妥当と認められる会計慣行に従うわけですから、当然修正再表示になりますよね。

投稿: 迷える会計士 | 2009年4月12日 (日) 20時03分

この本から1年、『会計不祥事対応の実務-過年度決算訂正事例を踏まえて-』が商事法務からでましたね。

過年度決算訂正と内部統制報告書、不祥事対応がコンパクトにまとめられております。

先生のブックレビューを期待しております。

投稿: 総務法務屋 | 2010年3月30日 (火) 21時36分

総務法務屋さん、こんばんは。

コメントを見て、いま商事法務のメルマガで確認しました。
これ、絶対おもしろそうですね!私好みの本です!
早速明日でも仕事終わってからジュンク堂で探してみます。情報ありがとうございました。

投稿: toshi | 2010年3月31日 (水) 02時07分

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